都市再生関連法の施行にあたっての見解

都市再生特別措置法及び関連する都市再開発法等の改定(都市再生関連法)は、今年3月初旬に法案が国会に提出され、充分な検討や論議を行う余裕もなく強引に国会を通過、成立した。

都市再生法の主な内容は、既にある小泉首相を本部長とする都市再生本部を法的に認知し、①都市再生緊急整備地域の政令による指定 ②民間事業者が行う事業計画提案の国土交通大臣による認定制度の創設 ③認定事業に対する無利子貸付などの金融支援等の恩典 ④都市再生特別地区を定め、用途、容積率、斜線制限、日影規制について適用除外とする ⑤民間事業者による地権者2/3以上の同意による都市計画提案を可能とする ⑥都市計画、事業認可申請の期間短縮と迅速化 等である。また、関連法として都市再開発法改定では、①再開発施行者に民間再開発会社を加える ②第2種市街地再開発の施行者にも民間再開発会社を加え土地収用権を付与する 等が改定された。これらの内容は、都市再生を先導する大規模プロジェクトを具体的に国が選定し、集中的、重点的推進を諮り、民間開発資本の自由な開発活動を保証し経済の活性化を図ろうというものである。

都市再生関連法の問題点として、私達は次の諸点を指摘しておきたい。
第1に、住民主体のまちづくりに逆行し、政府と大資本主導のバブル型都市開発が再び行われる。

●トップダウンによる緊急整備地区の指定は、自治体の都市マスタープランとの整合性が無視され、都市計画審議会に諮ることや公聴会の開催などの制度がなく、住民参加の制度を全く否定している。
●都市再生本部に財界、大資本から提案されている大規模開発計画(280を超える)の事業計画認定が念頭に置かれている。
●見かけ上の事業採算計画によって、バブル型の過大な床供給が行われ、再び日本経済に大きな打撃を与えることとなる。第2に、再開発事業の公共性を否定し、大手開発資本の利益だけを優先する制度改定である。
●民間会社に権限と資金を集中し、政府方針の絶対化によって再開発事業を推進する制度となっている。
●株式会社が施行者になることを可能にし、事業費の無利子貸付や債務保証制度など民間資本の開発活動に対して至れり尽くせりの内容となっている。
●第2種市街地再開発事業の施行者を民間開発会社が可能としたことは、土地の強制収用権限まで与えることを意味し、国民の財産権を脅かすものであり、憲法を侵害するまちづくり手法である。

第3に、再生特別地区を定め従来の都市計画の規制をはずし、地方自治体の権限外で民間事業者が勝手に開発計画を立案できる改定である。
民間事業者が権利者の2/3以上の同意をもとに独自の提案権限を持つことにより、事実上地方自治体は民間業者に従属せざるを得なくなり、地域の総合的なまちづくりビジョンからかけ離れた大規模な開発事業が行われることとなる。
開発周辺住民のくらしや環境を大規模に改変させるまちづくりが利益優先で行われる。

第4に、事業認可のスピード化は、住民の意見や環境に対する影響など充分な検討の機会を与えず、将来にわたって禍根を残す大規模開発が横行することとなる。
●民間事業者の都市計画の提案に対して6ヵ月、再開発事業認可申請は3ヵ月以内との法制化は、期間が短かすぎ住民の意見を聞く余裕はない。
地方自治体は、環境や住民の意見を尊重するよりも、開発事業者の時間コストを優先して決定をおろさざるを得なくなる。

こうした問題点を持つ都市再生法を活用した今後の大規模開発事業に対して、私達は強い懸念を持つものである。

建設市場の拡大とそれによる経済活動の活性化を目的にした都市再生関連法は、人々の暮らしを脅かし、安全で快適に住み続けられるまちづくりの視点を欠く、政府と大資本主導の強権的まちづくり手法の容認が特徴である。

都市再生法の施行にあたって、私達は、緊急整備地域の指定や特別地区の指定をする場合は、徹底した情報公開、地域住民の意見の尊重、地域や自然環境に対する影響等従来の都市計画手続きの後退を許さないことを求めていきたい。

私達は、木造密集地域に対する住民主体の修復型まちづくりや、地域商店、地域産業の活性化を目指したまちづくり等の取り組みこそ真の「都市再生事業」と考える。

地域住民、NPO、自治体で取り組まれているこれらのまちづくり活動に有効な法整備と支援策の充実こそ緊急で重要なことである。

2002年5月26日
新建築家技術者集団全国常任幹事会