岩手県 「がれき撤去で地域差拡大 本社特別機取材」

がれき撤去で地域差拡大 本社特別機取材

岩手日報110517】東日本大震災で発生したがれきの撤去の進捗(しんちょく)に県内の市町村で大きな差が生じていることが、本社特別機からの取材で16日分かった。野田村や普代村など沿岸北部では撤去がほぼ終わった市町村もある一方、大槌町や陸前高田市など沿岸南部の被災地にはいまだに大量のがれきが残り、復興の妨げとなっている。復興の地域間格差が拡大しないよう、対策が求められている。

【写真㊤=行方不明者の捜索活動が続き、いまだに多くのがれきが残る大槌町中心部(左端の高台の建物が町中央公民館)=16日、報道部・菊池範正撮影】
【写真㊤=行方不明者の捜索活動が続き、いまだに多くのがれきが残る大槌町中心部(左端の高台の建物が町中央公民館)=16日、報道部・菊池範正撮影】

 津波が中心部を襲った野田村は、既にほとんどのがれきを仮置き場へ搬出。上空から見ると、真っさらな「更地」の状態となっていた。

 同村は3月28日までに行方不明者が全て見つかり、以後は重機をフル稼働させて撤去作業を行ったほか、仮置き場を被災地から1キロ圏内に設定したため効率良く作業が進んだ。

 一方、同じく街中心部が津波で壊滅状態となった大槌町は、被災から2カ月以上たった今も大量のがれきが搬出されないまま街を覆い尽くし、火災の跡も生々しく残る。

 同町はまだ行方不明者が950人以上おり、東梅政昭副町長は「今も遺体が見つかるため、業者はだいぶ気を使いながら作業している」と説明する。

【写真㊦=がれきの撤去がほぼ終了した野田村中心部(左端の赤い屋根が野田村役場)=16日】
【写真㊦=がれきの撤去がほぼ終了した野田村中心部(左端の赤い屋根が野田村役場)=16日】

 政府は8月末までに全てのがれきを仮置き場へ移すことを当面の目標としているが、同町は9~10月ごろの終了を予定。今後の状況次第では冬にずれ込む可能性もありそうだ。

 今後、市街地中心部のがれき撤去を本格化させる大船渡市建設課の西山春仁(しゅんじ)課長補佐も「企業や市民からの問い合わせは多いが、今後半年で終わるか1年かかるか正直分からない。がれき処理は復旧の第一段階であり、全力でやるしかない」と話す。

 市町村間の格差は拡大する一方だが、県資源循環推進課の吉田篤総括課長は「遺体を大切に扱いながらの作業は県や国が代行しても変わらない。早期の復旧を願う住民の気持ちも分かるが、ご理解いただくほかない」とする。

 一方、撤去がほぼ終わった市町村も、建築制限区域や今後のまちづくりの姿を示す復興計画が決まらなければ住民が住宅や事業所の再建に着手できない。

 野田村の小田祐士村長は「住民が将来に希望を持てる青写真を早く示さなければならない」と話し、11月ごろをめどに復興計画の策定を急ぐ構えだ。

 

 がれき撤去とは 環境省によると、本県のがれきの推定量は600万トン(自動車などを除く)。県は市町村ごとの進捗状 況を把握していないが、久慈市が「9割方終了した」としているのに対し、大槌町は「2~3割程度」、大船渡市も「24%」と差が大きいのが現状。本来は市 町村の仕事だが、今回の震災では特例で県の代行が認められており、焼却などを国が直轄で行う検討も始まっている。

(2011.5.17)