金融公庫廃止に強く反対する

政府は、平成13年12月19日に「特殊法人等整理合理化計画」を閣議決定し、住宅金融公庫(以下、公庫)については、5年以内に廃止して、利子補給を前提としないことを原則とするとともに、融資業務を平成14年度から段階的に縮小すること、また、証券化 支援業務を行う新たな独立行政法人を設置するという方針を出しました。

公庫は、持家取得を基本に国民の住宅居住条件の改善のために設けられた政府関係機関であり、国民の住宅問題改善に大きな役割を果たしました。多くの国民が自己所有住宅や質の高い賃貸住宅に居住できる条件を整備してきました。

公庫は現在、76兆円550万世帯の融資を引き受けており、国民の居住に大きな役割を果たしていることがわかります。そしてこの公庫利用者に対して、国庫から年間約4千億円の利子補給を行っています。

小泉内閣の公庫の廃止の目的は、国庫からの利子補給の削減と銀行など民間金融機関の業務を増やし救済策とすることにあると考えられます。つまり国民の生活に関連する予算を削り、銀行や大企業にお金が回る機会を増やすことを目的としたものです。

公庫の廃止が現実のものとなれば、銀行の貸し渋りや変動金利の上昇などで、若い世代の住宅を取得する可能性は大きく減じることが予想され、住宅の質の低下も心配されます。このことはまた、住宅供給量の大きな減少につながり、中小建設業・設計事務所やハウスメーカーの経営の大きなマイナスとなります。そして現在の不況下で、火に油を注ぐような役割を果たすことになるでしょう。

また公庫は政策的融資を担ってきました。災害時やまちづくりに伴う特別融資制度、コーポラティブ融資、マンション修繕資金、そして最近では密集市街地の住宅改善に効果的な都市居住再生融資などです。利潤追求第一の民間金融機関に住宅融資を丸投げしようという方針のもとでは、このような政策的融資制度の継続はきわめて困難です。この政策的融資制度が失われるとすれば、国民の暮らしやまちづくりにとってその影響は少なくありません。

私たち新建築家技術者集団は、国民の住む権利をないがしろにし、中小建設業などの経営を危うくし、不況の拡大に結びつく、公庫の廃止に強く反対します。

そして、国民の立場に立った公庫の業務の改善・拡充を強く要望します。

2002年3月10日
新建築家技術者集団全国幹事会