2020年1月号(No.492)

新建設立50周年記念特集ー1

建築運動の歴史と新建の活動 

 

新建五〇年の歴史の意義を学ぶには:片方信也/建築運動の軌跡をたどる:佐藤美弥/住まいとまちづくり運動への転化:黒崎羊二/北海道支部設立以来の活動を省みて:大橋周二/コラム 私はなぜ新建の会員になったか:岩見良太郎/愛知支部の設立以 来の活動のあゆみ:福田啓次/コラム 私はなぜ新 建の会員になったか:藤本昌也/京都支部の活動の歴史:久永雅敏/福岡支部─設立以来の歴史と現在の課題:片井克美/生活から組み立てる社会派建築 まちづくり集団への期待:佐藤滋/新建と重なる活 動の思想や実践:三井所清典/連載 新日本再生紀 行22 熊本県宇城市:磯田節子 新連載開始 世界の災害復興から学ぶ1 室崎益輝 暮らし方を形にする1 山本厚生

新建五〇年の歴史の意義を学ぶには─その視点を構想する           片方 信也

建築運動の軌跡をたどる─創宇社から新建まで                佐藤 美弥

住まいとまちづくり運動への転化 ─ 憲章の主題 ~ 生活・住まい・まちづくり   黒崎 羊二

コラム 私はなぜ新建の会員になったか                   岩見 良太郎

北海道支部設立以来の活動を省みて                     大橋 周二

愛知支部の設立以来の活動のあゆみ                     福田 啓次

コラム 私はなぜ新建の会員になったか                   藤本 昌也

京都支部の活動の歴史                           久永 雅敏

福岡支部 ─ 設立以来の歴史と現在の課題                   片井 克美

生活から組み立てる社会派建築まちづくり集団への期待            佐藤 滋

新建と重なる活動の思想や実践 ─ 日本建築士連合会の活動           三井所 清典

 

◆連載

世界の災害復興 から学ぶ〈1〉 経験に正しく学ぶ 室崎 益輝

新日本再生紀行 〈 22 〉熊本県宇城市 磯田 節子


奈良支部 ─「巨勢の道を歩く」

  日時:2019年11月23日(土)  

  場所:奈良県巨勢市

  参加:4名

 

 奈良の古道(下ツ道太子道、……)散策シリーズ8回目、11月23日に「巨勢の道を歩く」を開催しました。今回も川本さん(前新建全国事務局長)に地元の「巨勢の道を歩く」を企画していただきました。 

出発は、近鉄吉野口駅に10時30分に集合、総勢4名の参加で駅前からコミュニティーバスに乗り込み、水泥停留所に下車、以降は徒歩での散策で西尾家、水泥塚穴古墳、水泥南古墳、川合八幡神社、権現堂古墳、阿吽寺、巨勢寺跡、安楽寺、御霊神社、安楽寺塔婆、新宮山古墳、をめぐる約6時間のコースです。

 西尾家は築約180年の旧家です。長屋門を入ると母屋で囲むように味噌蔵、米蔵、漬物蔵があり、その奥の小高い丘に見えるところが水泥塚穴古墳です。6世紀後半から末に築造された直径20m高さ7mの円墳、石棺は失われているが、石棺の材料となった凝灰岩の破片が出土し、床面下に瓦質円筒状土管約20本が配水管として設置されていました。

 西尾家から約100m南には7世紀初頭に築造された水泥南古墳があり、南方向に開口横穴式室で、二基の刳り抜き式の石棺が置かれている。石室の奥に置かれている初葬の石棺は二上山凝灰岩で作られ、手前の羡道にある石棺は竜山石(兵庫県加古川流域で産出する凝灰岩)を使用し、石棺蓋の小口部の縄掛け突起には蓮華文の模様があり、古墳文化と仏教文化の結合の一例として著名です。また、側面の縄掛け突起は削られ小さくなった痕跡が残っています。

 川合八幡神社は、江戸時代後期の建築で毎年10月の第二日曜に、奇祭「引合餅」が行われる。神前に「コグツ」と呼ばれる藁を編んでねじった亀の甲羅の中に餅をつめ神前に供えられます。権現堂古墳は樋野の氏神、天安川神社の境内にある円墳で六世紀前葉に築造された片袖式の横穴古墳で、石枕の位置から南枕で埋葬されたとされています。

 阿吽寺は、聖徳太子建立の巨勢寺のひとつで、葉集一巻(五十四)で坂門人足(さかとのひとたり)が詠った「巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ思はな巨勢の春野を」つらつら椿の名所です。

 巨勢寺跡は、近鉄吉野線とJR和歌山線の線路に挟まれた非常に狭い土地の中にあり、教えてもらわないと通りすぎてしまいそうなところにあります。今あるのは極めて精巧な造りの塔心礎が残っている、ほぼ正方形の花崗岩の中央に深さ13㎝、直径89㎝の穴が正円に彫られ、その中央に仏舎利容器を収める孔があり、蓋ができるように段彫りになっています。孔の周りには二重の同心円の溝が掘られ、外周に彫られた溝に一条の直線の溝でつながり、側面を貫通した水抜き機能を担っている極めて精巧に加工された、当時の技術力の高さを感じさせる遺構です。

 安楽寺は、丘の裏にひっそりと佇むお堂のように見えますが、鎌倉時代に創建された三重の塔だったのが、1673年から81年にかけて上の二層が崩落して一層部分が残ったものです。屋根の出が深く組物、柱も太く遠目から見ると三重の塔を想像することができます。

 新宮山古墳は、民家の裏庭にひっそりとある直径25mの円墳のように見えますが、前方後円墳の可能性を指摘されている6世紀中葉に築造されたものです。石室は南東方向に開口する横穴式石室(全長13・4m)、玄室内の石棺の内側は真っ赤な朱に塗られ、邪悪なものを近づけさせない、または封じ込める意図を感じさせます。

 今回の散策は約4時間かけて歩きました。晩秋の「巨勢の道」をゆったりとした気持ちで過ごすことができた散策でした。 

(奈良支部・乾安一郎)


神奈川支部 ─「山間を感じ、古民家を訪ね歩く」「かながわ支部実践報告会」

  日時:2019年11月24日(日)  

  場所:横浜市港北区、鶴見区  参加:7名

 

 11月24日(日)7名(門谷、菊池、永井、読者会員の村松、東京支部の木村、会員外の樋口(敬称略)と小野)の参加にて、横浜市港北区、鶴見区の山間部に残る古民家を訪ねて歩きました。

目指すは、獅子ヶ谷城址南側に位置する「横溝屋敷」と山を越えながら南下した場所にある、馬場花木園内の「旧藤本家住宅」。ともに江戸後期の建築で、横浜市指定文化財に指定され、一般公開されています。

 谷戸の農村、里山の歴史を感じながらの散策です。傾斜地および尾根の部分は戦後の宅地開発で、比較的新しい住宅がびっしり。擁壁の問題を抱えた個所も目につき、空き家の問題なども垣間見られます。また、谷戸の古民家周辺は、市街化調整区域になっているため、建設資材置き場なども多く、水路・歩道整備とは裏腹に少々荒れて見えます。景観保全とマッチングの課題も体感することになりました。古民家はともにそのロケーションも建築も素晴らしく、横浜市中心部に近い地域によくぞ残ってくれたと思います。

 アップダウンの多いなかなかの散策になりましたが、無事お疲れ様会に流れ、楽しむことができました。

(神奈川支部・小野誠一)

 

12月8日に神奈川支部実践報告会を秦野市の山本厚生さんヒカルさんのお宅にて行いました。参加者は神奈川支部会員10名、東京支部会員1名、会員外3名と盛況でした。まず初めての参加者には、山本さん解説付きの山本家見学です。神奈川支部の実践報告会は参加者全員がなにかしら発表してもらうルールです。概要だけ紹介します。①Session│SKを企画し、3人の会員ゲストを深く知ることができた②木造事務所と狭小住宅の設計。150m再開発に対する住民運動お手伝い③地質地盤の専門家として鋼管杭の紹介④知的障がい者施設理事長として、大磯町との係争経緯と施設運営、施設移転計画⑤その施設の移転先施設案のイメージ提案。ウッドトランスフォームコンペ2案紹介⑥事務所所員が購入した、足柄の古民家のDIY改修工事の紹介⑦名古屋で木造のプロテスタント教会を設計。ドラム演奏も漏れない防音が大変⑧目黒区の木密市街地の空き家対策計画作りに係わった経緯。空き家の根源は福祉の問題である⑨1階階高が3・8mもある2階建て木造住宅の耐震補強の話⑩渋沢駅前のメイン道路に街路樹がない。街路樹を植えようと提案し、みんなでやることに⑪秦野に引っ越してきて、ここでも新たなつながりが生まれている。登山者と地元住民の交流に足湯を設置しようと若者が立ち上がった。彼を応援して実現させたい⑫川崎でグループリビングの運営にかかわっている。今後、介護や医療との連携が重要だ⑬谷中で木造分譲マンションを手掛け、遮音D-70を実現させた。⑭建築士会の中支部長をやっている。音楽家の住宅をw会誌に載せてもらった。以上報告会の途中から、一品持ち寄りパーティに突入しました。全国大会でも意見が出ましたが、新50周年記念に向けて、将来の社会やあるべきまちの姿を提案しようよ!やろうやろう!

(神奈川支部・永井幸)


日本住宅会議総会 ─ 「今日の借家経営と、借家政策」

  日時:2019年12月1日(木)  

  場所:上野区民館

 

 12月1日、新協建設工業が会員として参加している日本住宅会議2019年総会が上野区民館で開かれました。総会の成功に向けて、新協建設は会場の設営、総会横幕、資料作成に協力し、吉田広子主任が報告者になりました。

 住まいの貧困と住宅問題に取り組む日本住宅会議はこの1年、住まい連などとともに「住宅支援、実践を考える集い」、「6・12住まいは人権デー」「9・9岡山豪雨災害サマーセミナー」「10・19住宅研究交流集会」などに取り組んできました。総会は2020年度活動方針として、ハウジングプアーの実態、韓国との共同セミナー、地震豪雨災害、住宅白書の刊行などを承認し、塩崎理事長、坂庭理事など25人の役員を選出しました。

 総会記念講演では「今日の借家経営と借家政策」のテーマで、「住宅セーフティネットと借家政策の展望」について、市浦ハウジング川崎社長が講演しました。川崎氏は「高齢化、単身化、若年層の貧困化に向けた住宅セーフティーネットは住宅、居住政策だけに求めるのではなく、福祉、生活保護、雇用、消費者保護などの行政施策との連携が不可欠で、住宅業界の自主的取り組みや規制などの展開とその対応は住宅政策を超えて多様に」と述べました。

 さらに「住宅市場と借家経営の現状」を大泉住宅会議副理事長、「借家の質向上と家賃補助」を小田川首都大東京准教授が報告しました。

 報告の3人目は新協建設工業の吉田営業主任「台東地区の借家事情と今後の施策」について15年間の台東区介護サービス事業者連絡会として、介護者の住宅改修活動を報告しました。台東連絡会は「台東区が日本一の福祉の町」になれるよう、介護サービス提供事業者が連携してサービスの質の向上、モラル向上、地域の信頼獲得を目指しています。15年掛けて台東区、保健所、地域包括支援センター、医師会などと介護の横のつながりを広げ、身障者、介護者の住宅改善にとり組んで来ました。それらが「たいとう地域包括ケア推進協議会」の結成にもつながっています。介護の連絡会活動のなかで今年、「住宅セーフティーネット法」の勉強会を開きました。台東区が呼びかけ結成された台東区居住支援協議会(中島明子理事長、吉田広子専門部会員など20人)は、民間住宅への高齢者入居相談窓口の開設をはじめ、台東区との連携で空き家活用、住宅困窮者への入居者支援を進めます。吉田主任の初めての報告は者、専門家の参加者のなかでは、住宅困窮者、空き家の所有者の悩みを具体的、実践的に解決している実例として、その発表態度とともに評価されました。

(新協建設工業・星野輝夫)