【しんぶん赤旗110519】埼玉県に見る 自治体間に調整遅れ
東日本大震災や福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島各県で民間賃貸住宅を借り上げる制度が実施されています。被災県から他県に避難する人にも提 供されますが、自治体間の調整が遅れ、なかなか進んでいません。福島県から多くの被災者が身を寄せる埼玉県では―。(海老名広信)
家賃は国負担、2年間使える制度
埼玉県に集団避難してきた福島県のある自治体の職員は「県外避難者の生活支援として民間賃貸住宅借り上げ制度は大きな役割を発揮する」といいま す。この自治体では3月から福島県に同制度の県外適用を求めていますが、5月半ばになっても「県が実施の形を示さない」ことに困惑しています。
厚生労働省が被災3県にだした通知では、民間賃貸住宅について、各県(市町村)が家主と契約し家賃(上限あり)や敷金など諸費用を負担することで、被災者が入居できます。すでに個人で契約し入居している人も、この制度に切り替えることが可能です。
被災県以外への避難者も適用されます。その場合、避難先の県が契約者として家賃を負担し、かかった費用を被災県に請求します。最終的に費用は国庫負担となります。
岩手県で約150件、宮城県で1562件、福島県で5370件の入居・申請がありますが、いずれも県内のみ。県外からの報告はゼロで、制度利用の進捗(しんちょく)状況は見えません。(5月16日現在)
制度を知らず
埼玉県八潮市は独自施策として4月15日から避難者に対して、民間アパートを借り上げて提供しています。家賃6万2千円まで、契約期間3カ月の条件で物件を紹介。現在、13世帯が入居し、すべて福島県民です。
同市は、借り上げ住宅30戸分の予算を約750万円計上しています。八潮市は、国の借り上げ制度について本紙が問い合わせるまで知りませんでした。
早急に対応を
福島県は8日、宮城県は11日、都道府県に民間賃貸住宅の借り上げを依頼しています。埼玉県には4月中旬にも要請していました。
ところが、事態は進んでいません。その理由を、日本共産党の塩川鉄也衆院議員が聞いたところ、県担当者は「家賃負担の上限枠など具体的な実施要領 が被災県から示されないと動けない」と回答。被災県の出方を待っている状態で、県内に周知されていません。県の動きを待たず八潮市のように、民間住宅を借り上げて被災者に提供する独自施策を実施している自治体がいくつもあります。
日本共産党の八潮市議団に避難者から住居確保について相談が寄せられています。市議団は「市の施策は評価できますが、2年間利用できる国の制度のほうが被災者には安心でしょう」といいます。
塩川衆院議員は「被災者の生活を真剣に応援する立場で、国も関係自治体も早急に賃貸住宅を借り上げるよう全力をあげるべきです」と語ります。