2019年4月号(No.484)

マンションリフォーム―専有部分模様替えの様相

 

マンションでは経年劣化や居住者の高齢化が進み、建物全体の維持管理が社会問題になっている。しかし、劣化や高齢化は個々の住宅でも起きており、これに対応する専有部分の改修・模様替えも大きな課題であり、隣戸との関係や区分所有ルールとの整合は古くて新しい問題である。また、模様替えは居住者が変わる際のリニューアルとしても行われる。そこでは中古住宅やマンション価値との関係が生じる。さらに近年は賃貸住宅でも原状回復を免除する方向が進んでいる。リフォーム実例と共に、模様替えを取り巻く状況を描いた。

・住まい手にとっての模様替えの意味―集合住宅の専有部分の改修工事   南 一誠
・マンションリフォームの自由と不自由―区分所有法、管理組合との関係    大槻 博司
・リフォームとマンション価値                                          栗山 立己
・コーポラティブハウスの住戸内改修                                  畑中 仁+松木 康高
・3LDKのマンションリフォーム──夫婦の第二の人生に向けて            高本 明生・佳代
・新婚夫婦のためのマンション改修二題                               柳澤 泰博
・車いす生活も想定した改修・D邸                                     中安 博司
・UR賃貸住宅における模様替え基準の緩和とDIYなどの試行          竹内 清

 

◆連載

《災害復興の姿 3》インドネシアのコアハウス         塩崎 賢明

《書棚から》東日本大震災100の教訓 地震・津波編

《新日本再生紀行17》「春の小川」に出会いたい      小笠原 浩次

 

主張『小平市議会:辺野古問題についての意見書を可決』

NPO都市住宅とまちづくり研究会理事長/全国常任幹事  杉山昇

 

 沖縄では、1997年に普天間基地の代替基地ということで名護市辺野古付近での建設が決定されて以降、約20年にもおよぶ建設反対運動が続いています。

 反対運動の続くなかで、2014年には辺野古新基地建設阻止を貫いた翁長雄志前知事が当選。しかし、翁長前知事は任期を約4カ月残して2018年8月8日、がんのため急逝しました。

 2018年9月30日には、故・翁長雄志前知事の遺志を継いだ玉城デニー知事が誕生。そして、紆余曲折はありましたが、2019年2月24日に「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋め立てに対する賛否についての県民による投票」が行われ、辺野古新基地建設反対が43万4273票で71・74%(投票率52・48%)と、玉城知事の得票を上回る結果となりました。県民投票の結果は、沖縄県民の基地問題に関する断固たる意思を確認するものでした。

 報道によると、私の住んでいる東京都小平市の市議会は、沖縄の県民投票の翌日の2019年2月25日の市議会本会議で「沖縄県の辺野古新基地建設問題を、国民全体の問題として、公平、公正にさまざまな選択肢を検討することを求める意見書」を賛成多数で可決したとのことでした。 

 3月になって別件で市役所に行った際に、意見書の原文をもらってきました。

 小平市議会は、国会及び関係行政庁に対し、以下の事項を求めるとして、

 1.辺野古新基地建設を即時中止すること。

 2.辺野古問題を、沖縄のみに解決を迫るのではなく、国内、国外に普天間の代替施設が必要かどうかを含めて、国民的な議論を行い、解決の道を探ること。 

の2点に集約される意見書を可決し、衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、外務大臣、国土交通大臣、環境大臣、防衛大臣、内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)に対して送付したとのことでした。

 私は団塊の世代で、1970年の安保闘争時には大学3年生。学生寮の仲間、学部自治会の仲間たちと口角泡を飛ばして日米安保体制のこと、日本の自由と平和のことなど議論し、集会やデモにも参加しました。

 その後、企業に就職し、慌ただしい生活を送るなかで、この問題に正面から取り組むことをないがしろにしていました。職場のある千代田区神田に圧倒的に長く暮らしており、住んでいる小平市での滞在時間は少ない。その小平市で前述のような市議会での国に対する意見書の決議という事実には驚きました。

 意見書の第1項は「辺野古新基地建設を即時中止すること」という明確な主張であり、第2項の「辺野古問題を、沖縄のみに解決を迫るのではなく、国内、国外に普天間の代替施設が必要かどうかを含めて、国民的な議論を行い、解決の道を探ること」という内容は、できるだけ多くの国民が連携して、辺野古問題の解決をはかろうという壮大な呼びかけです。

 意見書には、①沖縄県の埋め立て承認の撤回に対する国による行政不服審査法の濫用のこと ②生物多様性にあふれる豊かな辺野古の海が危機的状況におかれていること ③大浦湾では活断層の存在が疑われ、軟弱地盤が確認されていること④米兵による犯罪、米軍機墜落、騒音による健康被害、環境被害、有事の際の標的にされることなど沖縄県民が新たな米軍基地の建設に反対するのは当然のこと ⑤国民の多くが、沖縄に集中する米軍基地に疑問を抱くことなく戦後70年以上が経過したが、「普天間の危険除去のためには辺野古が唯一の解決策」という政府の主張の欺瞞に気が付いてきていること、などを論拠にあげています。

 そこで、私にもできることをしようとの思いから、「辺野古問題を考える小平市民の会」の門を叩いてみようと思いました。そして、可能ならば、新建のイベントとして、お話を聞くことから企画してみたい、と考えています。

 


 愛知支部「中村好文さん設計のソーラーハウス見学会」

  日時:2019年2月2日(土)  

  場所:川合邸

 

 よく晴れた 2月 2日「中村好文さん設計のソーラーハウス見学会」が開かれました。参加者は 9 名でした。この企画のきっかけは、昨秋新建に加入していただいた川合英二郎さんから新会員歓迎会の席で「私の家を見に来てください」というお話からトントン拍子で生まれた企画でした。

 

 床暖房のチリウヒーター(株)にお勤めの川合さんのこの家は、 ①太陽光パネルで不凍液を暖め②床下コンクリート内にはりめぐらした給湯パイプを循環して蓄熱床暖房するハイブリッドソーラーハウスです。

 参加者は、まず向かいの一段高い公園から外観を眺めました。 緩勾配のガルバリューム屋根にドーム型トップライト(スカイライトチューブというらしい)が二つ乗っかっています。見えないけれど南側にはソーラーの集熱パネルがあるはずです。黒っぽい外観やムク板の外壁が個性的です。中村好文さんは「小さな家」で有名ですが、この家 はかなり大きいです。

 室内に入ると吹き抜けを含めた大きな空間が広がります。足元は、「温かい」というよりは「冷たくない」という感じです。当日は快晴で日当たりのよいLD Kは、設定温度が 18 度なのに暑いくらいでした。

 私たちは川合さんご家族のご厚意で室内をくまなく見て回りました。白い壁と無垢の木をふんだんに使った風景、小さな巾木や極力見切り材を廃した中村氏の設計はどの部屋も統一されています。階段室の踊り場に設けられたベッドのようなソファーは家族のくつろぎの場だそうです。

一同は、大きなダイニングテーブルを囲みコーヒーをいただきながら、7年前家を建てた時のエピソードをうかがいました。

 建築家・中村好文さんを指名したのは奥様で、奈良の雑貨屋で中村さん設計の裁縫箱と出会ったのがきっかけだそうです。

工期が東日本大震災と重なって建築資材の調達が順調にいかず、工事にたびたび支障が出たというお話でした。

 お茶をいただいた後、リビングでスライドを見ながら川合さんからこの家のハイブリッドソーラーの特徴をうかがいました。 設計者や施工者の立場からさまざまな質問が次々と出て、川合さんは「こんなにぎやかな見学 会は初めて」と言われるほど盛り上がりました。 2 時間あまりの見学会は、アッという間に過ぎ、まだ話し足りない面々は、 近くの新建会員のカフェ「遊眠堂」に場所を移し、そこでも話はつきませんでした。

(愛知支部・河合定泉)


千葉支部 「シンポジウム公共住宅団地と都市再開発

北青山三丁目市街地住宅をめぐる諸課題」

  日時:2019年2月23日(土) 13:30〜16:30 

  場所:港区・赤坂区民センター・5階研修室

 

 東京港区の青山通り沿いに、前回の東京オリンピック(1964年)の前後に建設された住宅公団の市街地住宅(地主からの借地に下は店舗、上は住宅)が4棟あります。現在これらの住宅が耐震強度不足を理由に用途廃止(賃貸を止める)され、居住者は立ち退きを迫られています。

 

 新耐震前の設計ですが、耐震 補強の検討もせずに用途廃止としたのは、住宅公団(UR)が 建替え・再開発を目論んでいるからと思われます。というのも、隣接している都営住宅団地(北青山アパート)が建て替えられ、それにともなって再開発の計画があるのです。

 東京都は都営住宅の新築は行っていませんが、建替えは行っています。ただしその際、建替えるのは戻り居住者分だけです(北青山では約600戸が300 戸に半減)。そうして生まれた余剰地をPFIなどで民活による開発を進めています。北青山では青山通りと一体の再開発用地とする計画で、市街地住宅も そこに含まれています。

 こうした再開発に巻き込まれて立ち退きを迫られている人々の居住をどう守るか、そもそもこうした再開発が必要なのか、をテーマとしたシンポジウムが 港区赤坂区民センターにて 2 月23 日に開かれました。居住者の方(元自治会長)、支援する弁護士、新建から私(鎌田一夫)、 住まい連から坂庭国晴さんの報告がありました。会場の居住者からも「URの進め方が一方的」「転居先が見つからない」などが話され、「移転すると決めていたが、今日の話を聞いてもう少し腰を落ち着けて頑張ってみる」という発言も出ました。

この市街地住宅には、珍しく女性用の単身住宅が124戸あります。トイレやシャワーが共用の今流のシェアハウスのはしりで、今日でも存在価値はあります。改修して住み続け、使い続けるのが得策です。

(千葉支部・鎌田一夫)

 

↓ 通り側のファサード     ↓ 都営団地側(奥がUR市街地住宅)


東京支部   NPO法人設計協同フォーラム 25 周年記念

     「暮らし健やか住まい展」

  日時:2019年2月24日(日)  

  場所:板橋区立グリーンホール

 

 NPO法人設計協同フォーラムの25周年記念「暮らし健やか住まい展」を2月24日に板橋区立グリーンホールにて開催しました。講座と映画と懇親という忙しいスケジュールでしたが、51名の参加を得て好評でした。

 

 26年前の1993年に東京で 3 番目の規模の東都生活協同組合のハウジング部門を本格的に立ち上げるパートナーとして呼びかけられたのがきっかけです。 群馬支部、埼玉支部、東京支部、千葉支部、神奈川支部、茨城準備支部のメンバーが集まってつくろうと相談をし始めたのがその年の秋です。

設立は翌 94年。95年 1 月の阪神淡路大震災のときにはすべてのメンバーが現地入りをして、 調査やボランティアをおこないました。木造戸建てを中心とした仕事が多いなか、マンション分野も都市居住として定着しているので、ソフト分野の問題も解決しようとフォーラム内にマンション事業部を立ち上げ、サポートできるメンバーを広めています。

 

 講座「マンションライフのヒント」千代崎一夫(マンション管理士)

 講座「住まいと暮らしのヒント柳澤泰博(一級建築士)

 映画「人生フルーツ」都市計画家である津端修一さんと英子さんの物語り

 懇親会

 

 フォーラム会員を中心に和歌山県にある実家の相談をしたいいう方は、最後の後片付けまで参加されて盛り上がりました。 全国の相談ネットワークが必要と感じました。以下は参加された北海道大学の吉田邦彦教授(日本居住福祉学会)の感想です。

 「『設計協同フォーラム 25 周年記念の企画』、本当に素晴らしかったと思います。感銘の余韻で簡単に綴ります。スクラップアンドビルドの住宅政策の批判、住まいの長生き化、環境を配慮した低層建築化、SDGs、などなど。私が2000年代に執行部として、早川先生のお手伝いをしていた頃に、居住福祉学会も追いかけたテーマです。

 たとえば、千里桃山台の団地建替え事件で、何度も現地研究会を行い、あの緑豊かな素晴らしい団地を守るべく、「居住福祉」の見地から反対の論陣を張りました。しかしそれも空しく、 業界圧力、それと連携する建替え円滑化立法の下に、今は巨大なコンクリートブロック(巨大マンション)に様変わりです。諸外国とは逆行するなんたる国か……と虚脱感から未だ抜け切れていない状況でしたが、貴会合からは、草の根的に新建築家技術者集団(設計協同フォーラム)の皆様が、こうした住宅政策を批判する、環境の世紀にマッチする動きを作られていることを遅ればせながら実感し、新たな光を感じました。

 板橋区エリアでは、山下千佳さんが紹介された、光が丘パークタウンゆりの木通り北住宅で の、ゆり北宣言も出され、居住者コミュニティが息づき、居住者デモクラシーが進行している 状況も印象的でした。それから、後半の映画『人生フルーツ』の鑑賞会も素晴らしかったですね。噂は耳にしていた映画でしたが、今回初めて関係の皆様と共に観賞できて、なによりでした。津端修一先生ご夫妻の環境と一体のスローライフは、まさしく「居住福祉の世界」そのものですね。 私は、ニュータウン構想の草分けの人ぐらいの知識しかありま せんでしたが、映画を見ると、先生の理想と現実との乖離から挫折の連続だったのですね。時代を先取りしたすぐれた方には挫折はつきもので、そこがまたこの映画の魅力的なところと、一生懸命メモをとりながら鑑賞しました。

 映画の中で出て来たコルビュジェ、ガウディ、ライトなど建築家の名言の数々など。基本的にアメリカ在住の目下、たまたま東京にいて空いた時間に、この素晴らしい会合に偶然に遭遇できたことはなにか不思議な縁のようなものを感じました」

 褒められすぎなのですが、「フォーラムと新建」の両方の社会的な役割に触れての感想なので励みになりました。

(東京支部・千代崎一夫)