建築とまちづくり2022年9月号(NO.522)

建築とまちづくり誌

<目次>

特集
公共空間破壊に抗う各地の取り組み

中島 明子
私たちの「コモン」を取り戻そう!

若山  徹
神宮外苑再開発と私たちの提案

新建築家技術者集団東京支部
神宮外苑再開発に対する見解と、神宮の杜の歴史と文化を継承する再生整備の提案

川口 真雄
神宮外苑を守る
――市民ネットワークの取り組み

坪原 紳二
コラム:歩行者・自転車中心のまちづくりと都市緑化
――オランダの都市緑化政策から学ぶ

大槻 博司
公園の変容と環境保全の市民運動
――大阪からの事例報告

鯵坂  学
京都府の北山エリア整備基本計画の問題点と市民運動

馬場 麻衣
コラム:市民が守り育てる公園
――あさひかわ北彩都ガーデン

連載
原子力災害避難計画を考える〈8〉
次々と引下げられる放射線防護対策
池田 豊

タイの住まいづくり・まちづくり(12)
チェンマイのコーポ的取り組み――バーン・マンコン事業4
石原 一彦

私のまちの隠れた名建築〈8〉
魚半別邸
名古屋市熱田区
入谷 晃次郎

主張
まちの居場所づくりを始めませんか
岡田昭人

新建のひろば
愛知支部――「自然エネルギー100%の家」を見学して
東京支部――「マイクロプラスチックってなに?」講演会報告
研究会だより 第2回子ども環境研究会報告――学童保育施設を生活の場とするために

<主張>  まちの居場所づくりを始めませんか

            岡田昭人 住まい・まちづくりデザインワークス/全国幹事会副議長

 まちの「居場所づくり」が各地で取り組まれています。えんがわ・たまり場・拠点・コミュニティカフェ・サードプレイスなど、それぞれの地域の課題や運営主体の目的に応じてさまざまな呼び方があり、その場にいればホッとしたり、新しい関係をつくる場や学びの場であったりと、まちの中に見かける存在となりつつあります。
 まちかどの広場や空き地、馴染みの食堂や喫茶店など、これまでも居場所と意識しなくても落ち着ける場所はありました。また、子どもたちの食事の場を提供したり、地域の関係をつくる場所として、市民が自主的につくってきた子ども食堂は全国で6千箇所を超えて、さらに広がっています。
 一方、地域センターや公民館などの公共施設の中には誰でも使用できるようでいて、施設を利用するには抽選があったり、グループをつくっていないといけなかったりと、誰でも目的がなくてもそこにいることができたり、地域や社会とつながる機会が用意されているはずの本来の「公共」の場となっていないところもあります。
 行政と住民、非営利組織、民間企業などとの協力関係のあり方はこれまでも議論されてきました。単純に公共施設、公共空間は、住民は使う側で行政は管理するものだということを固定的には考えないことも広がりました。地域のさまざまな主体が関わり、いくつもの組織と事業が互いに調整・連携・統合して地域の課題やミッションに取り組むことが求められる時代となっています。いま、地域に関わり、その社会に責任をもっていきたいとする担い手たちが各地で続々と現れています。公共施設の再編によって廃校になった学校施設を市民が利用している活動や事業なども、昨年度の新建の全国研究集会の分科会でもいくつか報告されています。
 また、公的施設に限らず、空き家や空き店舗を、シェアハウスなどの共同の住まいや新しいコミュニティの拠点として改修し、地域での協同の学習の場をつくることでグローバルな視点で人や組織とつながっていく活動なども各地で多彩に行われています。
 当初はまちづくりとしてではなく、自己実現の場として、また新しい価値を創造する担い手としての活動から出発している人たちもいます。地域での暮らしを包括的に捉え、政策に関わり、地域を守り、地域を変革するというまちづくりの担い手として活動する人々が連携していくことで大きな力となるのではないでしょうか。さらに、それらの活動が、地球環境の保全やエネルギー問題、平和への取り組みや世界的な社会的連帯経済の活動などと結びつくことができれば、官民連携やPFIなどによる市場経済を基本とした「稼げるまちづくり」とは異なる視点で、地域を変えていく方向を示すことができるかもしれません。
 かつては、まちのなかに人々が集うさまざまな「場」がありました。また、これまでのまちづくりの活動や行政からの働きかけなどの経緯から、まちづくり協議会など公式な形をとる地域の組織的な「場」も生まれましたが、もっと自分たちの問題を自分たちの力で解決したいという思いから居場所づくりの活動が活発化しているのだと思います。
 この数年のコロナ禍による人々のつながりが希薄になっているようにみえますが、だからこそコロナ禍以前よりも一層、関係性を再構築していく居場所の役割は大事になってきています。
 地域の居場所づくりの活動に関わることからまちづくりに参画してみませんか。人々の関係性を高めていく活動や仕事を通して、これからの建築・まちづくりの職能について考える機会につながればと思います。

<特集>  公共空間破壊に抗う各地の取り組み

 規制緩和による都市開発が相変わらず続いている。
 工場跡地や埋立地の大規模な開発にとどまらず、居住地を破壊する駅前再開発、世界遺産として登録されている京都や奈良でのホテルや高級マンション計画など、特区制度や観光立国などを振りかざし、新自由主義の行き先は留まるところがない。 最近目立つのは都市公園や教育施設である植物園、動物園などの公共空間に商業施設や業務ビル、大学誘致などを計画する案件が多いことだ。
 東京の神宮外苑や日比谷公園、京都の京都府立植物園、神戸の神戸市立王子公園など歴史があり、風致地区にも指定されているような身近な憩いの空間である。
 さらに、公共空間である都市公園には「Park-PFI(公募設置管理制度)」等の導入により、公園の目的に沿わない商業施設が簡単に立地できるようになった。公園を儲けの場に変質させているのだが、「おしゃれなカフェができる」など市民は目先の便利さに惑わされているのが実情だ。
 政府はPPP(官民連携)・PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の対象分野や活用地域を広げ、今年6月には2022~2031年度の10年間の事業規模を30兆円にする目標を決めた。これまでに加え集約型公共ターミナルやスポーツ施設、文化・社会教育施設、公園まで対象分野を広げる。これによって再開発種地の増加が加速するだろう。
 こうした動きに対して、各地で公共空間破壊に反対する市民の取り組みが広がっている。
 憩いの場や教育施設の場となってきた公共空間の価値を再確認し、豊かな空間とするために市民はどうアプローチできるだろうか。
 本特集では、都市の公共空間を破壊する計画とそれに抗う市民の取り組み、都市計画の超法規的な進め方の問題点、国内外の事例から公共空間を豊かにするための視点を紹介する。建築とまちづくりは誰のためのものか、原点を見つめたい。
                           担当編集委員/高田桂子

<ひろば> 愛知支部―「自然エネルギー100%の家」を見学して

 1月21日(金)~22日(土)の見学は、愛知支部から5名(1名は、長野県茅野市在住)、家主である斎藤さん(東京都在住)、山梨に住まわれている金子さんと息子さん(愛知支部の河合大工さんのお施主さん、昨年愛知県豊田市から山梨県北杜市へ移住)の8名です。
 北杜市にあります「ほくほく」は、朝日新聞記者である斎藤健一郎さんが購入した築40年の中古住宅です。福島在住時の原発事故をきっかけに、電力に極力頼らない生活を目指し、「自然エネルギー100%の家」を目指して、2020年から工事を始め、工事中の電力もソーラー発電を使い、コンプレッサーをまわして、作業をされたと大工の梶原さん(富士吉田市在住)から聞きました。お風呂は、太陽熱温水器と薪ボイラー、暖房は、薪ストーブで賄い、内部の電気は、すべて太陽光発電です。
 見学は、外観を眺め、太陽光パネルと薪ボイラー、太陽熱温水器などの設備関係の説明を受けました。木製の玄関ドアを入り、リビングにスクリーンを設置して、パワーポイントによる斎藤さんの著書『都会での5アンペア生活』から「北杜市でのゼロエネルギー生活」とその「断熱・気密化工事の奮闘」を聞きました。
 翌朝には、施工をされた大工の梶原さんから、高気密高断熱改修ではソーラー発電のために天候に左右されてしまった工事の苦労話や、ワークショップやボランティアとの関わりを教えていただきました。午後からさらに20数名の参加者があり、ワークショップで、卜部さん(富士吉田市在住)に測定前の漏気しないための養生テープ貼りを参加者で順番に行い、気密測定をしていただきました。雄大な景色が見える木製トリプルサッシの山崎製作所さん(長野県千曲市本社)はじめ、すべての参加者が自己紹介をして、エコハウスを作りたい方や、そこに携わる方、近所に住まわれている方、初めての方などがたくさん集まりました。イベントの告知や企画が上手だと思いました。太陽光発電の工事を担当されました佐藤さん(群馬県安中市在住)にお声掛けをして、非常時や災害時でも使える「ベランダ発電」の愛知での企画依頼をしました。
 北杜市に住まわれている金子さんに新建愛知支部への入会表明をしていただき、金子さんが購入をする予定での建物のご相談やワークショップでの関わり、斎藤さんへの取材など、新しい「ほくほくプロジェクト」も、今回の出会いにより動き出そうとしています。                         
                              愛知支部・甫立浩一

<ひろば> 東京支部―「マイクロプラスチックってなに?」講演会報告

 5月28日(土)に行われた自然流の会・年次総会の記念講演会「マイクロプラスチックってなに?~マイクロプラスチックが人に与える脅威~」に東京支部が後援し、全国から19名の新建会員が参加しました。
 世界の海のプラスチック汚染調査などを行い、マイクロプラスチック研究に長年取り組んでいる東京農工大農学部教授・高田秀重さんに講師をお願いしました。
 私たちの日々の生活に切っても切れないプラスチック製品や化学繊維、気が付けば多くの日用品が石油由来の化学物質であふれています。
 講演は、マイクロプラスチックとはなにかという基本的なことに始まり、人に与える脅威、日本でのプラスチックのごみの処理方法、日常生活で知らずに使われているプラスチック、マイクロプラスチックを出さないためにできること、建築活動のなかで心がけるべきこと、と話が進みました。
 プラスチックごみの流出は全世界に広がり、クジラ、ウミガメ、海鳥などの動物がごみを捕食して命を落とす事例は大きく報じられています。そうした自然界に放置されたプラスチックごみが、紫外線や波などの影響により細分化され5㎜以下となったプラスチックをマイクロプラスチックといい、全世界の海や陸地に広がっています。
 微細なプラスチックごみがなぜ問題なのでしょうか。マイクロプラスチックは海水中に溶けている有害化学物質と結びつき、貝や小魚など小動物に捕食されます。マイクロプラスチック自体は体外に排出されても、有害化学物質の一部は体内に取り込まれ蓄積されます。その小魚などを大きな魚やクジラなどが捕食するという食物連鎖により、有害化学物質が蓄積された魚を人間が食べることにより汚染されるのです。
 有害化学物質とは環境ホルモンです。生命体に大きな影響をおよぼすことが知られています。ほとんどのプラスチック製品には、精製過程で環境ホルモンを含む可塑剤、難燃剤などの添加剤が使われています。つまりプラスチックを使う限り、そうした環境ホルモンを人体に取り込んでしまうことは避けられないというのです。
 では、現在プラスチックごみはどのように処理されているでしょうか。日本でプラスチックごみは資源として回収されていますが、資源に回らないものも多く、実にその70%が焼却されています。結局温暖化ガスを排出し温暖化の一要因になっているそうです。石油由来のプラスチックは製造過程でも処分にもエネルギーを使い、二酸化炭素を排出し、結局地球温暖化に拍車をかけることになります。
 一方、私たちの生活の意外なところでマイクロプラスチックを出していることが指摘されました。アクリルなどの化学繊維衣料品は洗濯によって繊維が汚れとともに落ち、微細なマイクロプラスチックとなり下水放流により流出していきます。また液体洗剤や芳香剤、柔軟剤などにも添加剤が含まれており、同じように流れ出ています。そうしたマイクロプラスチックや環境ホルモンを含む添加剤は回収しきれず、自然界にどんどん排出されているということです。 今回の講演により、私たちの体に影響を与えるマイクロプラスチックの脅威を知りました。待ったなしのプラスチック対策、これからの私たちの生活の価値観を根本的に変える必要があるということを学びました。では、どのように私たちは行動すべきなのでしょうか。
 まずは一人一人が身の回りを見回して、生活の中に入り込んでいるプラスチック(包装用、ペットボトル、使い捨て食器、個別包装等)や化学繊維も含めて石油由来のプラスチック類や添加物を含んだ日用品を、日々の生活で使わないようにする、少なくするよう心掛けることが大切だということです。また、すでに捨てられているプラスチックは、マイクロプラスチックになると回収は非常に難しくなるので、プラスチックごみの段階で回収することが大事だということでした。
 建築の分野でも、環境や人に悪影響を与える接着剤や添加剤など化学物質を含む合板やビニールクロス、プラスチック系断熱材などの新建材を使わないことが求められます。そうした新建材は製造過程でも現場廃材としてもプラスチックを排出することにつながります。
 以上が、講演概要になりますが、私たちは新建材を使わずにどのように造ることができるでしょうか。木、土、紙、草など自然循環型の自然素材で、これまで培ってきた先人たちの知恵を借りながら、省エネルギーなど現在の技術を取り入れて造ることです。こうした基本的な姿勢が自然環境にとっても社会にとっても大切なことだと思います。
 その上で自然災害や時間の経過に耐える堅牢性、耐久性を持ち、時間的変化にも応えられる柔軟性と融通性を持つことにより、スクラップアンドビルドにしない永く使える建物を造っていきたい、とあらためて感じました。
                              東京支部・柳澤泰博

<ひろば> 研究会だより 第2回子ども環境研究会報告
――学童保育施設を生活の場とするために

 2022年7月10日(日)16時より、「学童保育施設を生活の場にするために」と題して、沖縄在住の京都支部会員、清水肇さんからお話しを聞きました。Zoomで開催されていて、全国から21人の参加がありました。

沖縄の学童保育での一人一人の過ごし方観察調査から見えたこと
 南風原町にある屋外空間が豊かな学童保育の紹介がありました。建物は大きな一軒家を改修されていて、屋内外とも子どもたちがのびのびと過ごせそうな学童です。そこで一人一人の過ごし方、集団との関わり方が断続的に調査されました。
 その結果、子どもの遊びは、学童保育の過ごし方で中心に思える定型遊び、型が定まらない気ままな不定形遊び、1人遊びの1人行為の3種類に分類され、行為の割合は子どもによって大きく異なり、場所の利用もそれに依拠することが図面やグラフで見られました。

過ごし方に対応した「拠点」と「空間」をつくる・大部屋学童保育所を改造や持ち込み家具で改善する実践
 とある新築の大部屋学童保育所で過ごす子どもたちの様子が動画で見ることができました。子どもたちの声が響く響く、とても落ち着かない状況です。段階的な拠点づくりがはじめられました。完成しても子どもの使い方をみて変えていく過程が柔軟で素敵でした。他の学童保育では2段ベッドを置く、それだけだけど、徐々に子どもの落ち着く場所としてなじんでいく様子などの事例も紹介されました。配慮の必要な子のエピソードで、こうした過ごし方に対応した「拠点」は、他の子どもとの関わりをもつための必要不可欠な場所だと思いました。

一人一人の過ごし方の違いを理解し、尊重し、寄り添うことで成立する生活の場
 子どもの心の安心基地を屋内屋外につくることは、一人一人違う遊びをしてもいいし、ときに集団で遊んでもいいし、その時々で選べることを保証できますね。どんなときも子どもの遊びや育ちを支えることにつながります。低学年対応の学童保育が多いですが、高学年だってそういう場所が必要で、学童保育という空間にとどまらず外へでかけていくことも大事であるとの話がありました。まさに地域をまきこんだ子どもの居場所づくりが求められますね。
 自分の子どもが通う学童保育(学校内空き教室、民間委託)にはそんなコーナーもなく……保育園からとのギャップに戸惑うだけでなく、地域によって環境がこうも違うのかとショックを受けました。
 自分が住む地域では基本的には小学4年生までしか学童保育所に通えないため、夏休みなどの長期休暇中にどうやって過ごすかが高学年のいる親にとって悩ましく関心の高い事柄になっています。聞いてみると、1日なにも予定がないのはきちんと過ごせるのか不安になるとのこと。そこで大手塾の講習や続けている習い事で子どもの予定を組む人がほとんどのようです。しかしそれには各家庭の経済的な事情がついてまわり、子どもたちの過ごし方に影響がありそうです。この先、中高生になったからといってなくなる話題ではないはず。学童保育所に限らず、子どもが立ち寄りやすい場所が、子どもの育つ場所としてきちんとした位置づけがされることを切に願います。
                              京都支部・目黒悦子

 

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