
新建設立50周年記念特集ー6
建築技術・建築職能のこれから
「芸術創造を捨てる」と建築活動は面白くなる:伴年晶/素材と技を生かすリノベーション:竹原義二/人間は地球と友だちか:丸谷博男/住まい手・使い手との対話・協働の足跡:三浦史郎/建築が残る意味:中林浩/20世紀のモダニズム建築は何をめざしていたのか:松隈洋/建築士会活動と建築の職:中野健司/ JIA活動紹介と建築の職能:出口基樹/新建次の五〇年「建築職能と技術」:福田啓次/コラム─分離発注から見える「人がつくる」という実感:岩脇崇/コラム─風の森建築の仕事 セルフビルド方式:横山知世/連載 世界の災害復興から学ぶ⑥:室崎益輝/新連載日本酒蔵紀行①灘・伏見 ほか:赤澤輝彦/暮らし方を形にする⑥:山本厚生
「芸術創造を捨てる」と建築活動は面白くなる 伴 年晶
素材と技を生かすリノベーション 竹原 義二
人間は地球と友だちか 丸谷 博男
住まい手・使い手との対話・協働の足跡 三浦 史郎
建築が残る意味 中林 浩
20世紀のモダニズム建築は何をめざしていたのか 松隈 洋
建築士会活動と建築の職能 中野 健司
JIA活動紹介と建築の職能 出口 基樹
新建 次の五〇年「建築の職能と技術」 福田 啓次
コラム ── 分離発注から見える「人がつくる」という実感 岩脇 崇
コラム ── 風の森建築の仕事 セルフビルド方式 横山 知世
◆新建のひろば
・東北北海道ブロック──Zoomを活用した幹事会・ブロック会議の開催
・もえぎ設計在宅ワークの取り組み
・第32回大会期第4回全国常任幹事会報告(Web会議)
◆新建50周年・未来への会員アンケート
◆連載
《世界の災害復興 から学ぶ 6》 ラクイラ地震からの復興 室崎 益輝
《日本酒蔵紀行 1》 灘・伏見 ほか 赤澤 輝彦
《暮らし方を形にする 6》 共働きの子育てに広縁が大活躍 山本 厚生+中島 梢
主張 『来年施行の小規模建築物「説明義務」をどう受け止めるか』
(有)大橋建築設計室/全国常任幹事(副議長) 大橋周二
私は、ここ数年、ドイツ、アメリカの省エネ建築視察を通して、日本国内と諸外国のエネルギー問題の考え方や省エネ建築物の事例について紹介をしてきました。今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人間の生命と健康が危機にさらされ、感染拡大防止による不要不急の外出禁止と企業には生産、営業活動の自粛が求められています。
その結果、一部報道では、大気中に含まれる窒素の減少、中国ではCO2排出量が前年同月比25%減少という報道もあります。ウイルス感染拡大がもたらす副産物として地球環境の改善を見ると複雑な思いがあります。
国交省が作成している住宅省エネルギー技術講習の解説書には、国内に限らず世界的に「省エネ化の推進が求められている」として、人類のエネルギー消費の歴史、地球温暖化というグローバルな視点での問題=O2削減、さらに化石エネルギー資源の枯渇ということを取り上げ、建築物の省エネ化を強調しています。
そこで、昨年5月の主張で私が紹介した、省エネ法改正について「住宅の省エネ基準適合義務化は見送りの公算」という話題の続きとして、この文書を書かせていただきます。
すでに参加された方も多いと思いますが、昨年11月から全国的には来年4月に施行される改正内容の説明会が設計者、施工者向けに行われています。来年4月以降の改正がどのような内容を含んでいるのか、2000㎡を超える大規模建築物の設計に関わる方はすでにその対応はされていると思いますが、特に小規模建物に関わることが多い設計者は来年以降注意が必要です。
では、来年4月以降なにが変わるのか。第1は、300㎡以下の建築物は、設計した建物の省エネ性能について設計者には「説明義務」が発生します。建築物の新築の際には設計者が建築主の代理人となり、確認申請を提出します。設計者は設計段階において、建築主の意向をまとめ設計内容に反映させることになりますが、今回の改正では、これまで多くの設計者が触れていなかった「省エネ」性能につての説明を行うということが必要となります(法改正にともなう公布や施行のスケジュールは国交省のHPなどに掲載されています)。
設計した建物がどの様な断熱性能になっているのか、地域別に設定されている省エネ基準を満たすためにはどの部位を改善、変更する必要があるのかなど説明を行うことになります。仮に「説明の必要はない」と建築主が申し出た場合でも、設計者はその趣旨を明記した書類の作成が義務付けられることになります。
そのため、省エネ性能を判定するため、戸建て住宅では、簡易計算ルート、仕様ルートなど簡便な判定方法も作成されています。事務所、工場、保育園など非住宅建築物については、「小規模版モデル建物法」という名称で計算ソフトがまとめられています。
第2は、300㎡を超える建築物の場合です。これまで2000㎡以上の建物に課せられていた、省エネ基準の「適合義務」が求められます。確認申請提出前には、この「適合申請」を受けることになり、申請内容は完了検査時には検査項目の対象となるため、施工中に変更があった場合は、工事完了前に変更申請が必要になります。
私は、「説明義務」制度について否定する立場にはありません。前述の通り昨年、住宅の基準適合義務見送りについては、諸外国に遅れをとったという思いはありますが、改正内容を冷静に受け止めれば、基本的には設計者、施工者は、「省エネ設計」についてその全体を理解することが求められていると思います。

東北北海道ブロック-Zoomを活用した
幹事会・ブロック会議の開催
日時:2020年4月11日(土) 22日(水)5月16日(土)
第2回東北北海道支部ブロック会議
日時:2020年4月28日(土)
場所:Web会議
参加:6名
新型コロナ感染拡大により、日常生活、仕事、新建活動にさまざまな制約を受けているなかで、北海道支部では、Zoomを使って、4/11、4/22、5/16と練習を含めた幹事会を行っています。また4月28日には第2回東北北海道支部ブロック会議を開催しました。
ブロック会議には北海道、青森、宮城支部より計6人が参加、県内と支部と会員の状況について交流し、全国常任幹事会で検討されている今後の活動方向などについて報告し議論しました。
宮城支部小椋さんは、1月に定例会を行ったが、それ以降集まっての会議開催はなく、会員個々に震災問題に取り組んでいること、『建まち』誌4月号には岩渕さん、遠州さんが投稿したことを報告。
北海道支部白田さんは、道内に進出している大手ハウスメーカーに仕事が集中し、建築主からの相談が増えているが、今後の展開がどうなるのか不安であるとの報告。
青森支部森内さんは、三沢先生が亡くなられたことについて触れられ、今後なんらかの企画を考えたいとの発言があった(青森支部は三沢先生、高橋偉之さんと青森セミナーを行い、支部結成を進めた経過があります)。
宮城支部佐々木さんは、ブロック会議の時間中にiPadで参加された条件を生かして、平屋建て木造住宅の現場監理の状況を映像で紹介してくれました。Zoomの活用の仕方について一つ参考になりました。
共通して発言されたことは会員の仕事の減少と年内・来期の収入確保に向けて対策が必要であり、5月1日より始まっている「持続化給付金」制度についても話題となりました。
今回、Zoomを使用して感じていることは、東北北海道ブロックの場合、支部間の距離があるため、常にどこで会議を行うか、時間と費用の問題が開催の壁になっていました。これがZoomにより解消されたと思います。これは全国の活動にも共通することで、関東・関西圏での企画を全国各地でリアルタイムに受け取ることができる。これは今までの新建活動ではなかったことです。
私が役員をしている他の建築団体ではすでに、米国在住の設計者も参加してのZoomセミナーを毎週1時間程度開催し、会員の外にも情報を発信するという活動形態に切り替わっています。開催した企画で報告された動画を10分程度に編集しユーチューブにも投稿しています。
新建でも集まって行う企画の他に、課題・テーマごとにグループをつくり、仕事・情報の発信を定期的に行うことは有効なことです。これまで言われてきた新建の新しい活動スタイルとなり得る可能性があると思います。解決しなければならない問題点もあります。Zoomの使用方法を理解すること、会議への参加ルール・マナーを明確にすることが必要です。また、仕事では使っていても自宅で使用できる環境にない会員もいます。一人一人の事情も把握して全員が参加できる体制を作ることも必要です。
(北海道支部・大橋周二)

もえぎ設計在宅ワークの取り組み
もえぎ設計では元々「在宅勤務に関する規定」があり、それぞれの家庭状況などに応じて比較的自由に利用可能な制度となっていました。4月、政府からの外出自粛要請後は在宅規定をより柔軟に適用し、それぞれの意志で在宅しやすいように取り決めました。
その結果、9名のスタッフのうち遠方から通勤するスタッフを中心に4〜5名が在宅をしています。毎朝、事務所のまん中に置いているノートパソコンでオンライン会議システムZoomを立ち上げます。在宅組は自宅のパソコンから順次そこに加わってきます。これは1日中つなぎっぱなしにしておき、在宅組・出勤組双方から随時話しかけられるようにしています。週一回の所内会議もスタッフ同士一つの机を囲むのを避け、それぞれの席でZoomに参加しています。
一緒にプロジェクトを進めるスタッフ同士のやりとりもZ oomを使っていますが、一方がパソコン上で図面を共有し、そこにお互いで書き込みながら情報を共有することが可能です。言葉で伝えるより、図面を指したり、書き込むことでお互いの理解が深まっていると感じます。
また、建主との打ち合わせにもZoomを活用しています。最近の例では、設計者二人がそれぞれの自宅から参加しました。建主はスマートフォンでの参加です。
打ち合わせ図面への書き込みはもっぱら設計者側が行いました。設計者二人は書き込むペンの色や太さを変えることもできるので、相手には分かりやすいようです。建主にはそれらの書き込みなどを見ながら、意見を出してもらいます。建主の意見も設計者がその場でスケッチし、確認することで素早く共有できました。
図面への書き込みやスケッチを行う場合は、マウス操作が中心のデスクトップより、ペンツールが使用可能なタブレットの方が優れていると感じます。タブレットでは一度に開けるウィンドウの数が限られているため、誰かが図面を共有すると、相手の顔を表示したウィンドウが隠れてしまうといった題もありますが、手書き感覚で図面へ書き込めるので気に入っています。リモート作業について 在宅作業では、事務所のデータへのアクセスが必要となることが多々あります。もえぎ設計ではクロームデスクトップというアプリケーションを使っています。自宅のパソコンから事務所の自分のパソコンを開き、接続されているサーバへのアクセスをすることも、メールを送ることも可能です。
出勤しているスタッフから見ると、在宅しているはずのスタッフのパソコンが勝手に動き、なんだかオートマチックにサクサク仕事が進んでいく様を見ているのは不思議な感じです。出勤しているスタッフの手を煩わさずデータを取り出せるのは便利ですが、操作に若干のタイムラグはあり、自宅で作業しているとCadの操作など少しもたつく感覚はあります。データを一旦メールなどで自宅のパソコンに送って作業する方が快適です。データの移動や共有についてはグーグルドライブなど、ファイル共有ソフトを活用する方法もあります。
セキュリティーについて
Zoomはセキュリティーの脆弱性などが指摘されています。またグーグルの各種アプリケーションについてもセキュリティーホールが見つかり、緊急のアップデートがリリースされました。これらは「外部とインターネットを介してやり取りを行うツール」です。指定された人(自分や同僚)に限り訪問を認め、悪意のある外部者の訪問を拒むのがセキュリティーの目的ですが、そこに欠陥があることはあ
りがちです。
こまめにセキュリティー・アップデートを行うなどして自衛するほかありません。便利さと危険性とが裏腹なのですが、バランスをとって考えていきたいです。
今後の在宅ワークについて
政府による外出自粛要請は、図らずも「私たちの業務のなかでは自宅でできる作業の割合が思っていたほど低くない」ということに気づかせてくれました。あわてて構築したリモートワーク態勢ですが、自宅で子どもたちと関わる時間が増えたり、案外集中して作業できたり良かった点もありました。それができるのは事務所で出勤スタッフが電話を取り継いでくれるなど、在宅組ができない作業をしてくれているからです。今後はワーク・ライフ・バランスを保つツールとして継続できれば良いと感じています。
余談ですが、在宅で作業中、自宅側のカメラとマイクは常時切っていますが、事務所のカメラとマイクは入っているため、雑談など所内の様子は伝わってきます。また午後になると不定期に「突発的ラジオ体操」が敢行されるのですが、自宅にいてもなんだかその輪に加わることで不思議な一体感が生まれ、出勤しているような錯覚を覚えてしまいます。「在宅ワークで孤独にならない工夫」と背伸びして書いておきましょうか。
(京都支部・大森直紀)

第32回大会期第4回全国常任幹事会報告(Web会議)
日時:2020年5月14日(木)
場所:Web会議
参加:11名
予定していた4月全国幹事会がコロナ禍の影響で延期されたため、5月14日にWeb会議による常任幹事会(11名参加)が行われた。以下、概要を報告する。
Ⅰ.50周年記念事業と第32回研究集会
1.50周年記念事業第8回実行委員会(4/25Web会議)に常任幹事が出席して協議した結果を踏まえて以下を決定した。
●今年11月予定の記念企画は来年に延期する。正式には6月全国幹事会に決定するが、会場はキャンセルする。
●記念企画を来年11月の全国大会に合わせて実施を検討する。場所は東京という意見はあるが、改めて検討する。
●記念企画の内容等については50周年特別委員会で検討することとし、50周年記念事業実行委員会は、記念企画の検討としては休止し、当面、関東ブロックや関東各支部の50周年事業を推進する会として存続してはどうか。なお、これまでにかかった実行委員会経費は全国会計から支出する。
●記念ロゴ募集時の条件であった採用作者に対する記念品贈呈は実行委員会に内容を確認、レセプション招待は来年に繰り越す(次期予算)。
2.同じく11月に予定していた第32回研究集会についても、通常どおり参集しての開催は行わず、日程を限定せずWebなどを活用した新しい形で行うこととし、以下の検討を行った。
●分科会はZoom で可能であり、参加者、報告者と日時を決めればいつでも開催でき、分科会の数も自由であるため、新しい分科会を立ち上げることも可能である。
●100人規模の一斉配信などは技術的な面も含めて、可否、方法の検討が必要である。
●資料集はこれまでのように事前ではなく、後日に報告集としてまとめる方法もある。
●自由度がありながらも一定のまとまりは必要で、誰でも参加できるが、たとえば番組表のようなものを作って、いつ、どの分科会が開催されるかをわかるようにする。
●Web活用の企画書が必要であり、内容、進め方とともに検討する。なお、記念企画延期と研究集会実施方法変更は全国幹事会承認とする。
Ⅱ.全国幹事会
1.開催方法、会議の運営
●会議の進行とZoomのホストの兼任の問題、接続トラブルの対応、入退場や発言の方法などの課題がある。
●事前に参加の可否、機材確認を含めた準備と参加のルールを明示しておく必要がある。
●当日のWeb会議内で「活性化」「政策」「Web」に分かれての委員会会議は困難であり今回は実施せず、委員会ごとに独自に設定する。
● 開催日時は6月14日(日)10:00〜12:00・13:00〜15:00の計4時間を予定し、資料を事前にメールで送信し、発言事前通告制とする。
2.議案
大項目は下記とし、報告・検討・承認事項を明確にする。
●各支部状況アンケート集計報告(全支部発言は求めない。)
●50周年事業の状況報告・検討と変更承認〜記念企画、研究集会、支部ブロック50周年企画、建まち年間特集、全会員アンケート等。
●組織、財政〜補正予算承認、会員現勢、財政状況、常任幹事補充承認、メーリングリスト、幹事名簿確認等。
●各委員会報告〜事前に構成員を確認、できれば幹事会までに活動方針を検討する。
Ⅲ.組織・財政
●補正予算案〜当初予算から総額の変更はないが、会議費の減と建まちの増頁、山本さん退職慰労金など、大項目の大きな増減があるため、項目間の流用とせず補正予算を編成し、幹事会の承認を得る。
●財政報告〜会費納入が少し遅れている。会員現勢報告〜千葉大会以降13増20減。
●常任幹事補充は必要性、考え方を明確にし、それに照らして幹事会までに候補を挙げ、事前に本人確認する。
(全国事務局長・大槻博司)
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