復興計画 岩手県、地に足を着けて 宮城県、大胆な発想重視
【河北新報110518】東日本大震災の復興計画で、岩手、宮城両県が対照的な策定手法を取っている。岩手は地元団体代表による組織で、実務的な検討を積み重ねる。宮城は著名な 専門家を集め、既成概念にとらわれない議論を展開する。被災地の建築制限でも対応が分かれた両県。果たして9月策定を目指す復興計画の出来栄えは―。
計画を策定する岩手、宮城両県の態勢は表の通り。最大の違いは検討メンバーの顔触れだ。
岩手の津波復興委員会は、藤井克己岩手大学長が委員長を務める。委員19人全員が県内在住者で、県商工会議所連合会長や県農協中央会長、県漁連会長、県銀行協会理事会長らがずらりと並ぶ。
達増拓也知事の「答えは現場にある」との持論が色濃く表れた。県政策地域部は「現場の声を計画に反映させたい。地味だが一つ一つ課題を解決していく『積み上げ型』の手法だ」と強調する。
宮城の震災復興会議は、議長に元東大総長の小宮山宏三菱総合研究所理事長が就いた。委員12人のうち県内在住者はわずか2人。寺島実郎日本総研理事長らが名を連ねる。
「派手」な陣容は村井嘉浩知事の「地球規模で宮城の将来を考える」という意向を踏まえた。県震災復興・企画部は「単なる復旧でなく、県土の再構築を目指す。日本を代表する有識者の大胆な発想が不可欠」と訴える。
会議の開催回数や場所にも違いが表れている。
岩手は4月11日に初会合を開き、これまで3回開催。下部組織の総合企画、津波防災技術の両専門委員会も2回目が終わった。会議はいずれも盛岡市内で行われている。
宮城の初会合は5月2日、県庁であった。下部組織はなく、会議は月1回のペースで開かれる。委員の大半が首都圏在住のため、次回の6月3日は村井知事らが上京し、都内で行われる。
相違点が際立つ中、互いの利点を採り入れている部分もある。岩手は各分野の第一人者を専門委員に任命し、計画への助言を受ける。宮城も県内産学官トップが集まる富県宮城推進会議で、地元の意向をくみ取る仕組みを整えている。
会議は両県とも全面公開する。岩手はさらにインターネットの動画サイトで、会議の中継を試みている。配布資料を開会前にホームページで公開するなど、中継視聴者への配慮も欠かさない。
両県の担当者はライバル心をのぞかせる。
岩手県は「宮城では各委員からさまざまな提言が出ているようだが、どうやって取りまとめるのだろうか。作業は大変そうだ」(政策地域部)と議論の拡散を懸念した。
これに対し宮城県は「地元の意向も重要だが、今回は過去に経験のない震災復興。岩手の会議で新しい発想、斬新なアイデアが浮かんでくるだろうか」(震災復興・企画部)と指摘する。
(久道真一、長谷美龍蔵)