建築とまちづくり2022年12月号(NO.525)

2022年発行

<目次>

特集
建まちセミナー2022in茨城
豊かさ再構築

【第1講座】乾 康代〈報告者:新井 隆夫〉
原発ゼロ社会の議論をはじめよう

【第2講座】藤本 昌也〈報告者:川本 真澄〉
今こそ私たち建築人は専門家の立場からわが国の“集住空間”のあり様を問い直そう

【セミナー概要】山下 千佳
「建築とまちづくりセミナー2022in茨城」から「オンライン連続講座」へ

【見学会感想】【参加者感想】
茨城県営会神原団地/東海村の“まちづくり”視察/岩崎邸「落日荘」を見学して

【オンライン連続講座 9/26】第1回乾康代氏〈報告者:千代崎 一夫〉
「原発ゼロ社会の議論をはじめよう」

【オンライン連続講座 10/3】第2回藤本昌也氏〈報告者:江國 智洋〉
「都市デザインの本格的な議論をはじめませんか」

【オンライン連続講座 10/17】第3回岩崎駿介氏〈報告者:山口 達也〉
「モノか、心か」
オンラインセミナーというスタートライン

連載
原子力災害避難計画を考える〈11〉
「原発最大限活用」と避難計画 最終回
池田 豊

タイの住まいづくり・まちづくり(15)
分譲マンションの空家問題
石原 一彦

私のまちの隠れた名建築〈11〉
倉敷レイヨン富山アパート
富山県富山市
西 一生

主張
「環境と建築研究会」で一緒に考えましょう
永井 幸

新建のひろば
全国自治研集会
福岡支部――50周年記念誌を製作
第33回大会期 第3回全国幹事会報告

<主張>「環境と建築研究会」で一緒に考えましょう

永井幸      永井空間設計/全国常任幹事

 ユヴァル・ノア・ハラリは著書『ホモ・デウス』の冒頭で「私たちは飢餓と疫病と戦争を首尾よく抑え込んできた」と書いています。ところが、2011年にはソマリアで長期の干ばつにより約26万人が死亡し、今年も670万人が食糧難で30万人以上が壊滅的な飢餓に直面するといいます。日本でも7人に1人の子どもが経済的な理由で、バランスの良い十分な栄養が取れていないのが現実です。2019年に発生した新型コロナウイルス感染症は、3年たった今も全世界で猛威を振るっています。2022年2月にロシアはウクライナに対して戦争を始め、多くの犠牲者を出しながら、終わりの糸口さえ見えない状況です。そんな状況に日本政府は「敵基地を先制攻撃できるトマホークを購入したい。軍事費を大幅にアップさせたい」「エネルギー不安から原発再稼働だけでなく、増設も進めたい。石炭火力発電も温存したい」コロナ第8波が始まっているのにもかかわらず「外国人観光客の入国規制を緩和し、経済を最優先」などと、国会や国民の議論を始める前にどんどん政策を決定していきます。なんだか、世の中の歯車が悪いほうに回転し始めているように思えます。一つには、人類が特に産業革命以降に行ってきた環境破壊の蓄積が、環境の限界点に近づいていることと深く関係していると思えてなりません。
 COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)が11月に開催されたばかりですが、あまり盛り上がりません。またしても日本は化石賞を受賞しました。日本の1人当たりのフードマイレージはアメリカの6倍で世界最悪。「産業革命前と比べ地球温暖化を1・5℃未満に抑える」パリ協定から7年が経ちましたが、2050年までに脱炭素社会を実現するには程遠い状況だといえます。アメリカ、日本、ロシア、中国、EU、どこの資本主義も弱肉強食の競争社会で格差は広がっています。先進諸国と発展途上国間の南北格差も地球環境が改善しない理由の一つだと思います。資本主義そのものに本質的な問題があり、これまで信じてきた「暮らし」「幸福」「人生」の価値観を変えなければならない時に来ているのではないでしょうか。
 さまざまな課題に対して、市民が議論し声を上げていく、これが今こそ必要になっています。私たち新建でもやりましょう。『建まち』誌(№516)の主張で全国幹事会議長の片井克美さんが「気候変動のいま、住まいづくりの対話を」で議論の場を提案しました。これを始めましょう。新建の仲間がどんな意見を持ち、どんな課題を重く感じているかを整理したいという気持ちもします。
 すでに5月から隔月で継続している「子ども環境研究会」と、12月スタート予定の「マンション研究会」に続いて「環境と建築研究会」を毎月一回のペースでオンライン開催します。環境は分野が多岐にわたり、いろんな立場で異なる意見もあります。毎回テーマを決めて、テーマに沿ったお話に耳を傾けようという趣旨です。発表者の話を聴いた後に参加者からも意見を聴きます。人の意見を否定しないルールです。テーマはたとえばですが「省エネ法改正をどうみるか」「プリウスが良いか、自転車が良いか」「気候風土適応住宅の可能性」「エネルギー源の選択について」「建築産業界と省エネ・省資源」「日本と世界の森林を守るために」「暮らし文化と住まいのあり方」「地球温暖化防止と建築技術」「環境教育の重要性」「開発と環境破壊」などなど。その都度、実行委員会でテーマと発表者を決めていきます。皆さんもぜひ参加してください。

<特集>  建まちセミナー2022in茨城 豊かさ再構築

建築とまちづくりセミナーが9月11・12日、3年ぶりに行われました。
 茨城で開催することでセミナーのテーマは「豊かさ再構築――原発・新産業都市形成への道が残した今、茨城から日本の未来を展望しよう」。
 古代から豊かな地であった茨城。戦後は原子力発電所や工業地帯としての開発、筑波研究学園都市など研究機関と住宅地として東京と強いつながりを持ち開発されてきました。 今回のセミナーは茨城を舞台に、豊かに生きるために建築とまちづくりはどうあったらいいかを問うものになりました。
 地域での本当の豊かさを再構築するために私たちは何ができるのか。原発や住まいづくり、世界とつながる視点から未来のあり方を探っていきましょう。
                                                                 担当編集委員/高田桂子、永井幸

<ひろば>  全国自治研集会

「いのちとくらし 平和を守ろう 憲法を活かす自治体を」が集会テーマの、今回で16回目になる地方自治研究全国集会が10月1日・2日に開かれました。東京と全国をオンラインで結んでのハイブリッド方式でした。
 全体会は10月1日です。最初に基調報告で、集会の意義と目的、情勢、自治体の現状と方向、参加者への提起などが行なわれました。
 この基調報告をもとにコメンテーターの討論、「新型コロナ感染症問題」「雇用・中小業者」「気候危機問題」「食糧危機」「平和問題」の現場からの発信がありました。
 記念講演は元NHKの記者で森友学園問題を取材して異動を命じられたために退職した、相澤冬樹氏のお話でした。全体会は900名を上まわる参加者でした。
 分科会は2日の午前と午後に開かれました。
1 地域経済の再生――地域産業の活性化と持続可能な循環型まちづくり 27名
2 災害・気候危機と持続可能な地域・自治体  42名
3 誰もがふつうに暮らせる希望が持てる社会をつくるために 37名
4 高齢者と障害者を守る社会保障を求めて 39名
5 新型コロナで考える地域医療と公衆衛生のゆくえ 48名
6 公共施設再編と子どもの権利・学ぶ権利 38名
7 保育はどうなる? 私たちはどうする? 70名
8  わがまちの未来を守る住民自治、住民参加 36名
9 軍事力で平和は実現できるの? 憲法9条から考える「平和の仕組み」 26名
10 「デジタル化、産業化」は自治体に何をもたらすか 55名
 新建は全国の21団体との共同実行委員会に参加して、全体の運営について責任を持つほか、第2分科会を担当しました。ここでは第2分科会の報告をします。
 最初の助言者は「気候危機と持続可能な自治体を考える」として脱炭素社会で建築人としても考えなければならない話も出ました。次の助言者は、新建も世話人団体になっている全国災対連から「国の災害対策の問題点と課題」がありました。国の災害対策基本法を中心にした話なので、少し説明調に聞こえたのは残念でした。準備されたレポートしては被災地からの報告で「福島県の東日本大震災等からの復興の現状と課題」「岡山県の災害復興の現状と課題」「広島県の災害復興の現状と課題」でした。いずれも被災後の視察に訪れた地域なので、現状の問題点と根本的な解決が進んでいないことを指摘されました。
 気候環境の方では「自治体職員からの飯田市環境基本条例によるまちづくり」「食エネ自給のまちづくり〜僕が再生可能エネルギーに取り組んだ4000日」というレポートまで聴きました。
 このように全体でも分科会でも、さまざまな問題を全国レベルで交流できるので、次回も各地からの報告を聞くためにも参加をしていきたいと思います。
                      (東京支部・千代崎一夫)

第4分科会「高齢者と障害者を守る社会保障を求めて」
 私もオンラインで全国集会の第4分科会に参加しました。高齢者と障害者の分野が一緒に分科会を行うのは久しぶりとのことでした。問題提起では次のような点を指摘しました。コロナ禍のなか社会保障制度の弱点が明らかになり、高齢者も障害者も行動制限、医療控や短時間作業で認知機能の低下や、心身を悪化させ死亡する事例も多く出ています。事業所での感染拡大も深刻で廃業事例もあったとのことでした。
 レポートは4本。全日本民主医療機関連合会・山本氏「コロナ禍の困窮事例調査から見えた高齢者の生活状況」、日本諸会社センター・山崎氏「浅田訴訟と天海訴訟、介護保険優先原則問題の現在と課題」、島根県高瀬事業団・田中氏「養護老人施設の役割と現場について」、最後はフランスから社会保障・社会保障研修者・安藤氏「フランスの社会保障における公的責任について」でした。
 印象に残ったのは、どの報告からもコロナ感染拡大の厳しい状況が現れているものの、支えるべき社会制度がコロナ以前から支える機能を果たしていないということです。私は障害者施設の仕事に関わることが多いのですが、障害者の65歳問題(障害者手当から介護サービスに移らないことで障害者手当の支給を止められた)で訴訟が起きていることを知りませんでした。
 さらにフランスからの報告は国内事例と差が大きく愕然としました。フランスでは65歳になればどんな事情の人でも年金額は変わらず、生活保護者も年金支給があるので、生活保護は65歳で卒業とのこと。子どもへのメンタルヘルスも整っており、子どもに発達障害の兆候があれば専門家の指導を受けられ、早い段階に社会適応を可能にするそうです。日本とは大きな違いがあります。どこでこのような差が生まれるのでしょうか。私たちは人権意識を学び社会的に勝ち取り、さらに発展させていかなければならないと感じる機会になりました。
                        (東京支部・高田桂子)

<ひろば> 福岡支部――50周年記念誌を製作

 1971年2月に設立した新建福岡支部は、昨年50周年を迎えました。50周年企画の一つとして記念誌製作を掲げ、10月18日に開催した支部総会で、配布しました。これまでも、機関誌の特別号や小冊子で、すばらしい内容の周年記念誌がつくられてきました。50周年はどんな内容がふさわしいのか、編集委員となった鹿瀬島氏と巻口氏と3名で悩み、幹事の方たちの協力を得て、これまでの支部会員各々の仕事や新建との関わり、支部活動の記録を綴った212頁の記念誌が完成しました。
 記念誌のメインは、会員の紹介コーナーです。支部例会の「仕事を語る会」は、会員の仕事や考え、ライフワークなどを聞かせてもらう人気企画ですが、全員のトークが聞けるのは、一体いつになるかわからないので、こういう内容の紙面が支部会員みんなから集まったら、いい一冊になるだろうと。その期待は、裏切られませんでした。2頁または4頁の原稿にはパソコンで作成したものだけでなく、手描きのものもあり、紙面構成、内容にお人柄などを垣間見ることができ、楽しく読ませてもらいました。「直接聞きづらかったような支部会員のみなさんの経歴や考え方、また、意外な一面なども知ることができた」との感想も届いており、福岡支部が多様な職種、経験の集まりであることをあらためて実感する企画となりました。
 全員分を納めることは叶いませんでしたが、最終的には59名の会員のうち、半数を超える40名の方から原稿が届きました。よく集まったと思います。この数が集まるのは簡単なことではなく、3月末から原稿のお願いを始めたものの、なかなか集まらない。5月の大型連休前、お盆前、入稿の半月前まで、巻口氏から催促メールの送信を重ね、メールの環境を持たない会員の方へお手紙を出し、返信のお手紙を原稿にしてくださったり、原稿を受け取りに行ってくださるなど、幹事の方たちがフォローしてくださったおかげです。ここにも福岡支部らしさがありました。
 「山あり谷あり、新建福岡の50年」として、写真付きのあゆみを40周年記念誌で作成したものに、鹿瀬島氏が時代背景、40年目以降のできごとを追加し8頁にわたり掲載。あわせて近年の福岡支部の活動の様子を補うべく、2011年に再開した支部機関誌を第1号から、最新の第26号まで一挙掲載したことで、その時々の雰囲気・内容を共有できたように思います。
 表紙は中島梢氏のイラストで、福岡支部設立の年に竣工した「西日本シティ銀行本店(昨年解体)」、50周年の年に閉店した「イムズ(現在解体中)」など、福岡の都市形成に大きく寄与した5つの建物の構成となっています。天神ビッグバン等、大規模な再開発工事があちらこちらでおこなわれている今日に、メッセージを感じます。
 つぎは、還暦を迎える2031年です。引き続き福岡支部は、新しい仲間を迎えたり、いろいろな団体とつながりを持ち、楽しみながら、いきいきと活動していくことと思います。この記念誌をきっかけに、新しい企画、会員同士の交流などが生まれたら嬉しい限りです。
                        (福岡支部・月成かや)

<ひろば> 第33回大会期 第3回全国幹事会報告

10/8(土)9時半〜16時(オンライン)出席35名
 はじめに片井議長から「第33回全国大会から1年が経過して」として、この間の建築とまちづくりをめぐる情勢の特徴が報告されました。東京の神宮外苑開発などの公共空間の私企業による開発の問題と市民運動の広がり、建築物省エネ法の適合義務化と気候風土適応住宅の取り組みなど、課題と取り組みなどを紹介し、議論と研究を深めていくことが提起されました。

支部活動報告
 幹事アンケートは19支部から提出され、いくつかの支部から活動状況が報告されました。コロナ禍で集まることができず、活動が停滞している支部がある一方で、オンラインを活用しながら多様な活動を展開している支部の報告もありました。

セミナー等報告
 久しぶりに集まって開催した茨城の建まちセミナー、福岡支部の新建学校、北海道支部の建築セミナーの報告があり、中部ブロックセミナーの予定も報告されました。

各委員会からの報告
 『建まち』編集委員会から今年の特集と連載、2023年の予定、トピックとして機関誌コンクール特別賞受賞が報告されました。また、9月号、10月号が執筆関係者からの買取依頼が多く、『建まち』の広がりや活用推進が報告されました。
 支部ブロック活動推進委員会からは、新建紹介リーフレットの改定版が提示され、近々に運用を始めることとしました。
 政策委員会は昨年からの連続講座「都市の文化」に続いて、「住まいづくり」「都市デザイン」をテーマにした企画を検討しています。
 Web委員会からは、新しくなったホームページの運用状況と各支部ホームページの作成状況およびページ内の企画の検討状況が報告され、各幹事に対して①ページの閲覧、②支部活動や会員個人の活動の発信と③支部紹介記事の作成が要請されました。
 他団体との連携として地方自治研究集会への参加が報告されました。
 午後の最初に「支部ブロック活動推進委員会」「政策委員会」「Web委員会」に分散して、今後の計画について議論しました。

研究部会活動報告
 2020年から21年にかけて全国研究集会をオンラインで開催し、報告集がCDにまとめられました。2022年はまとまった形での研究集会は開催せず、日常的に研究活動を継続し、会員外の参加も得て運動を拡げようということになっています。
 「子ども環境研究会」は5月にスタートし、7月、9月と開催した概要の報告があり、今後も2カ月に1回のペースで開催する予定です。
 「環境と建築研究会」は9月に内容とすすめ方の打合せをおこない、来年に予定している建まち特集の企画とあわせて検討するとしています。
 マンションサポート研究会は2月に開催したあと中断していますが、再開準備中であることが報告されました。

組織財政報告
 2022年度決算について、会議費の支出がほとんどなかったこと、会費の納入が順調であり、さらに『建まち』広告が増加したことにより、『建まち』印刷費の値上げや事務所賃貸契約更新料などを吸収し、収入超過の収支が報告されました。来年度予算の考え方として、支部やブロック主催のセミナー、新建学校などに旺盛に取り組むための予算を確保し、セミナーや地域でのつながりを会員拡大に生かしていこうと提起されました。全国会議については、この間オンライン会議が定着してきたこともあり、コロナ終息後も対面会議のみとせずオンライン会議を併用していくこととします。あわせて『建まち』広告を引き続き1頁確保していけるように協力要請がありました。

常任幹事追加推薦
 幹事会の互選で選出される常任幹事について、常任幹事会から新たに桜井郁子さん(京都支部)が推薦され、承認されました。
※次回の全国幹事会は2023年4月中旬に予定し、可能であれば参集することも検討します。
                       (全国事務局長 大槻博司)

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