建築とまちづくり2024年5月号(NO.541)

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目次

<目次>

特集
都市農地と地域づくり

清水 まゆみ
このまちで育む農あるくらし
――農業に関わる人たちと地域住民を結びつけ緑豊かなまちづくりをめざそう

馬場 正哲
「自然と文化の森構想」から市民による里芋ブランド化の取り組み

八尋 健次
ダイバーシティによる農からの地域循環

伴  年晶
ひまわり・わかば
農福連携のジャンプを新工法で支援

新井 隆夫
コラム:兼業農家と農業を取り巻く状況

小山田 大和
食エネ自給のまちづくり
――これからの新しい暮らしかたを問う

連載
「居住福祉」の諸相〈16〉
地域居住の基盤
岡本 祥浩

私のまちの隠れた名建築〈27〉
やなか水のこみち
郡上八幡
森田好隆

主張
成長戦略は人々のくらしを豊かにする戦略ではない
大槻 博司

新建のひろば
富山支部――おしゃべり勉強会「能登の震災状況報告&液状化対策工法の紹介」
「能登半島地震復興支援本部 先発隊視察」のオンライン報告会
設計協同フォーラム30周年――「暮らし 健やか 住まい講座」

<主張> 成長戦略は人々のくらしを豊かにする戦略ではない

大槻博司 F.P.空間設計舎/全国常任幹事

  国は二十数年前から「成長戦略」という名の「規制緩和」を進めている。経済成長を阻害しているのはさまざまな「規制」であるとした「戦略」である。規制のなかには役所の都合や保身のためのものもなくはないが、基本的には国民のいのちとくらしをまもる、すなわち「以て公共の福祉の増進」を図るものである。
 「成長」によって国民のくらしが豊かになるのかというと、必ずしもそうではないことを多くの国民は気づいているのではないかと思うが、過去の高度経済成長やバブル経済の残像がもたらす「成長神話」に惑わされている人々もある程度いることは否定できない。しかし、今般の成長戦略は規制緩和による民間事業者の利益最大化が目的であり、国民のくらしは視野に入っていない。それどころか規制緩和によって人々のいのちとくらしが脅かされている。
 今大きな問題になっている機能性表示食品は、国の審査を経ずに届出だけで事業者が機能性~健康やダイエット効果~を表示できるとした規制緩和であるが、当初から懸念されていた危険性が最悪の形で露呈した。
 2021年に成長戦略に盛り込まれた電動キックボードは、昨年7月から免許不要、ヘルメット不要(努力義務)で、車道、路側帯、自転車レーン、歩道(条件付)のどこでも走れる、ある意味で無敵の乗り物となったが、すでに歩道上でのひき逃げを含めて人身事故が増加している。
 一方で「賑わいのある道路空間の構築」などという不可思議なうたい文句で、道路占用許可制度を根底から覆す「歩行者利便増進道路(ほこみち)」という制度が創設された。道路に設置する必然性のないものは不許可とする原則を撤廃し、通常の1/10の占用料で、長期間(20年)にわたって歩道上でカフェなどの飲食店を営業できる制度である。歩道上のカフェのテーブルの間を縫って電動キックボードが無秩序に走り回る光景は想像するだけで危険極まりない。
 建築、都市計画の分野では1990年代半ばから高さ制限や容積率制限に関わる建築基準法の緩和が続いている。たとえば前面道路が狭くて指定容積率を下回る場合でも近くに広い道路があれば加算するという、そもそもの基準の主旨を無視したものや、これまで1・5mと4mの2種類だった日影規制の測定面に6・5mが追加され、低層地域を除く住居系の地域でも2階の窓からの日照は担保不要とするなど、事業者の要望に応える大幅な規制緩和を進めてきた。そして極めつけは都市再生特別措置法、国家戦略特区などによる建築まちづくり無法地帯の形成、公共空間の収奪である。
 また、国は2002年にマンション建替え円滑化法を制定したものの実績が遅々として増えないため、建て替え推進を成長戦略に位置付けて諸条件を次々と緩和し、容積特例を付加してメニューを増やすなど躍起になっているが進捗は思わしくない。そこで建て替えを阻んでいるのは区分所有者の合意形成の困難性によるものだとして、区分所有法の合意形成要件を大幅に緩和しようとしている。これはマンションに暮らす人々のためではなく、主に投資効果の拡大、投資マインドの高揚を目的とした、海外を含む投資家のための改定案といわざるを得ない。
 今、国会では地方自治法の改定が検討されているという。地方自治に介入して国の指示権を拡大する改定案で、もしかしたら自治体が決めるべき都市計画に対しても「成長」を口実に指示権を発動し、住民がまちづくりにまったく関与できなくなるかもしれない。
 私たちは建築まちづくりの専門家の立場から、「規制緩和」は環境を破壊し、人々のいのちとくらしを脅かす政策であること、「成長戦略」でくらしは豊かにならないことを人々に訴え続け、市民とともにたたかう責務があるとともに、経済成長によらない豊かなまちづくり、くらしづくりの提案が求められている。

<特集> 都市農地と地域づくり

 都市農地・都市近郊農地は、新鮮な農産物の供給、防災空間の確保、良好な景観形成、国土・環境の保全など多様な機能を有している。
 さらに、近年は、従来の営農に加えて、農地を活用した地域活性化・まちづくりの取り組みが各地で進められている。福祉、歴史文化、観光、環境・エネルギー、コミュニティなど他分野と連携し、伝統野菜、農業体験・食育、農福連携、農家レストラン、観光農園、農泊などの取り組みや、新規就農、半農半Xなど農業を支える新たな人材の参入など、都市農地・都市近郊農地の新たな活用や可能性、多面性が広がっている。
 本特集では、地域の自然や環境、文化を継承し、地域住民が助け合い、支えあいながら豊かな暮らしを実現する地域づくりの取り組みにとって、都市及び都市近郊農地がコモンとしての役割を担う重要な要素であることを探る。
担当編集委員/三宅毅、伴年晶

<ひろば> 富山支部――おしゃべり勉強会「能登の震災状況報告&液状化対策工法の紹介」

  勉強会は「能登震災関連勉強会と総会・交流会」と題して建築士会交流委員会と新建富山支部の共催により、3月16日(土)午後、富山で開催された。参加者は42人(新建10人、Zoom12人(主に県外の会員))。講演は、新建の富樫から「能登半島災害被災状況」、(株)谷口の関原氏から「液状化とは、液状化対策工事ハイスピード工法S―type等」の二本であった。
 地震被災報告:能登半島を中心に甚大な被害を与えた能登半島地震(2024・1・1)について、発震直後より中能登、奥能登、河北、富山北東域を初動視察し、建造物、道路、地盤変状、被災民様相に整理して状況を以下に説明した。
 (1)被災状況:木造家屋の被害については、地盤変状として液状化によるものや古さゆえの強度不足によるものが多く、また新耐震や2000年基準の家屋の被害もあった。被災者生活面については、特に上下水、食料、居住性に問題が山積。この他、寺院、RC造、道路、埋設管等被害にも言及した。
 (2)社会的特徴:高齢化・過疎や防災・復興の地域間格差が被害の激甚化につながった。また被害把握の遅れに加え幹線道路の被害により、復旧が大幅に遅れた。一方住民側では、度重なる被災(2004、2007、2023)でも持っていた将来展望を高齢化過疎問題の抜本的解決により蘇らせてと叫んでおられた。
 (3)設計分野:特に、木造設計においては度重なる過去の地震による損傷蓄積や地盤変状への対応があらためて問われた。
 (4)質疑応答:新耐震や2000年基準と設計法の進化があっても被害が生じたとするならば、今後の対応は免震や制振の装置の多用になるのではとのことである。
 液状化対策工紹介:新工法の原理の説明にあたり、まずは液状化と被害の関係に着目し、間隙水の挙動を述べられた。すなわち、地震時に土粒子の沈降により発生する間隙水圧が土粒子を浮遊させ、間隙圧力水が地表地盤を液状にさせ、地盤耐力低下をもたらす。その結果、地上構造物の沈下や地中構造物の浮上が生ずる。続いて対策工の説明に入り、地中の間隙水を抜くことにより、間隙水圧を低下させて地表地盤の強度を保持できるとのこと。水抜きには自社では砕石(砂でなく)に着目し、パイルや地盤改良に適用して従来のセメントミルク混合とは違って環境に優しいと説明。この後、新工法が詳細に紹介され、質疑応答も盛り上がった。
 感想:皆さんにとって今回の地震が身近であったので、勉強会はまさにタイムリーであった。勉強会終了後の新建支部総会では、出席者は(私の知る)10年ほど前の総会出席者とほとんど変わらず、黒髪が白髪に変わっていたが、高齢化というタイムスリップもなんのその、気力はますます盛なりであった。 (富山支部・富樫 豊)

<ひろば> 「能登半島地震復興支援本部 先発隊視察」オンライン報告会

 新建災害復興支援会議の中に、能登半島地震の支援に機敏に対応できることを目的として、「能登半島地震復興支援本部」を設置し、本部長は石川県に本籍のある丸谷博男さんがなりました。先発隊として3月6日(水)~7日(木)で、石川支部の杉山真さんに自動車で案内をしてもらい、丸谷さん(東京支部)、新井隆夫さん(群馬支部)、山下千佳さん(東京支部)、千代崎一夫(東京支部)で視察をしてきました。その報告会を3月25日(月)19時~20時30分、オンラインのみで開きました。報告は丸谷さんが、司会は山下さんがおこないました。
 被災地の映像を中心に、液状化・側方流動、倒壊家屋、ビルやホテルの被害、西海岸での隆起、輪島市の朝市通り商店街の火事、被害がなかった商店なども報告されました。石川県立輪島漆芸技術研修所所長の小森邦博さん(人間国宝)ともお会いしたことにも触れ、あわせて大きな視点や違う観点からの見方、資料などが豊富に出されました。
 参加者申込者は95人で、会員が38人、会員でない方は57人でした。実際に参加された方は81人まで把握でき、関心が多いことを示しています。新建災害復興支援会議に会員のみなさんから寄せられた支援金のうち、10万円を石川支部に渡し、復旧復興のための活動費として役立て欲しいと伝えました。支援金は48万9000円(3/18現在)となっています。東日本大震災や熊本地震の時のように現地周辺の支部を中心にブロック会議を開き、全国からも参加して支援のあり方や経験を自分たちの地域でどう活かすかを交流したいと思います。
 新建は「災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会」に組織加盟をしています。阪神淡路大震災時に作られた支援組織を改組して、被災支援と防災減災を系統的に考えようと運動をしています。この組織を結成するときから関わり、今も世話人団体の組織になっています。3月27日に、年度の第25回総会が開かれました。今年度の方針
は次の5つです。
① 被災者生活再建支援制度と災害対策救助法の改善を求める取り組み
②制度政策要求について、防災省設置と国と地方自治体での防災・減災対策の抜本的強化
③被災者支援と被災地の相互の交流の取り組み
④防災・減災活動の強化と学習活動の強化
⑤組織の共闘拡充
災対連の申し合わせの目的
①災害被災者の生活再建と住民本位の復興を目指す。
②被災者生活支援法の改善
③災害・防災問題に関する運動・情報の交流を活発にする。関連する諸団体との連携と協同に努力する。
 県レベルの組織が作られている地方もあります。各支部も全国レベルの運動と地域レベルの運動の両方に関わり、防災運動を活発化させましょう。
(千代崎一夫・東京支部/全国災対連世話人)

<ひろば> 設計協同フォーラム30周年――「暮らし 健やか 住まい講座」

 NPO法人設計協同フォーラムは1994年に設立しました。メンバーは新建会員で構成しています。今年は設立30年になりました。毎週、火と木曜日の午後には、板橋区の事務所で「何でも相談会」をおこない、講座やフェアなども取り組んできました。今年は2月14日から17日に丸谷博男さんが新宿パークタワービル1階ギャラリーで開催した「東京の森・多摩の木を使おう――東京の森展」を共催しました。
 3月30日(土)は「暮らし 健やか 住まい展」を板橋区立グリーンホールの会議室で主催しました。会場には国土交通省の助成事業を活用した「多摩の木の住宅」などのパネルや防災用品、提携事業者である東都生協がパンフレットを展示しました。
 午前中は新建能登半島災害本部の先発隊として3月6日から7日に視察に行ったことを中心に、地震の被害の様子と住まいの安全、防災について、丸谷さんと千代崎一夫さんが話をしました。午前中の講座の最後は多摩・産直すまいづくりの会で一緒に活動や仕事をしている草野工務店代表の草野雅史さんに「多摩・産直の家づくり」の事例を紹介してもらいました。
 昼食は「非常食を食べてみる」ということで、山下千佳さんが奮闘して、5年保存できるアルファ米の混ぜご飯を参加者に振る舞いました。25食分でしたが、できあがってみると量が多く、昼食として十分味わってもらうことができました。「とてもおいしかった。非常食として買っておくだけでなく、実際に食べてみることが大事だとわかりました。」と感想が寄せられました。
 午後は「住まい手の思いを形にする――これからの住まいを設計者と施工者の協働でつくる取り組み――」。
 高本直司さん(一級建築士アーク・ライフ)と武藤義典さん(武藤工務店)のどちらも二代目として、地元の町田市を中心に活躍されているお二人が、トークセッションの形で事例を紹介しながら話をしました。午後の司会は高本明生さんで、お二人の話を補足したり、アドバイスをしたりと、朗らかな親子共演も会場には微笑ましく伝わりました。
 2つめの講座は柳澤泰博さんの「合板など新建材を使わないいえづくり――F☆☆☆☆(エフフォースター)で安心ですか?――」続いて酒井行夫さんが「多摩産直の小さな住まい――小さくとも使いやすく、安心・安全・省エネで快適な家づくり――」を話しました。最後にマンション居住者向けに私が「マンションリフォーム3つのポイント!」を話しました。
 10時から17時まで、多くの方が終日参加してくださいました。一般の方だけでなく、日頃からお付き合いのある工務店さんや製材所の方の参加があり、学びあい交流するという時間が共有できて良かったです。新聞の折り込み、学校生協の組合員さんへの宣伝、東都生協の組合員さんへの働きかけなどを積極的におこないました。なかなか人を集めるのは容易ではありませんが、住まいのことを考えたときに連絡がもらえるように、引き続き相談会を開いて行きたいと思います。
 7月27日(土)には板橋区立グリーンホール2階ホールで「マンションフェア」を開催します。会場が広いので、サッシメーカーや塗料メーカー、施工会社の方々に協力していただき、「人も建物も豊かで長生きのマンションディ」にしたいです。小さい事務所でも集まっているからできること、そこが魅力の設計協同フォーラム30年です。
(東京支部・大力好英)

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