2000年1〜12月号(建まちバックナンバー)

発行月 通算  特集
12月号 No.283 21世紀の住まい論――建築技術者の職能と役割
11月号 No.282 originとしての沖縄
10月号 No.281 京都に高速道路は必要か!?
8/9月号 No.280 リ・フォームで活性化する
 7月号  No.279 「品質確保法」で住宅の質はよくなるか
6月号 No.278 21世紀に求められる保育園の役割と園舎の計画
5月号 No.277 マージナルな空間
4月号 No.276 新宿の行方
2/3月号 No.275 建築設計・職能教育を考える
1月号 No.274 家族と住まいの曖昧な関係

2000年12月号(No.283)

 

■特集■21世紀の住まい論――建築技術者の職能と役割

 いよいよ20世紀も最後です。今世紀を見直すにあたっては、我々のいちばんのベースとなっている「住まい」に焦点を絞ることによって、様々なことが見えてくるのではないでしょうか。

高度成長・オイルショック・バブル経済・平成の大不況など、今世紀後半は建築のあり方や価値観が大きく変化しました。中でも都市問題・住宅問題は大きなテーマとなりました。バブル経済の崩壊は都市問題をあらわにするだけでなく、国民経済をも揺るがすこととなりました。

こうした中、建築家・技術者の多種多様な活動も増えてきました。「住まい手・使い手の要求に合った建築家・技術者の職能はなにか」、これまでの実践活動を通して20世紀の総括と21世紀への方向性を探りたいと思います。

(特集担当編集委員 横関正人)

 

人々の協同の発展と建築活動 竹山 清明

日本近代住宅の変遷――20世紀の建築家は何をめざしたか 竹原 義二

寝屋川東大利地区のまちづくりと「まちづくり」における建築家の役割と課題 井上  守

地元の杉材を使った住まいづくりから見えてきたもの 田村 宏明

21世紀の集合住宅維持管理における建築技術者の職能と役割 北村 順一

21世紀における木造住宅の構造安全性能 田原 賢

 

■連載

《忙中閑》 政治を変えてくらしと環境を守る 加藤 錦弥

《建築運動史22》 建築設計体制の改善をめざして 本多 昭一

《主張》 仮称「建築とまちづくり研究センター」(NPO)構想について 細野 良三

《世界の集合住宅見聞録10》 モーレンフリート(オランダ・ロッテルダム) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き10》 在原の茅葺き住宅 木下 龍郎

《ワーク&ワーク新建51》 サンライフ名島 屋外環境整備の取り組み 松本洋次郎

 

《面白かった本・気になる本》

西村幸夫他編著『都市の風景計画――欧米の景観コントロール 手法と実際』(学芸出版社)

相羽宏紀『欠陥マンション改善の闘い・4500日』(あけび書房)

2000年7月常幹決定の第3次綱領改定素案についての報告 綱領検討委員会・高橋偉之

《ひろば》 新建築家技術者集団設立30周年・第22回全国研究集会開催される

 

 

2000年11月号(No.282)

 

■特集■originとしての沖縄

 三山・琉球王朝以来、島嶼国家としての琉球は海洋交易を発達させ、日本本土と多く共通するその生活様式・言語をもとに、中国やそれを通じた大陸からの文化的な影響を色濃く受け、本土とはかなり色合いの違う独特な文化・風土を歴史的に形成・維持してきた。豊臣時代以降薩摩藩島津の権勢におさめられ、多数の薩摩藩士を含む明治政府の廃藩置県・琉球処分で日本国沖縄県となった後、国内唯一の地上戦の展開された太平洋戦争、アメリカによる占領・統治を経て、一九七二年に日本に「復帰」し現在に至るまでも、その文化は強固に生き続けている。

第二次大戦後のアメリカ信託統治下では、政庁のあった本島南部では、一九五三年「土地収用令」に見る厳しい土地接収政策による民衆の犠牲の上に築かれた相対的な繁栄(奇跡の1マイル)、一方で北部や離島の経済的停滞ないしは後退という偏った形態が形成される。「復帰」後もその構造の不均衡は残されており、北部・離島の経済政策はつねに県政の懸案、未発展地域の祈願ともいわれているが、基地移転と引き換えの開発という抱き合わせでの解決(?)の動きは看過できない。もちろん、開発振興策が云々されるということは亜熱帯性の自然環境を多く残しているということでもあり、片や豊かに残る大自然、片や潜在的な開発ポテンシャルの極めて高い観光資源、という両側面を持ち合わせている証左なのだが、振興の美名のもと各種補助事業・公共投資による開発圧力、コンクリートで覆い尽くすゼネコン型の開発策動はつねにのしかかっている。

南西諸島独特の建築形態・建設様相も目を引く。颱風対策で塗り込められた屋根瓦、出入りの場を限定せずどこからでも上がり込める玄関のない住居、透過性をコントロールするスクリーンとしてのヒンプン、建設用材をたいして期待できない低い山と台湾などからの木材輸入、有力な産業に発展したコンクリートブロック業、県内産業に占める割合が全国一高い建設業など、文化としての建築、産業としての建設業は、非常に独自で特徴的な様相を見せている。

生活場面での特徴もユニークだ。神聖な亀甲墓を中心にする血族関係、コミュニティのありよう、聖職・神事を女性が務める女系社会、アニミズムを現前するウタキ(御獄)、ノロ(祝女)、ユタ(巫女)……。ヤマト文化と土着文化の融合する沖縄の、知られていない伝統的な生活のありよう、民俗・文化諸関係は非常に多様である。

また、「沖縄」と聞けば基地問題を思い出さない人はいまい。日本政府に押しつけられ居座り続けられている米軍基地と地域計画・都市計画との齟齬、まちづくりへの影響、基地需要に依存せざるを得なかった経済、以降の経済展開さえ不可能にする基地の圧倒的存在……。横田や座間、厚木とて、沖縄県土の11%(本島においては20%、その多くが住宅地・農牧地)を占める基地が与える威圧感に比べれば、まだおとなしいというべきかも知れない。県内で物議をかもした琉球大学教授陣による基地との共存を積極的に打ち出した新保守派のマニフェスト「沖縄イニシアチブ」の発表とそれに対する県下の否定的反響は、ヤマト政府に取り込まれることなく、沖縄に基地を内面化させる永田町の圧力に抗する理論的対応を、沖縄自身に要請しているのではないか――。

沖縄をエキゾチックに「彼の地」と呼び続けていてよいのかという本土側の疑問と、「復帰」後も衰えを感じさせない県民の「沖縄独自意識」とは、両者ともに説得的に訴えかける。ヤマトンチュもウチナンチュも、日本国籍を持つわれわれは、「彼の地」沖縄「此の地」沖縄にどう向き合ったらいいのだろうか。

沖縄は知られていない。あるいはすでに知ったつもりになっている。まずは現実を認識することから始めたい。沖縄の建築とまちづくりのいま、生活の諸側面のいま、政治と文化と産業のいまを、各論考から探っていきたいと考える。

(特集担当編集委員 林工)

 

戦後史のなかの生活空間 清水  肇

沖縄の風土とまちづくり 崎山 正美

南風原町の「字展」風景 平良 次子

北中城村の地域遺産とまちづくり 備瀬ヒロ子

平良美穂子

歴史的町並み保存と観光の両立

――生活の場としての歴史空間 上勢頭芳徳

渡名喜島伝建地区選定までとこれから 前原 信達

米軍の長期計画による新たな航空基地建設の真相 真喜志好一

炭坑のカナリアの歌声

──「島田懇談会」事業批判 宮城 康博

アジア的涼感生活から学ぶもの 伊礼  智

南島型集住様式 伊志嶺敏子

亜熱帯の都市デザイン 中農 一也

新しい風土共同体の構築がたたかう力に

──あとがき的な考察 三村 浩史

 

■連載

《忙中閑》 どう生きるのか? 加藤 錦弥

《建築運動史21》 集団的共同設計の模索 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 講義室から見た当世学生気質 荒居 康明

《主張》 住まいづくりにおける“家族”の再構築から 水野 久枝

《世界の集合住宅見聞録9》 テームズミード(イギリス・ロンドン) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き9》 板取宿の茅葺き集落(旧北國街道板取宿) 木下 龍郎

《ワーク&ワーク新建50》 なでしこの里 虹の里 谷守 正康

 

《面白かった本・気になる本》

山崎泰孝『劇場の計画と運営――柔らかい建築へ』(鹿島出版会)

中村圭介『文明開化と明治の住まい――暮らしとインテリアの近代史(上)』(理工学社)

2000年7月常幹決定の第3次綱領改定素案についての報告 綱領検討委員会・高橋偉之

 

《ひろば》

全国幹事会(00/9/15-16)報告/建築とまちづくりセミナー2000inなにわ~大成功に終わる/鹿児島支部結成総会開かれる/「新建ふくおか」百号記念座談会/千葉支部建築セミナー建築見学会報告/介護保険と住宅改修勉強会3/「地球環境と木造の住まい―木造伝統工法に学ぶ」を終えて

 

 

2000年10月号(No.281)

 

■特集■京都に高速道路は必要か!?

 京都の都市としての歴史的な価値については今さら言うまでもないが、かつてユネスコが、奈良とともに「全人類共有の財産」として保全を勧告したように(「京都・奈良の都市計画における歴史的地域の保存と開発についての勧告」一九七〇年)、ヨーロッパの石とレンガの文化と対比される木造建築文化の様式を現代に伝え、都市全体が巨大な文化財となっている。

ところが、高度経済成長期に入った頃から町家が連なる低層高密の町並みは崩され、高層ビルも林立するようになった。一九八〇年代後半、日本全国に吹き荒れた民活・バブル経済の嵐は京都にも襲いかかり、応仁の乱以来とも称される激しい「まちこわし」に見舞われた。京都府・京都市などの自治体は「まちこわし」を推進する側に立ち、歴史都市・京都の破壊は急激に進行した。その最後を飾るのが京都ホテルと京都駅ビルの建設であった。そして今「京都高速道路」が歴史的な市街地にくさびを打ち込むように「まちこわし」の新たな波を引き起こそうとしている。

しかし、京都高速道路の計画は、京都市以外では余り知られておらず、市内でも沿道地域を除くと決して関心が高いとはいえないのが現実である。

そこで本特集では、京都高速道路計画の必要性や問題点を検討するとともに、自動車に依存しない京都の交通とまちづくりの方向を提示する。また、長年にわたって道路公害と闘ってきた阪神間の西淀川、尼崎の経験から京都が学ぶべき教訓とは何かを考えてみたい。

都市高速道路が人々の健康やまちづくりに大きな弊害をもたらすことを広く知ってもらうと同時に、自動車利用が当たり前となっている私たちの都市生活を見直していく契機となることを願う。

(特集担当編集委員 榎田基明)

 

京都高速道路計画路線図・計画概要

なぜ、京都に都市高速道路なのか

――計画の性格と背景 榎田 基明

◆座談会◆

都市高速道路でまちと暮らしはどうなるのか

――西淀川・尼崎の経験から学ぶ 傘木 宏夫

松  光子

谷口  博

荒井 正治

京都の交通再生プラン 近藤 宏一

21世紀を見すえたまちづくりと交通プランを考える 土居 靖範

道路公害と健康被害

――京都市内の大気汚染の実態とその健康被害 谷田 悟郎

足立  明

地球温暖化と自動車交通 兒山 真也

京都高速道路の財政問題 藤井 佐富

京都の道路住民運動は工事着工で新たな段階に

──公団の札束攻勢に対しまちづくり運動で対抗 京都道路問題連絡協議会

 

■連載

《忙中閑》 私と労働運動 加藤 錦弥

《建築運動史20》 建築研究団体連絡会 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 体験を通して問題意識をつかみ取ろう 西田 和美

《主張》 新建30年をバネにひと廻り大きくなろう 山本 厚生

《世界の集合住宅見聞録8》 インターバウ57(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き8》 菊水飴本舗(旧北國街道) 木下 龍郎

 

《面白かった本・気になる本》

佐藤浩司編『建築人類学・世界の住まいを読む② 住まいにつどう』(学芸出版社)

上野勝代・川越潔子・小伊藤亜希子・室崎生子『女性の仕事おこし、まちづくり』(学芸出版社)

設立30周年を迎えて 新建築家技術者集団代表幹事

新建築家技術者集団・支部活動一覧(1994~1999)

 

《ひろば》 鹿児島支部近況/福岡支部「新建を知る会」で4名の新入会員/西山夘三記念すまい・まちづくり文庫主催「西山夘三と日本のすまい展―20世紀・すまいのアーカイブス」/介護保険と住宅改修勉強会2/建まちセミナー開催

 

 

2000年8/9月号(No.280)

 

■特集■リ・フォームで活性化する

 バブルの時代、右肩上がりに成長することだけを前提に大量の建物がつくられてきた。その後の不況で、商業ビル・オフィスビル・住宅などのストックは飽和状態となった。不況脱出と称する策も、あいかわわらず、年120~150万個の住宅建設と、規制緩和によるビル建設である。日本の住宅の平均寿命が26年、対してドイツ・フランスは70~80年、アメリカは100年、イギリスに至っては実に140年である時代に、もう住宅の戸数主義は終わったと言うべきであろう。しかし一方では、国民の生活に必要な施設は相変わらず不足している。そのアンバランスこそが大問題である。

だが、国民が求める生活関連施設建設のニーズに応える政策への転換には難しいものがある。建物の寿命は経済的要因(効率性)、文化的要因(まちなみ、歴史性)などで決まるが、日本の場合、そのほとんどは経済的要因で決められているのが実態である。現在、都市の大量の産業廃棄物のほとんどが建設関係のゴミであることを考えると、このことは重大な意味を持つ。

いま、都市はストックの時代に入ったとの認識に立つ。産業廃棄物問題の解決と、省エネ・環境循環型社会をめざし、社会資本としての建物をリ・フォームすることによって、地域との結びつきを強め、地域にインパクトを与え、活性化させ、さらに生き続けさせることは、まさに時代の要請となってきている。

今回の特集では、単に文化財としての継承、あるいは建物の同一機能でのリ・フォームではなく、当初の役割を果たし終えた建物がまったく異なった要求によりリ・フォーム(再生)され、新たな価値あるものとして甦り、改めて社会的ストックとして存在している姿を追う。

(特集担当編集委員 細野良三)

建築のリフォームをめぐる課題 三沢  浩

倉庫から芸術村への物語 水野 一郎

蘇る山里

──荻ノ島茅葺き環状集落 春日 俊雄

民家からグループハウスへ 岡沢 和子

デイサービスセンターに生まれ変わった京町家 川本 真澄

地方都市の衰退する商店街の魅力を再生する

──小松市の「角源」の改装 丸谷 博男

オフィスビルを住宅に

──英国におけるオフィスビル改造事業を支える要因と将来見通し ジェームズ・バーロウ

尾崎 立子

スーパーマーケットから市役所へ

──杵築市役所転用事例 細野 良三

 

■連載

《忙中閑》 「市民選択方式」 永橋 爲成

《建築運動史19》 NAUにおける運動史研究 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 研究室と教室の相互作用(琉球大学工学部環境建設工学科) 清水  肇

《主張》 建築とまちづくりをひとびとの手に―― 『建築とまちづくりセミナーinなにわ』をむかえて 大槻 博司

《世界の集合住宅見聞録7》 インターバウ(ベルリンのユニテ)(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き7》 山路酒造(旧北國海道木之本宿) 木下 龍郎

 

《面白かった本・気になる本》

高見沢実『初学者のための都市工学入門』(鹿島出版会)

片方信也『住む 都市と居住空間の設計』(つむぎ出版)

第3次綱領改定素案「新建憲章」 綱領検討委員会

会員読者の皆さん

新建をさらに多くの人たちに広めてください! 全国常任幹事会

 

《ひろば》 

全国常任幹事会報告(7/8-9)/東京支部実践報告会短報/夏の企画・大石さんを囲んで/建築とまちづくりセミナー2000inなにわ~こぞってご参加ください/広島支部結成に向けて/WEB委員会 建築とまちづくりセミナー2000inなにわ お知らせ

 

 

2000年7月号(No.279)

 

■特集■「品質確保法」で住宅の質はよくなるか

 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」がいよいよ施行されました。後を絶たない欠陥住宅は大きな社会問題であり、住宅の確かな性能を知りたいというのは住み手の要求です。これに対して、(1)10年間の瑕疵担保保証、(2)住宅性能表示、(3)紛争処理機構、を主要な柱とするこの法律が有効に機能するのかについては、多くの疑問が出されています。

瑕疵担保期間の延長は評価できるとしても、紛争処理での参考基準が機械的で甘いという指摘があります。性能表示についても、評価項目や評価方法が住宅のトータル性能を表していない、評価を受けやすくするために仕様規定に従うことになって技術の停滞を招く、性能表示項目が一人歩きし無用なトラブルを生みかねない、などの問題を抱えています。さらに、建築士の管理責任との関連に何ら言及がないというのもたいへん奇妙なことと言えます。

いずれにしても、住み手の立場に立って設計や施工を行い、永い付き合いをしてきた設計者や工務店にとっては、手間と費用がかかるだけでなく、性能表示を活用しやすいハウスメーカーや大規模ビルダーより不利な立場になりそうです。

本特集では、「品確法」が施行されたという現状を踏まえて、欠陥住宅の解消を真に良質な住宅を実現する路を探ります。

(特集担当編集委員 鎌田一夫)

 

地域の小規模住宅建設システムと「品確法」 藤澤 好一

住宅品質確保促進法で良質の住tかうがつくれるのか

――欠陥住宅問題に取り組む弁護士の立場から 吉岡 和弘

住宅品質確保促進法(品確法)の瑕疵担保責任 藤井 勝明

住宅設計者の立場で「性能表示」制度を考える 新井 啓一

工務店の本来の役割に徹して 中野 栄吉

「品確法」に工務店組織はどう対応するのか 佐藤 洋助

欠陥住宅に関わって 仙台における活動 平本 重徳

欠陥住宅の実体と解決への道 安藤実治穂

一自治体担当者から見た最近の建築行政の大きな転換について

――主として品確法について 若林 祥文

 

■連載

《忙中閑》 「映画人」と「建築人」 永橋 爲成

《建築運動史18》 NAU四年目の活動と最後の総会 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 リアルな空間と教室の関係(琉球大学工学部環境建設工学科) 清水  肇

《ワーク&ワーク新建48》 安中M邸 難波 伸男

《主張》 「衣・食・住」+「医」を考えよう 平本 重徳

《世界の集合住宅見聞録6》 タピオラ(フィンランド・エスポー) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き6》 北島酒造(旧東海道) 木下 龍郎

 

《面白かった本・気になる本》

林美佐『再発見/ル・コルビュジエの絵画と建築』(彰国者)

中村攻『子どもはどこで犯罪にあっているか』(晶文社)

綱領改定案に向けて 代表幹事・常任幹事等による集中討議

 

《ひろば》 

全国常任幹事会報告(5/26)/新建富山支部 待望の事務所建設/鹿児島支部設立支援/木材高度加工研究と、ゼオライト工場の見学会を計画し参加して/「木造伝統工法とは」というテーマで講演会を行いました/第22回研究集会 分科会も企画もタイトル決定/アメリカ南部のライトとカーン作品を訪ねるツアー

建築とまちづくりセミナー2000inなにわ お知らせ

 

 

2000年6月号(No.278)

 

■特集■21世紀に求められる保育園の役割と園舎の計画

 「ポストの数ほど保育園を」のスローガンで保育所運動が取り組まれた1960年代は、「子どもを生むように行政が頼んだわけではない」「子どもを預けて働くなんて、ひどい母親」と言われた時代であった。以降、女性の社会進出は大幅に進み、1983年には有配偶除せ野有職率が50%を上回った。その間、子どもの発達における集団保育の優位性を明らかにする研究と保育実践が進んだ。1990年代にはいると少子化が社会問題となり、もはや子育ての社会的支援は必要不可欠のものとして認識されるに至っている。しかし社会的支援を強調する裏では、子育ての公的支援を後退させる動きも見え隠れする。

一方で、派遣や期限付雇用等の不安定雇用の増大、女性に対する労働基準法の保護規定の後退等により、保育園長、休日保育、夜間保育等、長時間保育への需要が大きくなっており、子どもたちの生活へのしわ寄せが懸念されながらも、子どもたちの生活の場として保育園の環境がますます重要になってきている。また、希薄になった地域社会での密室育児等、子育て不安が大きくなるなか、地域の子育てセンターとしての役割が保育園に求められている。これらの変化は、保育園舎の計画にも新たな課題を課しているといえるだろう。

期待される役割の増大と、厳しくなる保育園を取り巻く状況のなかで、利用者の要求に応え、子どもたちの豊かな発達を保障していくためには、これからの保育環境・保育園舎の計画はどうあるべきかを展望するため、この特集を企画した。

(特集担当編集委員 小伊藤亜希子)

 

規制緩和がすすむ保育園

――21世紀の保育制度はどうなるか 垣内 国光

地域の子育てセンターとしての保育園舎のあり方

――門のない保育園 青木マリ子

これからの保育園舎の計画に求められるもの 松井  俊

保育園の新築・改築事例  <中央設計>

 

  青梅ゆりかご保育園 村上久美子

  バオバブ保育園 伊藤実和子

駅型保育所の現状と課題 田中 智子

子どもの育つところは明るくなくっちゃ 石川 幸枝

 

■連載

《忙中閑》 人間のための屋外環境 永橋 爲成

《建築運動史17》 NAU三年目の活動と記録のない第四回総会 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 「今頃の若い人達は……」は禁句(大分県立工科短期大学校住居環境科) 伊集院豊麿

《ワーク&ワーク新建47》 水と土の保育園 川内 俊彦

《主張》 災害被災者には充分な公的個人補償を 竹山 清明

《世界の集合住宅見聞録5》 ジーメンスシュタット・ジードルンク(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き5》 旧和中散本舗(旧東海道石部宿六地蔵) 木下 龍郎

 

《面白かった本・気になる本》

春日井道彦『人と街を大切にするドイツのまちづくり』(学芸出版社)

布野修司『裸の建築家――タウンアーキテクト論序説』(建築資料研究社)

 

《ひろば》 

建築とまちづくりセミナー 懇談会、文化行事が決定!/「住宅品質確保促進法」についての学習会を開催/第22回研究集会 記念講演に高畑勲監督決定!!/WEB委員会

綱領改定案に対して寄せられた意見3

 

 

2000年5月号(No.277)

 

■特集■マージナルな空間

 「住宅」というよりは、今回は「家」と言った方がよいかもしれない。

「家」にはただ住むということのほかに、目に見えないことがたくさんあった。

封建社会、あるいは地縁社会にあっては普段使わない玄関や座敷、次の間などがあった。農家には、貧しさの故に部屋を持てない長男以外の次男三男たちの寝床が、出入り口近くの屋根裏部屋にあった。普段は使われない仏間のある家もあった。

現代の住宅が「家」ではなく時から、あるいはnLDKという均一化された空間となった時から、住宅に奥行きがなくなってしまったように思える。

一方、新しい機能をもった空間が住宅に付加されてきていることも確かである。ロフト、サンルーム、地下室、オーディオルームなどがそれであり、これらを単なる単一な機能空間として捉えるのではなく、「家」なるものの一構成部分として捉えなおしてもよいのではないかと思う。

ここで改めて、マージナルな空間の役割を問う。(*マージナルmarginal:へり、縁、欄外、余白)

(特集担当編集委員 丸谷博男)

 

マージナルな空間の概観

   歴史的視点から 畑  聰一

   室内環境的視点から 立花 直美

   デザイン的視点から 丸谷 博男

マージナルな空間

   土間 大沢  匠

   土間 原  雅敏

   バッファーゾーン 上田  徹

   バッファーゾーン 武山  倫

   階段 幸田  章

   中庭 杉浦 英一

   環境装置が街を創る 伊礼  智

 

■連載

《忙中閑》 「市場原理」と設計料 永橋 爲成

《建築運動史16》 NAU二年目の盛り上がりと第三回総会 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 実寸大の風景計画をめざして(千葉大学園芸学部緑地・環境学科環境デザイン学講座) 赤坂  信

《ワーク&ワーク新建46》 兵庫県立リハビリテーション中央病院&福祉のまちづくり工学研究所 黒田 達雄

《主張》 欠陥問題と技術者のあり方――あるマンションシンポジウムでの発言から 高橋 偉之

《世界の集合住宅見聞録4》 ブリッツ・ジードルンク(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き4》 草津宿旧本陣(旧中山道草津宿) 木下 龍郎

 

《ひろば》 

全国幹事会報告(3/25-26)/新建の展望に明るさ 富山の元気は誰が立派か/北海道の新建学校/千葉支部の近況/建築とまちづくりセミナーinなにわ 実行委員会からの中間報告/第22回研究集会短報

綱領改定案に対して寄せられた意見2

 

 

2000年4月号(No.276)

 

■特集■新宿の行方

 新宿は20世紀末の都市論に様々なテーマ、様相、課題を提供してきた。それは都市を語る上で、従来の機能主義都市計画論から大きく逸脱し、記号論を中心に展開される都市論、構造主義都市計画論の重要性を私たちに見せてくれた。

20世紀の新宿は、まさに日本の、そして世界の、変容しカオスであり続ける都市の代表選手だったといえる。

しかし、新宿は機能主義的都市計画をまったく排除したわけではなく、西新宿に見られるように、そうした都市計画論と複雑性を増殖させるような民間活力=資本による都市変容の、何重にも重なったモザイクになっているともいえる。

90年代南新宿の開発も、機能主義的(マスタープラン的)シナリオだけではなく、民間と公共がその場その場の秩序を手探りで探り当てながら、新たな都市空間を生み出してきつつある。

新宿は20世紀の都市開発の表と裏、都市計画の表と裏、都市論の限界と可能性をそのまま体現した「場所」といえるかもしれない。

もう一度新宿を見直し、歩き直して、イメージではない新宿という都市の実相をみる多様な視点を見つけ出したい。

まずは20世紀を説明する説明原理のいくつかを手がかりに、新宿の場所性、身体性を考える。それらが集まった時に、そうした説明原理では捉えきれなかった新宿の姿が浮かび上がれば面白い。それは、20世紀が行き着いた仮想現実の都市論にとどまらない、身体に立脚した21世紀の都市論につながるかもしれない。

(特集担当編集委員 大崎元)

 

新宿副都心は「人口都市」の限界を乗り越えられるか 鎌田 一夫

【新宿マップ】

庶民の暮らしと風俗が語る新宿物語 丸谷 博男

新宿を知るための発見的方法   〈早稲田大学理工学部建築学科都市計画戸沼研究室〉

  新宿の町のボリューム 灰谷香奈子

  歌舞伎町――盛り場の都市計画 松本 泰生

  空き地空間――開発とともに失った私たちの生活空間 李  東毓

潜航するエスニシティ 林   工

「新宿にもう一つの都市の機軸を広げる 大崎  元

劇場があるまちへの眺め 中島 智久

前川國男が見つめていたこと――都市へのまなざしと紀伊国屋書店 松隈  洋

 

■連載

《忙中閑》 夢を育む大学生活 永橋 爲成

《建築運動史15》 NAUの結成と初年度の活動 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 中心市街地の活性化に商・農・学の連携の試み(関西学院大学総合政策学部) 片寄 俊秀

《ワーク&ワーク新建45》 自然素材の環境共生住宅 山崎 博司

《主張》 介護保険実施に伴う住宅改善受精制度改訂に注目しよう 加瀬沢文芳

《世界の集合住宅見聞録3》 カール・マルクス・ホフ(オーストリア・ウィーン) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き3》 逸見酒店(若狭街道熊川宿) 木下 龍郎

 

《面白かった本・気になる本》

ノルウェー環境省編/女性とまちづくり研究会訳 『女性のための草の根のまちづくり』(かもがわ出版)

日比野正己編著『図解バリア・フリー百科』(TBSブリタニカ)

 

《ひろば》 

緊急レポート JR奈良駅舎が取り壊しの危機/岐阜支部ミニ講演会のお知らせ/神奈川支部の再建について/新伝統構法による住宅の完成 公開見学会の呼びかけに応えて(秋田支部)/建まちセミナー準備進む/研究集会実行委員会速報!!

綱領改定案に対して寄せられた意見1

 

 

2000年2/3月号(No.275)

 

■特集■建築設計・職能教育を考える

 UIAは、アメリカなどの意向をふまえ、建築家資格認定や大学教育のあり方について、国際的な基準作りを行いつつある。わが国においても、このような国際的な動きのなかで、建築家職能問題や建築教育問題は、これから大きな変動が予想される。

また、国立大学の独立法人化問題など、大学教育そのものも大きな転換点を迎えようとしている。

このような大変動が予想される時期にあたって、現在の大学などの建築設計・職能教育の現状や問題点を捉え、上記のような流れの中でどのような方向を目指していけばよいのかを考えたい。

新建築家技術者集団の立場からは、外圧や商業主義の波に流されることなく、住民本位・生活者本位の立場からの、建築教育・職能問題について検討を加えたい。

(特集担当編集委員 竹山清明)

 

建築教育の中における設計・職能教育 本多 昭一

建築設計教育の担当者として考えること 竹山 清明

私立大学における建築設計・職能教育 小島 孜

工業高校における卒業設計の取り組みについて

――愛知工業高校建築家の実践から 尾鍋 昭彦

卒業生を受け入れる立場から

<設計事務所>   日本設計・多井清嗣/ネオジオ・横関正人/象地域設計・萩原正道

<建設会社>    豊国建設・栗山立己

<ハウスメーカー> 清水ハウス・佐治郁夫

<地方自治体>   兵庫県営繕課・黒田達雄

◆座談会◆

社会に出てみて建築設計・職能教育を考える 石井 和浩

小杉 光史

竹内 洋子

南  正憲

川本 雅樹

 

■連載

《忙中閑》 駅舎三題 永橋 爲成

《建築運動史14》 民建の人たち 本多 昭一

《ワーク&ワーク新建44》 自分の手で家を作りたい(丹羽邸) 中安 博司

《主張》 第22回全国大会後の財政活動の前進をさらに広げて組織的前進に! 大橋 周二

《世界の集合住宅見聞録2》 スパンゲン集合住宅(オランダ・ロッテルダム) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き2》 伊吹堂(旧中山道柏原宿) 木下 龍郎

 

《面白かった本・気になる本》

佐藤滋編『まちづくりの科学』(鹿島出版会)

三沢浩『A・レーモンドの住宅物語』(建築資料研究社)

 

《ひろば》 

全国常任幹事会報告(1/8-9)/新建学校「北海道」のお知らせ/千葉支部講演会のお知らせ/中国雲南省の小学校建設にご協力を

新建築家技術者集団第22回全国大会決定

 

 

2000年1月号(No.274)

 

■特集■家族と住まいの曖昧な関係

 「住宅」「住まい」とは一体何か?

家族(核家族)の器、という近代以降に流通する認識は、今この時代、激しくその適用可能性を揺さぶられている。単身家族が20%、2人世帯が20%、核家族が35%という現在(国勢調査による)、血族構成員が複数で住む住宅は全体の半分強でしかない。世帯数からいけば血縁家族は圧倒的多数派ではすでにない。ここで近代(核)家族像と、それを前提としてきた住まい像は、もう一度その存立基盤を確かめる必要にさらされている。

――ねぐら、ねどこ

――労働力再生産(摂取、睡眠、生殖、次世代育成)の場

――人間的可能性発達(成長)の場

――精神的生存保障の確保(安心)の場

冒頭の「住まいとは何か」という問いにこのように答えるのだとすれば、「家族」と「住まい」は不即不離の関係にあるかは疑わしい。これらは今現在考えられている血縁家族でなくとも保障できるものだからである。

コレクティブハウスなどの非血縁世帯住宅・コミュニティ、シェルタレス・ホームレスの多大な発生、都市域における単身世帯の増加とそれに伴うワンルームマンションの供給増、多様な住戸タイプを要請する多様な住まい方……。家族と住まいは今やイコールではない。この曖昧な関係。その曖昧さはどこに起因するのだろうか。住まいは家族といかなる関係を切り結ぶのだろうか。

その時点で、では建築は何をどうすべきなのか。従来の(核)家族に安穏とはのれない。家族のありようの変化は現時点での住まいを既存不適格にしかねない。家族と住まいは一対一対応している・すべきという神話を脱却し、両者の新たな関係を展望しない以上、現代住まいはなしくずし的に崩壊するのみである。

家族の解体? それとも復権? オルタナティブファミリー?

それらは住まいといかに関わりうるのか?

血縁以外の結びつき、従来とは違った形態の共同体、親密圏の在り方、その建築的実現としての新住まい像を展望する。

(特集担当編集委員 鎌田一夫・林工)

 

家族と住まいは「曖昧」な関係か 広原 盛明

共に住まうことの意味

――新家族像 山本 厚生

コーポラティブ・スペースを創る

――住まいから地域への足がかりとして 井上  文

単身世帯の増加と家族像 大江 守之

家族と地域のネットワーク 牛山 美緒

個人単位社会と小規模コミュニティ 林   工

情報化社会の実相 黒沢  隆

 

■連載

《忙中閑》 オリーブと法隆寺宝物館 永橋 爲成

《建築運動史13》 NAU結成までの動き――日本民主建築会を中心として 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 医療と福祉と建築を結ぶ 加瀬澤文芳

《ワーク&ワーク新建43》 Aさんのマンション改修工事 泉   徹

《主張》 2000年を迎えて――新建運動の節目に 片方 信也

《世界の集合住宅見聞録1》 ワイゼンホフ集合住宅地(ドイツ・シュトゥッツガルト) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き1》 桶重(旧東海道関宿) 木下 龍郎

 

《面白かった本・気になる本》

青木茂『建物のリサイクル』(学芸出版社)

笠井一子『京の大工棟梁と七人の職人衆』(草思社)

 

《ひろば》 

第22回全国大会レポート/大会討議・報告/奈良支部10周年企画報告

新建築家技術者集団第22回全国大会特別決議

新建築家技術者集団規約(1999.11.22第22回大会改正)

全国幹事・常任幹事・代表幹事・会計監査名簿

「建築とまちづくり」誌の読者の皆様へのご協力の願い

2000年12月号(No.283)
■特集■21世紀の住まい論――建築技術者の職能と役割

 いよいよ20世紀も最後です。今世紀を見直すにあたっては、我々のいちばんのベースとなっている「住まい」に焦点を絞ることによって、様々なことが見えてくるのではないでしょうか。
 高度成長・オイルショック・バブル経済・平成の大不況など、今世紀後半は建築のあり方や価値観が大きく変化しました。中でも都市問題・住宅問題は大きなテーマとなりました。バブル経済の崩壊は都市問題をあらわにするだけでなく、国民経済をも揺るがすこととなりました。
 こうした中、建築家・技術者の多種多様な活動も増えてきました。「住まい手・使い手の要求に合った建築家・技術者の職能はなにか」、これまでの実践活動を通して20世紀の総括と21世紀への方向性を探りたいと思います。

(特集担当編集委員 横関正人)

人々の協同の発展と建築活動 竹山 清明
日本近代住宅の変遷
――20世紀の建築家は何をめざしたか
竹原 義二
寝屋川東大利地区のまちづくりと「まちづくり」における建築家の役割と課題 井上  守
地元の杉材を使った住まいづくりから見えてきたもの 田村 宏明
21世紀の集合住宅維持管理における建築技術者の職能と役割 北村 順一
21世紀における木造住宅の構造安全性能 田原  賢
■連載
《忙中閑》 政治を変えてくらしと環境を守る 加藤 錦弥
《建築運動史22》 建築設計体制の改善をめざして 本多 昭一
《主張》 仮称「建築とまちづくり研究センター」(NPO)構想について 細野 良三
《世界の集合住宅見聞録10》 モーレンフリート(オランダ・ロッテルダム) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き10》 在原の茅葺き住宅 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建51》 サンライフ名島 屋外環境整備の取り組み 松本洋次郎
《面白かった本・気になる本》
  西村幸夫他編著『都市の風景計画――欧米の景観コントロール 手法と実際』(学芸出版社)
  相羽宏紀『欠陥マンション改善の闘い・4500日』(あけび書房)
2000年7月常幹決定の第3次綱領改定素案についての報告 綱領検討委員会・高橋偉之
《ひろば》 新建築家技術者集団設立30周年・第22回全国研究集会開催される

2000年11月号(No.282)
■特集■
originとしての沖縄

 三山・琉球王朝以来、島嶼国家としての琉球は海洋交易を発達させ、日本本土と多く共通するその生活様式・言語をもとに、中国やそれを通じた大陸からの文化的な影響を色濃く受け、本土とはかなり色合いの違う独特な文化・風土を歴史的に形成・維持してきた。豊臣時代以降薩摩藩島津の権勢におさめられ、多数の薩摩藩士を含む明治政府の廃藩置県・琉球処分で日本国沖縄県となった後、国内唯一の地上戦の展開された太平洋戦争、アメリカによる占領・統治を経て、一九七二年に日本に「復帰」し現在に至るまでも、その文化は強固に生き続けている。
 第二次大戦後のアメリカ信託統治下では、政庁のあった本島南部では、一九五三年「土地収用令」に見る厳しい土地接収政策による民衆の犠牲の上に築かれた相対的な繁栄(奇跡の1マイル)、一方で北部や離島の経済的停滞ないしは後退という偏った形態が形成される。「復帰」後もその構造の不均衡は残されており、北部・離島の経済政策はつねに県政の懸案、未発展地域の祈願ともいわれているが、基地移転と引き換えの開発という抱き合わせでの解決(?)の動きは看過できない。もちろん、開発振興策が云々されるということは亜熱帯性の自然環境を多く残しているということでもあり、片や豊かに残る大自然、片や潜在的な開発ポテンシャルの極めて高い観光資源、という両側面を持ち合わせている証左なのだが、振興の美名のもと各種補助事業・公共投資による開発圧力、コンクリートで覆い尽くすゼネコン型の開発策動はつねにのしかかっている。
 南西諸島独特の建築形態・建設様相も目を引く。颱風対策で塗り込められた屋根瓦、出入りの場を限定せずどこからでも上がり込める玄関のない住居、透過性をコントロールするスクリーンとしてのヒンプン、建設用材をたいして期待できない低い山と台湾などからの木材輸入、有力な産業に発展したコンクリートブロック業、県内産業に占める割合が全国一高い建設業など、文化としての建築、産業としての建設業は、非常に独自で特徴的な様相を見せている。
 生活場面での特徴もユニークだ。神聖な亀甲墓を中心にする血族関係、コミュニティのありよう、聖職・神事を女性が務める女系社会、アニミズムを現前するウタキ(御獄)、ノロ(祝女)、ユタ(巫女)……。ヤマト文化と土着文化の融合する沖縄の、知られていない伝統的な生活のありよう、民俗・文化諸関係は非常に多様である。
 また、「沖縄」と聞けば基地問題を思い出さない人はいまい。日本政府に押しつけられ居座り続けられている米軍基地と地域計画・都市計画との齟齬、まちづくりへの影響、基地需要に依存せざるを得なかった経済、以降の経済展開さえ不可能にする基地の圧倒的存在……。横田や座間、厚木とて、沖縄県土の11%(本島においては20%、その多くが住宅地・農牧地)を占める基地が与える威圧感に比べれば、まだおとなしいというべきかも知れない。県内で物議をかもした琉球大学教授陣による基地との共存を積極的に打ち出した新保守派のマニフェスト「沖縄イニシアチブ」の発表とそれに対する県下の否定的反響は、ヤマト政府に取り込まれることなく、沖縄に基地を内面化させる永田町の圧力に抗する理論的対応を、沖縄自身に要請しているのではないか――。 
 沖縄をエキゾチックに「彼の地」と呼び続けていてよいのかという本土側の疑問と、「復帰」後も衰えを感じさせない県民の「沖縄独自意識」とは、両者ともに説得的に訴えかける。ヤマトンチュもウチナンチュも、日本国籍を持つわれわれは、「彼の地」沖縄「此の地」沖縄にどう向き合ったらいいのだろうか。
 沖縄は知られていない。あるいはすでに知ったつもりになっている。まずは現実を認識することから始めたい。沖縄の建築とまちづくりのいま、生活の諸側面のいま、政治と文化と産業のいまを、各論考から探っていきたいと考える。
(特集担当編集委員 林工)

戦後史のなかの生活空間 清水  肇
沖縄の風土とまちづくり 崎山 正美
南風原町の「字展」風景 平良 次子
北中城村の地域遺産とまちづくり 備瀬ヒロ子
平良美穂子
歴史的町並み保存と観光の両立
――生活の場としての歴史空間
上勢頭芳徳
渡名喜島伝建地区選定までとこれから 前原 信達
米軍の長期計画による新たな航空基地建設の真相 真喜志好一
炭坑のカナリアの歌声
──「島田懇談会」事業批判
宮城 康博
アジア的涼感生活から学ぶもの 伊礼  智
南島型集住様式 伊志嶺敏子
亜熱帯の都市デザイン 中農 一也
新しい風土共同体の構築がたたかう力に
──あとがき的な考察
三村 浩史
■連載
《忙中閑》 どう生きるのか? 加藤 錦弥
《建築運動史21》 集団的共同設計の模索 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 講義室から見た当世学生気質 荒居 康明
《主張》 住まいづくりにおける“家族”の再構築から 水野 久枝
《世界の集合住宅見聞録9》 テームズミード(イギリス・ロンドン) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き9》 板取宿の茅葺き集落(旧北國街道板取宿) 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建50》 なでしこの里 虹の里 谷守 正康
《面白かった本・気になる本》
  山崎泰孝『劇場の計画と運営――柔らかい建築へ』(鹿島出版会)
  中村圭介『文明開化と明治の住まい――暮らしとインテリアの近代史(上)』(理工学社)
2000年7月常幹決定の第3次綱領改定素案についての報告 綱領検討委員会・高橋偉之
《ひろば》 全国幹事会(00/9/15-16)報告/建築とまちづくりセミナー2000inなにわ~大成功に終わる/鹿児島支部結成総会開かれる/「新建ふくおか」百号記念座談会/千葉支部建築セミナー建築見学会報告/介護保険と住宅改修勉強会3/「地球環境と木造の住まい―木造伝統工法に学ぶ」を終えて

2000年10月号(No.281)
■特集■
京都に高速道路は必要か!?

 京都の都市としての歴史的な価値については今さら言うまでもないが、かつてユネスコが、奈良とともに「全人類共有の財産」として保全を勧告したように(「京都・奈良の都市計画における歴史的地域の保存と開発についての勧告」一九七〇年)、ヨーロッパの石とレンガの文化と対比される木造建築文化の様式を現代に伝え、都市全体が巨大な文化財となっている。
 ところが、高度経済成長期に入った頃から町家が連なる低層高密の町並みは崩され、高層ビルも林立するようになった。一九八〇年代後半、日本全国に吹き荒れた民活・バブル経済の嵐は京都にも襲いかかり、応仁の乱以来とも称される激しい「まちこわし」に見舞われた。京都府・京都市などの自治体は「まちこわし」を推進する側に立ち、歴史都市・京都の破壊は急激に進行した。その最後を飾るのが京都ホテルと京都駅ビルの建設であった。そして今「京都高速道路」が歴史的な市街地にくさびを打ち込むように「まちこわし」の新たな波を引き起こそうとしている。
 しかし、京都高速道路の計画は、京都市以外では余り知られておらず、市内でも沿道地域を除くと決して関心が高いとはいえないのが現実である。
 そこで本特集では、京都高速道路計画の必要性や問題点を検討するとともに、自動車に依存しない京都の交通とまちづくりの方向を提示する。また、長年にわたって道路公害と闘ってきた阪神間の西淀川、尼崎の経験から京都が学ぶべき教訓とは何かを考えてみたい。
 都市高速道路が人々の健康やまちづくりに大きな弊害をもたらすことを広く知ってもらうと同時に、自動車利用が当たり前となっている私たちの都市生活を見直していく契機となることを願う。

(特集担当編集委員 榎田基明)

京都高速道路計画路線図・計画概要
なぜ、京都に都市高速道路なのか
――計画の性格と背景
榎田 基明
◆座談会◆
都市高速道路でまちと暮らしはどうなるのか
――西淀川・尼崎の経験から学ぶ
傘木 宏夫
松  光子
谷口  博
荒井 正治
京都の交通再生プラン 近藤 宏一
21世紀を見すえたまちづくりと交通プランを考える 土居 靖範
道路公害と健康被害
――京都市内の大気汚染の実態とその健康被害
谷田 悟郎
足立  明
地球温暖化と自動車交通 兒山 真也
京都高速道路の財政問題 藤井 佐富
京都の道路住民運動は工事着工で新たな段階に
──公団の札束攻勢に対しまちづくり運動で対抗
京都道路問題連絡協議会
■連載
《忙中閑》 私と労働運動 加藤 錦弥
《建築運動史20》 建築研究団体連絡会 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 体験を通して問題意識をつかみ取ろう 西田 和美
《主張》 新建30年をバネにひと廻り大きくなろう 山本 厚生
《世界の集合住宅見聞録8》 インターバウ57(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き8》 菊水飴本舗(旧北國街道) 木下 龍郎
《面白かった本・気になる本》
  佐藤浩司編『建築人類学・世界の住まいを読む② 住まいにつどう』(学芸出版社)
  上野勝代・川越潔子・小伊藤亜希子・室崎生子『女性の仕事おこし、まちづくり』(学芸出版社)
設立30周年を迎えて 新建築家技術者集団代表幹事
新建築家技術者集団・支部活動一覧(1994~1999)
《ひろば》 鹿児島支部近況/福岡支部「新建を知る会」で4名の新入会員/西山夘三記念すまい・まちづくり文庫主催「西山夘三と日本のすまい展―20世紀・すまいのアーカイブス」/介護保険と住宅改修勉強会2/建まちセミナー開催

20008/9月号(No.280
■特集■
リ・フォームで活性化する

 バブルの時代、右肩上がりに成長することだけを前提に大量の建物がつくられてきた。その後の不況で、商業ビル・オフィスビル・住宅などのストックは飽和状態となった。不況脱出と称する策も、あいかわわらず、年120~150万個の住宅建設と、規制緩和によるビル建設である。日本の住宅の平均寿命が26年、対してドイツ・フランスは70~80年、アメリカは100年、イギリスに至っては実に140年である時代に、もう住宅の戸数主義は終わったと言うべきであろう。しかし一方では、国民の生活に必要な施設は相変わらず不足している。そのアンバランスこそが大問題である。
 だが、国民が求める生活関連施設建設のニーズに応える政策への転換には難しいものがある。建物の寿命は経済的要因(効率性)、文化的要因(まちなみ、歴史性)などで決まるが、日本の場合、そのほとんどは経済的要因で決められているのが実態である。現在、都市の大量の産業廃棄物のほとんどが建設関係のゴミであることを考えると、このことは重大な意味を持つ。
 いま、都市はストックの時代に入ったとの認識に立つ。産業廃棄物問題の解決と、省エネ・環境循環型社会をめざし、社会資本としての建物をリ・フォームすることによって、地域との結びつきを強め、地域にインパクトを与え、活性化させ、さらに生き続けさせることは、まさに時代の要請となってきている。
 今回の特集では、単に文化財としての継承、あるいは建物の同一機能でのリ・フォームではなく、当初の役割を果たし終えた建物がまったく異なった要求によりリ・フォーム(再生)され、新たな価値あるものとして甦り、改めて社会的ストックとして存在している姿を追う。

(特集担当編集委員 細野良三)

建築のリフォームをめぐる課題 三沢  浩
倉庫から芸術村への物語 水野 一郎
蘇る山里
──荻ノ島茅葺き環状集落
春日 俊雄
民家からグループハウスへ 岡沢 和子
デイサービスセンターに生まれ変わった京町家 川本 真澄
地方都市の衰退する商店街の魅力を再生する
──小松市の「角源」の改装
丸谷 博男
オフィスビルを住宅に
──英国におけるオフィスビル改造事業を支える要因と将来見通し
ジェームズ・バーロウ
尾崎 立子
スーパーマーケットから市役所へ
──杵築市役所転用事例
細野 良三
■連載
《忙中閑》 「市民選択方式」 永橋 爲成
《建築運動史19》 NAUにおける運動史研究 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 研究室と教室の相互作用(琉球大学工学部環境建設工学科) 清水  肇
《主張》 建築とまちづくりをひとびとの手に―― 『建築とまちづくりセミナーinなにわ』をむかえて 大槻 博司
《世界の集合住宅見聞録7》 インターバウ(ベルリンのユニテ)(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き7》 山路酒造(旧北國海道木之本宿) 木下 龍郎
《面白かった本・気になる本》
  高見沢実
初学者のための都市工学入門』(鹿島出版会)
  片方信也『住む 都市と居住空間の設計』(つむぎ出版)
第3次綱領改定素案「新建憲章」 綱領検討委員会
会員読者の皆さん
新建をさらに多くの人たちに広めてください!
全国常任幹事会
《ひろば》 全国常任幹事会報告(7/8-9)/東京支部実践報告会短報/夏の企画・大石さんを囲んで/建築とまちづくりセミナー2000inなにわ~こぞってご参加ください/広島支部結成に向けて/WEB委員会
建築とまちづくりセミナー2000inなにわ お知らせ

2000年7月号(No.279
■特集■
「品質確保法」で住宅の質はよくなるか

 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」がいよいよ施行されました。後を絶たない欠陥住宅は大きな社会問題であり、住宅の確かな性能を知りたいというのは住み手の要求です。これに対して、(1)10年間の瑕疵担保保証、(2)住宅性能表示、(3)紛争処理機構、を主要な柱とするこの法律が有効に機能するのかについては、多くの疑問が出されています。
 瑕疵担保期間の延長は評価できるとしても、紛争処理での参考基準が機械的で甘いという指摘があります。性能表示についても、評価項目や評価方法が住宅のトータル性能を表していない、評価を受けやすくするために仕様規定に従うことになって技術の停滞を招く、性能表示項目が一人歩きし無用なトラブルを生みかねない、などの問題を抱えています。さらに、建築士の管理責任との関連に何ら言及がないというのもたいへん奇妙なことと言えます。
 いずれにしても、住み手の立場に立って設計や施工を行い、永い付き合いをしてきた設計者や工務店にとっては、手間と費用がかかるだけでなく、性能表示を活用しやすいハウスメーカーや大規模ビルダーより不利な立場になりそうです。
 本特集では、「品確法」が施行されたという現状を踏まえて、欠陥住宅の解消を真に良質な住宅を実現する路を探ります。

(特集担当編集委員 鎌田一夫)

地域の小規模住宅建設システムと「品確法」 藤澤 好一
住宅品質確保促進法で良質の住tかうがつくれるのか
――欠陥住宅問題に取り組む弁護士の立場から
吉岡 和弘
住宅品質確保促進法(品確法)の瑕疵担保責任 藤井 勝明
住宅設計者の立場で「性能表示」制度を考える 新井 啓一
工務店の本来の役割に徹して 中野 栄吉
「品確法」に工務店組織はどう対応するのか 佐藤 洋助
欠陥住宅に関わって 仙台における活動 平本 重徳
欠陥住宅の実体と解決への道 安藤実治穂
一自治体担当者から見た最近の建築行政の大きな転換について
――主として品確法について
若林 祥文
■連載
《忙中閑》 「映画人」と「建築人」 永橋 爲成
《建築運動史18》 NAU四年目の活動と最後の総会 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 リアルな空間と教室の関係(琉球大学工学部環境建設工学科) 清水  肇
《ワーク&ワーク新建48》 安中M邸 難波 伸男
《主張》 「衣・食・住」+「医」を考えよう 平本 重徳
《世界の集合住宅見聞録6》 タピオラ(フィンランド・エスポー) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き6》 北島酒造(旧東海道) 木下 龍郎
《面白かった本・気になる本》
  林美佐『再発見/ル・コルビュジエの絵画と建築』(彰国者)
  中村攻『子どもはどこで犯罪にあっているか』(晶文社)
綱領改定案に向けて 代表幹事・常任幹事等による集中討議
《ひろば》 全国常任幹事会報告(5/26)/新建富山支部 待望の事務所建設/鹿児島支部設立支援/木材高度加工研究と、ゼオライト工場の見学会を計画し参加して/「木造伝統工法とは」というテーマで講演会を行いました/第22回研究集会 分科会も企画もタイトル決定/アメリカ南部のライトとカーン作品を訪ねるツアー
建築とまちづくりセミナー2000inなにわ お知らせ

20006月号(No.278
■特集■
21世紀に求められる保育園の役割と園舎の計画

 「ポストの数ほど保育園を」のスローガンで保育所運動が取り組まれた1960年代は、「子どもを生むように行政が頼んだわけではない」「子どもを預けて働くなんて、ひどい母親」と言われた時代であった。以降、女性の社会進出は大幅に進み、1983年には有配偶除せ野有職率が50%を上回った。その間、子どもの発達における集団保育の優位性を明らかにする研究と保育実践が進んだ。1990年代にはいると少子化が社会問題となり、もはや子育ての社会的支援は必要不可欠のものとして認識されるに至っている。しかし社会的支援を強調する裏では、子育ての公的支援を後退させる動きも見え隠れする。
 一方で、派遣や期限付雇用等の不安定雇用の増大、女性に対する労働基準法の保護規定の後退等により、保育園長、休日保育、夜間保育等、長時間保育への需要が大きくなっており、子どもたちの生活へのしわ寄せが懸念されながらも、子どもたちの生活の場として保育園の環境がますます重要になってきている。また、希薄になった地域社会での密室育児等、子育て不安が大きくなるなか、地域の子育てセンターとしての役割が保育園に求められている。これらの変化は、保育園舎の計画にも新たな課題を課しているといえるだろう。
 期待される役割の増大と、厳しくなる保育園を取り巻く状況のなかで、利用者の要求に応え、子どもたちの豊かな発達を保障していくためには、これからの保育環境・保育園舎の計画はどうあるべきかを展望するため、この特集を企画した。

(特集担当編集委員 小伊藤亜希子)

規制緩和がすすむ保育園
――21世紀の保育制度はどうなるか
垣内 国光
地域の子育てセンターとしての保育園舎のあり方
――門のない保育園
青木マリ子
これからの保育園舎の計画に求められるもの 松井  俊
保育園の新築・改築事例  <中央設計>
  青梅ゆりかご保育園 村上久美子
  バオバブ保育園 伊藤実和子
駅型保育所の現状と課題 田中 智子
子どもの育つところは明るくなくっちゃ 石川 幸枝
■連載
《忙中閑》 人間のための屋外環境 永橋 爲成
《建築運動史17》 NAU三年目の活動と記録のない第四回総会 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 「今頃の若い人達は……」は禁句(大分県立工科短期大学校住居環境科) 伊集院豊麿
《ワーク&ワーク新建47》 水と土の保育園 川内 俊彦
《主張》 災害被災者には充分な公的個人補償を 竹山 清明
《世界の集合住宅見聞録5》 ジーメンスシュタット・ジードルンク(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き5》 旧和中散本舗(旧東海道石部宿六地蔵) 木下 龍郎
《面白かった本・気になる本》
  春日井道彦『人と街を大切にするドイツのまちづくり』(学芸出版社)
  布野修司『裸の建築家――タウンアーキテクト論序説』(建築資料研究社)
《ひろば》 建築とまちづくりセミナー 懇談会、文化行事が決定!/「住宅品質確保促進法」についての学習会を開催/第22回研究集会 記念講演に高畑勲監督決定!!/WEB委員会
綱領改定案に対して寄せられた意見3

2000年5月号(No.277
■特集■
マージナルな空間

 「住宅」というよりは、今回は「家」と言った方がよいかもしれない。
 「家」にはただ住むということのほかに、目に見えないことがたくさんあった。
 封建社会、あるいは地縁社会にあっては普段使わない玄関や座敷、次の間などがあった。農家には、貧しさの故に部屋を持てない長男以外の次男三男たちの寝床が、出入り口近くの屋根裏部屋にあった。普段は使われない仏間のある家もあった。
現代の住宅が「家」ではなく時から、あるいはnLDKという均一化された空間となった時から、住宅に奥行きがなくなってしまったように思える。
 一方、新しい機能をもった空間が住宅に付加されてきていることも確かである。ロフト、サンルーム、地下室、オーディオルームなどがそれであり、これらを単なる単一な機能空間として捉えるのではなく、「家」なるものの一構成部分として捉えなおしてもよいのではないかと思う。
 ここで改めて、マージナルな空間の役割を問う。(*マージナルmarginal:へり、縁、欄外、余白)

(特集担当編集委員 丸谷博男)

マージナルな空間の概観
   歴史的視点から 畑  聰一
   室内環境的視点から 立花 直美
   デザイン的視点から 丸谷 博男
マージナルな空間
   土間 大沢  匠
   土間 原  雅敏
   バッファーゾーン 上田  徹
   バッファーゾーン 武山  倫
   階段 幸田  章
   中庭 杉浦 英一
   環境装置が街を創る 伊礼  智
■連載
《忙中閑》 「市場原理」と設計料 永橋 爲成
《建築運動史16》 NAU二年目の盛り上がりと第三回総会 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 実寸大の風景計画をめざして(千葉大学園芸学部緑地・環境学科環境デザイン学講座) 赤坂  信
《ワーク&ワーク新建46》 兵庫県立リハビリテーション中央病院&福祉のまちづくり工学研究所 黒田 達雄
《主張》 欠陥問題と技術者のあり方――あるマンションシンポジウムでの発言から 高橋 偉之
《世界の集合住宅見聞録4》 ブリッツ・ジードルンク(ドイツ・ベルリン) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き4》 草津宿旧本陣(旧中山道草津宿) 木下 龍郎
《ひろば》 全国幹事会報告(3/25-26)/新建の展望に明るさ 富山の元気は誰が立派か/北海道の新建学校/千葉支部の近況/建築とまちづくりセミナーinなにわ 実行委員会からの中間報告/第22回研究集会短報
綱領改定案に対して寄せられた意見2

2000年4月号(No.276
■特集■
新宿の行方

 新宿は20世紀末の都市論に様々なテーマ、様相、課題を提供してきた。それは都市を語る上で、従来の機能主義都市計画論から大きく逸脱し、記号論を中心に展開される都市論、構造主義都市計画論の重要性を私たちに見せてくれた。
 20世紀の新宿は、まさに日本の、そして世界の、変容しカオスであり続ける都市の代表選手だったといえる。
 しかし、新宿は機能主義的都市計画をまったく排除したわけではなく、西新宿に見られるように、そうした都市計画論と複雑性を増殖させるような民間活力=資本による都市変容の、何重にも重なったモザイクになっているともいえる。
 90年代南新宿の開発も、機能主義的(マスタープラン的)シナリオだけではなく、民間と公共がその場その場の秩序を手探りで探り当てながら、新たな都市空間を生み出してきつつある。
 新宿は20世紀の都市開発の表と裏、都市計画の表と裏、都市論の限界と可能性をそのまま体現した「場所」といえるかもしれない。
 もう一度新宿を見直し、歩き直して、イメージではない新宿という都市の実相をみる多様な視点を見つけ出したい。
 まずは20世紀を説明する説明原理のいくつかを手がかりに、新宿の場所性、身体性を考える。それらが集まった時に、そうした説明原理では捉えきれなかった新宿の姿が浮かび上がれば面白い。それは、20世紀が行き着いた仮想現実の都市論にとどまらない、身体に立脚した21世紀の都市論につながるかもしれない。

(特集担当編集委員 大崎元)

新宿副都心は「人口都市」の限界を乗り越えられるか 鎌田 一夫
【新宿マップ】
庶民の暮らしと風俗が語る新宿物語 丸谷 博男
新宿を知るための発見的方法   〈早稲田大学理工学部建築学科都市計画戸沼研究室〉
  新宿の町のボリューム 灰谷香奈子
  歌舞伎町――盛り場の都市計画 松本 泰生
  空き地空間――開発とともに失った私たちの生活空間 李  東毓
潜航するエスニシティ 林   工
「新宿にもう一つの都市の機軸を広げる 大崎  元
劇場があるまちへの眺め 中島 智久
前川國男が見つめていたこと――都市へのまなざしと紀伊国屋書店 松隈  洋
■連載
《忙中閑》 夢を育む大学生活 永橋 爲成
《建築運動史15》 NAUの結成と初年度の活動 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 中心市街地の活性化に商・農・学の連携の試み(関西学院大学総合政策学部) 片寄 俊秀
《ワーク&ワーク新建45》 自然素材の環境共生住宅 山崎 博司
《主張》 介護保険実施に伴う住宅改善受精制度改訂に注目しよう 加瀬沢文芳
《世界の集合住宅見聞録3》 カール・マルクス・ホフ(オーストリア・ウィーン) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き3》 逸見酒店(若狭街道熊川宿) 木下 龍郎
《面白かった本・気になる本》
  ノルウェー環境省編/女性とまちづくり研究会訳 『女性のための草の根のまちづくり』(かもがわ出版)
  日比野正己編著『図解バリア・フリー百科』(TBSブリタニカ)
《ひろば》 緊急レポート JR奈良駅舎が取り壊しの危機/岐阜支部ミニ講演会のお知らせ/神奈川支部の再建について/新伝統構法による住宅の完成 公開見学会の呼びかけに応えて(秋田支部)/建まちセミナー準備進む/研究集会実行委員会速報!!
綱領改定案に対して寄せられた意見1

2000年2/3月号(No.275
■特集■
建築設計・職能教育を考える

 UIAは、アメリカなどの意向をふまえ、建築家資格認定や大学教育のあり方について、国際的な基準作りを行いつつある。わが国においても、このような国際的な動きのなかで、建築家職能問題や建築教育問題は、これから大きな変動が予想される。
 また、国立大学の独立法人化問題など、大学教育そのものも大きな転換点を迎えようとしている。
 このような大変動が予想される時期にあたって、現在の大学などの建築設計・職能教育の現状や問題点を捉え、上記のような流れの中でどのような方向を目指していけばよいのかを考えたい。
 新建築家技術者集団の立場からは、外圧や商業主義の波に流されることなく、住民本位・生活者本位の立場からの、建築教育・職能問題について検討を加えたい。

(特集担当編集委員 竹山清明)

建築教育の中における設計・職能教育 本多 昭一
建築設計教育の担当者として考えること 竹山 清明
私立大学における建築設計・職能教育 小島 孜
工業高校における卒業設計の取り組みについて
――愛知工業高校建築家の実践から
尾鍋 昭彦
卒業生を受け入れる立場から
 <設計事務所>   日本設計・多井清嗣/ネオジオ・横関正人/象地域設計・萩原正道
 <建設会社>    豊国建設・栗山立己
 <ハウスメーカー> 清水ハウス・佐治郁夫
 <地方自治体>   兵庫県営繕課・黒田達雄
◆座談会◆
社会に出てみて建築設計・職能教育を考える
石井 和浩
小杉 光史
竹内 洋子
南  正憲
川本 雅樹
■連載
《忙中閑》 駅舎三題 永橋 爲成
《建築運動史14》 民建の人たち 本多 昭一
《ワーク&ワーク新建44》 自分の手で家を作りたい(丹羽邸) 中安 博司
《主張》 第22回全国大会後の財政活動の前進をさらに広げて組織的前進に! 大橋 周二
《世界の集合住宅見聞録2》 スパンゲン集合住宅(オランダ・ロッテルダム) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き2》 伊吹堂(旧中山道柏原宿) 木下 龍郎
《面白かった本・気になる本》
  佐藤滋編『まちづくりの科学』(鹿島出版会)
  三沢浩『A・レーモンドの住宅物語』(建築資料研究社)
《ひろば》 全国常任幹事会報告(1/8-9)/新建学校「北海道」のお知らせ/千葉支部講演会のお知らせ/中国雲南省の小学校建設にご協力を
新建築家技術者集団第22回全国大会決定

2000年1月号(No.274
■特集■
家族と住まいの曖昧な関係

 「住宅」「住まい」とは一体何か?
 家族(核家族)の器、という近代以降に流通する認識は、今この時代、激しくその適用可能性を揺さぶられている。単身家族が20%、2人世帯が20%、核家族が35%という現在(国勢調査による)、血族構成員が複数で住む住宅は全体の半分強でしかない。世帯数からいけば血縁家族は圧倒的多数派ではすでにない。ここで近代(核)家族像と、それを前提としてきた住まい像は、もう一度その存立基盤を確かめる必要にさらされている。
 ――ねぐら、ねどこ
 ――労働力再生産(摂取、睡眠、生殖、次世代育成)の場
 ――人間的可能性発達(成長)の場
 ――精神的生存保障の確保(安心)の場
 冒頭の「住まいとは何か」という問いにこのように答えるのだとすれば、「家族」と「住まい」は不即不離の関係にあるかは疑わしい。これらは今現在考えられている血縁家族でなくとも保障できるものだからである。
 コレクティブハウスなどの非血縁世帯住宅・コミュニティ、シェルタレス・ホームレスの多大な発生、都市域における単身世帯の増加とそれに伴うワンルームマンションの供給増、多様な住戸タイプを要請する多様な住まい方……。家族と住まいは今やイコールではない。この曖昧な関係。その曖昧さはどこに起因するのだろうか。住まいは家族といかなる関係を切り結ぶのだろうか。
 その時点で、では建築は何をどうすべきなのか。従来の(核)家族に安穏とはのれない。家族のありようの変化は現時点での住まいを既存不適格にしかねない。家族と住まいは一対一対応している・すべきという神話を脱却し、両者の新たな関係を展望しない以上、現代住まいはなしくずし的に崩壊するのみである。
 家族の解体? それとも復権? オルタナティブファミリー?
 それらは住まいといかに関わりうるのか?
 血縁以外の結びつき、従来とは違った形態の共同体、親密圏の在り方、その建築的実現としての新住まい像を展望する。
(特集担当編集委員 鎌田一夫・林工)

家族と住まいは「曖昧」な関係か 広原 盛明
共に住まうことの意味
――新家族像
山本 厚生
コーポラティブ・スペースを創る
――住まいから地域への足がかりとして
井上  文
単身世帯の増加と家族像 大江 守之
家族と地域のネットワーク 牛山 美緒
個人単位社会と小規模コミュニティ 林   工
情報化社会の実相 黒沢  隆
■連載
《忙中閑》 オリーブと法隆寺宝物館 永橋 爲成
《建築運動史13》 NAU結成までの動き――日本民主建築会を中心として 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 医療と福祉と建築を結ぶ 加瀬澤文芳
《ワーク&ワーク新建43》 Aさんのマンション改修工事 泉   徹
《主張》 2000年を迎えて――新建運動の節目に 片方 信也
《世界の集合住宅見聞録1》 ワイゼンホフ集合住宅地(ドイツ・シュトゥッツガルト) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き1》 桶重(旧東海道関宿) 木下 龍郎
《面白かった本・気になる本》
  青木茂『建物のリサイクル』(学芸出版社)
  笠井一子『京の大工棟梁と七人の職人衆』(草思社)
《ひろば》 第22回全国大会レポート/大会討議・報告/奈良支部10周年企画報告
新建築家技術者集団第22回全国大会特別決議
新建築家技術者集団規約(1999.11.22第22回大会改正)
全国幹事・常任幹事・代表幹事・会計監査名簿
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