被災自治体の動向
2012年
3月
08日
木
大震災1年:止まらぬ人口減「職」「住」喪失、生活描けず 「国策支援を」首長悲鳴
東日本大震災後、人口が計8万人以上も減少した岩手、宮城、福島3県。震災前から人口減と高齢化が進む地域が多かったものの、震災で一気に人口流出が加速する想定外の事態に陥った。即効性のある対策は見当たらず、自治体からは「もうお手上げ」との声すら漏れる。専門家は、将来を担う若者の声を反映した復興計画の重要性を指摘する。
◇「職」「住」喪失、生活描けず
「大変に厳しい数字だ」。宮城県南三陸町の佐藤仁町長は今年2月、被災者の転出が想定以上に進んでいることを示す町の調査結果を見て絶句した。実施したのは復興住宅整備などの計画を策定するための住民調査。中間集計では回答者の11%が「町外に移転した・移転予定」とした。商業地が壊滅した志津川地区では「移転・移転予定」が13%に上った。
震災直前には1万7666人だった町の人口は、多数の犠牲者や転出のため12・5%減少し、1万5458人(1月末現在)になった。復興計画(昨年12月策定)では、町内への人口回帰や雇用の創出で、10年後もわずかな人口減少で食い止められると見込んでいたが、既に甘い予測だった可能性が出てきた。
高齢化も著しい。21年には65歳以上が5232人で人口の35%を占めると推計される。帝国データバンク仙台支店の紺野啓二・情報部長は「インフラ整備はしたものの人は住んでいない『税金の無駄遣い』にならないよう、企業再建と雇用の確保をしなければならない」と指摘する。
平成の大合併で同県石巻市に吸収合併された旧雄勝町は、約1660世帯(11年2月末)のうち1231世帯が全壊、115世帯が大規模半壊・半壊とほぼ全集落が壊滅状態になった。死亡・行方不明は236人。残った住民も市内外の親類宅に身を寄せるなどし、約4300人いた住民は約7割減の約1300人しかいなくなった。
市雄勝総合支所は内陸の高台に住宅街を整備し、人口流出を食い止めたい考え。三浦裕・地域振興課復興対策副参事は「親戚を頼って県外に行った高齢の住民からも『早く雄勝に戻りたい』という声を聞く。少しでも早く高台移転を進め、住民が戻れる場所を作ってあげたい」と話す。
一方、一部の住民は「海が見える故郷の集落から離れた内陸への高台移転が進められたら、戻ってくる住民は少ない」と高台移転に反発。合意形成は全域では得られていない。
一方、住まいや仕事を失った被災者の受け皿になっている仙台市。人口は105万3086人(2月1日現在)で前年同月より6100人も増え、過去最高を更新した。
繁華街・国分町は活況にわいている。ある居酒屋の男性店長は「被災地外から建設作業員らが来ていることもあって、昨年の売り上げは3割増しだった」と話す。【熊谷豪、宇多川はるか】
◇「国策支援を」首長悲鳴
岩手、宮城、福島3県42市町村長アンケートでは、「震災により人口流出が加速した」との回答が6割近い24人に上った。被災地では震災前から、高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)が30%を超える自治体が多く、死亡数が出生数を上回って人口は減少に転じていた。そこに震災が追い打ちをかけた。
アンケートでは、復興計画が完了する時点での人口見通しについて、4割の16人が「大幅に(おおむね1割以上)減少する」と回答。沼崎喜一・岩手県山田町長は「1次産業は後継者難に直面し、雇用もない」と説明し、放射能汚染の影響が深刻な福島県浪江町の馬場有(たもつ)町長は「県外に避難する約7000人は、ほとんど帰らないようだ」とした。
若者の流出防止策では、新産業育成や企業誘致、1、2、3次産業の組み合わせによる雇用の場の確保▽教育環境の充実や子育て支援▽住環境の向上--などを挙げる首長が目立った。ただ、野田武則・岩手県釜石市長は「企業がアクセスの悪い土地に好きで進出してくるとは考えにくい。国策として目を向けてもらわなければ、三陸全体が限界集落になってしまう」と言う。佐藤仁・宮城県南三陸町長は「雇用を支えた企業・商店の85%が壊滅して仕事が無く、手立てはない」と話した。
東北各地で街づくりに助言し、宮城県石巻市などで復興を支援する北原啓司・弘前大教授(都市計画)は「以前から指摘されながら、思い切った改革や世代交代をしなかったところに、10年早く危機が来た」と指摘。従来は地位のある人たちだけで街づくりが進められてきたとして、「若い世代にチャンスを与え、自分たちの街は自分たちでつくっていく姿勢が必要だ」と話す。
今後は日本全体が人口減少に直面する。北原教授は「被災地を対岸の火事とせず各地で考えていくべきだ」と語った。【北村和巳】
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◆震災前後の推計人口の変化と高齢化率
11年3月1日現在 12年2月1日現在 増減 10年3月~11年2月の増減 65歳以上割合
◇岩手
県計 1326643 1310253 ▼16390 ▼10300 27.2
洋野町 17775 17492 ▼283 ▼403 30.5
久慈市 36789 36455 ▼334 ▼194 26.4
野田村 4606 4447 ▼159 ▼70 30.1
普代村 3065 3010 ▼55 ▼35 31.5
田野畑村 3838 3721 ▼117 ▼44 33.9
岩泉町 10708 10508 ▼200 ▼91 37.8
宮古市 59229 57865 ▼1364 ▼445 30.9
山田町 18506 16758 ▼1748 ▼335 31.8
大槌町 15222 12463 ▼2759 ▼273 32.4
釜石市 39399 37157 ▼2242 ▼315 34.8
大船渡市 40579 39049 ▼1530 ▼455 30.9
陸前高田市 23221 20035 ▼3186 ▼115 34.9
◇宮城
県計 2346853 2323929 ▼22924 8067 22.3
気仙沼市 73154 68765 ▼4389 ▼727 30.8
南三陸町 17378 15110 ▼2268 ▼22 30.1
石巻市 160394 150039 ▼10355 ▼377 27.3
女川町 9932 8157 ▼1775 ▼131 33.5
東松島市 42840 40351 ▼2489 ▼18 23.2
松島町 15014 14953 ▼61 ▼258 30.9
塩釜市 56221 55640 ▼581 ▼779 27.5
利府町 34279 34751 472 490 16.3
七ケ浜町 20353 19735 ▼618 ▼176 21.6
多賀城市 62990 61584 ▼1406 ▼325 18.4
仙台市 1046737 1053086 6349 12340 18.6
宮城野区 190806 189261 ▼1545 2485 16.6
若林区 132159 131442 ▼717 1168 18.4
名取市 73603 72201 ▼1402 1398 19.1
岩沼市 44160 43730 ▼430 ▼402 19.8
亘理町 34795 33440 ▼1355 ▼56 23.4
山元町 16608 14296 ▼2312 ▼232 31.6
◇福島
県計 2024401 1980814 ▼43587 ▼12139 25.0
新地町 8178 7863 ▼315 ▼77 26.9
相馬市 37721 36437 ▼1284 ▼305 25.5
南相馬市 70752 66052 ▼4700 ▼482 26.6
浪江町 20854 19336 ▼1518 ▼184 26.7
双葉町 6891 6392 ▼499 ▼102 27.1
大熊町 11570 11019 ▼551 171 21.0
富岡町 15959 14775 ▼1184 ▼50 21.1
楢葉町 7676 7355 ▼321 ▼63 25.9
広野町 5386 5162 ▼224 14 23.8
いわき市 341463 332994 ▼8469 ▼2155 25.1
飯舘村 6132 5963 ▼169 ▼63 30.0
川俣町 15505 15095 ▼410 ▼222 31.7
葛尾村 1524 1485 ▼39 ▼11 32.2
田村市 40234 39433 ▼801 ▼556 28.9
川内村 2819 2696 ▼123 ▼59 35.2
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3県計 5697897 5614996 ▼82901 ▼14372
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42市町村計 2574059 2516855 ▼57204 3806
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※単位・人。65歳以上割合は%、10年国勢調査から
2012年
1月
19日
木
岩手県山田町 「復興事業の一部を都市再生機構に委託」
【河北新報120119】岩手県山田町は、町復興計画の高台移転事業の一部を都市再生機構(UR、横浜市)に業務委託した。復興事業を外部委託するのは被災した岩手、宮城、福島3県の自治体で初めて。
町は昨年12月に策定した復興計画で沿岸部を7地区に分け、津波の被害を受けた地域の高台移転を盛り込んだ。土木工事の専門職員が3人しかいないため、切り土造成して住民を高台移転させる織笠地区の地質調査などを、URへ業務委託することにした。両者は17日に事業推進の覚書を締結した。
町は、他の地区でも計画の進行状況に合わせてURに委託する。
URは、昨年4月中旬から職員2人を山田町に派遣し、復興計画の策定を支援していた。
2011年
5月
19日
木
県外避難者 進まぬ「住宅借り上げ」
【しんぶん赤旗110519】埼玉県に見る 自治体間に調整遅れ
東日本大震災や福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島各県で民間賃貸住宅を借り上げる制度が実施されています。被災県から他県に避難する人にも提 供されますが、自治体間の調整が遅れ、なかなか進んでいません。福島県から多くの被災者が身を寄せる埼玉県では―。(海老名広信)
2011年
5月
16日
月
岩手県 「中核魚市場を2年内に復旧 県が水産復興工程表」
【岩手日報110517】県は16日、東日本大震災津波復興委員会の総合企画専門委員会を開き、復興ビジョンに盛り込む重点事業の具体的な工程表を公表した。最重点に掲げ る水産業については、今年の夏までに被災した漁協事務所や魚市場の仮復旧を実施。秋までに必要な漁船の整備や漁港機能の応急復旧を目指す。2013年3月 までに中核魚市場を本格復旧し、製氷施設を新たに整備することなども掲げた。
同計画は柱となる七つの重点事業ごとに緊急(1年内)、短期(3年程度)、中期(3年以上)の目標を設定。特に沿岸住民の生活に直結する水産業については「早期に現金収入の獲得手段を確保する」(農林水産部)との方針から漁期に合わせて具体的目標を示した。
漁協を核とした漁業、養殖業の構築として、サバ、イカ漁が本格化する今夏までに24カ所のうち14カ所が被災している漁協事務所を復 旧。9月までに28カ所のうち21カ所で被害が出ているサケふ化場の仮復旧を実施する。現在、5726隻の流失が確認されている漁船については、ワカメの 種付け作業が始まる秋までに必要な漁船を共同利用などの形で整備する方針だ。
被災した魚市場については、夏漁までに設備の仮復旧を実施。流通・加工体制の構築に向けて、13年3月までに大船渡、釜石、宮古、久慈の中核市場を本格復旧させ、製氷施設の新たな整備を行う。
また、県内111カ所の大半が津波で被災した漁港は、秋サケ漁が始まるまでに土のうを積むなどして応急復旧した後、14年3月までの段階的な復旧を想定。倒壊した防潮堤の応急復旧や漁場のがれき撤去などは年内に実施することも示した。
今回の計画は、主に国の第1次補正予算に盛り込まれた事業を中心に提示。今後の2次補正などを踏まえて、さらに具体的な事業を盛り込む方針だ。
また、まちづくりの項目では災害に強い防災型都市・地域づくりを重点に設定。今年7月末までに生活環境に支障が生じるがれきの撤去を完了させ、おおむね1年以内に多重防災型のまちづくり計画を策定するとした。
(2011.5.17)
2011年
4月
29日
金
福島県 「県、借り上げ家賃負担 避難所生活困難な世帯-来月から /福島」
【毎日新聞110429】県は28日、避難所や公営住宅ではなく自主的に民間住宅を借りて生活している避難者に対し、5月1日以降に県が住宅を借り上げて家賃を全額負担する特例措置をとると発表した。介護が必要な高齢者や障害者を抱える家庭が避難所を出て生活しているケースがあり、支援を求める声が上がっていた。