建築とまちづくり2023年6月号(NO.531)

目次

<目次>

特集
建築運動アーカイブズ
――建築運動を継承し未来を展望する

佐藤 美弥
「建築運動」を語るアーカイブズ
――創宇社建築会結成一〇〇年を迎えて

岡山 理香
プロフェッサー・アーキテクトの遺したもの
――蔵田周忠文庫を中心として

広原 盛明
西山文庫、これまでとこれから

鈴木 進
竹村文庫、創宇社建築会、そして創宇社同人竹村新太郎さんのこと

連載
「居住福祉」の諸相〈6〉
「居住の権利」が創った公営住宅
岡本 祥浩

構造の楽しみ〈3〉
一枚のパースを現実の空間にできる
松島 洋介

私のまちの隠れた名建築〈17〉
旧五十嵐邸
北海道釧路市
柏木 茂

主張
会員の「意見交換の場」としてインターネットの活用を
星 厚裕

新建のひろば
愛知支部――春のまちづくりWORKSHOP&ランチ交流会
第33回大会期第4回全国幹事会報告
中部ブロック――「建築とまちづくりセミナーin能登千里浜2023」のご案内
建築とまちづくりセミナー(全国)予告

<主張> 会員の「意見交換の場」としてインターネットの活用を

星厚裕 アート設計事務所/新建全国常任幹事

会員同士の意見交換の「場」であった会員メーリングリストが利用できなくなって残念に思っています。昨今のメールソフトのセキュリティ強化が原因になっているようで、利用していたメーリングリストで発信するたびに大量の配送不能状態が続いていました。その都度、メーリングリスト登録アドレスの配送エラーを確認し、エラー解除を続け、原因究明もむなしく解決には至らず、わかったことは各メールを扱う会社のセキュリティが厳しくなり、メーリングリストでファイルを添付しての発信などは配送不能になりやすくなったこと、一度に多くのアドレスに発信するのは攻撃である、危険だとみなされるのだということでした。その結果、受信側で拒否されて、配送不能になってしまうということでした。特にGメールアドレスに配送不能が多く発生していました。対応策としてはメーリングリストのドメインを変更して再構築するという結論に達し、全国(事務局)から、お知らせメールのみを発信するということになりました。
 現在のところ、メール配送についてトラブルは発生していないようです。残念なのは、これまでのようなメーリングリスト(双方向の情報交換)ではなく、メールニュース(一方的なお知らせ)のような仕組みで利用するしかなく、会員それぞれから全国へ発信ができないことです。全国の会員宛てに発信したい情報がある場合は、全国事務局に発信内容を送っていただき、全国からあらためて発信することにしています。手間が増えることは仕方ないとしても、伝言ゲームのような状態では言いたいこともなかなか伝えにくいのではないでしょうか。自分から発信できればすぐにお知らせできるものを、事務局へお知らせして、事務局のメンバーが時間を作ってくれるのを待つ、という時間差も気になるところでした。
 何かよい方法はないかと模索する中で、双方向発信のBandというアプリを使い始めています。インターネットは得意じゃない、セキュリティとか気になる、新たなアプリ・ソフトなんて使いこなせない、といろいろな意見はあると思います。もし食わず嫌いであればもったいない、もし今からそういうことに取り組もうと思っていたならこれ幸い、いずれにせよ、まずは試してみてはいかがでしょうか。過度に恐れず、しかし慎重に。意見交換や情報提供の「場」として「新建会員ひろば」を開設してお待ちしています。Facebookも管理体制を見直して、あらためて「新建築家技術者集団新建会員のページ」を開設しています。Facebookならば使ったことのある人は多いのではないでしょうか。まずはその辺りからご活用いただければと思います。
 「リアル」での企画が各支部で動き出していますし、全国でもセミナー開催を計画しています。実際に交流することは本当に多くの人の望みだと思います。しかし新型コロナが5類感染症に位置付けられたとはいえ、手放しで安心できる状態にはなっていません。このコロナ禍の中で、なんとか新建のメンバー同士がつながってきた一つに、Zoomの活用による企画もあったと思います。
リアルもインターネットも、全国規模につながれる道具・機会として活用し続けたいと思います。各地の情報や企画、催し物などを、是非BandやFacebookでご発信ください。意見交換、情報交換の「場」としてのインターネットも活用しませんか。

<特集> 建築運動アーカイブズ――建築運動を継承し未来を展望する

日本では、古くから文字を用いて文書を残す作法・慣習が根付いており、そのために多くの文字資料が残されています。権力者の公家や武士のところにあるだけでなく、商家や農家にも保存されていて、そこにある帳簿や記録、また手紙や日記なども重要な史料となっています。識字能力のある割合が高かったことによるのでしょう。これらの文書からは、当時の生活環境や社会情勢がわかり、日々新しく歴史が塗りかえられてもいます。近年のテレビでも、そうした趣旨の番組が次つぎに紹介されています。
 日本はアーカイブズ大国といってまちがいないでしょう。にもかかわらず、現在の中央政治では、つい最近の重要な行政資料や日報が紛失していたり、税金を使っているイベントの1年前の出席者名簿がなかったりします。「すでに廃棄された」として、簡単に出てこないのです。
 いろいろな分野でそうしたアーカイブズを保存し整理しようとする努力が行われています。わたしたちが取りあげる建築や都市計画に関する文書は非常に豊富であり、多くの研究者・建築家・都市計画家の残した資料が残っています。これらの資料は、現在でも新しいデザインやアイデアの源泉となっており、建築界や都市計画界において大きな意味を持っています。ただ、建築運動と呼ばれる分野では意識的な努力がないと雲散霧消しがちではあります。
 本特集は、日本の建築運動の出発点である分離派建築会とならび称される、創宇社の結成100年を機に開催されたシンポジウムを題材としています。建築運動におけるアーカイブズの意味を問うています。分離派の建築家蔵田周忠のアーカイブズを集める文庫、創宇社に長くかかわった竹村新太郎の文庫、彼らより一世代若い研究者西山夘三の文庫の報告を収めました。いくつかの機関や個人の尽力で資料が引きつがれてきたこともわかります。この分野では文字資料だけでなく図面もたくさんありますし、運動の過程では展覧会が開催されてきた歴史もあります。現在進行形の内容も多く、100年を超えるこうした建築運動がつながりつつ前進していることがわかります。(中林浩)

特別編集委員/佐藤美弥
担当編集委員/中林 浩

<ひろば> 愛知支部――春のまちづくりWORKSHOP&ランチ交流会

4月8日(土)10時から13時まで錦二丁目スペース七番の会場(キッチン付)にて、春のまちづくりワークショップとランチ交流会を行いました。参加者は9名でした。会員外では、福田さんのつながりで大曽根まちづくりに関わる名城大学生1名と、名畑さんのつながりで古民家再生ビジネススペース「つながりの杜」(北名古屋)を運営されている方1名が参加してくれました。昨年オープンの「七番」を8月に支部で見学させていただき、今回は2回目の企画でした。3時間に講座・WS・交流会を詰め込み、やはり時間が押して、講師の名畑恵さんに苦労をおかけしましたが、参加者の皆様の協力もあり、質問タイムも充実して楽しい時間となりました。
 講座では、延藤安弘先生の市民参加や建築・まち育てのメソッド・まちの縁側・錦二丁目の活動などについて、お話いただきました。延藤先生は、地区計画というものの模範となった神戸市真野での取り組みや、計画的小集団開発、豊かなミニ開発、ユーコート、もやい住宅(Mポート)などを「絵本の紹介してたねん」と言いながら進めていかれたこと、WSでおばあちゃんに女子高生の役をやってもらうことで他の人の気持ちになってもらい、公共施設のありかたを学んでもらうことなど、ただ一歩々々、人々の心をつなげていかれたとのことです。ずっと黙って市民の話し合いを聴いていることが多かったということからも、「主役は市民のあんたらやで」という想いが伝わってきました。
 その他、もっとも盛んな長野市「まちの縁側」の取り組みや、台湾での市民参加のまちづくりの闘いや政治に振り回された苦労、錦二丁目での会社設立までと現在のまちづくり活動のことなど、たくさんのお話を聞かせていただきました。質問タイムでは、まちづくりで若者と活動するときの心がまえは?延藤先生の研究室にはいったきっかけは?会社や七番の設立は順調でしたか?現在の七番の状況は?延藤先生や名畑さんのエネルギーの源は?など難しく答えにくい質問にも丁寧に回答していただき、楽しく充実した学びの時間となったと思います。
 そして、WSでファシリテーターを名畑さんにつとめてもらい、参加者は2班に分かれて「まち育てに大事なポイント」「こんな居場所がいいな」について意見交換を行いました。出た意見を否定せず聴き、仕分けて、まとめる。そして1班は「居ごこちの良い場づくり」、2班は「空が広いカオスな拠点」にまとまりました。名畑さんのまとめは「わくわく感」でした。私から「問い」を立てるコトではじまりをつくる、苦労・課題や宝の発見を共有する、私発公共、工夫やオリジナルを生みだす、肝心なのはヒト・モノ・コト。
 最後は、「七番」のお向かい2店(キキ・和こん)のオードブルとともに、おいしい交流会をして親睦を深めました。また第3回も開催できると良いと思います。午後は、参加者の1人が運営する「つながりの杜」の見学会へ数名が参加しました。私は参加できなかったので、また見学会を企画させていただけますか?とお願いしました。大学生も参加してくれて、つながりが広がる良いきっかけになりました。今回の企画や今後の企画希望などを踏まえて、また支部企画を少しずつ充実させていきたいと思います。 愛知支部・黒野晶大

<ひろば> 第33回大会期第4回全国幹事会報告

 4/15(土)9:30~15:30(オンライン)出席34名。
 冒頭に高橋元幹事会議長、鎌田前編集委員長が相次いで逝去されたことの報告があり、中島代表幹事の開会あいさつ受けて、議題に沿って報告、議論をすすめた。

第34回全国大会にむけて
~情勢と専門家の役割
 片井議長から「建築とまちづくりそして私たちを取り巻く情勢」について報告した。「国土の荒廃と環境破壊」が他所ごとではなく現実味を帯びていること、そして「豊かな生活環境と高い文化を創造する」ために、建築とまちづくりにたずさわる私たち専門家の日常的な行動を提起した。
 これを受けて各地からの以下のような取り組みなどが報告された。
 東京支部――明治神宮外苑開発問題、岐阜支部――市民会館保存運動、大阪支部――枚方市駅前まちづくり運動、京都支部――まちこわしMAPづくり、福岡支部――大牟田市役所保存活用などの他、払い下げを受けた地域の駐在所による居場所づくり(福岡)や、若い移住者が増えている真鶴の魅力(神奈川)、建築関係以外の会員、まわりの人たちへのひろがり(富山)などの話題、その他、経済成長のための開発という論点、捉え方の整理が必要との意見が出された。
※上記以外の各支部の活動状況は午後の議題の前に時間を取って報告を行った。

セミナー等企画報告と予定
・「支配・収奪のない未来へ~世界文化再建と私たちの役割」山本厚生氏講演会の報告――2/12、板橋区立グリーンホール、156名参加
・中部ブロックセミナーin千里浜(石川)8/25~27予定の報告
・建まちセミナー(滋賀)10月上旬で企画検討中の報告

各委員会報告
・『建まち』編集委員会――2023年特集について既刊分と予定の報告、特集企画への会員参加、若手編集委員3名の参加による委員会の活性化、座談会・取材の積極的な取り組みによる執筆者の拡がりとその後のつながりの継続、『建まち』単品購入の増加。
・支部・ブロック活動推進委員会――リーフレットの活用、オンラインによる集まりの支援、中部ブロックセミナーを通じて支部活動活性化の支援。
・政策委員会――建築人として今考えなければならないことを論議する講座、オンライン新建ゼミ(3回)「私たち建築人に何ができるのか~藤本昌也代表幹事とのクロストーク」(6/19、7/27、8/29)の概要報告。
・Web委員会――ホームページの充実・即時性の向上、会員メーリングリスト現状の不具合と当面の対応(配信のみ)、双方向通信についての別の方法(BAND、Facebook)に移行する計画。
・災害復興支援会議――関東大震災100年について。

研究会活動状況報告
・子ども環境研究会――昨年5月から2カ月に1回、計6回開催、1~4回は建まち2022年6月号特集の執筆者による報告、5回目以降は実践報告。各回10~15名の参加であるが、減少傾向なのでリマインドを確実に行いたい。
・環境と建築研究会――昨年9月から始動し、同12月に1回目「省エネ法改正をどうみるか」42名参加、今年2月に2回目「自転車かプリウスか」24名参加、今後2カ月に1回程度の開催予定。
・マンションサポート研究会――2020年からはオンラインで開催し、研究集会分科会を経て昨年12月までの経過、概要を報告。今後、『建まち』3月号特集をベースに国のマンション政策をテーマにするほか、会員の実践報告を予定していく。

第34回全国大会日程と開催方法
・11月25日(土)オンラインで開催する。幹事の選挙など具体的な手法の検討やどこを拠点にするかなどの具体化は常任幹事会で決定する。

今後の日程、会議の開催方法
・次回幹事会は9月9日、主に全国大会議案の検討、決定を議題とし、オンラインで開催する。
 以上、予定の議題を終了し、乾代表幹事の閉会あいさつをもって閉会した。
                               全国事務局長・大槻博司

<ひろば> 中部ブロック――「建築とまちづくりセミナーin能登千里浜2023」のご案内

 8月26日(土)と27日(日)、石川県羽咋市(はくいし)にて、中部ブロックセミナーを開催します。
 今回のテーマは、①防災・災害時に役立つキャンプ術②災害時を想定したワークショップ③親子や家族で楽しめる企画をもとに計画しました。
 セミナー会場は、日本海に面した能登千里浜休暇村(キャンプ場とホテルがあります)で、講座会場は羽咋市労者総合福祉センターです。
 講座内容は、①「小型発電ワークショップ―ミニソーラー発電を作ろう―」講師:佐藤博士氏(NPO法人太陽光発電所ネットワーク理事)②「身近なエネルギーで自然災害を乗り切ろう」講師:由田昭治氏(新建福井支部、NPO法人エコライフふくい)③「能登地方での古民家耐震補強について」講師:杉山真氏(新建石川支部、杉山真設計事務所)④「石川における防災と観光まちづくり」講師:丸谷耕太氏(金沢大学准教授)⑤「20 世紀の建築空間遺産その3(1950~1960年代)」講師:小林良雄氏(新建東京支部、新建全国幹事会顧問)と5人の講師での講座を用意しています。
 27日(日)午後からオプション見学として、コースAは、「金沢における市場発祥の地めぐり」主計町(かぞえまち)茶屋街、ひがし茶屋街の界隈を丸谷氏に案内してもらいます。コースBは、「能登半島の古民家改修の見学」宝達志水町(ほうだつしみずちょう)の古民家、中能登の古民家を杉山氏に案内してもらいます。コースCは、自由見学として、妙成寺、コスモアイル羽咋、西田幾多郎記念哲学館、七尾美術館などがあります。
 詳しい内容は、新建全国ホームページに6月初旬に案内予定です。そちらを確認していただき、参加を希望される方は申し込みをよろしくお願い致します。
                                 新建石川支部・杉山真

建築とまちづくりセミナー(全国)予告

 今年の全国セミナーを滋賀県彦根で開催します。
日時  10月14日午後~15日夕方
概要
 彦根城の歴史――解説・改修の歴史を学ぶ
 銀座商店街のまちづくりを知る――昭和30年代のR C造
 長屋式商店街の再生に向けての取り組みを学ぶ
 足軽屋敷、伝建地区花しょうぶ通りの見学など
宿泊  花しょうぶ通り地区内にある旅館、「鳥羽や旅館」と「清瀧旅館」を予定しています。
    いずれも30人(計60人)まで可。
交流会 日本料理のお店「伊勢幾」にて
参加受付  7月初旬から受付開始
★関西ブロックで企画を担当します。乞うご期待!

お知らせ

「高橋偉之さんを偲ぶ会」
9月29日(金)17時~19時 自由学園明日館 (豊島区西池袋)
「鎌田一夫氏の想いをつなぐ会」
11月11日(土)午後 建築家会館(渋谷区神宮前)
いずれも詳細は後日。

よかったらシェアしてください
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次