建築とまちづくり2022年3月号(NO.517)

2022年発行

<目次>

<主張>  新型コロナに振り回され

  新型コロナの蔓延で振り回されっぱなしの仕事の現状は困惑しかない。コロナ初年度は台風の被害と相まって担当した建築の現場でも年度内に完了せず、もともと工期が間に合わない現場だったが製品の入荷がコロナの影響で遅れ、その影響で1か月の遅れが出てしまった。増築工事であったので、もともと遅れることは想定していたので特に問題にはならないで済んだ。
今年度に入って新規に、築三十二年の障害者施設の改修工事の内示が年度初めの4月に下り、早速入札、着工の運びとなったが、改修工事の内容は住みながらの改修工事なので遅々として進まない状態。それに輪をかけて便所の改修では、ウォッシュレットが入荷せず普通便座で当面の対応をし、また、給湯器の交換は入荷が大幅に遅れ配管等の工事は完了したが給湯器本体の設置は一か月遅れとなってしまった。内示が早かった分、工事は年度内になんとか終わりそうで、これは一安心している。
 工場の新築工事ではウォッシュレットの入荷は同様の対応であるが、その他は特に遅れは見込まれないと思っていたが、本体工事がほぼ完了した時点で工場に設置する機械本体が海外で制作された輸入品であったため、船便の遅れで二週間の工期の遅れが出る事態となった。その後、さらに納期が二週間遅れると判明、約1か月の工期延長となってしまった。
 そんな状態であったが、現場では新型コロナの発症者はどの現場でも出なかったので、発症による工期への影響は無かったのが幸いである。今年度ももう少しなので、新型コロナも収束するか、ワクチンや経口薬の効果を待つばかりである。

オンライン会議には慣れた
 新型コロナの影響でグローバリズムの弊害が露呈し、建築工事を含むいろいろな産業に悪影響を及ぼした。一方で「オンライン」という僥倖をもたらし、これを活用したオンライン会議に慣れてきた。工場の工事の定例会議は半分~三分の一ぐらいの人数はオンライン会議で参加、特に支障は感じられなく、スムーズであった。今後はこのようなパターンが進むと思われるが、監理者としては現場に行かなくては仕事にならないのでどうしてもコロナと対峙していくこととなる。いつも心配をしながらの日々なので、早く安心して業務遂行ができるように祈るばかりである。
 新建の研究集会でもオンライン会議で進められたが、今後もこの形は進めて行けると思う。私の担当した福祉の分野でも北海道から九州、沖縄の会員が参加され、貴重な経験の報告を多くの方が聞けたこと、それと今回は報告集がCDに変わったことなど結構目新しいことが今までになく多かった集会であった。
是非この形式で、さまざまな部会を研究集会の年だけでなく、一年を通して続けていけないものだろうか。今回参加した福祉の分科会でも少し細分化して、子どもの施設、障害者の施設、老人の施設、三分野それぞれの地域・地方の報告など、今後進めて行けるのではないかと期待している。
 研究集会としてまた以前のようにどこかの会場に集まれるようになった場合は、報告主体と言うより、報告を資料にした意見の交換が集会のメインになると、参加者の資質の向上に多いに役立つのではないかと楽しみである。

星 厚裕 (株)アート設計事務所/全国常任幹事  

<特集>  新建の未来を語る――『新建白書2020』から

  『未来への会員アンケート/新建白書2020』が昨年の新建全国大会時にまとめられ発行されました。新建設立以来、初めての会員アンケートとして50周年の記念事業の一環として2019年の全国大会で実施が決められたものです。
 2020年1月から7人のアンケートワーキンググループが集まり、アンケートの目的や設問内容を議論するところから始まりました。他の団体に似たようなアンケートはないものかサーチしましたが、他団体での属する会員に向けてのアンケート、ましてや白書を見つけることは困難でした。
 会員アンケートは、2020年5月から7月まで実施し、約半数の会員から回答をいただきました。その後単純集計結果を『建築とまちづくり』2020年12月号に掲載し、さらに一年かけ2021年11月に、関係し合う要素をクロス集計した結果とアンケートから得られた内容をもとに「10の提言」にまとめ、『新建白書2020』として発行しました。
 経緯は以上ですが、『白書』からアンケートの目的を引用します。
 第1は、会員の仕事や家庭、社会貢献や地域活動などの実態をつかむことにより、新建という会員の特徴と課題を浮き彫りにすることです。
 第2は、新建活動の評価です。会員と新建とのかかわり、新建の運営、『建まち』誌等の評価を行い、改善の方策を探ります。
 第3は、アンケート結果を踏まえて、今後の活動へのワーキンググループからの提言をおこなうことです。
 そうして、こうした初めてのデータを通して、新建がよりよい生活空間の創造をめざし、多くの建築人や建築・まちづくりを志す若い人々、かかわりのある全ての人々と共に歩んでいく道筋を掴んでいきたいと思います。―『新建白書2020』4ページ
 ワーキンググープではアンケート結果と「10の提言」をまとめながら、会員がどのような感想をもち読み取ってくれるのか、また組織内部で自己満足せず、外部団体の方が新建をどのように見てくれるのか知りたいということを話し合いました。完成した余勢を飼ってワーキンググループで座談会内容や人選等3月号の特集を企画しました。
 今号の構成は次のようです。
 座談会は、新建の活動を展望する「新建と未来」、「仕事と労働環境」「家族・ジェンダー」の3つの座談会を行いました。
 新建と取り組みを通して長い間お付き合いがある3団体には『新建白書2020』を読んでの寄稿をいただきました。好意的に受け取ってもらえ、評価とエールをいただきました。
 最後はワーキンググループメンバーの感想です。同じ目的に向かって取り組んできましたが、各人の思いと感じ方がありました。
 アンケート名称を「未来への会員アンケート」と名付けたように、『白書』を読み活用し、新建の将来や建築運動のこれからの歩みを大いに語り合いましょう。フラットな人間関係という新建らしさで、仕事の場でも地域でも生き生きと活躍する私たちに期待しながら。

                                                                    特別編集委員/川本真澄、甫立浩一
                                                                            三浦史郎、中島明子
                                                                     担当編集委員/高田桂子、永井幸、桜井郁子

<ひろば> 京都支部――「遠くの会員リレートーク」の報告

   12月6日に「遠くの会員リレートーク――こっこれは、まちづくりのコーポラティブやぁ〜」が開催されました。今回は、2021年2月よりタイのチェンマイ大学の客員教授として招かれている石原一彦さん(立命館大学教授)のトークで、もえぎ設計を会場に集まったメンバー7人はタイ料理を囲んでビールを飲みながら、Zoomで参加するメンバーはそれぞれ飲み物を用意して、石原さんと交流しました。
 石原さんは現在、『建まち』誌で「タイの住まいづくり・まちづくり」という連載をされています。また、京都支部ニュースでも、「タイに行きタイ――裏建まちタイ連載」と題して連載をしてくださっています。お話しいただけるネタとして、タイでの研究、ご自身の関心事から、剛柔さまざまな題材をお持ちですが、「京都市が進めている市営住宅の再編計画にからめて」というリクエストで、「タイの住宅政策の枠組みとスラム住環境整備」をお話しいただくことにしました。「タイのスラム環境整備Baan Mankong(バーン・マンコン)事業は徹底したコミュニティ主導で展開されているので、参考になるかも」という事前のご連絡もあり、楽しみにしていました。
 石原さんは、まず、タイの住宅政策の特徴を説明されました。印象的であったのは、政策への市民参加、住民参加が積極的に行われているということでした。この背景には反汚職、民主化、市民参加などを組み込んだ憲法制定(1997年)があるのでは?と指摘されました。特に、スラムの改善事業は、2000年に独立した組織となった「コミュニティ組織開発研究所(Community Organizations Development Institute、CODI)」がサポートするということです。
 その下で行われる事業が、「バーン・マンコン」と呼ばれるということです。当日の映像ではCODIのマニュアルが紹介され、まさしく「こっこれは、まちづくりのコーポラティブやぁ」というトークのタイトルのイメージそのままという印象でした。つまり、あくまでも住民主体で、納得がいくまで議論を積み重ねて住民参加が貫かれ、地域住民の権利を明確に位置付ける全体計画を立てるというコンセプトが大変魅力的という感じでした。
 バーン・マンコン事業では、現下のコロナ禍対策にも取り組まれており、その事例が紹介されました。映像では「Community Kitchen」「Food Exchange」などの取り組みのほか、特に私の関心を促した取り組みの一つに「COMMUNITY FARMING & PLANTATIONS」がありました。バーン・マンコンには、こうしたコミュニティを主体にした農地経営や植樹が位置づけられており、そのことがコロナ禍対策としても今、重要な役割を果たしているということではないかと思われました。
 京都支部では、コロナ禍でも取り組めることは何かと考える中で、京都以外に住んでいる会員もいらっしゃること、滋賀支部の方たちにも参加してもらいやすいのではないかということから、この企画になりました。沖縄、山口、兵庫、沖縄(宮古島)、滋賀支部、そして今回のタイ。Zoomの手軽さがだんだん板に付いてきたように思います。
                                                                                                      京都支部・片方信也

<ひろば> 東京支部―実践報告会を通じて改めて考えたこと

   コロナ禍において、対面形式の開催が難しくなってしまった「東京支部実践報告会」ですが、2021年度はリモートツール「Zoom」を活用して敢行をしてきました。
 11月24日に開催した第四回では、竹山清明氏に発表をいただきました。2棟の歴史的様式を採り入れた木造戸建て住宅によるmini街並みづくりの試み、マンションのリモデル(共用部分の機能とデザインの抜本的改善)の試みなど、ご自身の実践を通じたお話をしていただきました。また、市民的立場からの再開発事業への対案の提案なども積極的にされている竹山氏の熱意溢れる講演内容は、私たち東京支部が、東京問題などで取り組んでいる運動と共通するところがあり、建築技術者として、日常的に地域の課題に目を向け、発信し続けていかなければならないということを再確認できたように思います。さらに、現在、ご自身が執筆に取り組んでいる「市民に読んでもらえる、建築デザイン・街並み景観論」のお話や、マンションの大規模修繕に関する図書を出版後、管理組合からの相談が増えたという、ご自身のネットワーク構築のお話も展開されました。それをお聞きし、マンションの住まい手と技術者との関係性をどのように形作っていくかのヒントを得られたように感じます。
12月22日に開催された第五回では、伊藤寛明氏に「最近の仕事から考える、設計者としての職能について」というテーマのもと、プロジェクトマネジメントという仕事についてや、リフォームを通じての建主、不動産会社との関係性についてのお話、それからご自身の活動についてなど、幅広い視点から職能について論じていただきました。伊藤氏は、「石花師・石花とかん」として、河川敷などで参加者と自然の石を使った、「ロックバランシング」という取り組みをしています。自然素材に触れながらバランス感覚を活かし、自己表現力や集中力を養うこと、そこから繋がるコミュニティについてなど、話していただきました。
私自身も、昨年春から「二拠点生活」のようなことをしており、週末は千葉県九十九里でサーフィンを教えながらコミュニティ形成のワークショップをしたり、山梨県のキャンプ場で、災害時のサバイバル生活体験プログラムを、行政・民間と一緒になって取り組んだりしています。どちらも自然の中で、地域の人とつながり、時間を共有するという点では伊藤氏と同じような活動をしているのですが、それらを通じ、自身も地域と密接につながっているし、つながり続けていく事が大切だと改めて感じました。 
「誰もが気軽に参加でき、自分たちの経験や考えをフラットに交流できる場にしよう」と開催してきた今期の実践報告会ですが、その主旨のもと、たくさんの方々に発表いただき、また東京支部以外の会員のみなさんにも参加いただき、多くの交流ができたのではないかと感じています。コロナ禍がまだまだ続き、面と向かって会うことが難しくなってしまいましたが、東京支部実践報告会全体を通じ、人とかかわる大切さ、経験や知識の共有をしながら活動をしていく大切さを改めて実感できました。
2022年度も、より良い実践報告会をはじめ、より良い企画を展開できたらと考えています。ぜひみなさんのお知恵を貸していただきながら、企画部としてもより一層積極的に活動していきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
                                                                                     東京支部・企画広報部 澤田大樹

<ひろば> 福岡支部-第3期九州民家大学(後期)終了

   2018年から開催している九州民家大学は、伝統木構造の会九州地域会と日本民家再生協会九州・沖縄地区運営委員会、新建福岡支部の3団体共催の連続講座です。第1期(全12回)は筑波大学名誉教授の安藤邦廣氏「日本の住まいの成り立ち」、2019年の第2期(全14回)は東京都市大学名誉教授の宿谷昌則氏「建築環境学入門」、2021年の第3期前期(全6回)は工学院大学の後藤治学長「日本建築史と建築修復学を学ぶ」を実施。昨年11月から2月にかけ、第3期後期は再び宿谷昌則氏を招き「建築環境論外論」と題し全8回の講座を実施しました。2021年からは、Zoomを利用して全国から受講が可能となり、福岡支部以外の新建会員の方からの受講もありました。また、コロナ禍での開催ということもあり、福岡県内の受講者もZoomでの受講する方が多数でした。
   2025年度以降すべての新築住宅で設計段階での「省エネ基準適合性」の義務が示されていますが、外皮性能だけでの評価ではない、省エネ達成の「もう一つの選択肢」として「気候風土適応住宅」という枠組を活用するためにも学びたい、理解したいという方、日常生活で感じているメカニズムに興味のある人が受講していたように思います。
   「建築環境学外論」というタイトルは漢字の変換ミスではなく、「建築環境学を建築だけの話で閉じた世界観を作るのでなく、周りの様々な関連する事を含めて考え、建築のこと環境のことを理解する。という思いでこの漢字を使っています。」という説明が最初にありました。その通り、自然や卵のこと、宇宙のことそして人体の発生から身体にまつわる様々なこと、たくさんの事象を示しながら、建築環境は身近な環境のことだということを伝えてくださいました。個人的には十分に理解できたというところまでは到達できませんでしたが、メカニズムの大枠は感じることができたように思います。実践編ということで、エクセルギー消費の計算方法も教えていただきました。受講者の質問、要望に対応して、ちがうパターンの計算シートや資料、話題を提供してくださり、今回も先生と受講者の熱意を感じる連続講座でした。
   連続講座としては終結しましたが、具体的に気候風土適応住宅的な建物で、エクセルギーの収支計算を実際にしてみて、エネルギー、エクセルギーの視点から見てみるような番外編の企画案もあがり、先生との学びの時間は今後も続きそうです。第4期はオークビレッジの上野英二さんを講師にお招きし、7月からスタートする予定です。
                                                                                                   福岡支部・月成かや

『宿谷昌則先生による~建築環境学外論~』の感想         
   設計活動で使う建築性能を現す様々な数値がありますが、その数値が良い=人にとって心地良い空間なのか?という疑問を持っており、今現れている数値以外の『目に見えない何か』を学びたく参加しました。今回の講義の中で学んだ大きなこと、建築の性能を決めていく指針『宇宙の中の地球の仕組みを学び、立ち返る』を頂けた事でした。そしてエクセルギーと言う概念で、今まで見えなかった何かを見える形で教えて頂いた事、とても嬉しく、希望の光を発見した気持ちです。今後も学んでいきたいと思います。宿谷先生の講義は、快適な室内空間の様に、オンライン環境でも落ち着いた心地良さの環境の中学ぶことができました。このような貴重な学びの機会を頂けたこと、先生と関係者の皆様に感謝します。                                                     
                                                                                                     福岡支部・渡邊美恵

 

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