2020年2月号(No.493)

新建設立50周年記念特集ー2

地域の生産力と伝統構法・民家の継承 

 

まち場の家づくりのこれまでとこれから:大沢匠/木構造のこの50年を概観する:藤吉勝弘/コラム 心に残るあの仕事─町並み保存が始まったころ:上野邦一/民家再生の現状:細野良三/原点としての古民家:佐々木文彦/伝統工法と耐震性:宮本繁雄/森とまちをつなぐ:泉谷繁樹/杉と日本人の行く先を考える:杉岡世邦/工務店の技術の継承:伏見康司/住宅政策、住宅関連法の改正に対する、まちの設計事務所の探求:高本明生/コラム 心に残るあの仕事─箱根山荘:酒井 行夫

 

 

まち場の家づくりのこれまでとこれから               大沢  匠
木構造のこの50を概観する                     藤吉 勝弘
コラム 心に残るあの仕事-町並み保存が始まったころ        上野 邦一
民家再生の現状                          細野 良三
原点としての古民家-復興住宅、災害公営住宅と民家再生の活動    佐々木 文彦
伝統工法と耐震性                         宮本 繁雄
森とまちをつなぐ-木材の魅力と森の存在価値を伝える        泉谷 繁樹
杉と日本人の行く先を考える-藝術林学序説             杉岡 世邦
工務店の技術の継承                        伏見 康司
住宅政策、住宅関連法の改正に対する、まちの設計事務所の探求    高本 明生
コラム 心に残るあの仕事-箱根山荘                酒井 行夫

 

◆第32回新建築家技術者集団全国大会in千葉報告 

◆第13回新建賞2019 

 

◆連載

世界の災害復興 から学ぶ2ロンドン大火からの復興      室崎 益輝

新日本再生紀行 23熊本県宇城市              磯田 節子

暮らし方を形にする2民家が似合う庶民の暮らし(下)    山本 厚生+中島 梢

 

主張  『地球環境問題とSDGsについて』

LLC住まい・まちづくりデザインワークス/幹事会副議長 岡田昭人

 

 いまSDGs(エスディージーズ:Sustainable Development Goals)の用語を多くの人々が口にし、国や自治体の施策にも組み込まれ、言葉が一人歩きしている状況のように思えてなりません。
 SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」にもとづき、「だれひとり取り残さない」を基本理念として、世界が2030年までに達成すべき17の目標と、各目標を実現するための169のターゲットから構成されています。

 60年代からかつてない経済成長と工業化、大都市化のなかで、環境破壊が全面的に起きていました。発展途上国の貧困や飢餓の問題も含めて、環境について世界全体で考えようと1972年にストックホルム会議が開かれ、その後ヨーロッパでは酸性雨による生態系の問題がおこり、地球環境の問題の解決のためには国際的な条約が必要だとの機運が高まります。開発か環境かの一元論ではなく、どうやってサスティナビリティのある社会をつくるかの議論がはじまり、1984年の「環境と開発に関する世界委員会」を経て、1987年に「われら共有の未来」というSD(サスティナブル・デベロップメント)の提案がされました。これは現在のSDGsの基本となる内容で、環境・経済・社会の問題について7つの目標があり、その冒頭に意思決定には市民が参加しなければならないことを掲げています。このSDを実現するために1992年6月にリオデジャネイロで二度目の国連環境開発会議「地球サミット」が開かれ、温室効果ガスについての気候変動枠組条約が決められ、生物多様性条約が提案されました。また国連環境計画が2000年に発展途上国の飢餓や伝染病をなくすためのミレニアム開発目標(MDGs)を立て、2014年に終了したあとに、国際的な地球保全のための原則としてSDGsがだされたのです。
 ストックホルム大学の研究機関は、17の目標は並列に位置付けられるものではなく、社会・経済の目標を達成する上で、土台となるのは自然環境にあるとしています。
17の目標のどれかに取り組んでいるからいいという安直な考えではなく、自然環境や温暖化防止などの課題を最優先にしているかが問われています。(「住民と自治」2020年1月号から参照)
 一方、SDGsの第一原則は貧困ですが、この問題は民間の投資では解決できません。また第一六の平和の原則には国際的な核の禁止や軍縮についての記述はありません。日本では、原子力発電は地球温暖化防止としてSDGsに沿ったものとされ、大阪・関西万博も基本理念としてSDGsを掲げています。また、リニア新幹線や辺野古の埋め立てなど、自然破壊を引き起こす事業が進められ、ホテル建設などのラッシュで歴史的環境の保全も危機的状況と言わざるを得ません。SDGsという言葉さえ掲げておけば、どんな開発行為も免罪符になりそうな状況に気を付けたいと思います。また、以前は市民参加が原則で動くはずだったのですが、国連はSDGsの経済効果を設定し、これまでのODAに代えて民間企業の投資を求めています。日本でもメガバンクがESG(環境社会ガバナンス)投資を打ちだしたこともあり、産業界は競ってSDGsを標榜する事態となっています。
 しかし、現状の不安や危機感から、また将来の社会のあり方を模索するなかで、SDGsの原則を活用して、目標に向かって来たるべき社会に向けた活動を進めていく市民や自治体の動きは大切だと思います。私たちは、地域でエネルギーを自給し、できるだけその地域の資源や人々を中心にした暮らしを実現するサスティナブル・コミュニティの取り組みを続けましょう。持続可能な社会の基本は地域です。

 


北海道支部 ─ 2019年の「月例会」報告

  日時:2019年5月〜10月  

  場所:北海道支部月例会

  参加:各回10〜15名

 

 2019年は会員が報告者になって行う企画「月例会」を 回開催しています。これまで行ったテーマは次の通りです。

 5月例会は「シックハウスの 基礎知識」。建築基準法で規制 されていない化学物質について 詳しい説明と、設計図面に☆ つのマークを記載するだけでは 不十分という指摘がありました。

 6月例会は「耐震設計と耐震 改修工事」。報告では防災科学 研究所が行った実物大の耐震実 験の紹介、どの程度の震度で建物倒壊に至るのか、映像での紹介はリアルでした。後半は、構造用合板を使った耐力壁の仕様、あと施工アンカーボルト・座金についての解説と地盤の液状化対策工事について、修復工法についても詳しい紹介がありました。

 8月例会は「住宅の雪庇対策」。戸建て住宅の雪庇金物の設置事例の紹介の他、マンションでの雪庇対策が話題となりました。

 9月例会は「日本と米国の省エネ法と2019年北米パッシブハウス会議の報告」。省エネ法改正を巡る動き、札幌での高性能住宅の設計事例、現在の省エネ法による届け出=申請事例、毎年北米で開催されているパッシブハウス会議の紹介です。

 10月例会は「マンション給水配管改修工事の設計」。報告では給水配管の技術的な改修方法に加え、住民との調整など大変なご苦労があったことが紹介されました。

 毎回、10名から15名の参加でした。会員だけでなく一般参加もあり、この企画を通して2名の方が入会を表明されました。

(北海道支部・大橋周二)


東京支部 ─ 東京問題研究会・池袋駅東口周辺まち歩き報告

  日時:2019年10月24日(木)  

  場所:池袋駅東口周辺

 

 東京で進む開発問題を実感しようということで、10月24日に池袋駅東口周辺のまち歩きを行いました。本来改善が必要な木密地域の状況と、経済の視点だけで進められる大規模開発の状況の両方を見て回りました。

 10時に都電荒川線「大塚駅前駅」に集合し、都電で「向原駅」で下車。「東池袋四・五丁目地区」として不燃化特区にも指定されている都電沿いの木密地域を通り、造幣局跡地の防災公園や都電沿道の再開発事業の工事の様子を見て、豊島区役所を合築してつくられた南池袋二丁目A地区まで歩きました。豊島区役所の10 階が屋上庭園になっており、そこから周囲の状況を俯瞰することができました。現在再開発事業が仕掛けられ、昨年1月に行った新春の集いにも報告者としてご参加いただいた池袋二丁目C地区は、駐車場として暫定利用されている更地も目立ち始めていました。駅に向かいながら、旧豊島区役所の場所に寄ったところ、中池袋公園も含めた一体的な開発が進んでおり、一部はオープンしていました。お昼までの短い時間でしたが、ここ数年で大型開発が連続的に行われ、少し来ない間にまちの風景が大きく変わっている池袋の状況を実感しました。この状況に対し、新建がどんな取り組みができるのか、定例会でも話し合っていきたいと思います。

(東京支部・松木康高)


新建創立50周年西日本ブロック企画

新ローカリズムの思想を語る

     ~建築人としての理念と作法~

  日時:2019年12月5日(木)  

  場所:大阪市

 

 昨年12月5日(木)に京都支部2名、奈良支部3名、大阪支部4名の計9名の出席で西日本ブロックの新建設立50周年企画実行委員会が開かれ…

2月29日(土)13時半から大阪市中央公会堂(中之島)地階大会議室で予定している、藤本昌也さんを迎えての講演と参加者によるクロストークの企画の具体化を議論しました。

 藤本さんから事前にいただいていた講演内容のメモと資料、そして本誌1月号に掲載されたコラム「私はなぜ新建の会員になったのか」の原稿をもとに企画の主旨と内容を組み立てていきました。

 この藤本さんの寄稿〜新建の会員になった理由そのものが、この企画の主旨ではないか、藤

本さんにはそこを存分に自由に語ってもらい、その話と、新建の理念に沿った私たちの活動や仕事の話と絡ませる、同調させる、というクロストークの形をイメージして検討をすすめました。

 藤本さんが共感した新建の理念は「新ローカリズム」だ、と表現されていますが、これはすなわち「地域にねざす」ことであり、この企画ではローカリズムの対極にあるグローバリズム、あるいはシンボリックを明確に否定し、地域とそこに住む人々のための建築まちづくりの時代であることを参加者に訴え、共感を広めよう、「無作法」な特区によるまちこわしや巨大建築ではなく「建築人としての理念と作法」に則って仕事をする仲間を増やし、反転攻勢に打って出る画期の企画にすることを目標としました。

 クロストークの話し手は、比較的若手で地域に密着して人々に寄り添う仕事をしている数名を予定して、その話をきっかけに参加者からも話を引き出し、これからの建築まちづくりの仕事の輪郭をくっきりと示す、そんな企画を目指しています。

 そしてこの企画に対して、大阪・兵庫・京都・奈良の各建築士会の後援が得られたことも、関西の新建では例のない、画期をなす50周年に相応しい企画となっています。近県のみなさんもぜひご参加いただきたいと思います。

(大阪支部・大槻博司)