2020年9月号(No.499)

新建設立50周年記念特集ー8

持続するまちと地域づくり

 

まちづくりの発見:佐藤滋/町並み保存活動を振り返り、文化遺産保護の動向を考える:上野 邦一/

新たな歴史的建造物の活用の有り様について:中尾 嘉孝/密集住宅市街地の再生:丸山豊/学校とまちづくり:吉田  剛/暮らしから出発した密集地改善の取り組み:江國 智洋+象地域設計/ニュータウンの果たした役割と今後の課題:西郷 裕之/東京世田谷·太子堂における住民参加のまちづくり:梅津 政之輔/忘却居士のまちづくり論:新井 英明/公的セクターのまちづくり:野口 哲

 

・まちづくりの発見:佐藤滋

・町並み保存活動を振り返り、文化遺産保護の動向を考える     上野 邦一

・新たな歴史的建造物の活用の有り様について           中尾 嘉孝

・密集住宅市街地の再生:丸山豊/学校とまちづくり        吉田  剛

・暮らしから出発した密集地改善の取り組み            江國 智洋+象地域設計

・ニュータウンの果たした役割と今後の課題            西郷 裕之

・東京世田谷•太子堂における住民参加のまちづくり         梅津 政之輔

・忘却居士のまちづくり論                    新井 英明

・公的セクターのまちづくり                   野口 哲夫

 

 コラム──関西の密集市街地再生プロジェクトを訪ねる    建築とまちづくり西編集委員会

 

新建(会員)が取り組んできたまちづくり活動

 

◆新建50周年記念 東京支部企画オンライン勉強会

日本近代建築運動百年史──その時、青年たちは何を求め考えたか

 

◆新建のひろば

・北海道支部──外断熱改修マンションの現場見学会を開催

・コロナ危機、災害多発と公的住宅の役割──公的賃貸住宅の現状と課題から考えるシンポジウム

・東北北海道ブロック──第4回ブロックZoom会

 

◆連載

《世界の災害復興から学ぶ(8)》 北但馬地震からの復興           室崎 益輝

《日本酒蔵紀行 3 》     上田市柳町                赤澤 輝彦

《暮らし方を形にする-8》  簡素な小屋で自由に暮らす(上)        山本厚生+中島 梢

 


主張  『新しい仕事のかたちを考える』

ゆま空間設計/全国常任幹事

 

 新型コロナウイルス禍は収まる様子が見えない。夏場に収束して秋から冬に第二波がくるという話だったが、早々に襲来してしまった。ピークは過ぎたというが波は何度もくるだろう。新型コロナの正体は今一つ分からないことがあって、すでに集団免疫を獲得したという研究者もいれば、そもそも毒性は強くないという研究者もいる。真実はともかく、状況に対応して長く付き合っていかなければならない。

 身近にいるデザイナーは小児向けのグッズメーカーに勤務しているが、仕事はすべてテレワークになったという。会社が高価なマッキントッシュのパソコンを支給し、週一度の会議のみ出勤し、会議が終わればすぐ帰宅して在宅勤務という。この業務形態はコロナが収束しても定着しそうだ。住設機器メーカーに電話すると窓口は在宅勤務のスタッフで、出社しているのは二割程度という。

 小規模設計事務所の仕事も大きく様変わりせざるを得ない。実は当事務所の女性スタッフは七年前からテレワークである。夫の転勤に付いて日本全国を転々としている。それでも関東にいる間は月に数回千葉に日帰り通勤して、クライアントとの打合せ、現場確認等行っていた。さすがに遠隔地になってからはそれもなくなり、テレワークによる設計だけになった。私がクライアントと打合せし、基本設計して送り、実施設計を担当するというパターンがほとんどである。なかには敷地のデーターとクライアントの家族構成や要求を送り、基本設計からすべて行ったケースもある。そのケースではまったく想定していなかったプランがでてきたので戸惑ったが、説明されてみるとなるほど最善かと納得できたので提案した。クライアントには気に入られ、ほぼそのまま実施設計から竣工に至った。当事務所においてはテレワークは一定程度、機能しているといえる。

 ただテレワークには限界を感じる。建築の仕事は、高度な技術というよりローテクの積み重ねで、人々との触れ合いや経験がスキルとして蓄積されるものだ。それがまったくないのは決定的なハンディだ。そもそもテレワークとはtele(離れた場所)work(働く)の造語である。言葉通りに外注業務まで含めて考えると、かつて某建築団体の講習会で健全な事務所経営のために、中国に図面を一括発注しローコストに抑えるという話を滔々と聞かされたことがある。

 またある公共事業工事の現場監理を行ったとき施工図を一括して中国に発注していて、現場監督は現場事務所でパソコンに張り付いている姿を見た。それどころか現場での墨出しも外注する。効率優先の分業化、専業化で若い現場監督は墨出しもできず施工図も描けない。一人前の技術者に育たないのである。若い大工が墨出し、刻みができないのと同じだ。そんな事態にならぬよう、スタッフにはできるだけクライアントとの打合せや現場での対応を伝えるようにしている。現在施工中の現場はクライアントが新潟在住なのでサンプルや資料を送り、Zoom上で仕上げ材を決定した。

 スマホで現場の状況を映しながら会話したり、現場監督含め三者で話し合ったりしている。クライアントがパソコン内にいるのであればスタッフが設計打合せにZoom参加することはまったく同格にできるので、設計中の事案ではその手法を採用しようと考えている。通勤しているスタッフがテレワークする場合とは事情が違うが、コロナ禍以降の設計事務所のあり方を柔軟に探りながら追及しているところである。

 企画中のオンライン研究集会においても新しい仕事のかたちについて活発な議論を交わす必要が

あると考えている。

 

 


北海道支部-外断熱改修マンションの現場見学会を開催

 

 7月11日札幌市中央区で外断熱工法によるマンション改修の現場見学会を行いました。北海道支部会員4名、市内2つのマンション管理組合役員の方々と東京、関西より外断熱工法を推進する団体の参加もあり、現場関係者を含め17名の参加でした(設計工事監理は大橋建築設計室)。新型コロナウイルス感染の影響があるなかで、管理組合のご理解、ご協力をいだたき、住民との接触をしないように集合場所、移動ルートを決め行いました。

 建物と工事の概要は、SRC造8階、地下1階、屋上塔屋3階、住戸数3〜8階60戸です。

今回の工事はこの住戸部分(床面積6755㎡)の改修です。 竣工は1973年(昭和48年)7月、建築後47年を経過して、外壁タイルの剥落、雨水の浸入防止など、躯体保護を目的としています。

 外断熱施工範囲約1600㎡・断熱材EPS t=70㎜、ジベル固定の上Stoサーモクラシック仕上。手摺壁約650㎡は断熱なしでStoサーモクラシック仕上のみ。廊下、塔屋外壁2100㎡は塗装仕上、屋上防水、バルコニー内床ウレタン防水、その他外断熱施工にともなう換気口の延長など関連工事です。

 

 見学会では、断熱材の貼り方、ジベルを使用しての固定方法、低層階での外壁仕上の紹介を行っています。すでに西棟外壁面の施工、屋上防水、各住戸バルコニーのウレタン防水を終えており、現在東棟の仕上中で8月下旬に仮設足場の解体を終えます。

(北海道支部・大橋周二)


 東京支部-コロナ危機、災害多発と公的住宅の役割-公的賃貸住宅の現状と課題から考えるシンポジウム

 

  新型コロナの感染拡大、多発する豪雨災害で住まいを失う人々が増大するなかで、その打開策を考えるシンポジウムが開かれました。7月18日、台東区の会場では検温、消毒、マスク、間隔、連絡先などコロナ感染対策をとって30名が参加しました。住宅団体とともに住まいのつくり手の団体、新建、建築ネット、JKの会(中小建設業制度改善協議会)などの会員も参加しました。主催は国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)日本住宅会議・関東会議。萩原幸氏(NPO住まいの改善センター)がコーディネーターを務めました。

 住まい連、坂庭国晴代表幹事が「コロナ危機のなかで公的住宅の役割と対策の強化を要求し、7月豪雨災害の緊急住宅問題を取り上げ、災害と公的住宅の役割を考えます」と挨拶、趣旨説明をしました。 

新型コロナ危機と住宅の危機

 シンポジウムの問題提起者として中島明子氏(和洋女子大名誉教授、台東区居住支援センター会長)が「新型コロナ危機と住宅の危機-公的住宅の役割」についてミニ講演しました。

 中島氏は新型コロナを災害としてみて、国民の生命と生活を守る緊急提言(弁護士有志)を受けて災害対策基本法の効果的活用が可能と述べました。またコロナ禍で浮き彫りになった住まいを失う人の生存権の危機、路上生活者、貧困な生活保護施設、低質な民間宿泊所など感染、居住の危機を明らかにしました。

 住宅、居住の危機に対するセーフティーネットは運動の成果としては住宅確保給付金受け取りの要件緩和で離職者、フリーランス、DV被害者の受け取りが可能になったことをあげました。コロナ危機のなかで女性首相のデンマークでは3月から早期のロックダウン、4月には段階的解除、小学校を再開しています。ヨーロッパで評価されているコロナ感染住宅対策は社会住宅を20%確保しているからできたと述べました。

 最後に「コロナ後の住まいの補償をデザインする」として憲法25条にもとづき、権利としての住まい、私たちの生存権、居住の権利を実現するため公的住宅の拡充、家賃補助は切実、緊急の政策課題と述べ、講演を終わりました。

コロナ禍と災害多発-公的住宅の対応と課題

坂庭国晴住まい連代表幹事はコロナ禍と災害多発について①コロナ禍での公営住宅の実態と問題点②7月豪雨災害と住宅問題③公的賃貸住宅の役割と課題について報告しました。

 「国交省はコロナ感染による解雇、雇止めで職とともに住居を失う人に対し公共住宅の目的外使用で公共住宅を10都市、406戸を確保した。しかし、コロナ解雇は3万人ともいわれているのに対し入居世帯は288戸で、リーマンショック時の公共、UR住宅3・5万戸に比べ著しく少ない。7月豪雨災害による住宅被害は全国で全壊567棟、床上浸水7335棟、住宅への被害合計1万6748棟におよび、熊本、福岡県に集中した。国と熊本県は公営住宅の提供、住宅融資などを決めているが、県と市で85戸では少なすぎる。九州7県の公営住宅は10年間に6000戸も減らされており、自然災害に対する居住者の安全は確保されていない。

 来年3月に閣議決定される住生活基本計画では、浸水など災害リスク地域に居住する1200万世帯〈総世帯の23%)に災害に強い住まいの提供への具体的な記述はない。公的賃貸住宅の経営状況は埼玉県公社、UR賃貸住宅は黒字、都営住宅はトントンなど経営状態は悪くない。改正住宅セーフティーネット法は公的賃貸住宅の供給促進、住宅確保用要配慮者の居住の安定を定めているが、実施されておらず多くの改善が必要である」

 シンポジウムは「公営住宅の管理、経営-コロナ禍の都の住宅対応」について北村勝義氏(都職労住宅元支部長)が、「公社賃貸住宅の管理の現状、課題」について奥脇茂氏(公社自治協事務局長)が報告し、公営住宅への活発な質疑応答、討論を行いました。報告、討論を通じてコロナ危機、災害多発時の国民の住宅要求の解決には、公営住宅の建設拡大、家賃補助制度の確立、諸制度の改善が当面の要求であり、住まいのつくり手の中小建設業者も巻き込んだ国民的要求運動になると感じました。

 

(新協建設工業、JKの会・星野輝夫)

 


東北北海道ブロック-第4回ブロックZoom会議

 

 7月30日(木)に第4回東北北海道ブロック会議を開催した。第1回2019年10月27日、第2回2020年4月28日、第3回2020年5月21日の開催、6/14の全国幹事会、7/25の全国常任幹事会の内容をふまえた内容となった。青森支部1名、宮城支部2名、北海道支部3名の計6名の参加であった。議題および会議の概要を報告する。

7月25日の全国常任幹事会報告

①50周年企画の延期。今年の全国研究集会の開催形式について説明。マンションサポート研究会は8/4、8/25、9/8、9/29にリレートーク形式でZoom開催

②2021年の全国大会について、関西開催で協議を開始する。

③会員アンケート〜7/25現在の回答は全体で10%程度。支部別には、北海道6名、青森1名、岩手0名、宮城1名。

参加者および支部会員の近況について交流

 青森:7/17(金)9名の参加で支部会を開く。支部企画として10月上旬には山登りを計画している。勤務先の仕事はそれなりにあるが、ホテル、飲食、百貨店は厳しい経営。

 宮城:前回の会議後、支部会議を開く予定がさらにコロナ拡大で難しくなり、この間、会員にはメールを発信しているが返信がない。県内の状況としては、女川原発の再稼働、前川國男設計の宮城県美術館の建て替え問題での現地保存を望む運動、災害公営住宅家賃問題の取り組み、2011年の仙台市災害公営住宅の建設で杭工事の際に隣家の木造住宅が被害。会員の構造事務所が対応している。

 北海道:7/28に支部幹事会を7人の参加で行う。集まっての会議ができなかったため近況報告は悩み、仕事のことを吐き出す場になった。今後は10人程度の会議、セミナーを開催する方向。(8/28に8月月例会「再生可能エネルギーの利用について」を開催)

ブロックとしての企画をどのように行うか

 全国的にはコロナが収まらず、引き続き制限のあるなかで、どのような活動ができるか。50周年企画、支部企画について意見交換を行う。

①近況報告のなかで出された、前川建築の見学を兼ねブロックとしての会員交流を企画してはどうか。「前川國男の建築を大切にする会」も解散したとの報告もあり、新建として復活に協力できないか話題になった。

②11月の全国研究集会について、事前に開催される各分科会のZoom企画について確定次第、全会員に案内する。同時に会員個々の活動もつかんで、分科会への参加を呼びかける③ブロックとしての50周年企画は、Zoomを使って行う方向で協議した。

50周年を迎えた新建がどういう役割を担っていくのか、コロナ問題をどうとらえ対応していくかなど、各支部内でも話し合ってみることを大橋より提案した。

その他

 次回のブロック会議は9月の全国幹事会後に行う予定。

 

(北海道支部・大橋周二)