相次ぐ自然災害から被災者の命と暮らしを守り、
生活・生業再建への公的支援の抜本的拡充を求める声明
2026年9月13日 新建築家技術者集団 全国幹事会
2026年7月28日、熊本県を中心に最大震度7を観測する大地震が発生し、住宅・建築物、道路、ライフラインなどに大きな被害をもたらしました。その後も全国各地で大雨が相次ぎ、河川の氾濫、浸水・冠水、土砂災害などによって、多くの人々が住まいと暮らし、生業に深刻な被害を受けています。
私たちは、被災されたすべての方々に心からお見舞い申し上げるとともに、救援・復旧活動に尽力されている地域住民、自治体職員、医療・福祉関係者、ボランティアをはじめとする多くの方々に敬意を表します。
新建築家技術者集団は、これまで阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震をはじめ、各地の災害に際して、被災した住宅・建築物や地域の復旧・復興に関わってきました。その経験から私たちは、災害からの復興とは、道路や建物を元に戻すことだけではなく、被災者一人ひとりが住まいを取り戻し、生活と生業を再建し、住み慣れた地域で再び安心して暮らせるようになることであると考えます。
被災者が生活を再建できる支援制度を
国による被災者支援策は講じられているものの、住宅や生活、生業を実際に再建するために必要な水準には十分に達してはいません。とりわけ、資材価格、建設費、人件費が高騰するなか、住宅の再建・補修に要する費用と公的支援との隔たりは大きいのが実情です。高齢者、低所得者、住宅ローンを抱える世帯などにとって、自力での住宅再建が困難となるケースも少なくありません。
住まいは人間が生きるための基盤であり、地域社会を維持するための社会的基盤でもあります。国は、被災者生活再建支援制度を抜本的に拡充し、住宅再建・補修に要する実際の費用を踏まえた支援を行うべきであると考えます。
避難所でも人間としての尊厳を
災害のたびに、体育館などの床での「雑魚寝」、プライバシーの不足、トイレや入浴環境の不足、温かく栄養のある食事が十分に提供されないなど、避難所の劣悪な環境が繰り返し問題となっています。災害によって住まいを失ったとしても、人としての尊厳が失われてよいはずはありません。国は、人道支援に関する国際的な最低基準である「スフィア基準」の考え方を踏まえ、避難所環境の改善を進めるとしていますが、約100年前の関東大震災以来繰り返されてきた光景がまた広がっています。
避難所環境の改善を自治体だけに委ねるのではなく、全国どこで災害が発生しても、人間としての尊厳が守られる避難生活を保障することは国の責任です。
住宅・生業・地域を一体として再建する復興を
住宅だけが再建されても、商店や中小企業、農林漁業、医療、福祉、教育、地域交通などが失われれば、人々は地域で暮らし続けることができません。特に人口減少や高齢化が進む地域では、災害を契機として人口流出が進み、地域そのものが存続できなくなる危険性があります。復興の主体は被災者であり、地域住民です。
国や行政が一方的に復興計画を進めるのではなく、被災者・地域住民の意思を尊重し、建築・都市計画、医療、福祉、地域経済など各分野の専門家が連携して、住宅・生活・生業・地域を一体として再建する仕組みが必要です。
私たちは国に対し、以下の施策を強く求めます
一、被災者生活再建支援制度を抜本的に拡充すること。
住宅の再建・補修に要する実際の費用を踏まえて支援額を大幅に引き上げるとともに、被害区分による支援の谷間をなくし、実際に生活再建に困難を抱える被災者を広く対象とすること。
二、被災者の住まいを保障する総合的な住宅再建制度を確立すること。
現金給付だけでなく、住宅の応急修理、公営住宅・災害公営住宅、民間賃貸住宅の活用、住宅ローン対策などを組み合わせ、被災者が住み慣れた地域で生活を再建できる制度とすること。
三、スフィア基準を踏まえ、避難所の生活環境を抜本的に改善すること。
床での雑魚寝を原則として解消し、発災直後からベッド、パーティション、十分なトイレ、入浴・洗濯環境、冷暖房等を確保するとともに、温かく栄養バランスのとれた食事を継続して提供できる体制を国の責任で整備すること。
四、災害時に特別な支援を必要とする人々を取り残さないこと。
高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦などの状況に応じた支援を充実させ、福祉避難所を含む避難・福祉・医療体制を抜本的に強化すること。
五、被災自治体の財政力によって支援格差を生じさせないこと。
被災自治体への国の財政的・人的支援を拡充し、物資、食料、住環境整備などについて迅速なプッシュ型支援を実施すること。
六、住宅再建と生業再建を一体として支援すること。
被災した中小事業者、商店、農林漁業者等への直接支援を拡充し、地域経済と雇用の維持・再建を支えること。
七、被災者・地域住民を主体とした復興を保障すること。
復興計画の策定に住民参加を保障し、地域の歴史、文化、コミュニティを尊重した復興を基本とすること。また、建築士をはじめとする専門家が継続して被災者と地域を支援できる体制を整備すること。
災害は、いつ、どこで、誰を襲うかわかりません。だからこそ、災害によって生活基盤を失った人が、再び人間らしい生活を取り戻すことのできる仕組みを、社会全体で保障しなければなりません。
被災者支援は、住まい、生活、生業を再建し、人間としての尊厳を取り戻すための権利として保障されるべきものであると考えます。
国に対し、被災者一人ひとりの命と尊厳を守り、住まい、生活、生業、そして地域社会の再建を最後まで支える災害・復興政策へと抜本的に転換することを強く求めます。
