設立30周年を迎えて、21世紀の持続可能な生活空間のために

新建築家技術者集団(「新建」)は来たる2000年12月に、設立30周年を迎えます。

新建が設立された1970年はいわゆる「高度経済成長」政策の下で、大資本の利益優先の乱開発・環境汚染によって国土は荒廃し、生活環境は急速に悪化していた時期でした。また、異常な建設ブームのもとで、建築家・建築技術者は劣悪な労働条件の下で、孤立化・分断化されていました。

そうした状況のなかで、全国各地で自主的な建築運動を開始していた建築家・建築技術者たちが、幾多の準備を積み重ねて結成した全国組織がわが「新建」でした。

終戦直後に結成された全国組織「新日本建築家集団(NAU)」が1951年に消滅して以来じつに20年ぶりの、戦前からの民主的な建築運動の伝統を引き継ぐ全国組織結成でした。NAU消滅後もさまざまなテーマ別の建築運動、地域的な運動はありましが、建築家・建築技術者の全面的・総括的な課題や、国土やまちづくりについての住民の要求に応えられるような全国組織をのぞむ声が高まるなかで、真に民主的で持続可能な運動組織のあり方が研究され結実したのが「新建」です。

「新建」は、より豊かな生活環境をめざす人々の願いを深く理解し、その実現につとめようとする建築家・建築技術者の組織です。さまざまな活動の積み重ねと無数の実践経験の交流の中から“地域に根ざした建築活動を日常的にすすめ、地域住民のなかに入って建築家・技術者の主体的な活動をつよめよう”そして“住む人、使う人の立場に立って、さらに、住む人、使う人とともに”建築とまちづくり活動をすすめようという基本的方向を確立してきました。

当初『新建』としてスタートした機関誌は『建築とまちづくり』と改称し、月刊発行を実現し、内容を充実しつつ着実に281号を迎えることが出来ました。これと平行して各支部の機関誌も継続的に発行されています。さらに最近は全国事務局も支部もホームページを開き、Eメールによるニュース発行も行なっています。全国誌『建築とまちづくり』を軸としたこれらの情報ネットワークは、さらにきめ細かな活動を可能にしつつあります。

過去の建築運動が経験したことのない30年という継続した活動が、大きな成果を生み、また同時に、次々に新しい会員、若い会員の参加を生み出していることは私たちの最大の誇りです。しかし同時に、私たち建築家・技術者が取り組むべき問題は山積しており、まだまだ十分取り組めていない点も率直に見なければなりません。

現在、私たちは30周年を機に従来の綱領を改訂し、社会情勢の変化にあわせ「新建」の大きな発展を踏まえて、運動の新たな飛躍を実現しようとしているところです。

いよいよ21世紀です。全国の建築家・技術者のみなさん、豊かな環境づくりと職能確立のために、ともに努力しようではありませんか。

2000年9月16日
新建築家技術者集団代表幹事 上林博雄 武基雄 本多昭一 三沢浩 田中恒子 中島明子