1. すまいづくり
家族と住まい、地域で暮らす、民家再生・伝統工法、多様な集住形態、福祉と住まい、集まって暮らす
今回の住まいづくり分科会は、これまでの研究集会での住まいづくりに関わる四つの分科会「住む人によりそう住まいづくり」「集まって住む様々なかたち」「民家再生及び伝統技術の継承」「リフォーム・リノベーション」の分科会をまとめたものとして行います。
午前と午後で二つのテーマを設定します。一つ目は「「暮らしのニーズに対応した住まいづくりと住まい方」として、近年の少子化、高齢化や単身居住の増加など家族のあり方の変化の中での住まいや暮らし方のニーズにどのように応えていくのか、またコミュニティや地域の居場所、施設との関係の中での住まいづくりについて、実践報告をもとにした話し合いをします。また、コーポラティブハウスやコレクティブハウス、シェアハウスなど集まって暮らす住まい方についての議論もしたい思います。
二つ目のテーマは「長く住まう・使い続ける住まい」とします。空き家が増加している中でリフォームやリノベーションによって、生活の変化に対応した住まいづくりが増えています。この中には民家保全や伝統工法による改修、耐震改修補強などの取り組みもあります。また、環境やエネルギーを考慮した住まいなど、長く住み続けられるための住まいづくりについて話をします。
<午前>
古民家の建具を使って市街地の住宅新築 加瀬澤文芳氏(千葉)
伝統技術と新たな技術を組合わせた木造住宅・Y邸 中安博司氏 (千葉)
天童市の築120年の座敷蔵を横浜へ移築再生を中心に 佐々木文彦氏(宮城)
高齢者中心の”つながりの家”構想 杉山昇氏(東京)
直して住むー古い建物の改修について 岩城由里子氏(奈良)
<午後>
実現可能なコーポラティブ住宅計画手法の検討 武市望奈代氏(東京)
重介護者及び比較的軽度の方の住宅改修2例 加瀬澤文芳氏(千葉)
面影を大切にする住まいの改修 渡邉有佳子氏(奈良)
2. 生活と福祉
子ども(保育園・学童保育)、高齢者・障害者、地域コミュニティ、施設の複合化、地域で暮らす
これまでこの分科会では、子どもの育つ環境や、高齢期を安心して暮らすための施設や住まいづくり、障害者の生活を支える施設や取り組みなど、主に生活施設づくりを軸に事例を出し合い話し合ってきました。
その中で、いわゆる”脱施設”の実践があちこちで生まれている事がわかってきました。分野の垣根を超えたもっとごちゃまぜな場所や空間づくり、過疎や高齢化のような地域課題とリンクした地域コミュニティやケアの実践、学童保育の空間づくりに子ども自身が関わる仕組みづくりなどです。こうした事例を持ち寄りながら、これからの私たちの「生活(暮らし)と、福祉(well-being)」のあり方について話し合える場にできたらと考えています。
また、その前提となる国や自治体の制度や基準の変化やそのものの課題、あるいは行政を動かした事例などについても情報交換をしながら考察を深めていきたいと考えています。
12月1日 午前9時〜12時 (3時間)
<分野の垣根を超えたごちゃまぜな空間>
1「地域における親子の居場所づくり、心地よさを求めて」 富樫豊氏(富山)
居住環境の歪みから居場所づくりがすすめられている。そうした場所に訪れる親子が何を求め、どんな心地 よさを堪能しているのか事例を紹介する中で居場所とは何かを考える。
2「施設をめぐる制度や補助金の変遷」 アート設計事務所 星厚裕氏(埼玉)
国や地方の補助金が減らされ施設づくりはどんどん民間任せになっている。自宅のような施設や医療的ケアと思ってもいろんな限界がある。長年の仕事や経験を持ち寄り現状を分析し未来につなげたい。
3「かいこから介護へ」 VANS 木村よしひろ氏(大阪)
福島県のいなかで養蚕を営まれていた民家を地域の介護を支える空間にリノベーションする試み 調整地域での用途変更を行政とクリアすることや日本財団みらいの福祉施設建築プロジェクトへのアプローチなど。
【文書報告】4「住宅地に建つ小さな障がい者施設」ともの家活動室増築工事
法人理事 鈴木武氏 小杉建築計画事務所 小杉剛士氏(静岡)
保育園、老人介護施設、障がい者支援施設の事業を運営する”市民立”の法人で、2022年の水害をきっかけに、災害時の仲間の安全確保と一時的な生活の場をつくった事例紹介。補助金もなく、建設費の高騰の中実現。
午後1時半〜4時半
<こどもの環境をかんがえる>
6 学童保育における「遊び家具」の取り組み 一人一人の居場所をつくる 琉球大学 清水肇氏(京都)
学童保育の単調な施設空間の中に、小さな多様な場所をつくる「遊び家具」を提案、製作、設置する活動。
一人一人の過ごし方の違いの発見につながり、支援員と子どもが一緒に生活の場をつくっていく営みの大切さを確認してきた過程についての報告。
7.「地域にある保育園」~どこまでごちゃまぜ~ 象地域設計 佐藤未来氏(東京)
この先、こどもの人数が減っていく予測の中で、保育園はどうあるべきかと考えるために幾つかの事例や相談を題材に。高齢者と障害者と保育園が隣同士に設置された事例、保育園の一角が多用途に転用されていくことを見据えた事例など。
8「暮らしの幅を拡げるセカンドキッチン」 ちびっこ計画 大塚謙太郎氏(大阪)
大人も子どもも使えるセカンドキッチンを設る試みが、食育に役立つだけでなく、地域の子育てを支え、人々の交流が広がることにつながる。保育園では調理室と保育室との混ざり合いが生まれている事例などの報告。
9「不登校の子どもの居場所+α」 もえぎ設計 川本真澄氏(京都)
ボロボロになっていた空き家をリノベーション。子どもの居場所のみならず、地域の人々がかかわりつながりあう場になっている事例報告。
3. まちづくり
地域コミュニティ、持続可能なまちづくり、まちづくり市民運動、観光とまちづくり、居場所づくり、地域の交通、まちづくり市民運動、まちなみ、景観
人口減少に入った日本では、戦後の高度成長期につくられた建物が老朽化し、成長を前提としたシステムや仕組みが破綻してきています。人口減少はマイナスだけではなく、人口増加だけが成長ではありません。これから21世紀を生きていく世代は、縮小社会の中でも人間が活き活きと暮らせるまちをつくっていく発想の転換(マインドセット)が求められています。人と人とのコミュニティの中で、地産地消といった循環型社会の構築や、様々な専門分野の人とのコラボレーション、地域の中で助ける・助けられる関係づくり、といった、人が豊かに暮らしていく取組みの一端がいくつも始まっています。そのあちこちに新建会員の姿があります。
しかし一方で相変わらず、成長を目標に掲げ、周辺住民の住環境の悪化を顧みず、目先の利益を優先する大規模開発がいたるところで推進されています。それは、あたかも住民の要望に寄り添うかのように装いをこらしながら、時には官と民間開発者が一体となって、「持続」とは反対の刹那的な開発まちづくりとなっている例もあります。
これらの社会状況を踏まえ、今回のまちづくり分科会は、午前A:大規模再開発に抗う住民運動、午後B:縮小社会の中での持続可能なまちづくり、の2つの大テーマを設定し、それに関連する発表と、質疑応答や意見交換の時間をしっかり取って、議論を深める場にしたいと考えています。
<午前> 大規模再開発に抗う住民運動
人が豊かに活き活きと暮らすために 成長・利潤から地域・循環・共助・コラボ等への転換
《主旨説明》江國智洋(東京)
神宮外苑再開発 東京支部での活動 柳澤泰博氏(東京)
枚方市駅前再開発対する市民運動 大槻博司氏(大阪)
京都市の「官製まちこわし」を中心とした諸課題について 大森直紀(京都)
大阪での公園PFI事業の問題 大原紀子氏(大阪)
【文書報告】”住まい・まちづくりの作法を考える~自らの実践活動の検証を通して~”
藤本昌也氏(東京・山形)
上記報告を踏まえて、運動の共通点を見出し、 活動を発展させる議論に展開したい
《進行》丸山 豊氏(東京)
<午後> 縮小社会の中での持続可能なまちづくり
近年も人口増加を続けるシニアタウン・美奈宜の杜 浜崎裕子氏(福岡)
那須まちづくり広場 ~廃校からの市民活用~ 木村よしひろ氏(大阪)
神戸の超高層を規制するまちづくり 中林 浩氏(京都)
甲賀市と気仙沼市の中心市街地のまちづくり 阿部俊彦氏(京都)
市民による社会を下支えする思考行動体系について 富樫 豊氏(富山)
滑川宿の街並み保全と活用の総括と今後の展望 小森 忠氏(富山)
4. 環境
気候変動、原発と再エネ、地元の木、省エネルギー、公園・緑、伝統工法、気候風土
豪雨や熱波など異常気象をもたらし、大災害を繰り返す日本と世界の状況は気候危機と呼ばれる環境問題となっています。この気候危機を最小限に止める取り組みが私たち、建築とまちづくりに携わる者にも求められています。
今回の環境分科会は、気候危機の問題を解決していくために取り組むこととして、大きく分けて2つの視点で構成することにします。
① エネルギー問題
化石燃料から自然エネルギーへの転換
原発回帰を止め地域を守る
環境負荷の少ない建築とまちづくりー省エネルギー・省資源
② 森林資源を守ること・活用すること
日本の森林資源の活用
地域生産システム(山側と作り手・消費者間の良い循環)
伝統構法
以上の報告を通して、環境と共生し、風土を大切にした環境とまちづくりを進める分科会とします。
プレ環境分科会
8/26月 19:00 ①話題提供:大原紀子氏(大阪)「花の咲く時期がおかしい~身近に感じる気候危機」
9/10火 19:00 ②話題提供:由田昭治氏(福井)「生活の中での自然エネルギー」
9/23月 15:30 ③話題提供:藤本昌也氏(東京)「田中棟梁語録から読み取る建築とまちづくりのこれから」
10/17木 19:00④話題提供:柳澤泰博氏(東京)「自然流健康の家」づくり
11/11月 19:00⑤話題提供:酒井行夫氏(神奈川)「多摩産直の家」づくり
エネルギー問題 報告
<午前>
生活の中のなかでの自然エネルギー 由田昭治氏(福井)
福祉施設レジリエンス支援事業から住民主体のまちづくりを 髙田桂子氏(東京)
原発被災の実相 乾康代氏(茨城・代表幹事)
情報交換と検討
<午後>
吉野の林業について 泉谷繁樹氏(奈良)
伝統的トラス建築 飴村雄輔氏
自然流の家づくり 柳澤康博氏(東京)
川崎市での環境市民活動 永井幸氏(神奈川)
【文書報告】環境危機問題への市民行動の在り方、雑感 富樫豊氏(富山)
5. 防災・災害復興 (午後 1時~17時)
災害に強い建築まちづくり、復興まちづくり、能登半島地震からの復興、災害時の専門家の役割、耐震補強
2024年1月1日に能登半島地震が起こりました。震源は石川県能登地方で深さは16キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.6でした。阪神・淡路大震災や熊本地震よりも大きな規模です。
多くの建物に倒壊、液状化などの被害が出ました。輪島市などでは大規模な火災も発生し、火災の発生率は東日本大震災を上回っていたことが分かりました。また、上下水道の復旧が遅れ、日々の暮らしと命を脅かす状況が続きました。災害関連死も深刻な問題です。仮設住宅の建設や公費解体が進まないことも指摘されています。
また8月8日に宮崎県日向灘沖を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生したことを受けて、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」が発表されました。
地震だけでなく、気象変動により猛暑が続き、台風の被害や豪雨による水害などが各地で起こっています。9月21日には台風14号が東進し、震災から復興に向けて歩み出した石川県能登半島が再び甚大な被害に見舞われた。記録的な大雨により、河川の氾濫や土砂崩れが発生、人的被害も出ています。
会員は家屋調査や震災後のまちづくりにも携わり、特に東日本大震災や熊本地震では、長期にわたって被災者の支援を行っています。
2025年1月17日 阪神淡路大震災から30年になります。過去の災害からどうすれば被害は防げたのか、復旧・復興のあり方はどのような状況なのかなどの情報を共有することと、災害に強い建物やまちづくりに関する知識を得る、防災や被災後の法的な制度に通じる学習をする機会にしたいと思います。
講演・報告者
13:10 能登半島地震の被害 能登半島地震復興支援本部視察 写真レポート上映
13:30~13:40 分科会主旨説明
13:40~14:40 「うち続く災害と復興のあり方を捉え直す」 岡田知弘氏(京都橘大学経済学部教授)
14:45~15:15 「震災11か月後の新潟の状況について」 室岡耕次氏(新潟)
15:15~15:45 富山支部の取り組み
1. 能登半島震災後の新建富山の対応(ゆるゐ201号抜粋) 上梅沢康保氏・富樫豊氏(富山)
2. 二重被災地における住民生活の実状報告
能登半島地震と能登豪雨の被災地輪島にて 富樫豊氏
15:45~16:30 質疑・ディスカッション
16:30~16:50 まとめ
【文書報告】能登半島被災建物の調査から 杉山 真氏(石川)
【文書報告】新建の災害運動史をつくっておきましょう 千代崎一夫氏(東京)
【文書報告】建築技術者として応えられる支援 江國智洋氏(東京)
6. 職能・仕事づくり
地域の生産・地元産材、協働による建築まちづくり、工務店経営、職人の育成、大学教育
会員の様々な活動もそのほとんどが「しごと」の結果です。特に設計者、施工者は「しごと」を通して、報酬を得なければ、新建活動を継続することはできません。「しごと」を得るために知識と経験を積み、また様々な創意工夫で依頼者や協働者と関係を作っています。設計事務所では、独自のヒアリング方法や設計要件のまとめ方、協働手法によって、多くの実践例を残している事務所があります。工務店では、若手大工の養成や協力業者との良好な関係を築きながら、住まい手・使い手に喜ばれる建物を作り続けているところもあります。
その一方で、本当は住まい手やまちづくりにとってより良い仕事がしたいと思いながら、満足な仕事環境や報酬が得られず、苦悩している設計者も多くいます。また、ゼネコンやハウスメーカーの歯車の一部なることしか将来の展望が見えない学生たちは、新建の存在すら知りません。建築士制度が大きく変わり、建築士試験の予備校化している大学教育にも大きな問題があります。そういった建築界の状況の中で、新建活動の基盤となる「しごとづくり」の実践例を研究し共有する分科会が必要だと思います。
<午前>
職能・仕事づくりの現状 栗山立己氏(大阪)
住まい手・商店主・不動産業者と連携した設計者のまちづくりの実践 伴 年晶氏(大阪)
「奈良をつなぐ家づくりの会」 泉谷繁樹氏(奈良)
現状についてのディスカッション
<午後>
地域に根差した設計・施工工務店の実践 藤見赳夫氏(奈良)
建築家と協働した継続的な工務店経営の実践 甫立浩一氏(愛知)
新しい大学教育の実践 山口達也氏(大阪)
これからの仕事づくりの展望
7. マンション・団地
維持管理改修、耐震改修、区分所有法改定、団地再編・再生、管理組合運営、第三者管理、コミュニティづくり
テーマ:100年くらす 快適マンションへのサポート
マンションは全国で700万戸を超え、国民の1割が住む居住形態として、定着してきている。特に都市部での割合は高い。東京の千代田区では建設されるマンションによって、全国的には人口が減る中で、16年間で61%増という新たな矛盾を引き起こしている。
超高層マンションも全国で一つもないのは9県のみと記事が出るほどで、県庁所在地を中心に建てられている。超高層マンションでは一般マンションより問題が出やすく、また解決しにくいと考えられている。
区分所有法改定や第三者管理、耐震改修、省エネ改修、また先ごろ公表されたマンション総合調査結果などでは課題も浮かんでくる。
新建の会員ではマンションへのサポートは40年を越した経験がある。活動としては「マンションサポート研究会」も続けている。降りかかる諸問題を解決しながら、集合住宅の歴史の長い欧米やコンクリート造の近代建築などからも学んできている。
第2次マンションブーム時に建てられた40年を超すマンションは100万戸を超えた。政府や業界は相変わらず、建物の長く使おうとせずに建替え時に容積率特例を付与するなど建替え促進に傾いている。しかしそのようなマンションでも建物の耐震性や設備工事の向上など通じて、安心して快適に暮らす技術は進んできている。
マンションなどのサポートができる専門家を増やし、多面的でお互いの質も高められる分科会としたい。
象地域設計とマンション関連業務にみる専門家の役割~ 佐伯和彦氏(東京)
①小規模マンション管理 ②マンション人づくり ③長生きさせたいマンション研究~
千代崎一夫氏(東京)
マンションの維持管理問題 竹山清明氏(東京)
長期修繕計画を組み替えて、耐震改修を優先したTマンションの取組み 大槻博司氏(大阪)
【文書報告】2つの調査報告 野口哲夫氏(東京)
①コンクリート躯体の状態把握のための調査 ②外壁仕上げのピンネット工法