<目次>
特集
「縮退」社会での建築とまちづくり
③自治力を示す公共施設のあり方
森 裕之
公共施設再編を考える視点
山本 由美
学校統廃合の現状
中林 浩
貴重なコモンの喪失
――五つの小学校跡がホテルになる
前田 まい
偶然的な事情から始まった学校統廃合と施設複合化
中山 和人
地域に身近な保健所の増設を
――保健所の変遷とコロナ禍の体験からの課題
安達 智則
苦悩する「杉並区区施設再編」問題
――サトコ・デモクラシーで「壁」を突破できる
連載
失われた家、受け継がれた家――阪神淡路大震災30年〈2〉
「散歩」から「都市探検」へ
中尾 嘉孝
私のまちの隠れた名建築〈30〉
伊那市創造館
長野県伊那市
山住 博信
主張
日本の「SDGs達成度ランキング」から想うこと
永井 幸
新建のひろば
「市民みんなで考えよう新しい市役所」学習会開催
福岡支部――新建学校2024in福岡
千葉支部――「仕事を語る会」
京都支部――京都民報連載「住まいと暮らしのかたち」総集編
<主張> 日本の「SDGs達成度ランキング」から想うこと
永井幸 永井空間設計/全国常任幹事
「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は6月に世界のSDGs達成度ランキングを発表しました。各国のSDGsの達成度を評価し、各目標を【達成済み】【課題が残る】【重要な課題がある】【深刻な課題がある】の4つにランク付けしています。
日本の達成度ランキングは世界第18位でした。17あるSDGsの開発目標のうち、【達成済み】は「産業と技術革新の基盤をつくろう」(目標9)ただ一つです。達成済みといっても製造業やサービス業だけを推進し、農業、漁業、林業などの一次産業の産業基盤は衰退するばかりです。したがって、産業基盤が達成済みとの評価には疑問を感じます。【深刻な課題がある】は「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)・「つくる責任、つかう責任」(目標12)・「気候変動に具体的な対策を」(目標13)・「海の豊かさを守ろう」(目標14)・「陸の豊かさを守ろう」(目標15)であり、昨年に続き最低評価でした。建設産業は、これら5つの開発目標、特につくる責任に大きくかかわっているはずです。建設業界はこのことに責任をもって対処していく必要を感じます。また【課題が残る】目標の中に「質の高い教育をみんなに」(目標4)・「平和と公正をすべての人に」(目標16)も挙げられていますが、戦争が絶えない今日、特に憂慮する課題ではないでしょうか。これほどのSDGs達成の遅れは、日本の将来に対する危機感の低さの表れといえます。
日本政府は、経済成長と防衛力強化、原発回帰へと目を向けているように感じますが、環境、防災、ジェンダー、教育、福祉、平和をもっと重点的に取り組んでほしいと思います。日本の令和5年のカロリーベース食料自給率は38%でした。将来、食料の輸入が滞ることがあれば、私たちは生きていけるでしょうか。林業も同じです。令和4年の木材自給率は40・7%でした。気候変動による洪水被害を防ぐためにも、CO2削減のためにも、木材自給率を上げ、林業を活性化し森を整備しなければなりません。また漁業では海水温度の上昇で漁獲量が大きく減少していることも心配です。農業、漁業、林業を今後どうしていくかは、私たちの死活問題であり、国民的議論をしなければならない最重要課題ではないでしょうか。スーパーで食材を買う際に、原材料がどこから来たものかを表示ラベルで確認するように、大きな決断でもある住宅の建築や購入をするときに、構造材や仕上材の産地がどこなのかと関心を持つことが当たり前になるのはいつのことでしょう。こういった根本的な社会課題を義務教育の中でもしっかり位置づけ、子どもたちが身近なこととして感じ、考えるようになってほしいと思います。
ちなみに中米のコスタリカは、GDPが世界191カ国中の76位と経済的には豊かとはいえませんが、平均寿命は80歳を超え、自然環境を守り、軍隊を持たず、徹底的に平和を守っています。再生可能エネルギーでの国内電力供給率は98%超えです。「世界幸福度ランキング2024」では世界第12位(日本は51 位)といいます。単純に日本と比べるわけにはいきませんが、参考になるところも多いと思います。人口も資源も減少していく日本、経済成長一辺倒から脱経済成長にシフトしていく時ではないでしょうか。
<特集> 「縮退」社会での建築とまちづくり
③自治力を示す公共施設のあり方
小学校や中学校、図書館、保健所、集会施設など地域の身近な公共施設が統廃合や閉鎖するなど、地域のなかで変化が目立ってきています。皆さんは通っていた小学校がなくなっている、統合されて名称が変わったという経験はないでしょうか。
学校統廃合は、文部科学省の資料から山本由美・和光大学教授によると2000年代に入り大きく増加し、増減を繰り返して推移しています(本稿)。人口減少と「コスト削減」が理由です。
学校をはじめとした公共施設の再編は公共施設等総合管理計画(2015年)で加速し、立地適正化やPFI法などとともに、私たちの暮らしを大きく変えています。たとえば、以前は統廃合された学校跡地は地域センターや介護施設などになっていましたが、現在は、商業施設やホテルなど地域福祉とはまったく関係のない施設に変わることが多く、商業施設と小学校の複合ビルも出ており、複合化と民営化が進んでいるのが特徴です。
統廃合された小学校では、小学生がスクールバスで登下校し、往復3時間かかるような学区も現れています。通学路での地域住民との見守りや触れ合い、子どもの生活時間などは置き去りにされています。文科省は1学校の定員は35名とし、5学級以下の学校を小規模校と位置づけ、統廃合の基準としています。
それに対して山梨県では県独自で25名学級を拡大させています。子どもたちは発言できる機会が増え、自己肯定感が高くなったという結果が示されています。子どもの育ちの視点からの小学校統廃合の論議が高まるべきでしょう。
過疎化で人口減少が著しい地域では、統廃合も考慮されるべきしょう。しかし、著しい人口減少では説明がつかない現象が最近では現れています。
東京都郊外にある人口約7万人の清瀬市は、人口がほぼ横ばいの自治体です。昨年度突
然、図書館の統廃合が市から発表されました。現在市の説明会が開かれているところです。周辺部の図書館は閉鎖、その代わりに宅急便による配達サービスを行うというものです。しかし、図書館は本を借りるだけの場所ではないはずです。
再編の名の下に学校、図書館、保健所など地域にとって欠かせない公共施設の再編と変容は、子どもたちの育ちの保障、地域コミュニティの低下など多くの課題を抱えています。
自治体の財政効率の前に、住民の福祉に応えているか、コミュニティづくりに寄与しているかが問われます。公共施設のあり方は、地域の自治力を示します。杉並区では新区長3年目で選挙時に争点となった駅前再開発や集会施設・高齢者施設・児童館などの再編について、区と住民が話し合いながら進めるしくみを作り出しました。形だけなく住民参加とその民主的な進め方が求められます。公共施設のあり方の進むべき道となるのか注目です。
本号では、公共施設がなぜ統廃合、再編され、どう再編されているかを探り、地方自治のあり方を展望したいと思います。 特集担当/髙田桂子
<ひろば> 「市民みんなで考えよう新しい市役所」学習会開催
「市民の声を生かして枚方市のまちづくりを」を掲げて活動している「枚方のまちづくりを考える市民ネットワーク」は、去る6月1日 (土)に「市民みんなで考えよう新しい市役所」学習会を開催しました。会場である総合文化芸術センター別館には、市民94名、ZOOMでは12名が参加しました。この学習会は、老朽化・陳腐化した枚方市役所の早期建替えを実現するために、市民ネットワークのメンバーが近畿圏で最近建替えられた新庁舎を視察し、その事例を紹介することにより、市民が求める新庁舎のイメージを共有することを目的に開催されました。
まず、これまでの市民ネットワークの活動や5月21日に170名の参加で開催された集会・デモ行進(大規模開発ノー 市役所は市民会館跡地に)などの報告の後、新庁舎の視察報告がなされました。
新庁舎の事例としては、兵庫県伊丹市(R4年11月築)、京都府八幡市(R5年1月築)、和歌山県田辺市R6年5月築)の3市の他、茨木市の子育て・文化複合施設「おにクル」について各15分程度の報告がありました。この後、受付時に参加者に配付されたアンケート「みんなで意見を出し合おう」(59名提出)では、「窓口や通路、傍聴席が狭くて不便」「プライバシーが保護されてない」「子育てや市民活動の場所がない」「駐車料が高い」「バリアフリーになっていない」など多数の意見が寄せられました。会場からは、「庁舎も図書館もボロボロ」「駅前の高いビルに圧迫感を覚える」「市の庁舎移転案の方が高くつく」「小学校単位での説明会を開催すべき」「正規の職員が減り、まともに相談に応じてくれない」など切実な意見のほか、「駅前にある広い市有地についてどのような施設構成がよいかを庁内で検討してきた。市民会館の移転跡地を生かして市役所を含む行政施設の立地計画を作成すべきなのに、市役所を移転して市有地を民間に処分するのは本末転倒」と元市職員からの発言もありました。
これまでの市民による反対運動などにより、枚方市はこの6月議会でも「市役所移転条例」の再提出を提案できずにいます。しかし、枚方市は依然として「市役所移転条例」と総事業費1000億円超の駅前大規模開発の一環である「区画整理事業の都市計画決定」の年度内制定を断念していません。市民ネットワークは、この新庁舎視察報告と市民アンケートによる意見などをまとめた「市民提案書」を早期に作成するとともに、2万人の署名活動や7月21日には、元市職員であった中路さんを迎えて、学習会を開催する準備を進めています。
このまま枚方市の暴走を許すのか、あるいは大規模開発を中止して市民が望む新庁舎の早期建設を実現するのか、正念場を迎えています。新建は、専門家の立場から、引き続き市民ネットワークの活動を支援協力していきます。
(大阪支部・中西晃)
<ひろば> 福岡支部―新建学校2024in福岡
7月6日(土)アクロス福岡で行われた新建学校2024in福岡、第一回講座に参加しました。
講師は東京からきてくださった新建全国幹事会顧問の小林良雄さん。私は元々東京支部会員だったので、久しぶりに小林さんにお会いできた意味でもたいへん嬉しい機会でした。
講座の目的には「建築を形象意匠・オブジェとしてではなく内外空間に注目して、建築の空間構成と質を確かめ、それを通して各建築の価値を共有し遺産として未来に受け継がれる一助になることを目指す」と掲げられていてます。福岡に限らず古い建築物が解体される……といった話はたびたび耳に入り、「著名な建築家の設計で素晴らしい建物らしい」「なんとなく素敵な佇まいなのに」などからもったいないと思うことが多いのですが、今回の講座で学ぶことで「この建物はこう造られているから居心地が良い」など具体的な魅力を掴む視点を持って、なぜ壊したら惜しいのか、なぜ残したいのか具体的に思えることができたらいいな、と期待を感じています。また、なんとなくで正確にわかっていない「モダニズム建築」が講座の中で理解できるとのことでそちらも楽しみだなと思っています。
第一回目では、序章で20世紀の建築空間が生まれる時代的な背景や建築家たちがどんなことを考えていたかに触れた上で、実例建物の内外部写真やプラン、周辺環境などの説明があり、モダニズム建築空間誕生の流れをお話しいただきました。ついつい内装や室内の雰囲気に目がいってしまうところを、こんな内部空間になっていると見方を解説してもらうことで頭の中を交通整理してもらっている感覚で、別の建物との類似性など教えていただきなるほど~!と納得して聞き入ってしまいました。当時の「当たり前」に対して、どういう考えでこのような建築がつくられた、という流れでも説明があり、その建物がいかに先駆的だったかなどを実感できたことも私にとっては新鮮な体験でした。
第一回目の講座の中で私が一番印象的だったのはシュレーダー邸でした。可動間仕切りを全て引き込めば広々とした一室空間になること、ちょっと無機質に感じる内装の所々に原色が配置されていてアート作品みたい、そんな印象を持っていました。しかし講座を聞くと印象が180度変わりました。外観はまったく違うのに、建築空間に注目して見ると、その造りはF・L・ライトのロビー邸の空間構成と同じだというのです。設計者のリートフェルトは建て主の要望を丁寧に汲み取り、施主のシュレーダー夫人は完成から亡くなるまで61年間住まい続け「楽しさと喜びにあふれていた」という言葉を残していることも今回認識できました。「先進的なデザインの有名建築」から「施主の生活要求を丁寧に吸い上げた住まい」へとイメージが変わり、まさに目から鱗だったのでした。 また、「ウィーン郵便貯金局、ロビー邸、シュレーダー邸、バウハウス、ゼゼッション、プレイリーハウス、デ・ステイル、モダニズム建築」……など、写真的には思い浮かぶ建物や、よく聞くけどなんだったかなぁという言葉が、歴史や時代の流れと当時の状況からどんなもの、どのように生まれたとお話しをしていただいたからか、しっくりとイメージできたことは、それらをきちんと認識するのが苦手な自分としては驚きと感動でした。
最後に、小林さんが「復習できるように作ってある」と言われたレジュメがとても良く、後日読み返すと筋を追えるようになっていて、当日は自分の頭が追いつかなかったり、ふわっと通り過ぎていた内容を調べたり確認できて理解を深める手助けとなりました。次回以降もとても楽しみです! (福岡支部・中嶋梢)
<ひろば> 千葉支部―「仕事を語る会」
7月6日、南房総館山の古民家ゴンジロウにて千葉支部恒例の「仕事を語る会」を開催しました。千葉方面からの参加者が少なく心配していましたが、現地でのバラエティーに富んだ参加者があり盛り上がりました。
最初の報告者は東京大学岡部研究室の学生による館山での地域コミュニティ形成の報告です。単に研究しているだけでなく地域の人々と関わり実践している渦中で、若者のエネルギーを感じました。加瀬澤はこの企画の主旨そのままに「街場の設計事務所の仕事」と題して住宅改修や保育所建設、30年前建てたペンションの現在の姿をレポートしました。中安氏はかつて設計を手掛けた住宅をしっかりと報告、今なんとその子ども世代の住宅の設計を依頼されて取り組んでいるといいます。同じ設計者からみるとそれはすごいことで、少なくとも私はまだ経験がありません。鈴木氏は能登地震に関連して、地域で取り組んでいる避難所運営委員会の活動について報告しました。彼が地域で重要な役割を果たしている様子がわかります。金澤さんは設計事務所をしながら被災住宅の保険評価の仕事もしていて、その実際の業務の様子を報告しました。パワポも資料もなしの話だけでしたが、話術が巧みで岡部先生との掛け合いも面白く、楽しく聞くことができました。次は金澤さんの夫君の話、機械設計者で振動対策設計がテーマです。かなり専門的な話で詳しいことはよく理解できませんでしたが、綿密な設計作業であることだけはわかりました。とにかくその熱心な話に引き込まれました。最後は館山の精神科の女性医師の話。自分の描いた絵の個展を開催したことをきっかけに、地域にどのように結びついていったかというテーマです。パワポも上手に構成していて面白く聞かせてもらいました。本人が楽しそうに話しているのが印象的でした。
以上、人も話もバラエティーに富んでいてなかなかに盛り上がりました。学生に感想を言ってもらったところ、またやりたいといわれました。報告の中で竣工間際の案件やこれから着工する案件の報告もあったので、竣工後の姿を見たいということなのかしらと思いました。東大の学生にとっては街場の設計者の話を聞く機会はほとんどないでしょうから関心があるのかもしれません。その夜は精神科の医師も交え交流会を楽しみました。(千葉支部・加瀬澤文芳)
<ひろば> 京都支部―京都民報連載「住まいと暮らしのかたち」総集編
新建京都支部では、2023年5月から翌年3月にかけて、20回の新聞連載記事に取り組みました。当初新聞社からは、家族の形や概念がさまざまになってきていることを、住まいの設計から切り取ってみてもらえないか、という依頼でした。支部で呼びかけて自分たちが関わった住まいづくり事例を出し合い、そこから見えるテーマを話し合い執筆者を募りました(連載記事は、新建HPの京都支部活動に掲載)。約10カ月無事に完走できたことを祝って総集編となる企画を催しました。サブタイトルを「20の住まいと暮らしのかたちを読み解き、空間と暮らしの関係性を考える」とし、7月13日(土)の午後、京都景観・まちづくりセンターにて行いました。
第一部は連載20回の振り返りで、各執筆者が3分で解説をしました。3分とはいえ20回分で1時間。なかなかのボリュームです。第二部は、大阪公立大学教授の小伊藤亜希子さん、新建福岡支部の浜崎裕子さんに登壇いただき、この連載記事から見える気づきについて解説をいただきました。親子の近居や多世代の暮らしが多くみられることや、地域に開いた住み方や地域の住みやすい環境づくりにつながる住まい事例が多いこと、施設に頼らず自立を求めた住まいづくり・集まって住むかたち、逆に一人一人の暮らしに軸足を置いた施設づくりなど住み方と空間化の多様性についての丁寧な分析を聞かせていただきました。またどの事例でも設計者は住む人に寄り添い、共に悩み考える伴走者として関わっていることや、そこから新たな職能を広げているとの視点を共有しました。第三部は、質疑と意見交換で住み手からも発言をいただき、設計者に期待したことや、住まいと地域との関わりなどの話が出ました。
講師のお二人を含め38人で会場が一杯になりました。京都支部からは21人、他支部から6人、住み手も3人参加しました。他支部の参加があったのは、今回、建交労全国建設・関連部会が毎年7月に開催してきた京都での交流集会と日程が重なったことから、新建京都支部の企画に振り替えて参加してもらうことになったためです。
二次会は京都駅前の酔心で30人の参加でした。移動の道すがら、連載で取り上げられた建物の前を通り、京都以外の方には、距離感・地理感も体験してもらいました。 (京都支部・桜井郁子)
建交労全国建設・関連部会事務局長の笹原です。この度、「住まいと暮らしのかたち」総集編に東京や愛知の仲間、国土交通労働組合や建設政策研究所のメンバーなど10数名で参加させて頂きました。貴重な講演の数々、大変ありがとうございました。京都民報の記事として写真や図面、解説がまとまっていることに加え、20作品のタイトルやテーマ・キーワードが一目で閲覧できるプレゼンテーションは、大変分かりやすかったです。
私たちはこれまで、設計事務所や建築士が担っている社会的役割や業務内容をもっと発信する「みえる化」が必要ということを議論のひとつの到達点としてきましたが、この度の企画は正に「みえる化」そのものでした。住む人・使う人が、住みたい、維持したいと思えるような美しい街並みが目の前にあること、そして設計事務所や建築士の皆さんが、要望に応える存在として認知されていること、建築士の皆さんが、施主さんの生き方に丁寧に寄り添い、設計業務を通じて地域や地球環境も含めたあらゆる豊かさの実現のために、大きな役割を果たされていることがよくわかりました。 歴史や地域が建物でつながっていく良いサイクルは、本来の豊かな国土の在り方と思いました。小伊藤先生が総評の中で、高齢者施設の個室面積が今のままで良いのかと疑問を投げかけられました。施設基準を含め、公共工事予算においても、大型開発から福祉施設や防災減災のための予算にシフトすることなど、既存の制度を国民本位の姿に変えていくことが本当に必要と感じます。豊かな老後、豊かな住宅、豊かな国土の在り方を、労働組合や業界を超えて、建築士の適正な報酬の実現とともに、みんなで力を合わせて一緒に考え、取り組んでいけたらと思いました。
(笹原和樹)