2005年1〜12月号(建まちバックナンバー)

発行月 通算  特集
12月号 No.339 縮む社会/歪む社会 その2 人口減少下での家族と住まい
11月号 No.338 自治体民営化!?――行政の役割を問う
10月号 No.337 2005 建築とまちづくりセミナーin札幌
9月号 No.336 縮む社会/歪む社会 その1 人口減少社会の実像
8月号 No.335 介護保険見直しと住まい・まちづくり
7月号 No.334 大規模建築の圧迫感を追う
5/6月号 No.333 迷走する住宅政策を糾す
4月号 No.332 阪神淡路大震災から10年 その2 災害列島に抗して(下)
3月号 No.331 阪神淡路大震災から10年 その2 災害列島に抗して(上)
2月号 No.330 まちをつむぐ小さな造園
1月号 No.329 市阪神・淡路大震災から10年 その1 復興という開発の10年

2005年12月号(No.339)

特集 縮む社会/歪む社会 その2 人口減少下での家族と住まい

 人口減少がついに現実のものとなった。少子高齢化とあわせてこの事態は社会にどんな影響を及ぼすのか。今回は家族とすまい、そしてそれを取り巻くコミュニティについて考えてみたい。
 すでに近代的な核家族は多数を占めず、単身世帯、高齢夫婦世帯などが増加している。現行婚姻制度の支配力は弱体化し、法律婚の減少、離婚の増加、婚外子や「片親の子ども」も増えていくだろう。家族のありようが変わり、それにしたがって「家族タイプ」は増えていく。
 こうした「家族」はどのように住まうのか。伝統的な「大家族居住モデル」はすでに衰退し、近代的な「核家族居住モデル」も一オプションとなり、独居やワンルーム、寮や社会住宅居住等の「単身居住モデル」、血縁にしばられないグループホーム、コレクティブ等の「親密圏居住モデル」などが勢力を伸ばすと予想できる。
 少子化によって分割相続は減り、住宅取得に対する困難が相対的に低下することはあり得る。しかし一方で、政策的に公認された「希望格差社会」に象徴される階層の二極化は、セーフティーネット論というまやかしの対応で解決を見込むことはできまい。
 「官」の縮小をめざす政府は少子高齢化時代の介護や育児を市場的に解決しようと目論んでいるが、その「原理主義的信仰」の不全性はすでに多方面から指摘されている。すでに広がりつつある民間非営利の地域的取り組みがそのフォローをすることにあることは明白で、コミュニティへの期待は否が応にも高まる。近代において家族がまかなっていたケア機能はその枠を越えて広がらざるを得ず、その意味で社会化される。そしてそうした非営利な仕事には、リタイア後の高齢者や主婦などの非市場労働力が期待されよう。
 こうした近未来において「住まい」とそこでの生活はどうなるか。近代的な「核家族居住」は今後も有力なオプションであるにはちがいない一方で、高齢者向けケア付きグループホーム、単身者から既婚世帯も対象にしたコレクティブハウスなどの実践は、血縁の枠に収まらない親密圏を先取りして空間的に展開されている。血縁を越える新しい家族像・居住像・生活像・コミュニティ像を見据える必要がある。
 今回の特集では、今後予想されるこうしたあり方を実践の報告を交えて多面的に探っていきたい。 (特集担当編集委員/林工)

・特集■ 縮む社会/歪む社会 その2 人口減少下での家族と住まい
・変貌する家族・住まい・コミュニティ/上野 千鶴子
・ネットワーク居住から見た住宅と家族/近江 隆
・さっぽろ住まいのプラットフォーム
     ――人口減少・超高齢化社会での多様な住要求とその対応/瀬戸口 剛
・コーポラティブハウスとコミュニティ/伴 年晶
・家族でない人との素敵な暮らしかたとは/井上 文
・老後世代の協同生活/高橋 英與
・コレクティブタウンの提案/牛山 美緒

・忙中閑 決議して/高橋 偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 8 タルカプロジェクト/井原 満明
・居住の貧困と都市住宅 #3 ある同潤会アパートメントの落日/大崎 元
・主張 耐震偽装問題について/竹山 清明
追悼・武基雄先生 南極の宿舎と『市民としての建築家』の武先生/本多 昭一
・構造設計偽造問題についての見解/新建常任幹事会
・面白かった本・気になる本 『次世代のアメリカの都市づくり』 『近代建築を記憶する』
・新建第25回全国大会決定
・新建第25回全国大会特別決議
・新建第25回大会報告 討議のまとめ/加瀬澤 文芳
・第6回新建賞発表
・「新建賞」の内容について/三沢 浩
新建のひろば


2005年11月号(No.338)

特集 自治体民営化!?――行政の役割を問う

 「構造改革」が叫ばれ、行政規模を縮小した「小さな政府」がめざされている。国レベルでは特殊法人の廃止や郵政・道路公団の民営化、規制緩和、地方分権を促す「三位一体の改革」など、地方では福祉・社会教育業務のアウトソーシング化=専門職の民間依存、公的施設の建設・運営の民間委託、公共事業の全般的な縮減として表れてきた。  その背景には民間なら破綻が確実な財政の悪化(国・地方合わせて七七〇兆円の負債、千兆円とも)があり、業務を進める経済的基盤が貧弱になっているという厳しい事情がある。しかし、いくら小さな政府と叫んだところで、国民・市民に対して果たすべき義務(ソフトとしての政策やハードとしてのインフラ)やそのための支出は必須だし、また一方、公共事業により金回りをよくするという従来型の手法が放棄されたわけでもない。  こうした状況で導入されたのが、民間の資力を導入して公共事業をすすめようとするPFI(プライベート・ファイナンシャル・イニシアティブ)や指定管理者制度などのNPM(ニュー・パブリック・マネージメント)と呼ばれる手法である。  しかしNPM的手法には、事業主体がその都度入札によって決まることで継続性や蓄積が期待できなくなる、窓口職員が非公務員となり市民の直接の声が政策に反映されづらい、現業は民間の不安定就労によるマニュアル労働になりかねない等々、多数の問題点が指摘されている。経済的にも、結局は税金を特定民間企業に還流するだけではないかという批判もある。  本特集では、公共事業の本来の役割、民間資力の生かし方、住民に対する行政の責任等について、「住民主体の地方自治」という観点から現在の状況を検討したい。 (特集担当編集委員/進士善啓)

・特集■ 自治体民営化!?――行政の役割を問う
・構造改革と公共事業「改革」/中山 徹 
・英国の都市再生とPFI/久守 一敏 
・東京都に見るNPM手法/森田 稔 
・自治体民営化で公共施設が消える?
      ――拡大する「PFI市場」と「公共性」の喪失/黒田 達雄 
・民間委託が急速に進む公共図書館の行方
      ――練馬区立図書館に見る当局、職員、住民三つ巴の闘い/丸谷 博男
・PFI方式による京都御池中学校の建設/竹山 清明 
・身近な事業から始めるPFI /山中 修

・忙中閑 すすき晴れ/高橋偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 7 グリーンツーリズムはハニーポット/井原満明
・居住の貧困と都市住宅 #2 ドヤ―「非住宅」が抱える居住の問題/大崎元
・主張 「建築とまちづくり展」の輪を広げよう/久永雅敏
新建のひろば


2005年10月号(No.337)

特集 2005 建築とまちづくりセミナーin札幌

 2005年の建築とまちづくりセミナーは5月13~14日の2日間、札幌の北海道大学学術交流会館で開催された。今号はそこで開かれた3つの講座(講師4人)を記録する。

・特集■ 2005建築とまちづくりセミナーin札幌
◆第1講座◆北海道に学ぶ暖かい住まいづくり 
◎寒地の風土が生み出した高性能住宅――大垣直明 
◎「ウチのソト」から「ソト」へ――圓山彬雄 
◆第2講座◆女性建築家――ジェンダー視点で見る生活空間と建築家――中島明子 
◆第3講座◆北海道のモダニズム建築を語る――三沢浩

・忙中閑 杉並は激雨/高橋偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 6  続・ヨーロッパの農家民泊/井原満明
・居住の貧困と都市住宅 #1 ホームレス問題が示す居住の位相/大崎元
・主張 障害者自立支援法に思うこと/星厚裕
・面白かった本・気になる本 『耕して育つ』『建築基準法集団規定の運用と解釈』
・新建第25回全国大会お知らせ 
・新建のひろば


2005年9月号(No.336)

特集 縮む社会/歪む社会 その1 人口減少社会の実像

 日本の総人口は今年をピークに減少を始めた。人口減少は今後も進行し続けると予測されている。今まで経験のない社会変化の中にわれわれは身を置くことになる。減少の速度はこれまでの人口増加とほぼ同じであり、20年後の人口は20年前と同じということである。そう考えるとそれほど急激ではないとも思えるが、注目すべきは人口構成の変化である。いわゆる少子高齢化の進行であり、団塊世代が高齢者の仲間入りする頃からは労働力人口が急速に減少する。縮む社会は歪む社会でもある。
 人口減少と人口構成変化が社会に与える影響の大きさについては意見が分かれる。しかし、社会・経済の変化と人口変化を重ねてみれば、相当の変化が起こると予想すべきであろうし、人口増加・成長社会とは異質な対策を迫られるに違いない。
 こうした未来社会に対して、本号では都市のありようにおける変化とそれへの対策を、12月号では家族とすまいにおける変化を取り上げる。
 第1回は各分野の専門家に人口減少が社会に与える影響を多角的に論じてもらい、さらにどのような対策が考えられるかに言及してもらう。 (特集担当編集委員/鎌田一夫)

・特集■縮む社会/歪む社会 その1 人口減少社会の実像
・人口減少社会を概観する/大江守之
・総人口減少時代の住宅像と住宅市場/青木仁
・人口構成の変化を受けた郊外住宅地の再編/小林秀樹
・人口構成変化は都市構造を変える/若林康彦+北山健一
・「人口・世帯減少社会」と国土利用/片方信也

・忙中閑 騒ぐ樹に/高橋偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 5 ヨーロッパの農家民泊/井原満明
・旅の野帖 16 落水荘への旅/大沢匠
・主張 「住まいづくり」の連帯・協同の活動を広げたい/高橋偉之
・新建第25回全国大会お知らせ
・新建のひろば


2005年8月号(No.335)

特集 介護保険見直しと住まい・まちづくり

 00年4月、介護保険制度が導入された。導入前から今まで、この制度については国民の間でさまざまな議論がなされてきた。導入に際しては「制度あって介護なし」とも酷評され、多くの国民の支持を得られずにスタートした事実は否めない。制度の導入に当たって5年目にその見直しをすることが決められており、そして今年がその見直しの時期である。
 昨年政府は改革案の大筋を発表した。その概要は、保険料の増額と併せて、①サービス利用時の個人負担を現行の1割から2~3割に増やす、(1)特養ホーム等の入所に際してホテルコスト(住居費や光熱費)を徴収する、(2)軽介護者のサービス利用を制限する等々、利用者負担増と利用制限が主たる内容となっている。また、障害者福祉との統合や、被保険者を20歳からにする案も出ている。先の国会で大きな議論となった年金改悪にも共通するが、これらはも国民福祉の向上とは方向を大きく異にしている。
 私たち建築家技術者は、生活者として、また、人々の暮らす“まち”や“施設”、“住まい”づくりの担い手として、この介護保険制度との関わりは深い。その意味において、これからの暮らし、とりわけ高齢者や障害者の暮らしに起こる事態を正確に認識し、何をなすべきかの課題を見出すことが重要となろう。(担当編集委員/蔵田力)

・特集■介護保険見直しと住まい・まちづくり
・介護保険見直しの動向と問題点/石田 一紀
・真の自立支援としての住宅改修に向けて 介護保険見直しの機会に/鈴木 晃
・介護保険見直しと施設運営/正森 克也
・介護の社会化と小規模多機能施設/小玉 滋
・介護保険サービスが届かない僻地での課題 京都市左京区中山間地域について/谷 勇男
・介護保険法改悪と建築家技術者の役割と課題/蔵田 力

・忙中閑 遠雷に/高橋偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 4 農家に泊まる;英国の農家民泊/井原 満明
・旅の野帖 15 猿のカラクリ/大沢匠
・主張 頭でっかちの住まいづくりを憂う/川本 真澄
・ワーク&ワーク新建 93 嬬恋村の別荘/高橋 丈夫
・面白かった本・気になる本 『これから価値が上がる住宅地』
                  『A・レーモンドの建築詳細』
・新建賞2005募集のお知らせ 訂正版
・建築とまちづくり展伏見のお知らせ
・新建のひろば


 

2005年7月号(No.334)

特集 大規模建築の圧迫感を追う

 住宅地に建つ中高層マンションが景観、日影、圧迫感などが問題となって住民の反対運動が各地で起きています。
 これらの計画は突然明らかにされ、話し合いすら十分に行なわれず、工事は着々と進行して完成してしまいます。
 これまでの住みなれたまちの風景が変わり、風の流れが変わり、光の具合が変わり、空が見えなくなる。大きな壁面が築かれていき、不安がふくらんでいく。そして常に圧迫を受ける。威圧的な建築物による暴力とも呼べるものだと住民は感じています。
 本特集では、その主観ともいえる感覚に数値的な検証を行い、圧迫感を形態率で表す方法を紹介します。各地のマンション反対運動の中で問題にされている圧迫感を運動の現場からレポートします。裁判や景観、法規制の面から検討を重ね、実務に生かせる内容にして、景観と大型建物の圧迫感について、より多くの人々に認識してもらえるようにします。そして、それが景観破壊、生活環境破壊の大規模建築物を見直すことにつながっていけばと期待します。  (担当編集委員/光田康宏)

・特集■大規模建築の圧迫感を追う
・都市の圧迫感を測る/武井 正昭
・高層マンションによる圧迫感を考える/中林 浩
・京都洛西ニュータウンマンション訴訟における圧迫感の検討/石原 一彦
・建築差止訴訟の現状/甲斐 みなみ
・圧迫感をめぐる裁判の動向/中島 晃
・高層マンションによる日照被害と圧迫感/後藤 徹
・形態率をCADで求める・実務編/編集委員会
・私の家の塀/竹山 清明
・国立マンション問題の圧迫感を追う/編集委員会

・忙中閑 萌えし芽の/高橋偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 3 農村へのあこがれ/井原 満明
・主張 ヘタな構造技術者にはだまされるな/簑原 信樹
・建築とまちづくり展東京お知らせ
・新建賞2005募集のお知らせ
・新建のひろば


2005年5/6月号(No.333)

特集 迷走する住宅政策を糾す

 国は住宅政策の転換を急いでいる。既に公団は廃止され、今国会では公営住宅補助金を給付金に改変、金融公庫の廃止など一連の改正が行われ、さらに借地借家法の改悪も画策されている。国交省は従来の住宅政策が社会情勢の変化に合わなくなったので、住宅建設5ヵ年計画に代わる枠組みが必要だとして、「住宅基本法」の制定に向けて社会資本整備審議会に諮問を行った。
 審議会報告は優等生的美文だが、「居住は基本的人権とは認めがたい」と明記する等、居住に関する理念は浅い。そして、いつものように審議会報告に先だって住団連と経団連の提言が出され、これらが一連の動きであることを社会にことさら印象付けている。人口減少時代に大資本の住宅建設シェア確保を露骨に要求する動きは、小泉内閣の基本である新自由主義と結びつく。これに発言権を保ちたい官僚の思惑が加わって住宅政策は迷走を始めている。
 一方、新建も加盟している国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)などは、居住の権利をはっきり謳った「住居法」の制定を求めて運動を展開している。本特集では住宅運動諸団体や研究者により、今日の政策動向を糾し、居住実態の正確な把握をもとに居住の安定と向上を目指す途を展望する。  (担当編集委員/鎌田一夫)

・特集■迷走する住宅政策を糾す
・住宅問題の今日的実態と課題/鈴木 浩
・住宅政策の転換――その危険性を糾す 住宅関係三法案などを踏まえて/坂庭 国晴
・住宅建設市場を激変させる住宅金融公庫改革/向井 光也
・後退・変質する東京都の住宅行政/森成 明
・広がる不安――定期借家制度下での借家人の実態/綾 達子
・居住権を脅かす公営住宅政策/天野 信二
・居住保障論による住宅・居住政策への転換を
                「セーフティネット」論では住宅困窮者は救えない/中島 明子
・住宅政策と新自由主義/山田 良治
・イギリスのハウジングを正しく学ぶ/岩見 良太郎
・地域住空間まるごと考えよう――われわれの住宅政策/本多 昭一

・忙中閑 おらが新建/高橋偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 2 都市住民がつくった言葉「田園」/井原 満明
・主張 独自な支部活動の展開と運動の拡大をめざして/水野 久枝
・ワーク&ワーク新建 92 開放的なのにプライバシーが守れる家/森内 忠良
・面白かった本・気になる本 『農ある暮らしで地域再生』/『防犯まちづくり』
・新建賞2005募集のお知らせ
・新建のひろば


2005年4月号(No.332)

特集 阪神淡路大震災から10年 その2 災害列島に抗して(下) 

 災害に関する特集を阪神・淡路大震災から10年目の2005年に1月号・3月号・4月号と連続して組みました。災害の問題は国民の命に直結する大問題です。新建築家技術者集団としても、『建築とまちづくり』誌で見る限りでは、ここ10年間で一番大きく取り組んだテーマになっています。
 政府は「『災害対策基本法(昭和36年法律第223号)』第9条第2項の規定に基づき防災に関して取った措置の概況及び平成17年度において実施すべき防災に関する計画についての報告」を第162国会に出しました。序章は「迫りくる巨大地震と『備え』を実践する国民運動の展開」となっており、なかなかよいことが書いてあります。特に「被害想定をしているだけでなく具体的な減災目標を定め、これを達成するための重点的かつ戦略的に取り組むべきことが重要だとされている」とし、10年間を対象とし3年ごとの達成状況をフォローアップするというもので、この点はよいと思います。しかし、それを「国民運動」として展開しようとしているところが、この方針の無責任なところで、「国は全力を挙げる、国民の協力を求める」といわないところにうさんくささを感じます。
 とはいえ、書かれていることは重要なので、これを大いに活用しながら、災害防止、減災に力をつくそうではありませんか。建築やまちづくりの分野で進められることはたくさんあるはずです。
 阪神・淡路大震災の運動から「被災者支援・予防・継続・全国」の組織が結成され、初めて『建まち』誌に登場しました。全国各地の様々な力の結集体として期待されています。
 災害は、自然災害だけではありません。JR宝塚線の脱線事故も災害です。それらの解明にも役立つ特集になれば幸いです。  (特集担当編集委員/千代崎一夫)

・特集■阪神淡路大震災から10年 その2 災害列島に抗して(下)
・これからの防災――都市と建築物の危機管理/室崎 益輝
・被災地支援と防災運動/永田 勝美
・震災から10年 父の死を想う/中川 陽子
・新潟中越大地震と技術者の対応/五十嵐 純一
・福岡県西方沖地震緊急レポート/千代崎 一夫

・忙中閑 白き地に/高橋偉之
・グリーンツーリズム よりよい生活に向けての旅立ち 1 農村・田園への誘い/井原 満明
・主張 新建35周年第25回大会を組織の発展の中で迎えよう/今村 彰宏
・面白かった本・気になる本  『産業遺産とまちづくり』 『日本の近代化遺産』
・新建賞2005募集のお知らせ
・ワーク&ワーク新建 91 歴史の表象――古民家再生/荒木 智
・新建のひろば
・旅の野帖 12 水槽は語る/大沢 匠


2005年3月号(No.331)

特集 阪神淡路大震災から10年 その2 災害列島に抗して(上) 

 阪神大震災から10年を経ました。
 近代都市を襲った地震は大きな被害をもたらし、人命や暮らしが奪われました。生活基盤を失った人々に対して行政は冷たい態度をとり続け、10年前の影響はいまだに大きく、「復興」という言葉には疑問を感じざるを得ません。一方、被災者を中心とする運動は10年間粘り強く行なわれ、国会は言うに及ばず、国連の場まで出て行き実情を訴え、日本の国が責任を持ち被災者の救援をすることを促しました。
 当時、新建築家技術者集団は現地の支部を中心に、「建築とまちづくり震災支援ネットワーク」を結成し、統一した現地の組織として、また全国からの支援の受け入れ先として活動を展開しました。また、現地への支援と同時に「予防も含む防災の全国的、継続的組織」の必要性を他団体とともに呼びかけ、現在の「災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会」(全国災対連)の結成に寄与しました。その後都道府県レベルの災対連が災害が起きた地域を中心につくられています。
 本誌でも95年6月号、8月号、96年1月号、5月号、97年1月号と特集を組んだほか、記事でも防災について発信をしてきました。直近ではこの号との連続防災特集として、05年1月号で「阪神・淡路大震災から10年その1――復興という開発の10年」を特集しています。今回の特集「災害列島に抗して(上下)」は3月号・4月号の2号連続で特集します。
 04年は日本全国で、福井豪雨、22号・23号台風、新潟中越地震という災害が発生し、大きな被害をもたらしました。年末には死者20万人にも及ぶスマトラ沖地震・インド洋津波が、年明けの3月には10年ぶりに100万都市で被害の出た福岡県西方沖地震が発生しています。いずれの地でも防災対策が進んでいたところはあまりなく、大部分は今までと変わりない施策の中で被害が出ています。被災後の対策も被災者の立場で行なわれてはいません。その一方、「福祉力と防災力の合体」とか「市民版防災マニュアル」など、市民側に理論蓄積や提案などの動きもあります。
 こうした動向を踏まえて、防災にどのように対処するか、防災・減災の観点から見た予防はどうあるべきかを考えたいと思います。
 今月の(上)では「防災都市計画」「奥尻津波被害後の現状」「福井水害への自治体の対応」「消防機関のあり方」「兵庫復興県民会議の動き」について報告します。 (特集担当編集委員/千代崎一夫)

・特集■阪神淡路大震災から10年 その2 災害列島に抗して(上)
・住民の生存権を守る立場で安全・安心の都市環境づくりを/大屋 鍾吾
・奥尻島災害と地震対策/制野 征男
・福井豪雨被災者の住宅再建への支援/薬袋 奈美子
・阪神・淡路大震災以後の消防体制の変化/細井 郁秀
・住被災者要求実現へ――復興県民会議の活動/岩田 伸彦

・ランドスケープの昨日・今日・明日 12 けいだい空間/浅井 義泰
・暮らしの採集 0012 メントの回想/岡本 信也
・忙中閑 京町家と山本学治のデザイン論/片方信也
・ランドスケープの昨日・今日・明日 23 自然と共生/浅井 義泰
・主張 未来の展望を共有しよう/山本 厚生
・面白かった本・気になる本  『建築運動に詩あり』 『アカの他人とマイホーム』
・新建賞2005募集のお知らせ
・新建のひろば


2005年2月号(No.330)

特集 まちをつむぐ小さな造園

 まちに仕掛けられた小さな「緑」。都市をゆっくり巡ってみれば、個の空間と公の空間の境界にはいつもそんな「緑」がありました。都市の緑を形づくっているのは、こうした「個」が染み出したような小さな仕掛けの緑から、まちなみをつなぐもう少し計画的で半「公」的・半「民」的な緑、都市公園のような「公」的庭園に至るまでの多様な姿であり、それを生み出し守ろうとする意志です。
 日本の都市では、高度経済成長期からの緑の急速な減少を危惧して、緑を増やす取り組みが行なわれそれなりの成果を生んできました。公園の整備だけでなく、総合設計制度や緑化義務など公共主導の緑の生産がすすんでいます。環境共生のように積極的な取り組みも市民権を得てきています。
 しかし、その一方では、個人や民間がずっと守り通してきた住宅と一体化した緑や生産緑地までもが、都市再生の名の下にマンション建設にさらされ、大きな古木が伐採されてもいます。「民」が自己財産としてきた緑を「民」だけで守ることに、大きな限界があることも事実です。
 「民」が生みだした「公」的な緑、「民」と「公」が協働してつくった緑、こうした緑はどのような「公共」の場を生みだしてきたのでしょうか。今回は、今まで計画的あるいは共同的に緑を仕掛けとして生み出された場を、もう一度現在の目で評価してみようという試みです。まちに仕掛けられた緑はまちをつなぐ役割をどう担ってきたのか、そこに今、どんな問題が表われてきたのか、といったことを見ながら、緑という仕掛け、造園という方法が建築、都市計画、まちづくりにどのような役割と可能性を持ちうるのか、について考えていきたいと思います。
 2004年、東京・墨田区の向島百花園が200周年を迎えました。百花園は東京で唯一の、庶民がつくり庶民に開かれた都立公園として、文化財保護法による国の名勝及び史跡の指定を受けています。江戸町民文化によって生み出され、市民にとっての「公」を担う場所となりました。歴史を見直すことで、造る造園から守り育てる緑への緩やかで確実な展開についても、あわせて見ていきたいと思います。 (特集担当編集委員/大崎元)

・特集■まちをつむぐ小さな造園
・生活の中で生まれた路地の緑/河合 嗣生
・戸建て住宅地のコモンスペース/乾 康代
・街に息づく農空間/浅井 義泰
・市民と緑/吉田 清明
・団地再考――オープンスペースと専用庭/小畑 晴治
・百花園の二百年と向島のまち/佐原 滋元
・まちを描く「グリーンマップ」という手法/土谷 享
・コミュニティーガーデンの今/白勢 見和子
・公開空地と都市――超高層の免罪符/密集地域の環境整備/鎌田 一夫+松木 康高

・忙中閑 京町家と町触/片方信也
・ランドスケープの昨日・今日・明日 22 風景と自然/浅井 義泰
・主張 「全総時代」の終焉/片方 信也
・新建のひろば
・旅の野帖 10 「屋根裏の探検者」/大沢 匠


2005年1月号(No.329)

特集 阪神・淡路大震災から10年 その1 復興という開発の10年

 阪神・淡路大震災から10年が経過した。様々な困難を乗り越えてまちは復興に向けて歩んで来た。10年後の今日、電車や車で通り過ぎる限りは震災の痕跡を認めることが出来ないほど復興は進んだように見える。しかし、住民の7割が未だに戻れないまちがある等、被災者に残された爪あとは消えてはいない。また一方、あれ程叫ばれた「震災の教訓を活かす」は本当に実行されたのだろうか。
 昨年は災害の多発した年であった。災害に強いまちづくりは、今後も私たちにとって大きな課題である。震災10年後のいま、改めて復興を検証しこの課題に迫る。 (特集担当編集委員/鎌田一夫)

・特集■阪神・淡路大震災から10年 その1 復興という開発の10年
・開発的復興か早期回復か――阪神大震災の10年から/塩崎 賢明
・現代技術都市と災害への備え/西川 榮一
・自然災害と住宅再建――生活・住宅再建への個人補償は必要不可欠/出口 俊一
・阪神淡路大震災後の地域防災計画の実態――兵庫県内市町地域防災計画調査から/増田 紘
・住宅と震災/竹山 清明
・地域コミュニティ・ベーストの住宅復興――震災が示した今日の住宅政策の限界とこれから/黒田 達雄

・忙中閑 書院造りの格式と数寄屋の町家への影響/片方信也
・ランドスケープの昨日・今日・明日 21 風景と自然/浅井 義泰
・主張 新しい専門家像の構築をめざして/大槻 博司
・2005建築とまちづくりセミナーin札幌開催のお知らせ
・全国ウェブサイトロゴ募集のお知らせ
・新建のひろば
・旅の野帖 09 戸前の不思議/大沢 匠