有事法制に反対する声明

現在、国会で審議されている有事3法案には、私たちが見過ごすことのできない危険な内容が盛り込まれている。

「武力攻撃事態法案」では、武力攻撃される危険があると政府が認定し、法制を発動すれば、国民を総動員して戦争を遂行できるという仕組みを作ろうとしている。

そこには、国のすべての行政機関や地方自治体と、日銀、日赤、NHKなどの公的な機関、および、電気・ガス、輸送、通信などの公益的な民間企業は、武力攻撃に対処する措置、つまり戦争のための業務を実施する責務があると明記している。

また、政府が地方自治体や公的な機関や企業に、武力攻撃に対処する措置の実施を指示し、それに従わない場合、直接強制執行できる権限を定めるなど、政府に権力を集中する法案となっている。

さらに、「自衛隊法改正案」では、自衛隊の出動時に防衛庁長官の要請で都道府県知事が土地・家屋や物資を収用し、建築・土木、医療、輸送などの関係者に自衛隊への協力を命じる現行法を強化する目的で、国民徴用のための「公用令書」の交付制度を整備し、拒否する者に対する罰則を課すなど、「武力攻撃事態法案」に合わせ、これを改悪しようとしている。

しかも重大なことは、この法制が実際には日本の国土と国民を守る防衛的なものではなく、アメリカの軍事行動の支援に国民を動員するためのものとしか考えられない事実である。

世界の情勢を見ても、今、日本が攻撃されるような事態の予測はなく、むしろ、アメリカに追随して遠くへ出向している自衛隊が攻撃されると、それを「国土」への攻撃とみなして世界戦争に踏みだし、日本を武力攻撃の対象にさらす危険な法制である。

以上のように、有事法制は、戦争を起こし、人権を侵害し、地方自治をつぶし、国民の生活を破壊し、情報を押さえ、法律で縛って、意識や行動を統制しようとする法制であると考える。

「人びとのねがう豊かな生活環境と高い文化の創造」(新建築家技術者集団憲章前文)のためには、自由と平和が不可欠であると考える私たちは、基本的人権の尊守と戦争の放棄をかかげた憲法に違反する有事法制を、決して容認することはできない。
以上の理由から、有事法制の制定に強く反対し、平和を願う建築関係者や諸団体と連帯することを表明する。

2002年5月26日
新建築家技術者集団全国常任幹事会