一戸建て 希望と不安 仙台市・復興公営住宅供給計画
【河北新報111229】仙台市は、東日本大震災の被災者向けに整備する復興公営住宅の供給計画で、集合住宅タイプに加え一戸建ても建設する方針だ。一戸建てに住み慣れた人が多い地域事情や再建費用への不安から、被災者の間で高まる要望に応えた形になった。ただ建設場所や家賃、間取りなどは不確定で、希望はあっても決めかねている人が少なくない。
「仕事道具も置けそうだし、庭があるのも魅力」。若林区荒浜地区で自宅を失った左官業庄子正さん(68)は、妻千枝子さん(67)とともに一戸建ての公営住宅への入居を望む。ただ「希望した土地に行けるか」と不安も残る。場合によっては、長男家族と家を建てることも考えている。
公営住宅への入居は、経済的負担が少ないのがメリット。市が集合住宅タイプのモデルとして示す鶴ケ谷第一市営住宅の場合、家賃は2人世帯の2DK・3Kで月2万4100円~3万7500円。一戸建ての場合、やや高くなると見込まれるが、それでも住宅ローンを組まないで済む。
若林区の仮設住宅で暮らす斎藤宏さん(60)も一戸建ての賃貸を望む。個人タクシーを営んでおり、家族5人で車4台を所有する。集合住宅タイプで発生する駐車場代の負担が重い。
一戸建てにも心配はある。自力再建の場合に最低50坪(165平方メートル)の土地が確保されるのに対し、公営の一戸建ては50坪が上限。斎藤さんは「5人で住める間取りか、十分な駐車スペースが確保できるか」と言う。
市が11月末にまとめた沿岸の住民アンケートによると、98%近くが震災前は一戸建てに居住。公営住宅に一戸建ての選択肢を示していなかったアンケート時は、一戸建ての新築希望が6割ほどで、公営住宅希望は2割にとどまった。
今後、一戸建て公営住宅の希望者が増えると見込まれる。自力での住宅再建も公営住宅整備も原則的には同じ場所で行われる。市は「一戸建ての公営住宅の希望数には応えられると思う。ただ移転の希望地が集中した場合は、自力再建希望の住宅を優先させることになるだろう」(市営住宅課)と説明する。
<メモ>仙台市の計画では最低でも2000戸分の復興公営住宅を供給する予定。まず、2013年度をめどに集合住宅型で約610戸分を整備。供給場所は集団移転候補地の宮城野区田子西地区など5カ所。次に約560戸分を、15年度に開業する地下鉄東西線沿線など5カ所に予定する。残る約800戸分は市の建設に加え、民間からの買い取りなどでも確保する予定。