生活再建支援法、適用に地域差 公平性発揮を 

生活再建支援法、適用に地域差 公平性発揮を

神戸新聞110522】 東日本大震災の被災地で、自然災害の被災者に最大300万円を支給する被災者生活再建支援法の適用に差が出ている。「全壊家屋が都道府県で100世帯以 上」などとする条件があるためで、現状では東京都や埼玉県の被災者は支援金が受けられない。同じ県内で適用、非適用地域が生じた新潟県は、県全域に支援金 が行き渡るよう独自制度の創設を検討。震災以前から指摘されていた制度上の課題が、未曽有の大災害で浮き彫りになった。

 同法は、阪神・淡路大震災を機に成立。住宅の全壊世帯に最高300万円、大規模半壊世帯に同250万円を支給する。ただ、法適用には全壊世帯数が「都道府県で100以上」「市町村で10以上」などの要件がある。

  今回の震災では、全壊家屋がすでに6万棟を超えた宮城県をはじめ、青森、岩手、福島、茨城、栃木、千葉の7県で全県適用された。また、震災翌日の3月12 日に起きた長野県北部の地震(最大震度6強)でも、被害の大きかった同県栄村、新潟県十日町市、津南町で適用されている。

 しかし、全壊が1棟だった新潟県上越市は非適用のままで、同県は独自に最高300万円を支給できる制度の検討を始めた。また、全壊が10世帯未満の東京 都、埼玉県は、今後の調査で被害が増える可能性はあるものの、現状ではまだ適用されていない。東京都は「被害調査の結果、支援策が必要かどうか検討した い」としている。

 一方、全域で適用された千葉県では、液状化で住宅が傾くなどの被害を受けたものの、制度上対象とならない半壊世帯などに最高100万円を支給する独自制度を今月10日に発表。約1万世帯の支給を見込んでいる。

 全国知事会は震災前から「同一災害での支援の不均衡を是正すべき」と要望。市民団体「兵庫県震災復興研究センター」(神戸市中央区)の出口俊一事務局長は「災害は都道府県や市町村の枠を超えて発生するもの。住む場所で支援に差があるのはおかしい。政治や行政の言う『公平性』を今こそ発揮し、法を全国に適用すべき」と話している。

(岸本達也)