被災者の自力入居も家賃負担 仮設住宅扱い
【毎日新聞110421東京夕刊】東日本大震災で住宅を失った被災者が避難所などから民間賃貸住宅に移るケースに関し岩手県は、被災者が既に自力で入居した賃貸住宅も借り上げ対象にして家賃や共益費を負担する独自方針を決めた。入居契約時にさかのぼって敷金や礼金を負担することも検討。家賃には上限を設けるものの、契約期間は仮設住宅と同様2年とする。仮設住宅の供給が遅れている中、早期の生活再建には柔軟な支援が必要と判断した。
災害救助法は避難所早期解消のため、県が民間賃貸住宅を借り上げて仮設住宅とすることを認めており、県の借り上げ後に被災者は避難所などから移る仕組み。しかし、それに先立ち被災者が自力で契約・入居した場合は対象外で、岩手県は「入居時期が違うだけで不平等が生じるのは問題」(地域福祉課)と判断した。
同法に基づく借り上げ手続きが始まっている宮城、福島両県の担当者も自力入居の場合に関し、毎日新聞の取材に「何らかの支援ができないか検討中」と話している。
被災地の避難所では今も家を失った人が多数暮らすが、仮設住宅の供給は始まったばかり。自宅兼店舗を津波で流され、避難所で暮らす岩手県宮古市内 の自営業の男性(68)は「市内で床上浸水にとどまったアパートをなんとか押さえた。住める状態になるのを待って入居するつもり。被災者はみな経済的に 困っている。家賃を支援してもらえるならありがたい」と話す。
ただ、自力で入居した住宅の契約時にさかのぼって支援することには、厚生労働省が難色を示している。仮設住宅や借り上げ賃貸住宅の財源は国の補助 (最大90%)に依存しており、岩手県地域福祉課は「遡及(そきゅう)して支援できるよう、今後も国に要望する」と話している。【川口裕之】