Ⅰ 建築とまちづくりをめぐる情勢
私たちは今、歴史の転換とも言える時代に直面しているのではないだろうか。
国際社会の不安定化、国内の政治・経済状況の疲弊、そして地球規模の気候変動や頻発する大規模災害という複合的な課題が立ちはだかっている。
今年は、戦後80年という節目を迎え、マスコミでは、先の大戦の惨状を語り継ぐ特集が連日続いている。直接の体験者が減少していく中で、その経験を継承していく取り組みが強調されている。特に広島・長崎において地上のあらゆるものを一瞬にして消滅させた核兵器の非人間性は誰もが知るところであるが、民間では今年の3月末に北海道被曝者協会が高齢化により解散し、国においては核兵器禁止条約に批准はおろか署名さえしていない状況にある。
一方で、先の参議院選挙の結果は、自民党などの既成政党が後退する中で、核兵器容認や外国人の排斥、歴史認識の歪曲を繰り返す政党が躍進した。ヨーロッパやアメリカで進行している極右の台頭という兆候が日本にも及んでおり、前回大会議案で警鐘として述べた「新しい戦前のはじまり」という言葉が、今日の状況を見ると一層現実味を帯びている。
国内では戦争する国への準備が進み、日本の防衛関係費は8兆円を超え(2025年)、2027年にはGDP比2%まで増やすことを政府は決めている。南西地域では自衛隊のミサイル配備、日本全国で弾薬庫配備、主要空港・港の軍用化が押し進められており、これは住民を危険に巻き込むだけでなく、土砂災害や水系の破壊、化学物質汚染など、大きな自然破壊を伴うことを指摘しなくてはならない。
また、ガザやウクライナをはじめ、世界中で紛争が続いており、特にガザの現状は看過できない。地域の大部分が破壊され、生活の痕跡すら失われ、住民は飢餓の中での避難生活を強いられている。これらの紛争地のニュース映像が伝えるのは、一発のミサイルで建物が灰燼に帰す惨状である。
昨年、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞した。これは被曝者自身が「被曝者は私達を最後に」と、全世界に向けて核兵器の非人間性を訴え続けた努力が評価されたものである。身近な人を亡くし、自らも原爆の後遺症に苦しみながらも、「核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて、ともに頑張りましょう」と希望を持ち続けた人々の思いを受け止めた日本を含む世界中の人々が、核を脅しに使うロシアのプーチン大統領をはじめ核所有国の首脳等や核容認論者達へ粘り強く働きかけていくことが今こそ必要である。
日本の建築とまちづくりに目を向ければ、大都市を中心とした持続不可能とも思える再開発、必要とされる計画的なメンテナンスを怠って老朽化するインフラ、そして建設産業の担い手不足は、建築とまちづくりの未来に深刻な影響を及ぼしかねない。そして、AIに代表される社会を根本から変える新たな技術について、私たちは未だ「制御と活用の在り方の共通認識」を見出せないでいる。
1 気候変動の加速と激甚化する災害
今年の夏も猛暑日が続き、各地で「観測史上最高気温」が連日更新されている。北海道でも猛暑日が出現し、日本において40度を超える気温はもはや珍しいことではなくなった。世界の平均気温は上昇を続け、その速度は加速しており、気候変動は世界各地で甚大な被害をもたらしている。
2024年9月21日には、能登半島で記録的な豪雨が発生し、1月の地震で復興途上にあった被災地を再び自然災害が襲った。浸水は仮設住宅にも及び、地震の被災者は2度の大規模災害に見舞われる形となり、その後の復興の足取りは依然として鈍い。今年8月には、鹿児島県に続き熊本県でも豪雨による土石流などの被害が発生したが、この時期は静岡をはじめ全国各地で広範囲に線状降水帯が発生し、記録的な豪雨による被害が発生している。
また、アメリカや中国、インド、ケニア、ブラジルなど世界各地でも豪雨による洪水や土石流などが頻発し、多くの犠牲者が出ている。これらは明らかに地球温暖化による影響と考えられている。しかし、今年1月に就任したアメリカ合衆国のトランプ大統領は、温暖化による影響を無視し、世界中で行われている温暖化対策に反対の立場を取っている。また日本では依然として使用するエネルギーの多くを化石燃料に依存しており、温暖化への一層の悪影響が懸念される。
2 頻発する地震と支援の遅れ
日本各地で地震が相次いでおり、被災地への支援と並行して、耐震改修など地震への備えが喫緊の課題となっている。
2024年1月1日には、能登半島を震源とするマグニチュード7.6の大地震が発生した。輪島市や原子力発電所が立地する志賀町では震度7を記録し、死者645人、負傷者1398人、住宅全壊6520棟、半壊158120棟という甚大な被害をもたらした。この地震においては、県や国による初動の遅れ、その後の復旧復興の遅れが問題視されている。さらに、10ヶ月後には被災地域が豪雨に見舞われ、複合的な災害が発生した。
2024年8月には、宮崎県日向灘でマグニチュード7.1の大地震が発生し、陸地では震度6弱、最大51cmの津波も観測された。この震源地が南海トラフ巨大地震の想定震源域内であったため、南海トラフ地震臨時情報が発表された。地震調査研究推進本部は、南海トラフ沿いでの「新たな大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっている」との指摘をしており、南海巨大地震の発生に備えた対策を早急に進めることが望まれる。
その他にも、鹿児島県のトカラ列島では住民が避難を強いられる地震が頻発し、カムチャッカ半島の沖合での大地震では、日本各地(沖縄まで)に津波が到達するなど、地震活動が活発化している。
全国的に大規模な地震が起き、首都圏直下地震や東南海トラフ地震も想定されるなか、原発のリスクも高まっている。
3 原発回帰にかじを取った日本政府
能登半島地震では、志賀町にある原子力発電所の構内で重大な損傷が発生しており、もし稼働中であれば「第二のフクイチ(福島第一原発)」となった可能性も否定できない。また、地震で甚大な被害を受けた珠洲市では、住民の反対運動により原発建設が凍結されていたことからも、あらためて日本に原発の安全性を確保できる場所はないことが明らかになったと考えるべきではないか。
本来であれば原子力に頼らない根本的な代替えエネルギー政策に切り替えていくべきであり、再生可能エネルギーなど総合的な施策の検討が喫緊に必要であろう。しかし日本では2023年に成立したGX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)により、福島第一原子力発電所の事故以来「可能な限り低減する」としていた原発を「有効利用する」と大きく転換しており、脱炭素の名の下に築後60年を超える原発の稼働延長や新設炉の建設までも打ち出している。それ以降、高浜原発や女川原発、島根原が再稼働し、柏崎刈羽原発や東海第二原発が再稼働をうかがっており、原発廃止の動きは見られない。
福島第一原子力発電所の廃炉作業は遅れに遅れており、廃炉までのロードマップは幾度となく変更され、廃炉への道は果てしなく遠い。また、青森県六ケ所村の再処理工場は1993年に着工してからトラブル続きで、竣工予定は27回目の変更が行われ、2026年としているが先は見通せていない。
4 膨張する都市再開発
全国各地で都市の再開発、再々開発が急ピッチで進められている。札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、富山、大阪、福岡、長崎など、全国の主要都市の中心部では大規模な超高層建築の工事が目白押しである。特に東京では超高層建築の建て替えまでもが行われている。かつて公共の空間であったはずの場所が、超高層建築によって埋め尽くされようとしている。
急速な人口減少が確実な日本において、これほどの床面積増が本当に必要なのか、また、これらの開発が引き起こす環境破壊の規模はどれほどなのか、という疑問が投げかけられている。現在の都市再開発は、持続可能なまちづくりとはいえないスクラップ&ビルドであり、未来の世代に負の遺産を押し付けるものとなる可能性が懸念される。
現在の国の都市政策は、都市再生緊急整備地域、立体都市公園制度、公募設置管理制度(Park-PFI)、立地適正化計画、公共施設等総合管理計画等々の様々な規制緩和と公共施設の縮小によって民間事業者の大規模開発を後押しするという経済戦略としての位置付けであり、都市政策の根本的目的であるべき市民のくらしを豊かにするためのまちづくりという視点は皆無と言える。
こうした開発に抗する市民運動も各地で広がっているが、多くの市民が表明する懸念の声や具体的な提案が無視され、強引に事業が進められている事例も少なくない。例えば地元や国内のみならず、イコモスをはじめ世界中から懸念の声が上がっていた東京の神宮外苑では、ついに樹木の伐採が開始され、北九州市では、イコモスが保存を勧告している旧門司港駅遺構を破壊する複合公共施設の新築計画が進められている。
一方で、大阪の枚方市では多くの市民が立ち上がり、市民による市民のためのまちづくり運動を展開している。その思想や手法は、今後のまちづくりを考える上で重要な教訓となると思われる。
5 スクラップ&ビルドを助長しかねないマンション政策
建物と住民の「二つの老い」に対応するとして、区分所有法等が改定された。築40年を超える「高経年マンション」における管理不全を前提とした第三者管理方式の推進や、建替え要件の緩和が特徴的な変更点である。この改定は、『建まち』6月号の大江論文で詳しく解説されているが、「二つの老い」を口実としたスクラップ&ビルドで経済成長戦略の一環としようという意図を感じずにはいられない。マンションの建て替えは区分所有者の負担が大きくなり、新しい建物に居住できない人が増える可能性があり、十分な検討が必要である。
第三者管理方式では、マンション管理士などの専門家以外に管理会社までが管理者となることができ、大規模改修工事や運営において自社に有利な方向へと導くなど、利益相反の可能性が指摘されている。
鉄筋コンクリート(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)の建物は、適切に維持管理すれば100年以上存続させることは可能である。実際に、『建まち』6月号で大槻論文が紹介しているように、築50年を超えても定期的に大規模改修工事を行い、適切に維持管理されているマンションは数多く存在する。
あくまでも区分所有者の主体的な判断に基づく管理や改修を行いながら、長期的に建物を維持していく方向での政策や支援であることが求められる。
また、近年欠陥マンション問題も相次いでいるが、今回の改定では建物の瑕疵補償を請求する際に、転売してしまった新築時の元区分所有者の意向を確認することが求められ、現区分所有者のみで補償を請求できないなども含まれ、混乱を引き起こしている。
6 老朽化するインフラと地域社会の課題
今年1月28日には、埼玉県八潮市で下水道管の陥没事故が発生し、転落したトラックの運転手が犠牲となる痛ましい事故が起きた。発生から約3ヶ月後にようやく遺体が家族のもとに届けられたが、この事故の原因は築42年の鉄筋コンクリート製下水道管が硫化水素により腐食したためとされている。下水道管の耐久性は50年といわれており、徹底した原因の究明が必要と思われる。この事故による救出作業と復旧の影響は、下水の流出抑制など約120人に及んだ。
また、今回事故が発生した下水道管は複数の自治体にまたがる流域下水道であり、一旦事故が発生すれば、影響は広範囲かつ大規模となる。人口減少が確実な中で、新設や大規模な改修については、より負担の少ない小規模で持続可能な方法の検討が課題である。
高齢化社会としての生活環境の維持改善や過疎化等を踏まえた長期的展望の構築も課題であり、社会インフラのあり方等については土木技術者等と、技術区分の垣根を越えた連携が必要である。
全国的に築50年を超える上下水道管が増加しており、同様の事故が発生する危険性が指摘されている。しかし、所管する自治体からは資金不足により維持管理、改修が困難であるとの声が多く聞かれる。この事故の後も、全国各地で上下水道管の漏水による道路陥没事故が相次いでいる。
リニアや北陸新幹線延伸など環境破壊を伴うインフラ整備よりも、既存施設の維持管理、更新を施策の中心に据えるべきである。
7 省エネ義務化と4号特例廃止
2025年4月から、全ての建築行為に対して、省エネが義務化された。地球温暖化による気候変動がすでに多くの大規模な災害を引き起こしている中で、省エネが必要なのは当然である。しかし現行の性能評価方法は、エネルギー消費量を対象とした評価方法であり、遮熱、放射、結露など総合的なエネルギー性能評価をする必要があろう。現状の省エネ化の規制や補助金を見る限り、生産や廃棄には多くの環境負荷が掛かるものも多い。できるだけ自然を利用し、生産から廃棄まで長期的に地球環境負荷を軽減するような省エネのあり方が望まれる。
経済を優先するあまり手を付けることが遅れ、性急な改革となってしまった省エネ義務化と4号特例廃止は、設計者や施工者の業務量の急激な増加を招いており、施工費の増加も問題となっている。また、この時期と重なって建築資材や人件費の高騰が続いており、計画の変更や中止も相次いでいる。
8 「住まいは人権」としての住宅問題
建まち編集委員会と政策委員会は合同で「住まいは人権」をテーマに懇談会を開催してきた。低所得者、高齢者、障害者、性的少数者、外国籍の人、災害被災者、ホームレス状態の人など、人である限りすべての人が人間らしい住まいに住む権利があることを確認している。「住まいは人権」という考えを広めるための活動が望まれる。
輪島市の仮設住宅では、1K(4畳半)に2人が暮らしているという(『建まち』2025年1月号高林論文)。この極小住宅は、国の住生活基本法に照らして最低面積基準を下回ると指摘されている。仮設とはいえ、最短でも2年間を過ごす場所であり、まさに人権が侵害されていると言わざるを得ない。
宮城県では公営住宅の廃止が進められているが、居住者の意向を無視した政策であり、公営住宅の維持を求める運動が続いている。
9 建設産業を取り巻く情勢
建設業就労者は1997年の約685万人から2023年には約483万人へと減少し、高齢化も進んでいる。若年層の参入や外国人労働者の定着には、仕事に見合う賃金や地位の確保が行われる必要がある。働き方改革により、労働時間の短縮は行われているが、生活していける賃金の確保が担保されなければならない。
AIに代表される人工知能は業務の合理化や自動化など建設関連業務でも利用されつつある。私たちの業務は習得すべき技術や考慮すべき事項が多様であり、目標設定やそのバランス、提案や配慮等、単純にAIに置き換えられるものではない。私たちが掲げる新建憲章の目標はいずれもAIには実現不可能な項目であり、AIを道具として活用しつつ、憲章の目標をさらに実践していきたいと考える。
Ⅱ 第34回大会期の活動のまとめ
1 全体的なまとめ
34回期の活動方針では、次の5つのことを掲げた。
①住み手、使い手、住民との対話と協同を深めその実践から社会的に普遍性のある技術や手法を高めていく。
②幅広い分野の専門家や市民を相互に結びつけてネットワークを広げ、地域社会のあり方を考える。
③住まいやまちづくりに関わる法制度が、人々の生活をより豊かにするものになるように地域からの実践と発信を強める。
④新建憲章を具体的にイメージし、共有し、「活動の指針今日の建築まちづくりの課題」を日々の仕事や活動の中で変化、発展させていく。
⑤会員を増やし、会を維持していくことに意識的に取り組む。
この方針に照らして、今期の活動の特徴的な取り組みを振り返る。
一つには、規制緩和や利益優先の都市政策がますます進む中で、人々の暮らしや環境が蔑ろにされることに抗して、各地で市民と協同した運動が展開されているのを見ることができる。また、大切な有形無形の公共空間を守り引き継ぐ運動が専門分野の垣根を越えて、歴史や文化、教育などを複合的に語り合う中で進められている。こうした新建の枠を超えた様々なネットワークの中で、会員は専門性を発揮し、対話と協同を深める役割を果たしている。
二つ目には、居住の権利についての取り組みや発信が多く見られた。
すべての人がふさわしい住居に住む権利を持っているにもかかわらず、公営住宅の縮小政策が進み、各地の災害復興住宅や仮設住宅の対応を見ても、セーフティネットとしての機能さえ脆弱になっている。また、土地、建設費の高騰などで住まいの取得や管理が難しくなっている。こうした住まいをめぐる課題に対して、住民とともに運動に取り組んだり、学習会や提案活動などが見られた。
三つ目は、自由・民主主義・平和を守る取り組みである。
2025年は戦後80年を迎えた。世界的な規模の紛争や右翼的潮流の台頭が強まる中、個々の日々の仕事や活動の根幹に、この自由・民主主義・平和への思いが強く深くあるのではないかと思われる。平和の大切さを口にし、何かできることを見出し、互いに共感しあうことの大切さに取り組んできたのではないか。『建まち』2025年7/8月号「戦争の記憶と平和」にそうした会員内外の活動が記されている。
四つ目は、会員総数は減ってはいるものの、新たな会員や読者層の広がりが見られることである。日々の仕事や住民運動あるいはさまざまな企画を通じた交流の中で、新建を語り積極的に入会を呼びかけた結果である。
全国企画は、2023年10月に彦根で、2024年8月に那須で(台風により現地企画をオンラインに変更)建築とまちづくりセミナー、同年の11月に奈良で研究集会が開催された。
2024年1月の能登半島地震を受けて、石川、富山支部を中心に被災地支援活動や全国からの視察受け入れが取り組まれてきた。東北、熊本も含め復興支援会議の取り組みが継続されている。
支部活動や会員個々の活動は、互いの交流や学習、市民運動との協同などが幅広く展開され、『建築とまちづくり』誌やWEBによって活動への参加や見える化が進んでいる。
『建築とまちづくり』誌は年間11冊の定期発行が行われ、毎号充実した内容になっている。
また、2025年4月に代表幹事懇談会が開かれた。7名全員が一堂に会し意見を交わすのは初めてのことだった。
2 支部、ブロックの活動のまとめ
全国各支部での様々な活動は、2024年4月と2025年4月の全国幹事会の前に「各支部の活動状況報告書」のアンケートにより、すべての支部の活動が報告された。具体的な事例を以下に列挙する。
(1)支部の企画・活動
①会員の日常業務を報告・交流をする機会を定例化している支部活動
福岡・千葉・愛知支部の「仕事を語る会」、東京・千葉・大阪支部の「実践報告会」、京都支部の「遠くの会員リレートーク」、福岡・奈良支部の「建まち誌読書会」、他支部でも「講演会」、「勉強会」、「見学会」が開催され、「支部総会」、「定例会議」は、毎月もしくは、定期的に開催された。
②建築技術や新たな知見を得る連続企画を定着させている活動
北海道支部「どう変わる?4号建築物の取り扱い」、「超音波を使った地盤調査について」、「非住宅の省エネ計算」、東京支部「どうする空き家」、「マンション維持管理講座」、大阪支部「枚方市駅周辺整備学習会」、「中之島まつり」。
③単発の講座や企画も盛りだくさんな支部活動
北海道支部「札幌の再開発について」、千葉支部の記念講演「創宇社建築会の時代」、東京支部「ドイツ流まちを創ることのすすめ」、神奈川支部「秦野みんなのべんちプロジェクト見学会」、富山支部「おしゃべり勉強会」、「那須まちづくり広場視察」、愛知支部「愛知サマーセミナー参加」、京都支部「対話型トークセッション」、「住まいと暮らしのかたち」、「地域の暮らしと伝統文化を対話で守る」大阪支部「竹原義二講演会」、「若手建築家ダブル講演会」、岡山支部「伴年晶の話を聞く会」。
各地での見学会は、北海道支部「店舗併用住宅見学会」、「西野の住宅見学会」、埼玉支部「特別養護老人ホーム騎西見学」、東京支部「アカシヤの家ファンハウス見学会」、愛知支部「築後20年Kさん家の住宅健康診断」。
④今期の新建学校の取り組み
福岡支部の「新建学校」連続企画、講師は小林良雄さん。
⑤課題に沿った会員の活動
「設計協同フォーラム」(関東)、「エコハウス研究会」(全国)「木の空間づくりプロジェクト」(愛知)。
新建の周りにいる建築関係者と活動の幅を広げている会員もいて、専門性を生かし、新建の憲章や理念をその活動を通じて発揮している。その他、住まい連や住宅会議など企画で講師や分科会を担当している。
⑥相談活動の取り組み
支部や会員が受け皿となり、さまざまな相談活動に取り組まれている。
(2)支部ニュース
発行している支部は、宮城・東京・千葉・神奈川・静岡・富山・愛知・京都・大阪・岡山・福岡の13支部で、郵送や配布だけではなく、ホームページやメールで配信している支部もある。
(3)支部ホームページ
全国のホームページを刷新して、各支部の活動報告も掲載されている。今後も積極的に各支部で各々の活動を報告・発信をしていく役割があり、新建を知ってもらうために、自分たちの活動を外に発信する必要がある。
(4)新建リーフレット
新建リーフレットを刷新し、ホームページからダウンロードできるようになった。建まち誌と合わせて、自分の周りの方への声掛けに活用することが望ま
れる。
(5)ブロックの活動
オンラインでの会議が増え、実際に集まることは減ったが、彦根、那須、奈良でのセミナーや研究集会開催へ向けた準備が実質的にブロック単位での活動となっている。
3 全国の活動のまとめ
(1)全国研究集会
前々期のオンライン研究集会が前期の前半まで続いていたこともあり、前大会期は開催を見送った。
今大会期は2024年11月30日・12月1日に、奈良女子大学を会場に「全国研究集会in奈良」を開催し、記念講演会75人、7分科会(午前午後延べ)139人、見学会4コース計49人の参加があった。
分科会の構成を従来の10~12に細分化していたテーマを7分科会に集約することで、建築まちづくりの課題を大きく捉えて、その課題の中で各テーマを位置付けて議論することができた。
文書報告を含めて延べ62人から報告があり、新建会員の活発で多様な研究活動、実践活動が報告された。これらの優れた実践を、もっと外に向けて発信することで新たな広がりに発展することが期待できる。
(2)建築とまちづくりセミナー
2023年10月14・15日に「建築とまちづくりセミナーin彦根」を開催して68人の参加、2024年8月31日の「建築とまちづくりセミナーin那須」は台風上陸により、急遽、オンラインに変更したが69人の参加があった。
2025年は10月25・26日に「建築とまちづくりセミナーin仙台」が予定されており、7月から9月にかけて4回のプレ企画がオンラインで開催され、90名を超す参加者の回もあり、本番に向けた事前学習から充実した企画となっている。
後述するように会員数は緩やかに減少し続けているが、建まちセミナーや研究集会の参加者は70名前後で安定している。開催地の地元関係者を含む会員外の参加や新しい会員の参加が若干ながら増えていることと、コロナ禍での中止やオンライン一択を乗り越えて、集まって議論することの優位性が再認識されたことによるものと考えられる。同時にセミナーや研究集会への参加が新建の活動に直接的に接する重要な機会であるため、引き続き旺盛に取り組んで新しい参加者を増やしていくことが望まれる。
(3)研究会活動
子ども環境研究会は、今大会期に、第10回から第15回までオンラインで開催し、各回10名前後延べ約80名の参加で行われ、会員外も毎回1~2名参加している。奈良で開催された全国研究集会の中で集まって、本づくりについて検討を始め、その後2回にわたって検討を進めている。
環境と建築研究会は、第4回から第9回までオンラインで開催し、2024年4月に神奈川県小田原市でソーラーシェアリング農業に取り組む小田原かなごてファームの見学会、2025年4月には同じく厚木市の(一社)あつぎ市民発電所の見学会を開催し、座学だけでなく実際の取組みを見学するなど多面的に環境問題に取り組んでいる。また、2024年の全国研究集会環境分科会開催にむけて、5回のプレ分科会をオンラインで開催するなど、活発に取り組んだ。
マンションサポート研究会は2024年2月以来開催されていないが、全国研究集会では分科会を開催し、マンションをめぐる諸問題を議論した。
これらの研究会活動はオンラインの活用により飛躍的に活発化したと言え、全国どこからでも参加でき、会員外の参加も気軽にできる環境である。継続させながら会員拡大にもつなげていくことが望まれる。
また、新建学校は福岡支部が連続5回にわたって幹事会顧問の小林良雄氏を講師に「20世紀の建築空間遺産」をテーマに開催された。しかし他支部やブロックでの開催はなく、構成、テーマは自由で全国財政からの補助もあるので積極的に開催し、会員外を誘いやすい企画づくりなどにより、新建を広げる活動として取り組むことが望まれる。
(4)声明・提言
今大会期間中、以下の声明・提言を行った。
「ガザ地区での即時停戦と人道支援を求めます」「大阪・関西万博の中止を求めます」「能登半島地震の復旧・復興を全面的に支援します」「日本学術会議への権力介入を制度化する法人化法案の撤回を求めます」(常任幹事会)
建築まちづくりの技術者、研究者として市民、国民の立場に立った提案、意見表明は、その影響力の大小にかかわらず、新建としての立場を内外に示す意味でも重要な活動である。
(5)新建賞
第15回新建賞は2025年に募集を行う予定であったが、1年延期し、改めて新建賞のあり方を抜本的に検討する。
2025年8月に行った新建賞あり方アンケート結果を参考に、新建賞あり方検討会を設置して新建賞の目的、運営等について検討を開始した。今後、募集方法、審査方法など詳細を詰めていき、新建賞の早期再開に努める。
(6)災害復興支援会議の活動
2024年元旦に起きた能登半島沖地震それに続く同年9月の能登豪雨災害、そして全国各地の線状降水帯発生による豪雨災害など日本列島は相変わらず時期も地域も選ばずの自然災害が多発している。今年は阪神淡路大震災から30年、東日本大震災から14年となり、その間にも大きな地震だけでも中越地震、熊本地震、北海道胆振地震等が発生した。この30年余、新建では各被災地の支援と地域再建に全国のメンバーが活動を重ねてきたが、会員の高齢化による活動量の減少は否めない。
日本全体の人口減少、少子高齢化の中、能登半島沖地震の被災地は地域の存続さえ危ぶまれる状況があり、震災前の当たり前の日常を取り戻すことが著しく困難な状況である。人口減少、過疎化そして大災害によるインフラの破壊とその復旧の遅れ、生業の復活など望むべくもない先の見えない状況が能登の全体で続いている。災害は日本列島どこで起きても不思議ではないと言われながら国や自治体の支援体制は依然として不十分であり、避難所の貧弱さは明治時代と状況は変わらないとの報告もある。
新建として、国の防災と被災後の施策充実を働き掛け、そして足元の活動ではより被災地の人たちに近づき建築運動団体として専門性を活かした支援を目指したが一部にとどまった。各地、各支部の動きを集約し、発信していきたい。なお、引き続き被災地支援カンパを継続して募集している。
(7)各委員会の活動
①『建まち』編集委員会
今大会期も『建まち』は、社会問題、建築とまちづくりの情勢、課題に切り込み、課題解決の事例などを紹介し、技術者の役割を訴えるなど、新建運動と連動した機関誌として取り組んできた。そうしたことで研究者や地域で取り組む人たちにつながり執筆者を増やし、特集単品の購読につながるなど、新建運動が広がる条件づくりに貢献してきた。
今期も定期発行(年間11号)を行うことができた。今期の特徴は、年間テーマを設け特集に取り組んだことである。2024年の「『縮退』社会での建築とまちづくり」、2025年の年間テーマは「次世代に遺す」とし、年数回の特集を組んだ。「『縮退』社会での建築とまちづくり」や2026年初めに予定している住宅問題特集では、政策委員会と連携し、会員参加のオンライン検討会や懇談会を行い内容の充実を図った。
継続的な特集テーマとしては、日本の林業を取り巻く状況を掘り下げる「日本の森を守る|地域生産力の現状と展望」(2023年12月号)「持続可能な日本の林業のあり方を模索する」(2024年12月号)特集を続けて取り上げた。
また、都市部で拡大する公共空間の再開発に抗う取り組みを「奪われる公共空間立ち上がる市民運動」(2024年7/8月号)「道理なき都市開発を問う」(2025年9月号)の2号で特集した。建て替えありきの都市開発から、公共空間を問い直し修復型のまちづくりへの転換を提唱する内容となった。
このほか、災害復興を問う「災害復興のあり方を探る」(2025年1月号)、「みやぎに生きる」(2025年5月号)では、研究者や地域で取り組む人たちに多く執筆してもらい、建まちセミナープレ企画での講演に内容がつながるなど、誌面から広がった取り組みになった。マンション問題、都市農業や介護・福祉問題、団地問題など、現在解決するべき課題に直結するテーマを扱った。
連載記事の「構造設計の楽しみ」「『居住福祉』の諸相」「失われた町受け継がれる舎」「忙中閑」「私のまちの隠れた名建築」「社会派聖地巡礼」などは建築とまちづくりの雑誌である特徴が現れ好評であった。ほとんどの連載を会員執筆で行えており、幅広い層で取り組んでいる新建の特徴が表れている。「私のまちの隠れた名建築」は各地の会員によるリレー方式で3年間続けた。新しい掲載方法として今後も活かしていきたい。このうち「『居住福祉』の諸相」は、まとめて叢書として出版する準備が進められている。
「建築とまちづくりセミナーin彦根」(2024年1月号)、「明日を拓く建築まちづくり活動―第33回新建全国研究集会in奈良」(2025年2月号)の2号は新建内部の特集であったが、コロナ禍からリアルに交流ができ実践を深められたセミナー、研究集会の様子を扱った。
編集委員会はオンラインで各月2回行った。検討に参加するメンバーは固定化の傾向があるが、特集内容によっては若手も含めて企画・編集、執筆を行った。課題は、若手の積極的な参加と、情報が集まる支部が限られていることである。
引き続き支部会議やオンラインを使った『建まち』読書会が継続して行われており、読んでいるなかで気づいたことがフィードバックとしてあり、記事を改めて見直す機会になっている。
ホームページへの掲載は、情報取得を迅速に行いWeb委員会との連携が進みリアルタイムで掲載できるようになった。
②支部ブロック委員会
各支部の活動を活性化させるためには、どのようにするのかを各支部だけではなく、周りの支部や担当の常任幹事などと連携する必要がある。今期も連続講座や研究集会が、数多くオンラインで開催され、全国の企画に気軽に参加できるようになってきたが、今後は、新建会員のすべての人へ、きちんと案内が届くように連絡網を整備し、Web委員会と連携しながら、構築していく必要がある。
現在でも「新しい活動のスタイル」のひとつである「オンラインでの集まり」であるが、慣れ、不慣れの差があり、全国や支部での「初歩的なオンライン学習会」を企画して、気軽に交流ができる場を設ける必要性もある。
③政策委員会
今期は、『建まち』誌の編集委員会と合同で、新建懇談会として年度ごとにテーマを定めて複数回の話し合いの場を設定してきた。前半は「縮退社会に私たちはどのように向き合っていくのか」をテーマにし、2024年7月の第1回は、中山徹氏(大阪支部・奈良女子大学名誉教授)から「「縮退」社会での建築とまちづくり」を、また10月の第2回は中林浩氏(京都支部・神戸松蔭女子大学元教授)から「持続可能なまちのすがたこれからの中心市街地」と題した話題提供のあと、それぞれのテーマについて議論を深めることができた。また、11月に奈良で開催された研究集会のまちづくり分科会においても継続した議論をすることができた。
後半は、住宅問題をテーマとした懇談会を開催した。2025年6月に「今再び“住まいは人権”から考える」と題し、中島明子氏(東京支部・和洋女子大学名誉教授)から、また9月には、「東日本大震災その後の住まいについて」と題し窪田亜矢氏(宮城支部・東北大学教授)から話題提供をいただき、議論することができた。
すぐに答えがでないこのような問題について議論することは、日頃の建築活動からは離れていることであるかもしれないが、新建として大事な活動のひとつである。会員の範囲にとどまらず、多様な専門家や市民も交えた幅広い議論ができるように引き続き、社会的問題や課題についての議論の場をつくっていくことが大切である。
④Web委員会
全国ホームぺージは2022年4月にリニューアルしてから3年が経過し、内容が蓄積され、新建の活動のインフォメーションとして、特に建まちセミナーや研究集会の情報発信や申込みなどで大いに活用されている。また『建築とまちづくり』誌の掲載(ダイジェスト)が迅速化したことで購読依頼につながっている。
会員外との連絡ツールとしてメールマガジン「新建Web・M」を運営する編集局を2024年7月に立ち上げた。Web委員会内の体制が整わず、配信は一年間で4回に留まっているが、企画に参加した会員や会員外の方からの配信希望があることからも改善が求められる。
会員メーリングリストはサーバーを変更したことで、大きなトラブルもなく稼働していたが、スパム強化により、大量の配信エラーが起きている。会員全体の登録は70%弱となっているが、配信エラーにより、届いているのは50%未満になってしまっており、双方向発信の方法を抜本的に再考する必要に迫られている。
⑤新建叢書出版委員会
研究会と『建築とまちづくり』連載から2つのテーマについて出版化に向けて作業を進めている。
一つは子ども環境研究会で、出版内容は2025年5月から2年にわたって隔月で取り組んできた研究会報告、および以前に『建築とまちづくり』に連載した園舎づくりの記事を土台に検討している。2024年11月の全国研究集会in奈良の機会に集まって出版化について話し合い、その後出版社のアドバイスを受けながら作業に取り組んできた。
もう一つは『建築とまちづくり』で2023年~2024年に連載した「『居住福祉』の諸相」(岡本祥浩氏)である。居住福祉という概念を一般の人にも分かりやすく伝えたいと考えていたが、愛知支部で「居住福祉の諸相」を筆者から講演してもらい話し合う勉強会が始まったことから、参加者の意見を聞きながら本の構成等を検討することができており、現在まで3回の勉強会が行われた。ただし、叢書委員会は開かれておらず、2つの出版化を確認したにとどまった。
(8)他団体との交流
自治労連など新建を含む、21の全国の団体組織で構成された実行委員会が主催して開催された第17回地方自治研究集会に、2年間の準備期間から参画した。2024年10月に名古屋市内で行われ、全国から自治体公共労働者、研究者、住民、市民団体など1200人が参加した。新建は第4分科会の「持続可能な社会へのインフラと住民参加」の運営を他団体とともに中心的な役割を担った。
毎年秋に災害対策全国交流集会が開催され、被災地やそれぞれの組織・団体と情報交換をしている。この数年はオンライン開催のため、充分に交流ができていない状況がある。能登半島地震・豪雨災害支援は、羽咋市にセンターを構えて第8次にわたって延べ317人のボランティアが参加している。1999年に設立した全国災対連は重要な組織であるが、団体の担当者変更と課題の多さから位置づけを確認する段階であり、設立時から関わり世話人を出している新建の果たす役割は重要である。
その他、関連団体との交流が広がり、建築運動団体としての役割を果たす活動を実践している。
4 組織、財政活動のまとめ
(1)組織運営
今大会期は、常任幹事会が11回開催され、日々の活動や研究会活動、セミナー、研究集会の準備および全国幹事会への提案事項の検討など、組織運営全般を担っている。全国幹事会については、第34回大会内での開催後、2024年の4月と9月、2025年の4月と9月に計5回開催したが、全国幹事の役割は全国幹事会への出席だけではなく、各委員会活動を含めて全国的な活動における役割を担うことが求められる。
これらの全国的な会議はすべてオンラインで開催され、財政的には大きなメリットはあるが、会議の進め方、議論の実効性などについて検討する必要がある。
2025年2月に全国事務局を移転したが、会員の事務所と共用することにより、会議等に利用できる従前よりも広いスペースが確保でき、維持費の削減も見込まれている。
(2)組織整備と会勢状況
会勢状況について、第34回大会2023年9月30日時点で会員632名、『建まち』読者138名、賛助会員8名であった会勢が、2025年9月30日時点で会員585名、『建まち』読者134名、賛助会員9名となっている。今期は28名の入会、75名の退会があり、結果的には47名の減勢となった。『建まち』購読は11部の増、15部の減となり、4部の減誌となった。今大会期に入会した会員の年齢層は、40才代(8名)が最も多く、次に50才代(6名)、次に30才代、70才代(各4名)、次いで60才代(3名)となり、20才代(1名)が最も少なかった。前大会期と比べると、今大会期は40才代、50才代の中堅の入会が多かった。引き続き20才代、30才代へのアピールが必要である。職種別にみると、今大会期も設計者(12名・内構造設計2名)が全体の約半数を占める。次に施工者(工務店・大工)、まちづくりコンサルタント、研究者、弁護士(各2名)が続く。他は組合職員、プラント会社、図書館司書、家族会員などであった。入会のきっかけとしては、福岡支部をはじめ活発な支部活動での積極的な声掛けや会員の個人的なつながりでの勧誘が大半を占めると思われる。なかには新建ホームページから新建活動の情報に接して入会した例もある。設計者と比べ、町場の工務店、大工の入会が少なく、今後、他団体との協同も視野に入れ、建設組合等への新建アピールも旺盛にしていく必要がある。
(3)財政活動
財政全体としては、会員減少による減収を会議のオンライン化によって補完しており、辛うじて健全な状態を保っている。今期は事務所移転による一時的な支出超過が生じているが、1年で概ね解消する見込みであるとともに、会員事務所との共用による固定経費の削減も見込まれる。
会費納入率は向上しており、長期的な多額の未納はほとんどなくなっているが、一部で支部活動が停滞し組織活動が困難な支部があり、支部から会費徴収できない状態の支部があるため、全国から会員に直接請求を行っている。今後、臨機応変に対応しながら支部活動の活性化を図る。
新建学校やブロックセミナーなどを想定している研究費の支出が少なく、支部やブロックでの企画づくりに活用することが望まれる。
Ⅲ 第35回大会期の活動方針
各地で公共空間の縮小・喪失、都市計画の規制緩和による民間主導の開発行為が横行する中、市民や様々な団体が声を上げている。私たちは、これらの活動に、専門家としての関わりが期待され、明治神宮外苑再開発問題(東京支部)、大阪府枚方市駅周辺再整備(大阪支部)、岐阜市民会館保存活用(岐阜支部)、府立植物園開発問題(京都支部)などで技術的サポートや提案、意見表明を行ってきた。また建築分野に限らず、学校の統廃合問題や地域の居場所づくりの活動、平和を守る活動など、市民の様々な活動と連携してきた。
私たちが掲げる「住み手・使い手・住民との協同を強め、豊かなまち・住まいの実現を目指す専門家としての役割」は、大規模開発への反対運動への参画や、地域での多分野にわたる活動を通じて具体化されている。これらの実践は、新建が住民のニーズを理解し、社会課題解決のために市民と共に活動することが強く求められていることを示している。
この大会を機に「新建活動のこれから」を大いに語り合い、様々な専門家や多くの建築技術者、市民と情報を共有し、私たちの役割を明確にしながら、豊かなまち・住まいの実現に向けて引き続き実践していこう。
1 全体としての方針
①住み手・使い手・住民との協同を強め、豊かなまち・住まいの実現を目指す専門家としての役割を発揮する活動
私たち建築技術者は住み手、使い手、住民との対話や協同から多くのことを学び、それをもとに技術や手法を獲得する。私たちは、これまでもそうした実践を積み重ねて諸課題に対してきちんと主張し、新建らしい建築まちづくり活動を進めてきた。今期も「住まい・まちづくり論」と言えるような、より普遍性のある建築やまちづくりへ高めていく活動を行う。
そのために、住み手、使い手、住民と、まちや建築、人との関係をつくっていく過程を共有することがよりよい建築やまちづくりにつながることを再確認しよう。
こうした実践内容を整理し、新建だけではなく多くの建築技術者や市民と情報を共有し、社会的に普遍性のある技術や手法に高めていく活動をしよう。
人口減少・高齢化が進む社会において、これまでの「成長・開発」を前提とした建築・まちづくりの普遍性は揺らいでいる。「住み手・使い手・住民との協同」は、この新たな社会状況における建築・まちづくりの「普遍性」を再定義する鍵となる。これまでの実践活動で得られた地域との協同によって社会を改善するという普遍的価値を社会に広めることは、新建の重要な役割といえる。これからの建築家技術者の新しい職能を社会とのつながりによって確立する上で不可欠なものといえる。
②新建の枠を超えてネットワークを広げる活動
会員が日々関わる活動は多岐にわたっており、地域には様々なネットワークがすでに築かれ、多くの住民の共感を得ながら信頼を得てきた。引き続き建築やまちづくりの分野にとどまることなく幅広い分野の人々を相互に結び付けて、より多くの専門家や市民とのネットワークを築いていこう。
空き地、空き家の利用や公共施設の統廃合・再編の課題など、個人や単独の組織では困難なことも、多くの人々との協同による取り組みで解決できる事例も出てきている。
地域での実践は、支え合いながら暮らせる住まいをつくる活動や居場所づくり、子ども食堂の活動など小さな協同を積み重ねることから始めよう。その活動が、人々の関係を繋ぎ、暮らしを豊かにする空間や環境を協同の力でつくっていくという役割を担うことができる。
このネットワークを広げる活動によって、新しい地域社会の空間や機能、住まい方、地域共同体のあり方や組織づくりなど、私たちの職能を発揮し再考する機会としよう。
③豊かな建築、まちづくりに必要な仕組みの整備や法制度の見直しを求める活動
神宮外苑の開発やその他の地域での大規模な再開発など住まいやまちを壊し、さらに劣化させるような事態が続いている。以前に実施された政策委員会主催の講座でも「大きな物語」と「小さな物語」という言葉で都市計画の崩壊が語られ、誰のための開発なのかが問われている。それぞれの地域や実践からの発信を強め、人々の生活をより豊かにしていく建築・まちの創造に必要な仕組みづくりや住まい・まちづくり政策の整備につながる力をつける。
大規模開発が「合法的な法律違反」である「特区」制度などを濫用して進められている現状は、既存の法制度が住民の利益や公共の福祉に反していることを示唆している。各地の個別の反対運動に留まらず、制度の根本的な見直しや新たな制度の整備に向けた政策提言をしていく必要がある。この間取り組んできた政策委員会での「縮退社会」や住宅問題についての議論を深めていくことは重要であり、これら様々な議論によって、国や地方自治体へ改善の働きかけを強めていこう。
④新建憲章を基に具体的なビジョンを描き、共有し、活動の指針「今日の建築まちづくりの課題」をより具体化していく活動
新建憲章は私たちの活動の理念を表している。これが私たちのビジョンとなるために、それぞれの項目の具体的なイメージを描き、掘り下げ、共有していく作業が必要である。また、引き続き憲章の具体化としての「今日の建築まちづくりの課題」を掲げて活動の指針としよう。これらは会員の日々の仕事や活動の中にある身近なもの、日々の論議や考察の中で語られているもので構成されており、社会とともに変化発展していくものと捉える。
新建憲章が「活動の理念」である一方で、その具体的なイメージを掘り下げ、共有する活動が求められている。これは、抽象的な理念に留まらず、会員の日々の「仕事や活動における身近な今日的課題」として具体化されることで、新建全体の活動指針として機能するという認識を示すことになる。社会情勢の変化により建築とまちづくりの課題は変化する。期間を決めて見直し、社会変化に敏感にこたえられる新建活動を展開しようという呼びかけは、新建が常に自己を更新し、時代に適応していく組織であることを意味する。理念と実践のこの循環は、会員が自身の活動を新建の大きなビジョンと結びつけることで、新建が専門家集団に留まらず、明確な社会へのビジョンを持つ組織としての位置を確保することができる。
⑤会員を増やすことに意識的に取り組む活動
全体としては会員数が減少していることは確かだが、各支部で貴重な会員拡大の成果が見られることもまた確かである。経験豊かな他分野の人々が新建の活動を信頼して入会しているケースもあり、こちらから壁をつくらないことの大事さを感じることができる。新建の活動をより広げるために、会員を増やすことは必要不可欠であり、会員拡大の独自の取り組みが求められる。一人一人の仕事や活動で繋がる人々だけではなく、住民運動や様々な取り組みの中で出会った人々も対象に、一緒に新建活動に参加してほしいと広く呼びかけよう。
新建の会員数が減少傾向にある中で、特に若年層の入会が少ないという課題は、組織の持続可能性に直接影響する。しかし、セミナー参加者や『建築とまちづくり』誌執筆者、都市開発問題への共感者の入会などは、新建の「運動のひろがり」が新たな会員を獲得する強力な契機となっていることを示唆している。
これは勧誘活動に留まらず、新建が社会課題に積極的に関与し、その専門性と社会に関わる姿勢を明確に打ち出すことが、新しい仲間を惹きつける上で効果的な取り組みであることを意味している。
また少人数で地域の小さな協同や運動に関わる時に、専門性の不足や進め方など心配なことがある場合にも、新建には全国に多様な専門性を持ち、活動を経験している会員がいて、各地の活動を支援することができる全国組織である。その会員を増やすことは、それぞれの地域の活動を支える力につながる。
今後は、デジタルツールも最大限に活用し、日常的な活動成果を広く発信し、会員相互で情報共有を図りながら潜在的な会員層にもアプローチし、活動を広げていこう。
2 組織活動・各委員会活動の方針
コロナ禍以降、全国幹事会、全国常任幹事会はオンラインで実施しており、参加のしやすさと旅費交通費の削減というメリットがあるが、発言のタイミングが計り難いことによって議論の不活発を招き報告中心の会議になりがちな側面がある。一方、実際に集まることによる情報交換や意見交流による幹事自身の成長につながるなどが期待できる。次期は、年1回程度は集まれるように工夫し予算を措置する。
(1)支部・ブロックの活動について
2024年と2025年の4月に各支部から集約した「各支部活動の状況報告書」では、コロナ禍以前と同じように実際に集まることが少しずつ増えてきたとの報告がある一方で、オンラインツールができて、集まらなくても会議ができる状況となり、集まらないことによる弊害が生じ、活発だった支部の活動が縮小している例もある。
会議はオンラインも利用しつつ、見学会やまち歩き企画などで、少しずつでも実際に集まることが望まれる。オンラインでは困難で集まることによって、何気ない会話の中から新しい発見やヒントが見つけられることもある。また、久しぶりに集まる機会に新建外の新しい人を誘うなど、新たな出会いが、新建に新しい風を吹き込むことが考えられる。企画への声掛けは、メールだけではなく、時には電話により近況報告を聞きながら、お互いを励ましあう関係を積み重ねていくことも大切である。
全国企画に参加したことがない人を誘ったり、支部企画に周りの支部を誘ってブロックでの企画にする、あるいは他の支部での楽しそうな企画を模倣してみるなど、気軽に集まれそうな企画からはじめてみる。また他支部の会議などにでも、オブザーバーとして参加してみることで新しい発見があり、活性化につながることも期待できる。
(2)全国組織・各委員会の活動について
①『建まち』編集委員会
引き続き社会問題、建築とまちづくりの情勢、課題に切り込み、課題解決の事例などを紹介し、技術者の役割を訴えるなど、新建運動と連動した、他の建築ジャーナルにはない特徴ある機関誌として取り組んでいく。テーマとしては、新建憲章の実践である会員の仕事の紹介を通して社会へ広く発信したい。
また、資本の拡大のみを追求する都市開発のあり方を問い、社会課題になっている気候変動やジェンダーやLGBTQを考える企画を打ち出していく必要があるだろう。執筆者を広く探しつながり、魅力的な記事と人とのつながりで会員や読者を拡大していきたい。『建まち』を広く知ってもらい読者を増やしていくために、読者の把握を行いたい。
『建築とまちづくり』誌の定期発行を確実に維持しながら、編集実務を担う編集局の層をさらに厚くし、表紙体裁などの見直しを検討する。
②支部ブロック委員会
仕事の減少、定年退職、高齢を理由とした退会が続いているが、このような時期だからこそ、周りの建築関係者と繋がっていたいという声もあり、会員同士の交流の場や支部の中での会員の活躍の場づくりなどを通じて自然に継続できる支部づくりが求められる。「新建の良さ」を丁寧に伝えて、会員の入会が増えている支部もある。『建まち』誌と合わせて、刷新したホームページやリーフレットを活用して、一緒に新建活動をできる新しい仲間を増やしていきたい。
③政策委員会
前期開催してきた会員内外の人々と議論する場を引き続きつくり、住まい・まちづくりの現代的課題について意見交換し、専門家の役割や職能などについて考え、検討し提起していこう。今後の議論の場では、話題提供とともに、新建の会員が実践してきた具体的な取り組みをもとにした話し合いを中心にすることで、より身近な問題として議論を進めることとしたい。
④Web委員会
新建の運動や顔が見える全国ホームぺージにするために、政策委員会、編集委員会とも協力して、内容の充実を図り、各支部とも連携がとれるように、Web委員会の体制をつくる。
メールマガジンやSNSで迅速な情報提供と広報活動、双方向のコミュニケーションづくりをすすめる。また道具としてのAIも活用しながら、資料作成、議事録自動作成、参加者対応など作業の効率化と質の向上をめざし、そのための学習会や技術講習を開催する。
双方向の会員メーリングリストは、現状の用途には対応が困難となってきたため、各支部と連携しながら代替方法を検討する。
⑤新建叢書出版委員会
現在、取り組まれている出版化について着実に進めることとし、子ども環境研究会は2026年夏頃には出版化の目処を立てることを目標とし、「『居住福祉』の諸相」は2026年いっぱいの出版化をめざす。
そのためには出版化に取り組む関係者を若干名増やすことが必要であり、叢書委員会を開いて対策を検討することが求められる。
(3)建築とまちづくりセミナー、全国研究集会、新建学校
全国大会を含めて全国的な会議のオンライン化に伴い、会員同士が会議で参集する機会が減っているが、その分、全国企画で集まって交流する形式が軌道に乗ってきており、毎年の建築とまちづくりセミナーと隔年の全国研究集会を継続していく。建まちセミナーは開催地の魅力や課題をテーマに学習し、全国研究集会は日頃の研究や実践を報告し合うことによる研鑽、新建学校は支部活動の活性化を図りながら新建を広める、という概ねの目的、性格を意識しながら企画づくりをすすめる。
また、単独で開催が困難な支部は、近隣支部あるいはブロックで協力して企画づくりをすすめ、活動が停滞している支部の活動活性化を図ることも念頭に各地で開催する。
(4)組織づくりと財政運営の方針
今期は28名の入会に対して75名の退会で会員数としては600名を割り込んだ。退会者のうち約1割は死亡であるが、概ね2年間で1割強の減少が想定されるため、研究会活動やセミナー、全国研究集会、新建学校などの機会をとらえて、少なくとも年間40名程度の会員を増やし、現状維持以上の組織規模を目指す。
『建築とまちづくり』誌は、国民、市民の立場で建築まちづくりの現状の課題を論じて、あるべき姿、展望のある事例を紹介する新建運動の入口でもある。市民運動とのつながりによる購読や、原稿執筆者の購読あるいは入会など、組織の機関誌としての役割を発揮しており、今後も意識的に購読拡大を進めていく。
財政の維持のためにも、会員読者の現状維持以上は必要であり、賛助会員の拡大、建まち誌の広告など、財政的な強化にも積極的に取り組む。
公共空間を収奪しながら利潤追求のための開発事業の横行と、事業採算性の都合による中止や中断など、国民、市民の豊かなくらしに背を向けた建築まちづくりの状況に対して、住み手・使い手の立場に立ち、環境を守る専門家の役割はますます重要になっており、客観的情勢として新建の組織拡大が求められていると言え、積極的に取り組んでいく。
