建築とまちづくり2022年2月号(NO.516)

2022年発行

<目次>

<主張> 気候変動のいま、住まいづくりの対話を

 昨年秋の第三十三回全国大会では、住まいの省エネ基準や気候変動を巡る議論が活発に行われました。今年四月から改正「省エネ法」が施行される状況のなかで、地球環境の荒廃や気候変動を憂い、建築という仕事を通じて持続可能な社会をつくろうという共通認識からだと思います。
 事前提出も含め発言は、省エネ基準を実践しようというものが多くありました。「カーボンニュートラルに向けての議論を深め、社会的信頼を勝ち取る」「断熱性能は、HEAT20のG2レベルを上回る、強化ZEH基準以上を目指す」「SDGsについてもっと勉強すべき」「省資源と省エネは対立しない。省エネ技術は必要だが、地域に根差した建物づくりが必要」「カーボンニュートラルにいかに向けていくかが大事」などです。
 一方で、「改正省エネ法は、消費エネルギーよりも大きな太陽光パネルを設備すればゼロエネルギー住宅になるという内部矛盾を抱えた制度である。一辺倒な省エネ政策よりも、『省エネから省資源へ』の考え方が必要。大規模再開発は莫大なエネルギーを使っている」「省エネだけではなく長く持つ建物、建設廃材を減らすことが必要」「カーボンニュートラルの問題を、建築だけの狭い範囲で考えず、防災・地域・環境の安全へ枠を広げ、土木などに向かっても発言すべき。また、平和を求めずにカーボンニュートラルを語るのは矛盾している」「省エネの基準はコストがかかり、金持ちしか手に入れられない。持家政策の問題でもある」といった意見もありました。
 新建賞受賞式でも「気候異変に対し、先人が行ってきた自然の摂理を生活に取り入れることが大事だ」「沖縄の気候風土適応住宅への取り組みは、建築の環境形成と社会的な意味を統合した住まいのあり方そのものについての普遍的な定義」という受賞者のコメントがありました。
 それぞれの主張を見ていくと、省エネ基準を積極的に推進していく立場と批判的な立場とに分かれているように思います。断熱材と高性能機器による省エネ基準に対し、沖縄や熊本などで実践されている気候風土適応住宅は、単なる省エネ基準の回避ではありません。沖縄気候風土適応住宅基準では「緩衝領域は温熱環境だけを意味するものではなく、人の生きる場としての住まいのあり方に直結するものであることを確信することができた」と、建物づくりの根本の課題として考えられています。
 外皮性能強化と高性能設備機器の設置により、温暖化効果ガスの排出を抑制するという省エネ法改正については、断熱材の多くはプラスチック類であり、大量のプラスチック製品を使用してよいのかという主張もあります。ただ、全世界が脱炭素へ向けた大合唱のなかで、それ以外のさまざまな議論ができなくなっているような息苦しさも感じます。
 「気候変動のためになにをするのか、具体的に考えよう。真の省エネ・省資源住宅とは?」と提案もありました。『建まち』誌でも何度か主張で議論が呼びかけられてきましたが、噛み合った議論とはなっていないようです。大会の終わりには藤本代表幹事より「フラットな関係で話し合い、違う意見の人とも話し合わないと、まちづくりはできない」との指摘がありました。
 討論のまとめで、私は「この問題についてはとにかく議論の場を作って、議論をしていくことが重要」と述べています。そこで、具体的に討論の場を提案します。3月から、毎月2回、1時間半ほどZoomで討論の場を設けます。いろんな立場からの意見を求めます。まずはお互いの主張を理解し合いましょう。多くのみなさんの参加を求めます。

片井克美・片井建築設計事務所/全国幹事会議長

<特集> 第14回新建賞――新建賞が示していること

 新建設立50周年という節目におけるこの2年間は、特にコロナ禍により生活と社会活動が大きな影響を受けています。地球温暖化による世界的な気候変動が深刻化し、環境への負荷を削減する対策を急がねばなりません。省エネとともに安易な建て替えは選択しないなど建築とまちづくりでの大量生産、大量消費の考え方を変えていくことが求められています。
 私たちはこの先の50年をどんな世界にしていくかをはっきり決めなければならない分岐点に立たされています。それはこれから50年の新建運動の方向性を、はっきりさせるということでもあります。
 昨年11月の第33回全国大会で、第14回新建賞が発表されました。今回は19点の応募があり、その中から大賞1点、正賞3点、奨励賞3点、特別賞2点が選ばれました。審査講評にも書かれているように、「今後の新建の方向を示唆するものになっているか」が審査基準の一つでした。受賞された会員の作品、活動は、これから私たちが進む方向を指し示しています。ヒントと勇気を与えてくれると思います。
 本特集では、受賞作品がすでに本誌に掲載されている3名の受賞者には、受賞の抱負を語ってもらいました。本誌未記載の6名の受賞者は、受賞作の内容を掲載しました。
 第15回新建賞2023にも、より多くの皆さんに応募して頂けることを期待しております。                              

担当編集委員/永井幸・桜井郁子

<ひろば> 愛知、岐阜、三重支部―
                        古田さん「再生のユートピア」を語る

   東海3支部企画・新建50周年プレ企画を7月14日の夜にリモートにて行いました。北海道から九州までリモートにて、計28名ほどご参加いただきました。
   ① 小説「再生のユートピア」で想い描いた未来(古田豊彦さん)②対談(古田豊彦×福田啓次)田園都市構想と岐阜県恵那市・岩村 ③質問タイム・座談会の3部構成で行いました。
   本当は岐阜県恵那市・岩村のシェアカフェにてリアルな合宿企画を夏に予定していましたが、延期がつづき、プレ企画として思想的なことや岩村の場所性を知る企画となりました。岩村シェアカフェの方も交えて、愛知支部の古田豊彦さんに小説「再生のユートピア」について語っていただき、福田啓次さんとともに田園都市構想と岩村についてお話いただきました。
   古田豊彦さんは岐阜県中津川市出身で、ペンネーム「池上ゆたか」として、図面で表現できないことを小説にされました。自動車の交通事故で家族をなくした主人公がユートピアを彷徨います。自動車王国の愛知への批判やトヨタの未来都市ウーブン・シティへの対抗軸としてなど、さまざまな読み方ができる小説だと思いました。
   対談では、日本列島をさかさまに見たり、海外のまちの事例や古田さん手書きの解説図などから、岩村の地理的意味や自治の歴史などをお話していただきました。質問タイムでは、参加くださった全員のお話を聞く時間がなかったのが残念でしたが、今後につながる時間となり、小説の続編に期待する意見もでました。岩村での断熱対策の大変さや、岩村を活気づけるためにもぜひ現地へいつでも来てほしいとの話もありました。個人の直接的な関係づくりの大切さが感じられる日々です。また早くリアルに集まれる日が来るといいなと思います。リモートで意見交換とはなかなかいかなかったですが、貴重なご意見をたくさんいただきました。
   企画後には、小説購入依頼や個人的に古田さんと交流したい方などの問い合わせもあり、関係づくりの良いきっかけになったと思います。愛知の福田事務所にて会場設営いただき、なんだかラジオみたいですねと和気あいあいとした雰囲気で開催できました。多くの参加者のみなさま、ありがとうございました。
                                                                                                      愛知支部・黒野晶大

   

   

 

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