2020年10月号(No.500)

新建設立50周年記念特集-

機関誌を超えたジャーナルを目指して─『建築とまちづくり』50年の軌跡

 

『建築とまちづくり』が新建の機関誌であることと機関誌を超えること:乾  康代/地域社会を根底から支える『建築とまちづくり』:市村 昌利/『建築とまちづくり』と『住宅会議』は兄弟の関係?:坂庭 国晴/「真理は中間にある」ジャーナルを目指して:小磯 明/「建築」と「まちづくり」をつなぐもの:遠藤 哲人/『建築とまちづくり』と『建築ジャーナル』:西川 直子/想いも深し 七十年:松井 昭光/新建活動と機関誌『建築とまちづくり』:丸谷 博男/空間構築は周辺領域の問題解決として実現する:林 工/建まち「読書会」の活動:細井 健至/授業で『建まち』を使う:永井 幸/新建との出会い:中島 晃/『建築とまちづくり』と私:安藤 政英/モダニズムが目指した開放的な団地の空間構成:藤沢 毅/『建まち』500号によせて:萩原 幸 

 

 

・『建築とまちづくり』が新建の機関誌であることと機関誌を超えること      乾 康代 

・地域社会を根底から支える『建築とまちづくり』                市村 昌利

・『建築とまちづくり』と『住宅会議』は兄弟の関係?               坂庭 国晴

・「真理は中間にある」ジャーナルを目指して                  小磯 明

・「建築」と「まちづくり」をつなぐもの                    遠藤 哲人

・『建築とまちづくり』と『建築ジャーナル』                  西川 直子

・想いも深し 七十年                             松井 昭

・新建活動と機関誌『建築とまちづくり』                    丸谷 博男

・空間構築は周辺領域の問題解決として実現する                   林 工

・建まち「読書会」の活動                           細井 健至

・授業で『建まち』を使う                           永井 幸

・新建との出会い                               中島 晃

・『建築とまちづくり』と私                          安藤 政英

・モダニズムが目指した開放的な団地の空間構成                   藤沢 毅

・『建まち』500号によせて                           萩原 幸 

 

 

 《座談会》明日の『建築とまちづくり』を展望する

  [出席者] 岩城 由里子 大槻 博司  鹿瀬島 隆之  桜井 郁子  永井 幸  高田 桂子

500号の刊行を迎えて   鎌田 一夫

『建築とまちづくり』特集総目次 400号(2011.7/8)~500号(2020.10)

 

 ◆新建のひろば

「木の空間づくりプロジェクト」の設立総会に参加をして

第32回大会期 第3回全国幹事会報告

大阪支部─「水と緑と伝統のまち中之島」

復刻版発刊

 

 ◆連載

《世界の災害復興から学ぶ(9)》 函館大火からの復興            室崎 益輝

《日本酒蔵紀行 4 》     宇陀松山                  渡邊 有佳子

《暮らし方を形にする-9》  簡素な小屋で自由に暮らす(上)        山本厚生+中島 梢

 


 主張 積み重ねた『建まち』の歩み(復刻)

髙橋偉之(元新建全国幹事会議長)

 

 現在の「新建築家技術者集団」の前身である「新建築技術者集団」のときから、自分たちの考えや実践をきちんと文字にして議論できるようにするために機関誌の発行は重要視していました。「新建築家技術者集団」創立の翌1971年、創刊された機関誌は『新建』という名前でした(新建築技術者集団の機関誌と同名ですが、全国組織として新しく創刊したものです)。A4判横組みの大判。それが『建築とまちづくり』と名称を変えたのは六年後の1976年で、愛称『建まち』と呼ばれ今に至ります。名称変更時にサイズはB5判になり、当時もまだ横組みだったと記憶しています。

 

 誌名の変更は大きな出来事でしたね。新建の運動を外に開かれたものにしようという第四回大会の提起を受けたものと、当時の松井昭光編集委員長(初代)が誌上で述べています。こんなエピソードがあるんですよ-バナナジュースのことを〝バナジュー〞と言われてこれが何だかわかるか。

 

『新建』という名称はこれと同じじゃないか。もっと自分たちをしっかりと明確に打ち出す名前に変えたほうがいい、という意見。私もそのとき、なるほどなあ、そのとおりと思ったものです。

 

 誌名が変わり、季刊であったものが隔月刊に前進し、私たちの組織にとって機関誌の重要性がますますはっきりして、さらに月刊体制をつくりあげていこうという方針が出されたんですが、これはなかなか実現できませんでした。それどころか定期的にきちんと発行するという体制がなかなか確立できず、私も気を揉んだ時期がありました。『建まち』の歴史のなかでも一番苦しいときでしたね。

 

 それが月刊体制になったのが1985年のこと。今は代表幹事のお一人である三沢浩さんが新たに編集委員長に選ばれ、その任に当たられました。それからほば一三年間、三沢さんの活躍で直接配本(会員に郵送で直接届く)の維持が徹底され、今の『建まち』誌の礎が築かれました。建築ジャーナリズムとして、商業誌とは趣の異なるひとつの立場をもつ月刊誌に成長してきたと思います。

 

 月刊誌として定期発行がなかなか思うようにできない現実は今もありますね。しかし、あのころを思うと、定期発行ができないことに対して必ず組織的な対応が絶えることなくなされている。どんなことでもみんなの問題として考えていくことの重要性でしょうね。私はそこに希望を見ます。

 

解説:元全国幹事会議長の髙橋さんは、松井昭光さん、三沢浩さんと並んで『建まち』の発行に力を尽くされた方です。400号記念号では本誌への思いを「建築運動と私、そして『建まち』誌」として語っておられます。その一部を記念号に相応しい主張として載録しました。現在は高齢者施設でリハビリに励んでおられます。 

 


愛知支部-「木の空間づくりプロジェクト」の設立総会に参加をして

 

 秋の4連休初日の9月19日の朝から、愛知支部の福田啓次氏呼びかけの「木の空間づくりプロジェクト」(略称:木の空間PJ)キックオフ総会に参加をしました。参加は21名プラスZoomが3名でした。

 このプロジェクトは、仕事空間(ワークスペース)の木装化によって、これからの社会の変化に対して、より前向きに対応できる空間づくりを提案します、との理念に基づき、福田氏オフィスの木装化を、木材関係者や愛知支部の仲間で本棚や床張り・パーゴラをDIYで制作してきました。

 

  コロナ禍のなか、総会ができるかどうか心配をしていましたが、準備会を2度行い、なんとか無事に総会ができました。総会は、東京支部の岡田さんたちの会社での公団団地の店舗跡地を木装化リフォームした「ソーネ大曽根」で開催。設計者、工務店、不動産屋、愛知県庁職員、大学教授、材木関係、建築雑誌、旅行業、特許事務所、整理収納カウンセラー、環境アレルギーアドバイザー、塗装メーカー、基礎屋さんなどの色々な職種の方が参加をされました。

 総会では、運営規約で、メンバーの登録制、賛同サポーター、惑星軌道方式での参加スタイルの説明をして、当面は、運営資金を徴収せずに、支援金での活動とする。共同事業やマッチング事業を展開していき、今後事業収入を得るとのことです。メンバー同士の交流会を隔月で行い、来年1月15日に「木の空間づくりセミナー」を開催予定としています。

 記念クロストークとして、月間ウッドミック誌を発行している安田明義氏が「これからの木材産業は、どう変化をするか!」を講演され、森林と関係するSDGsのターゲット、植物の光合成と呼吸の化学反応式、人間が排出をするCO2は、年間72億トン。森が吸収をするCO2は、年間9億トン。地球温暖化、木材の需要と供給、木材価格の推移、国産材の流通経路の変化、今後の国産材利用の形、進化をする木材加工機械、加工製品、木質内装材、海外での大型機械による製材工場の動画の説明。

 進化を続ける木材加工設備のデジタル化は、アフターコロナ向け?進化を続ける木材加工製品は、シンプル&デザイン・機能性がベストでも良い製品だから売れるわけではない。「売る努力が必要」である。「木材産業の枠を超えた連携の姿に期待をします。」とのことでした。

 講演後に、参加者たちとのクロストークに加え、この団体へ期待をすることが発言をされました。

 今後は、この参加者たちと連携をしながら、少しずつでも木装化プロジェクトが進んでいくことを期待したいと思います。

                                           (愛知支部・甫立浩一)

 


 第32回大会期 第3回全国幹事会報告

 

 今期の第3回全国幹事会が2020年9月20日(日)10:00からオンラインで開催され、18支部38人の参加があった(第6回常任幹事会を9月12日オンラインにて開催し、事前に討議内容を配布)。山本厚生代表幹事より「いま世の中は、支配から共生の社会に変わろうとしている。支え合って生きることが豊かな社会を作り出す。新建の理念がより一層生かされる時だ。大いに議論をしよう」と開会挨拶があった。

 

支部・ブロック活動報告(抜粋)

・北海道・東北ブロック(宮城支部・小椋)

 ブロック会議をオンラインで行うようになり、回数も増え会員同士の交流も深まっている。宮城県立美術館(前川國男)移転問題に関わり、青森で前川國男を見る企画を検討中。

・関東ブロック(東京支部・柳沢)

 今年秋に研究集会と合わせて行う予定だった全国企画が中止になったが、その取り組みを絶やさず丸谷氏の建築運動100年史をオンラインで行った。今後も東京支部発の企画を行う予定。

・北陸ブロック(富山支部・池谷、中野)(石川支部・杉山)

 ブロックの研究会や50周年企画は延期している。各支部の会議などはオンラインで集まりやすくなっている。富山は来年の支部40周年に向けて活動のまとめに着手している。

・中部ブロック(愛知支部・中森)

 ブロックの50周年企画や愛知支部の企画は延期している。オンラインを使った企画を検討中。

・西日本ブロック(大阪支部・栗山)(福岡支部・大坪) 

50周年企画をオンラインと会場参加を併用したハイブリッドで行い90人の参加を得た。大阪支部として「中之島」復刻版、雑誌『ほらみてみぃ』を発行。12月にも中之島企画を予定。福岡では、例会をハイブリッドで毎月開催。見学会、講演会、保存運動、土曜朝6時読書会など。来年支部50周年に向けてキックオフミーティング開始。

・茨城支部をつくる取り組み(茨城・乾康代代表幹事)

 まだ会員は一人だが、前回の全国大会にて宣言をしたので実行したい。これに応えて移籍の申し出や茨城在住の知人の紹介などが相次ぎ、建まちによる茨城特集の提案もあった。

 

第32回全国研究集会

 当初今年秋に行う予定だった研究集会を中止し、オンラインによる新しいスタイルを取り入れることを確認した。常任幹事会案の分科会テーマおよび担当者リスト、具体的な進め方〜運営委員会の設置や分科会主旨の作成から報告者募集への流れを提起した。テーマ(分野)は、①防災②生活関連施設③住まいづくり④集まって住むかたち⑤地域の施工・生産⑥まちづくり⑦リノベーション⑧マンションサポート⑨団地再生⑩伝統技術・歴史的環境⑪環境、他に新たな分野も視野に入れる。

 日本の林業のあり方、団地の再編、中山間地域の新しい芽などの視点も取り入れ、テーマ相互の情報交換ができるようにする。すでに⑧と⑪は学習会、打合せをスタートさせている。誰でもどこでも参加できる基本スタンスを堅持しつつ、全体のスキームをわかりやすくして会員に発信することを確認する。

 

50周年事業

 50周年特別委員会(8/30)の内容報告を久永雅敏委員長より受けて討議する。

①第33回全国大会と50周年記念全国企画・来年11月に、場所は西日本ブロックとして支部を限定せず関西地域で同時に開催することを決定。

・内容は、これまでの支部やブロックの50周年企画の成果を含めて、新建のこれからを外向きにアピールするようなイメージが考えられる。

・大会を含めて参集できない場合も想定しておく必要がある。

②全会員アンケート

・ 9月19日現在回収率約45%。10月から集計に入るが、支部での取り組みも含め可能な限り回収率をあげる努力をすることを確認する。

③支部・ブロックの50周年事業(前述)④建まち年間特集と来年の企画

・10月号(創刊500号)原稿依頼ほぼ完了、11月号は全支部と支部のない県の連絡先に寄稿を依頼し、順調に受諾が進んでいる。

・12月号はこれからの展望を語るというテーマで、世代別や新建の周りの人たちなど、いくつかのグループに分けて座談会を検討している。展望を語るというより「展望を切り拓くための課題」を語り合うという意見も含めて、具体化を進める。

・2021年は、全国および各地の50周年企画の報告、オンライン研究集会、全国大会、新建白書、コロナと災害、東日本大震災10年などの案が出されている。

・WEB(HP)との連携、表紙や誌面体裁の変更(デザインやレイアウト)等の課題を検討する必要がある。

 

組織・財政

・ 9月10日時点の予算執行状況を含む財政状況が報告された。会費納入はごく一部の支部を除いて順調であること、支出は消耗品費が予算を上回ったこと、会員数減少により予算通りの収入は見込めないため支出超過となることがあわせて報告された。

・現状を踏まえて2021年度予算案を検討した。概要として「会費収入を現勢ベースにする」「事務局員退職慰労金は発生しない」「建まちが1月から48頁に戻る」「全国大会は2022年度」「50周年事業費を見込む」「今期のように赤字になった場合は、前大会で確認された正味財産より支出する」ことを確認した。

・決算見込みがないと予算が検討できない、貸借対照表の正味財産の動きを示す必要がある等の意見があったが、決算は9月末締め以降の作業となるため、10月以降に今期末の収支報告と来期予算案を改めて提示するということを確認し、次年度予算案を承認。

・会員数は減少傾向ではあるが、以前より減少幅は小さくなっ目立っている。

・祝賀広告の状況と掲載予定が報告された。

 

各専門委員会

・活性化委員会は、委員会の名称を検討すると同時に新建紹介リーフレットの作成を検討する。

・政策委員会では、ルイス・マンフォードの「都市の文化」に学ぶ学習会を予定。

・ Web委員会では、大阪支部、山口達也氏をメンバーに加えることと、グループメールについて整理。

・新建災害復興支援会議からは災害対策全国交流集会(11/7)の紹介。

片方信也代表幹事より「会員一人ひとりが地域や生活に根ざした活動をして、建築とまちづくりの分野で社会に影響を与えていると思う。今回の議論を踏まえて一連の50周年企画と来年の大会に取り組みたい。また、茨城支部づくりも進めていこう。」と閉会挨拶があった。                                     

                                       (全国幹事会副議長・川本真澄)

 


 大阪支部-「水と緑と伝統のまち中之島」復刻版発刊

 

 1970年に新建が設立された直後の1971年に中之島一帯を高層ビル群へと変貌させるという再開発計画が発表されました。この計画に対して、新建大阪支部は1972年に「水と緑と伝統のまち中之島」を発刊し、多くの市民や専門家とともに中之島を守る運動を展開しました。現在も続く市民の手づくりの「中之島まつり」をはじめとする息の長い保存運動を続けてきた結果、中央公会堂と府立中之島図書館は国の重要文化財に指定され、耐震改修も施されて永久保存されることになりました。これは市民運動が勝ち取った大きな成果です。

 1988年の公会堂の保存決定を受けて、新建大阪支部では1990年の第19回中之島まつり開催期間中(5/3〜5/5)に公会堂中集会室で「中之島保存再生の歴史・市民ギャラリー」を開催し、多くの市民による多彩な保存運動の歴史を展示しました。それから30年の間にレストランや鉄道駅の入口上屋などの建築物が増えた一方で少しずつ緑が減少し、公園でありながら道路と建築物が際立つ公園らしくない空間になってしまいました。私たちは公会堂と図書館が保存されたことで安堵して目を離してしまい、緑の減少や「にぎわい創出」という名の集客イベント空間になっていることを看過してしまいました。

 2018年、子ども本の森中之島という施設が公園内に建設されるという計画が発表され、それを機にあらためて中之島を見直してみると、公会堂周辺にはほとんど緑がなくなり、市民が憩える空間でなくなっていることに気づきました。以前は木陰にイーゼルを立てて公会堂を描いている人をよく見かけましたが、今はその木陰がありません。一方で緑豊かな剣先公園には木陰で憩う市民、元気に駆け回る子どもたちの姿がありました。

 そんななか、これまで休日のみの自動車通行止めだった、堺筋から西へ公会堂に突き当たる車道が今年3月に廃止されました。このことも利用して、新建大阪支部では中之島公園を公園らしく緑豊かな憩いの空間にしようという提案「中之島を緑の島に〜未来へのおくりもの〜」を考えました。1972年に出版された「水と緑と伝統のまち中之島」に今回の提案内容を増補し、復刻版として発刊することにしました。増補部分の内容は「進化する中之島公園の将来像」「都市の中の緑の効用」「中之島を風の道にする」「中之島を緑の島に│提案」「中之島景観保全市民運動の歩み〈新たなはじまりにむけて〉」「航空写真で見る中之島の変化(国土地理院)」です。

 

 図書館や公会堂が保存され、市民に人気の施設として大いに活用されているのは半世紀にわたる市民運動の成果であることをあらためて認識し、次の50年に向けてどんな中之島公園をつくっていくのかを考える一冊となっています。みなさん、是非ご購読下さい。書籍の購入申込書は大阪支部ホームページ(https://shinken-osaka.com)をご覧下さい。

 

 また、12月12日(土)午後2時からエル大阪(大阪府立労働センター)において、シンポジウム「中之島を緑の島に〜未来へのおくりもの〜」を企画しています。詳しい内容は後日ご案内いたしますので、ぜひご参加下さい。

                                           (大阪支部・栗山立己)