特集:リニア新幹線はいらない
JR東海が今夏8月26日に申請したリニア中央新幹線の工事実施計画に対し、国交省はわずか2カ月足らずの10月17日に建設許可を下した。多くの人がなぜこんなものが必要なのかと疑問に感じているにもかかわらず、将来に巨大な負荷を残しかねない事業がスタートしたことになる。自然破壊、居住環境悪化、事故災害、電磁波による人体への影響、エネルギー浪費などさまざまな問題を抱えるこの計画を、国土計画や文明史観を交えて糺し、改めて国民的議論を呼びかける。
・悪夢の「国土ビジョン」-リニア新幹線導入で何が見えるか 片方 信也
・長野県におけるリニア建設問題への対応 野口 俊邦
・山梨県でのリニア新幹線-甲府盆地での日照障害と“ストップリニア”の市民運動 安藤 周春
・能天気な中間駅誘致運動と山積する問題点 川本 雅樹
・文明の技術史観からリニア新幹線を糺す 宮武 公夫
■ 新建のひろば
・オリパラ都民の会主催「第2回提言討論会」
・東京支部「2014年実践報告会」
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2014年10月1日~10月31日)
■ 連載
《建築保存物語20》那覇市民会館(1967)と聖クララ教会(1958) 兼松 紘一郎
《設計者からみた子どもたちの豊かな空間づくり14》保育所の草創期から現在を省みる 大塚 謙太郎
《木の建築~歴史と現在13》遠藤新の道 大沢 匠
主張 『29回全国研究集会の成果を発展させよう』
㈱アート設計事務所・新建全国常任幹事 星 厚裕
全国研究集会も29回を重ね、内容も多岐にわたり分科会の数も増えてきた。ここ数回は分科会のテーマもそれまでの成果を引き継ぐようになり、毎回同じ分野のテーマで発表し、論議を重ね、分科会の成果を積み重ねてこれたと思う。分科会はともすると事例報告会になりがちであるが、同じ分野での事例報告などの配慮をすれば、計画する上で、どこで悩み、課題への対応をどう解決したかを発表し、それを討論し、参加者で確認できるなどの成果が期待できる。
今回、私は第2分科会に参加し、第12分科会では司会者を担った。第2分科会「伝統のデザイン」での事例報告は、伝統的な「和」のデザインの事例と、構法的な「和」の追求、特に「石場建て」のデザイン、伝統木構法の構造設計の取り組みなどの報告、さらに異色を放った報告は、木組みの構造を研究し、「和」の工法でありながらラーメン構法に近い組み方を研究し実践した事例など、すばらしい報告が続いた。
一方で、伝統的デザインのディディールが法上の壁にぶつかり、実現しがたい現実も報告され、その限界点なども話し合われた。次の研究集会では、今回報告された伝統のデザインや構造設計法の現状、法整備の課題などを含め、研究や実践での歩みが楽しみである。今回と同じ分野での報告を引き続いて追求されたい。
第12分科会でも、前回とほぼ同じテーマで事例報告がされた。今回のテーマは「高齢者・障害者が安心して暮らせるまちづくり、住まいづくり」ということにテーマを絞った。報告数を少なくして事例の詳細な報告と、そこからの成果や問題点を丁寧に話し合うことを狙ったが、それでも時間が足りない結果となった。前回の研究集会では、「高齢者の居場所づくり」に取り組んでいる報告があり、今回もその事例報告があったが、もう少し時間をかけて話し合いができれば良かったと思っている。
次回はこの分野もしっかり組み込んでいきたい。「づくり運動」は、まちづくりと施設づくりの取り組みから、住宅改善(改修)の取り組みへと幅が広がっていく。研究集会の限られた時間ではもう少し絞った論点で話し合い、その成果を積み上げて参加者の今後の計画に反映できるような分科会にしていきたいと思う。施設の実践例では、完成後の利用実態の報告など、施設は利用されることに価値があるので、次回もぜひ取り組んでいきたい。
他の分科会でも、報告とその課題や成果が次にどのように引き継いでいけるかは、分科会の内容やテーマで変わると思うが、研究集会での成果を持ち帰り、ぜひ実践にまで発展させてほしいと願っている。また研究集会での報告内容は新建賞の対象にもなっており、次回の報告もぜひ参加してほしいし、新たな報告も大いに期待している。