戦後の団地・ニュータウン考

5年に及ぶ東京支部『ホワイエ』の連載終わる

 

かつて、団地やニュータウンの計画設計を行っていた建築・造園技術者が計画住宅地研究会をつくり、戦後東京圏の団地・ニュータウンの記録と分析を行っています。その成果は、2014 年1月より新建東京支部の機関誌『ホワイエ』に連載して来ましたが、今年の7月で一応連載が終了となりました。

単体の建築物と違って、団地・ニュータウンでは計画者・設計者が顕名されることはほとんどありません。 私たちはアノニマスな技術者なのです。それは、その計画や設計の考え方が社会に知られていないという事で もあります。戦後の都市化を担ってきた団地・ニュータウンはいま大きな転換点にあり、再生・再編が求めら れています。有効な再生・再編を行うためには、当時の計画・設計方法論や技術、その後の居住形態や地域環境の変化を知っておくことが重要です。

 

計画住宅地研究会ではそうした認識に立って、住民・市民と次世代の技術者に向けて、自らの仕事とその自己評価を伝えようと試みたのが、この「戦後の団地・ニュータウン考」です。ちょっと自慢話もありますが、 反省がしきりです。連載が終わったのを機に、このホームページに掲載させて頂くことになりました。

 

『ホワイエ』連載とは多少構成を組み替え、次の様な内容となっています。

 

1章 東京都市圏域の形成

2章 東京圏の住宅地開発――地域分析

3章 団地・ニュータウンの計画設計手法

4章 社会の変化と都市のあり方

5章 団地再生・再編のあり方を問う

 

皆さんが初めて聞く話が多いと思います。私たちは、戦後まちづくりの「正当」と思って来たことですが、 皆さには「異聞」と映るかも知れません。東京圏以外の人には、ちょっと変わった首都圏案内にもなるでしょ う。いずれにしても、「この後を読む」をクリックして中身を覗いて見て下さい。

研究会のメンバーは次の4人で、いずれも新建会員または建まち誌読者です。

 

浅井義泰 造園家 ・建まち読者 / 泉 宏佳 都市プランナー・新建千葉支部

鎌田一夫 住まいの研究所・新建千葉支部 / 小畑晴治 開発構想研究所・建まち読者


はじめに

戦後の団地・ニュータウン考

研究の目的

1960 年代から 80 年代前半の、いわゆる高度経済成長時代を象徴する

ものとしては、新幹線、高速道路、巨大ダム、超高層建築などが挙げら れます。団地やニュータウンなど計画的に開発された住宅地もその一つ で、戦後の都市の拡大を支えてきました。

しかし、今日の低成長・縮退社会にあっては都市の拡大は止まり、団 地・ニュータウンの新規建設は殆どなくなりました。そして、既存の団地を現代の状況に即して再生・再編することが課題となっています。

こうした、再生・再編を適切に行うためには、団地の出自を把握しておくことが重要です。しかし、単体の建築物と違い、団地などの計画・ 設計者が顕名されることはりません。これは、その計画や設計の理念や方法が社会一般に知られていないことでもあります。

団地・ニュータウンを計画設計してきたアノニマスな技術者である私 たちは、そうした認識に立って計画住宅地研究会をつくり、住民・市民と次世代の技術者に向けて、自らの仕事とその自己評価を伝えようと試 みたのが、この「戦後の団地・ニュータウン考」です。

本レポートの内容と構成 研究会の問題意識や分析作業に従って各章が構成されています。

 

○東京大都市圏の形成過程から何を読み取るか →1章

明治維新以来、東京圏は拡大を続けてきた。拡大の初期には都市住宅の祖形がつられた。幾つかの拡大抑制策は効果を上げず、1970 年代以降は周辺 3 県で急激に人口が増加した。拡大範囲は鉄道路線や地形に深く関わっている。

 

○東京圏の住宅地にはどのような地域特性があるか →2章

東京圏の住宅地は、都心>近郊>郊外といった同心円では説明できな い立地特性がある。ここでは、低湿地、台地、丘陵地、埋立地といった 立地条件にも着目して、主要な住宅地の特性を分析した。

 

○住宅地開発における計画理論や設計手法とは →3章

日本の団地は、ジードルンク、田園都市、近隣住区など欧米の理論や実践を手本に出発した。そこから、立地や社会状況に即した展開をとげてきた。都内から丘陵地に至る、様々な計画理論、設計手法を概観する。

 

○団地再編の前提となる社会と都市の現状認識 →4章

団地建設が始まってから 60 年が経過している。初期の人口増加・都市拡大から、社会や都市のあり様は大きく変化している。今後の団地 の再編を考える上で重要な視点を取り上げた。

 

○都市化時代とは全く異なる方法が求められる団地再編 →5章

90 年代にURが行った強引ともいえる団地全面建替えから、管理運営のソフト改善まで、様々な団地再生手法を検討し、今後を展望する。

計画住宅地研究会


はじめに

戦後の団地・ニュータウン考


1章 東京都市圏域の形成

 1 明治以降の東京圏拡大

 2 戦後の東京圏の拡大段階

 3 都市圏拡大抑制策

 4 拡大の立地特性と団地の分布

 5 都市拡大と地形の関係


2章 東京圏の住宅地開発―地域分析

 1 都内の大規模団地開発

 2 多摩地域の宅地開発

 3 神奈川丘陵地の宅地開発

 4 千葉・下総台地の宅地開発

 5 千葉海浜埋立地の宅地開発 6 東武伊勢崎線沿線の宅地開発


3章 団地・NTの計画設計手法

 1 ジードルンクからの展開

 2 衛星都市論とニュータウンづくり

 3 歩行者専用路とニュータウン

 4 団地計画と現代の庭

 5 丘陵地の開発手法

 6 高層高密度住宅地づくり


4章 社会の変化と都市のあり方

 1 人口減少と超高齢化社会

 2 都市計画の時代からまち育ての時代へ

 3 居住者の地域活動

 4 人の移住と地域の持続

 5 都市の緑と都市農地

~コラム~


5章 団地再生・再編のあり方を問う

 1 郊外団地の建替え・再生―多摩平団地

 2 大団地再生の試み―高島平・みさと

 3 地域に開かれた団地へ―面開発団地

 4 建替えという団地再生手法を問い直す

 5 普通のまちになるための団地再編 


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