第32回 新建築家技術者集団 全国大会(千葉)大会決定

第32回 新建築家技術者集団 全国大会(千葉)大会決定

  大会 第1日 2019年11月16日(土)12:00~20:40

     第2日       17日(日)9:00 ~16:50

  会場 和洋女子大学(千葉県市川市国府台2-3-1)

 

 第32回大会決定について、建まち1月号では議案の修正箇所のみ掲載し、全文は掲載しないことになりました。そこで、先日の常任幹事会において大会決定全文をホームページに掲載することとしました。

[全国事務局 大槻]


32回 新建築家技術者集団 全国大会(千葉)大会決定

 

Ⅰ 建築とまちづくりを巡る情勢

 

1、適切な住宅に住む権利が実現していない状況

人の暮らしに住まいは欠くことが出来ない。国連人間居住会議(ハビタット)では「適切な住宅に住む権利を、完全かつ前進的に実現する」(イスタンブール宣言)としている。しかし、日本では住む権利という意識が育たず、実現していないまま今日に至っている。

  もともと、持家重視の政策は2004年の住生活基本法の制定によって市場依存を強め、公的住宅の建設は極端に減少した。さらに、2017年には空き家が目立つ民間借家を住宅困窮者に供給するという住宅セーフティネット制度が作られた。市場で需要のない住宅と市場で借家する資力のない人を組み合わせる政策であって、196月でセーフティ住宅の登録は全国で約9,000戸、困窮者専用は約1,100戸と、目標の5%に達したに過ぎない。こうした政策に惑わされず、公的住宅の積極的な供給(復興住宅の管理改善を含め)や家賃補助制度の創設が求められている。

セーフティ住宅は、市場活用という点では2011年に制度化されたサービス付高齢者住宅(サ高住)の二番煎じである。ただし、サ高住は高齢者住宅制度を一本化し、運用枠組みも幅があるので市場に受け入れられ、17年には22万戸を超えた。団地内の空き家を利用するなど運用の工夫もみられる。

しかし、在宅の考え方からすると、引っ越しを前提にしたサ高住は高齢者居住施設の一種であって、サービス込みの住居費は一般の年金生活者には高額である。加えて、住宅運営者が過剰な介護サービスを受けさせる囲い込みなどが行われて施設化が更に進んでいる。最下層のネットといえる無料低額宿泊施設も改悪されかねない状況だが、こうした住宅問題は社会的課題として顕在化しない。長年植え込まれた「住まいは自らの責任で確保するもの」という観念を払拭するような建築技術者からの提起が待たれている。

 

2、住み良い・暮らし良いまちづくりの課題

多くの自治体が、移住、仕事づくり、働き方改革、子育て支援と地域間連携を加えた地方版総合戦略を作成し「地方創生」事業に取り組んでいる。また、地方中核都市への行政効率化・市場優先によるコンパクトシティ化を目的として、過疎地から都市の一定の指定された空間に人々を集住させ、都市機能を集約する立地適正化計画等の方策も進めようとしているところもある。しかし実際の「地方創生」は、当初から分権化の流れとは大きく異なり、自治体の計画の善し悪しを国が判断し、国が事業の採択を決め、交付金を出すという集権的な仕組みになっていることや「稼げるまちづくり」を目的とすることによって、本来の地域の課題の解決や住民の暮らしをよくするための取り組みとなっているところは多くない。

  公共施設等総合管理計画は学校の統廃合など地域再編や立地適正化計画と併せて、公共施設の運営や管理がPFIなどによって民間主導への移行が進んでいる。また総務省の「自治体戦略2040構想研究会」の報告では、「新たな自治体行政のあり方」として、AIやロボテックスを活用した「スマート自治体」や行政のフルセット主義の脱却、圏域マネージメントについて記されている。自治体のアウトソーシングが一層進み、市民と自治体、職員との関係が希薄となることが心配される。

  一方、市民の主体的な取り組みとして、暮らし重視、コミュニティ優先で公共施設の長寿命化を図り、廃校になった施設を活用し移住者とともに既存の地域組織との新しい関係を築くことや、空き家や空き店舗を活用してコミュニティカフェや子ども食堂などの地域拠点をつくる活動も活発に行われてきている。

  期待された住宅セーフティネット法は、登録住宅の登録が進まないことなど課題もあるが、各地に居住支援協議会、居住支援法人が設立され、少しずつではあるが地域での居住支援の活動が動きだしたところである。「生きづらさ」を支えるNPOや市民団体などと連携し、地域のストックを活用した安心して暮らせる住まいづくりが始まっている。

 

3、建設業界と工務店・設計事務所の状況   

多くの場合、職人の世界では、世間で言われている労働時間を規制する働き方改革やパワハラ等の改善から程遠い環境にある。また収入も、労働環境の割には厳しい傾向にある。やる気を持って入ってきた若手に負担が強いられたり、そもそも若者や女性の就職率が極めて低いため、全体としては高齢化が進み、建設労働者数は減少し続けている。体力の限界が離職につながるケースが多く、培われた経験が活かされる場が少ない。

  一方で、地域に根ざして仕事を広げている工務店も少なくない。徒弟制度から脱却し、組織を集団的に運営し、月給制や労働時間管理が取り入れられ、若手の育成にも力を入れている職場は就職率も高く安定している。工務店の仕事は、もともと地域の住宅づくり、住宅メンテナンスや災害時の復旧作業、行事の担い手なども含めて人々の暮らしの安全や安心に直結しているが、とりわけ地方で工務店の数が減っている。

  ゼネコンにおいても人手不足は深刻であり、施工図外注の常態化や書類偏重などにも起因して現場監督の技術力低下が危惧されている。また、大手ハウスメーカーが住宅市場を独占している現状も顕著である。

  設計の世界でも、数字上の話や新しい基準に振り回される時間が膨大に増えている。使う人や作る人のこと、まちのことを考えて設計しているはずが、検討していることはそこからかけ離れていく。大手に比べて個人事務所にとってはさらに厳しい。また告示15号の改正により、設計報酬を算出する時間数が大規模建築では増えているが小規模建築で極端に少なくなっている。受注規模の差を反映して建設業界同様、大手と中小零細の利益率格差は広がっておりさらにこの傾向が強まると思われる。長時間労働、低賃金、将来への不安など若い人にとって中小の設計業界もまた魅力のないものになっている。 

 一方で、市民のまちづくり活動の支援や地域の調査や計画づくり、地域に根ざした住まいや施設の設計のみならず運営の組織づくりや管理計画の策定など、仕事のウイングを伸ばしつつ、建築技術者の職能を発展させる取り組みも見られる。

 

4、続発する大規模災害と復興の状況

地殻変動の活動期に入ったと言われる日本列島では19951月の兵庫県南部地震以来20196月の山形県沖地震まで大規模地震(M6以上)は37回発生。すべて震度6弱以上で甚大な被害を発生している。また異常気象が原因といわれる豪雨による水害も毎年発生している。直近では20199月千葉の台風15号被害は記憶に新しい。同時に生活に密着したインフラ整備の重要性も明らかになっている。

特に2011311日の東北地方太平洋沖地震時の福島第一原発の過酷事故は過去に例を見ない規模の災禍を多くの人々にもたらし8年を経た今も避難者数は10万人に上っている。震災関連死、自殺者、孤独死も他災害をはるかに超える数が発生している。東日本大震災による福島県の直接死は1810人・関連死2227人(20183月現在警察庁、復興庁による統計値)。帰還宣言が出ても帰還者の約半数は65歳以上、新築した小中学校も子供たちは数%しか戻らず開校2年目には廃校の例も出ている。事故とその後の住民への補償方法の違いが住民同士を分断している。原発事故がほかの災害と大きく異なることの一つは「元の地での復興」という選択肢が極めて困難なことである。日本列島の中に戦争でもないのにこんな事が起きている事実を私たちは決して過去の事としてはいけない。福島原発の大事故後も全国の原発の再稼働や、海外への原発売込みの動きなど決して容認することは出来ないと言うのが圧倒的な国民の声である。福島原発の大事故後に安全基準が強化されたというが、住民避難に関しては審査対象外であることは大問題である。このことは原発事故が起きれば避難は不可能と国が認めているとしか考えられない。

復興という点で各災害を検証すると、被災当初の避難所暮らしは国際的なスフィア基準に基づくイタリアの避難体制づくりなどを是非とも我が国も取り入れたい。被災直後の即日で温かい食事、家族単位のテント、衛生設備完備などが提供され、被災者本位の体制を国を挙げて作り上げている。災害で助かった命がその後の避難所、仮設暮らしなどで失われ直接死を上回る人数になっていることは特に深刻である。(近年の災害では関連死の比率が増大=阪神淡路16.9%、東日本大震災19.9%、熊本地震385.5%、西日本豪雨23.9%)高齢社会になっていることもあり、災害弱者に対する配慮も今後一層重要である。

 

5、建築関係法令の改正問題と「建築基本法」へ

高度経済成長期の急激な開発とそれに伴う住環境の悪化を抑制するために様々な規制が創設、強化されたが、低成長、景気後退局面における民営化および民間活用の流れの中で、それらの規制は企業の利潤追求の阻害要因とされた。規制緩和こそが経済成長に不可欠であると観念的に喧伝され、国民は無意識的にこれを受け入れてきたが、結果として国民の生活は豊かになったとはいえない。

建築基準法は主に容積、形態規制を次々と緩和し、さらに「特区」という手法を用いて住環境を阻害しながら企業の利潤追求に貢献している。

建築士法は、いわゆる姉歯事件を背景として2009年から建築士受験資格要件の実務内容の厳格化や、試験科目、内容の増加などにより、十分とは言えないまでも技術者倫理や建築技術の専門性を重視する方向に改定された。その結果、合格者数が減少したが、そのことは現代の縮退社会においては必ずしもマイナスとは言えず、資格者の質的向上が期待できる可能性があった。しかし、今回の改定では、単なる資格者の確保だけを目的に受検要件であった実務経験を不要としたため、大学の予備校化がすすみ、建築技術者の倫理や社会とのつながりを経験、学習する機会の減少することが危惧されている。

このような規制緩和に対して、あるいは一方で住環境保護に資する可能性のある法改正に対して、パブリックコメント等も活用しながら、住環境毀損の抑制と、よりよい改正提案を、専門家を含む国民に啓発するとともに、規制緩和を許容しない「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」ことを大義とする「基準法」の上位たる「基本法」の検討が望まれる。

 

6、歴史的建造物・景観保存と施設統廃合

高度成長期以降、「開発か保存か」「文化で飯が食えるか?」と歴史的建造物や景観の保全、再生が後回しにされてきた。昨今の観光バブルを受けて「利活用」という名の下、歴史的建造物の評価・維持・保全は重要視されず、2018年の文化財保護法の改正も、儲けられる文化財だけを評価しているように見える。各地でヘリテージマネージャーの養成が進められているとはいえ、文化財の保存と活用に必要な平衡感覚とネットワークを持って、それを適切に実現していける専門家を育成・配置しているとは言い難い。

  2019年度の文化庁予算は前年度より増えているとはいえ1,160億円、首都高速C2新宿線の建設費は1kmあたり1,000億円と言われている。2018年3月に文化庁より出された諸外国の文化政策などを比較した調査報告書によると、各国の文化予算はアメリカ1,500億円、フランス4,800億円、韓国2,800億円などとなっている。これを国家予算に対する比率と国民一人当たりの金額で見てみると、日本0.11%・800円、アメリカ0.02%・500円、フランス0.88%・7,600円、韓国1.05%・5,500円となる。民間に力のあるアメリカや、国が予算を付けているフランス・韓国に比べ、日本の文化政策に対する貧弱ぶりが際立つ。

  1999年に成立した、いわゆる地方分権一括法で、指定管理者制度が導入され、文化財行政などが強化(効率化)されるための首長部局への移行が進められ、その結果、博物館・美術館の学芸員や図書館司書、文化財に携わる技術者はどんどん減っている。老朽化した施設の維持について、ようやく目を向けたかと思われた公共施設等総合管理計画の策定の動きも、結局のところ、地方自治体への押し付けにつながり、国が文化国家であることを投げ出している。

 

7、建設業界の関与する不正と技術者の立場

サブリース業界大手のレオパレス不正が多くの入居者と賃貸住宅所有者の財産的損害・精神的苦痛と深刻な不安を招き社会的に問題となった。会社は市場原理に振り回されて早期に儲けを得るために建築法令違反を承知で、サブリース賃貸住宅の建設を持ち込み、金融資本と結託して多くのオーナーを欺いていた。

シェアハウス投資詐欺事件では、市民の投資意向を煽り、不正融資を行ってオーナーを泣かせたスルガ銀行は行政処分を受けた。しかし処分を逃れた不動産業者は更に「フラット35」を悪用して不正を行っていると報道された。

こうした建設に関わる事案には当然建設業界も、そこには多くの技術者も結果的に加担させられたわけだが、他人ごととせず、そうした依頼や会社の指示にどう対処するのか、誰の為に技術を使うのか技術者倫理が問われている。

大阪北部地震で死亡事故に繋がったCB塀の基準法違反の工事が明らかになり、その後国交省から方針が出されて通学路のCB塀撤去や、避難路に当たるCB塀解体に補助をする自治体が出ることに繋がった。

また、豊洲市場に於ける公共工事の一社発注や、晴海選手村再開発手法に隠れた公有地投げ売りなどにも、多くの市民から不正の疑惑が指摘されている。

 

8、平和と民主主義の現在の課題

建築とまちづくりにおいて必要不可欠である「平和と民主主義」については、法や各種宣言等で権利やその価値が確認されているが、近年、公権力によってこれに反する行為がみられ、権利の確立自体が不充分または危うい状況にある。日本国憲法では、第9条で戦争の放棄を、知る権利と表現の自由については第21条で、ジェンダーは第14条で、第25条では生存権をそれぞれ規定している。新建においても憲章で「建築とまちづくり、生活と文化、自由のために平和を守ろう」と規定している。

平和については、2017年に国連で採択された、核兵器禁止条約への署名・批准について、今年の広島・長崎両市長の平和宣言で、日本政府に訴えると同時に、憲法の平和理念の堅持を求めている。第9条について政府は、自衛隊の明記などの改憲を明言している。20195月に広島弁護士会は、自衛隊明記案に反対決議をした。その結びでは、国民の基本的人権の擁護と恒久平和主義を守るために強く反対するとある。しかし、政府の姿勢に変化は見られない。

知る権利と表現の自由については、2013年に強行採決された特定秘密保護法について新聞協会は、国民の知る権利が損なわれる恐れがあると強い危惧を表明している。今年のあいちトリエンナーレでは、平和の少女像の展示について名古屋市長が愛知県知事に対し展示中止と撤去を要請、これに対し芸術監督の津田大介氏は、憲法第21条で禁止されている検閲に当たると主張、日本ペンクラブや、女性・戦争・人権学会や日本漫画家協会や美術評論家連盟他多くから、声明文などが出されている。

ジェンダーについては、その認知や権利確立が不十分であり、国際女性デーを毎年開催し、男女差別をなくそうと活動しているが、平等推進と女性の地位向上には、まだ多くの課題がある。

生存権については、貧困と格差で、住まいや生活の貧困は、増加している。格差の問題でも、年収200万円以下の人口は、益々増加しており、生存権が脅かされている。

悲惨な戦争や様々な苦難を通して獲得・確立した権利は、決して盤石とはいえない状況にある。

 

Ⅱ 第31回大会期の新建活動のまとめ

1.概括的なまとめ

(1)通年の引き続く取り組み

会員は仕事としても、運動としても、個人あるいはグループで関心の高い課題に取り組んだ。各支部では継続的な例会・研究会や、仕事を語る会、支部ニュースの発行など。各ブロックでも会議での交流を起点に、支部合同企画に取り組む動きも出ており、ブロックとしての企画が行われ、相互協力が進んだ。全国的には「建築とまちづくり」誌の多彩な特集が続き、「建築とまちづくりセミナー」「全国研究集会」「新建叢書」出版活動などで発信・報告・交流があり、新建全体の成果として蓄積された。こうした活動の中で新建の役割を見つめ直し、新しい動きへ向かう機運も出てきた。また直面する建築とまちづくりの広範囲な課題への積極的取り組みで、新建憲章の目的、目標も追及された。

(2)31回大会方針で掲げた課題への取り組み

①組織の世代的継承を確実に行う課題

前の大会期で、全国幹事会・全国常任幹事会の議論を経て、地域ブロック会議を開催した。今期も西日本地区、中部地区、関東地区、東北北海道地区に分けて集まり、幹事以外の一般会員参加も増えた。率直な意見交換の中で、新しい動きが提案され実践に移された。年齢的若返りも模索されて、新しい会員が活動の中心を担う動きが随所に見られた。新旧会員の融合をはかる中で組織的若返りを進める検討が必要である。

②今日の時代に即した「新たな建築運動のスタイル」を創りだしていく課題

建築とまちづくりの目的はそこに住む人々の求める豊かな生活環境を創り・守ることであり、その実現には「住民主体」が貫かれ、粘り強い合意形成の努力を必要として追及してきた新建の役割が、改めて確認された。新建は設立からこれまで、「住み手・使い手の立場で」「地域に根差して」建築活動を進める新しい建築家技術者のあり方を先駆的に提起してきた。住み手と協働して進めるその先で設計・監理を超えてコーポラテイブ・コーディネーターや、不動産的価値観から居住資産的価値観へ「共同建て替え」事業コーディネーターの役割など建築家技術者の職能を拡大する提起・実践をしてきた。今日の時代に即して新しい建築運動のスタイルへの模索は未だ不十分ではあっても、会員一人一人の活動が表出する機会が増えたのも今期の特徴であり、既に始まっていると言える。

③支部活動の活性化を中心とした組織の拡大整備を進める課題

組織的活動の整備は活動活性化委員会を中心に努力してきたが、全体としては十分な動きを作るに至っていない。しかし、福岡支部をはじめ愛知支部の組織的・継続的な支部活動は確実に活性を生み出しており、中部ブロックに参加している各支部がお互いに課題を洗い出しその改善策を検討し合い刺激し合って、競い合う如く活性化しているのも大きな特徴と言える。

計画的、組織的に取り組んだ企画は全国でも支部でも成功している。それぞれ目的やテーマを明確にして多面的に課題が追及され、発信し続けるところに会員以外の参加者も多く参加し、会員増にもつながった。組織拡大の点では福岡・愛知・石川・千葉・神奈川支部が増勢、青森・岩手・福井・長野・三重・大阪・岡山支部が現状維持で減少をくい止め、他は全体として会員が減少した。しかし、この2年間で43名の新しい会員を迎えた活動にも確信を持ちたい。

 

2.支部の活動

全国の会員による多様な活動は、「建築とまちづくり」誌10月号の「新建年表」に紹介されているが、ここではその特徴をまとめる。

(1)支部の企画等活動

①会員の日常業務を報告・交流する機会を毎年定例化している支部活動

福岡・北海道・奈良・千葉支部の「仕事を語る会」、京都・神奈川・東京支部の「実践報告会」。宮城・岡山・福岡支部では「定例会」として会員の活動報告や研修が行われている。

②建築技術や新たな知見を得る連続企画を定着させている活動

呼称はそれぞれだが、連続講座(千葉・富山・福岡・大阪・東京支部)・連続セッション(神奈川)・連続ゼミ(京都・愛知・福岡支部)・連続読書会(宮城支部)や、災害関連の継続的な活動(岡山支部)など、多彩である。

③単発の講座や企画も盛りだくさんな支部活動

比較的気軽に取り組まれているのが、各地の「見学会」(京都・神奈川・愛知・ちば・大阪・石川・奈良・東京・福岡支部)があるが、時宜に応じた企画「新たな住宅セーフティネット」(東京支部)・「建築基準法改正を考える」(京都支部)・「東京の都市問題を語る集い」(東京支部)・「木造ドミノを読み解く」(京都支部)や、「創宇社建築会の時代―戦前~戦後の建築家・技術者たち」(千葉支部)・東京BAUHAUS 2018(東京支部)・「生きている長屋&竹原義二の住宅建築」(富山支部)など各支部で旺盛な取り組みが行われた。

また、新建叢書「すまい・まちづくりの明日を拓く」出版記念会(京都支部)や、「延藤安弘先生を偲ぶ会」(愛知支部)も、豊かな内容と多数の参加者で成功させた。

④今期、新建学校として取り組まれたのは、福岡支部(「今あるものを革む」)・石川支部(「仮・全国企画と支部交流))の2支部にとどまったが、それぞれ好評だった。

⑤外へ向けた意見表明の取り組み

奈良公園の高級宿泊施設建設計画への意見表明(奈良支部)や、まちこわしを告発する意思表明となった「地方自治研究集会」「オリ・パラ都民の会」(東京支部)など、機を得て専門家として発言した。東京問題研究会では、再開発事業を隠れ蓑にした「東京オリンピック選手村」の公有地投げ売り問題など都市部で進む民間開発に自治体が手を貸すまち壊しに、はっきりNOと発言した。活動の中で市民運動団体と連携を図り、生活の安心安全、民主主義を守る課題に取り組んだ。また、「東日本大震災100の教訓」(みやぎ震災復興研究センター)では複数会員が提言を執筆した。

⑥複数支部での合同企画

埼玉・群馬支部の「合同見学会」や千葉・東京支部の「公共住宅団地と都市再開発」、岐 阜・愛知支部「DIY WORK SHOP」など支部間の合同企画も行われた。

⑦全国企画への積極的な取り組み     

「建築とまちづくりセミナー2018in札幌」の北海道支部や、「研究集会2018in犬山」の愛知・岐阜・三重の東海3支部、「2019建築とまちづくりセミナーin福岡」の福岡支部、何れの取り組みもそれぞれ大きな成果ある取り組みとなった。現在、新建設立50周年東京現地実行委員会準備会(東京支部中心)でも全国企画に積極的取り組みを続けている。

課題に沿った会員の活動では、まちこわしや地域の日照紛争に対抗する住民との協働、地域の歴史的環境や景観・森林など自然を守る活動、など多岐にわたっている。

設計協同フォーラム(関東)やエコハウス研究会(全国)などのNPO法人を設立して活動している会員も、その専門性を生かし、新建の憲章や理念をその活動を通じて発揮している。

 

(2)支部ニュース

支部ニュースを定期・不定期で発行している支部は宮城、群馬、埼玉、東京、千葉、神奈川、静岡、富山、岐阜、愛知、京都、大阪、岡山、福岡の14支部で、配布だけでなくHPやメールで配信している支部もある。

(3)支部ホームページ

北海道・東京・大阪・福岡の4支部が更新している。全国のHPでは「支部紹介」のページを整備中である。

 

. ブロックの活動

(1)ブロックでの会議は当初、ブロック別幹事会としてスタートしたが、幹事会ではなく近隣支部同士の経験交流や合同での取り組みなどへと整理され、2018年は4ブロックで会合を持った。

東北・北海道ブロック:北海道・青森・岩手・宮城支部(於・仙台、15名)

関東ブロック:群馬・埼玉・東京・千葉・神奈川・静岡支部(於・東京、24名)

中部ブロック:新潟・富山・石川・福井・岐阜・長野・愛知・三重支部(於・富山、18名)

西日本ブロック:滋賀・京都・大阪・奈良・兵庫・岡山・福岡支部(於・大阪、20名)

中部・北陸・西日本の各ブロックは2019年に入って引き続き会合を持ち、共通の課題に向けた協議を行っている。

(2)ブロックで取り組まれた企画に次の例がある

中部ブロックでは、各支部の活動活性を後押しする取り組みを進め、

20179月「建築とまちづくりセミナーin牧歌の里」の開催に続いて、

20189月「建築とまちづくりセミナーin長野・稲荷山」を開催し、

20199月「建築とまちづくりセミナーin新潟・佐渡」開催した。

関東ブロックでは、ブロック共同企画として、20178月サマーセミナー「東京BAUHAUS2017」を開催したが、開催時期や共同での取り組みの調整が出来ず、2018年は東京支部主催(神奈川、埼玉、群馬支部後援)となった。

 

4.全国の活動

(1)2018年建まちセミナーin札幌 

北海道では13年ぶりとなる「建築とまちづくりセミナーin札幌」を201861日~3日に札幌市教育文化会館で、日本建築学会北海道支部、北海道建築士会・北海道建築家協会・札幌市・北海道新聞などの後援を得て開催し、全国10支部から42名、北海道支部会員17名、非会員31名の計90名が参加した。

セミナーでは、「北海道をテーマに、北海道での活動を全国に発信する」として4つの講座を行った。(第1講座「北海道の住まい『高断熱・高気密から外断熱へ』」、第2講座「小樽運河の保存活動と今」、第3講座「まちを支える『場』と『人づくり』~江別市での活動」、第4講座「積雪寒冷地である北海の『防災まちづくり』について」。)

2日目講座終了後にサッポロビール園でジンギスカンと生ビールの交流会、3日目は、ピリカコタン~小樽鰊御殿~小樽バイン(旧北海道銀行)で昼食~小樽運河周辺の見学会を行った。

(2)第31回全国研究集会in犬山

20181117日~19日の3日間、愛知県犬山市の犬山館にて第31回全国研究集会を開催した。会場は国宝犬山城と如庵が近く、木曽川のほとり。参加者総数105名。2日間の分科会は、政策・まちづくり系、個別建築行為系の仕分けを止め、混在させて参加しやすいようにグループAB各6分科会とした。継続的テーマが中心だが、福祉と保育を分けたことと、集まって住むテーマを設けたことで、12分科会となった。各会員・グループ・支部の実践が報告された資料集は活動の集大成と言えるもので、全国事務局で有償頒布し、全分科会記録は各支部選出の幹事に配信した。充実した報告内容は地道な活動をしている新建らしい研究集会となった。交流会では、2次会会場と別に「職能」を話し合う場も持った。

記念講演は、会員だった故延藤安弘氏の右腕の名畑恵氏による「まちの縁側と延藤安弘の物語り計画~おわりははじまり~」の名畑節報告は好評だった。講演の前に行った演奏会は、東日本大震災で関東から東海地方に移り住まわれた声楽家の竹内志保子氏とピアノ奏者の山岡恵氏の演奏とお話が会場の方の涙を誘った。

最終日の見学会は、明治村コースと犬山城と城下町コースで、各10名前後の参加者で巡った。

(3)2019年建まちセミナーin福岡 

「建築とまちづくりセミナー2019in福岡」は712日~14日の開催にした。

講座は5講座、①宅老所よりあいを通して 村瀬孝生氏 ②仕事の形を問い直そう 藤本昌也氏 ③エコハウスの話 江藤眞理子氏 ④杉と日本人の行く先 杉岡世邦氏、そして第⑤講座は濱崎裕子氏をコーディネーターとして、全講師4人の参加するファイナルセッションが行われた。このファイナルセッションにより「未来へ!建築とまちづくりの可能性」というセミナーのテーマが確認できた。

恒例の大交流会では、7名の参加者から入会の意思表明もあり、「未来へ」繋ぐセミナー・交流会となった。13日は講座の後、福岡で最も豪勢なお祭り「博多祇園山笠」を見学し、その後の懇親会は79名の参加で、第6講座(?)「よみがえった福岡支部」が紙芝居で演じられ、参加者に福岡支部の元気の秘密が伝えられた。

14日は4コースに分かれた見学会。福岡や北九州のまち歩きの他に、第一講座の宅老所見学があり、講座との連携も行われた。また、オプションとして28名が15日午前459分からの博多祇園山笠のフィナーレ「追い山」見学に参加した。

全体参加者は、全国から182名(会員109名)、うち運営にあたった福岡支部から40名の参加だった。参加者からは口々に「とてもよかった」という感想があり、運営支部一同と喜びを共にした。

(4)新建賞

13回新建賞は20194月から募集を行い、7月末締め切りで、応募は22件だった。

9月審査委員会(代表幹事・幹事会正副議長・建まち編集委員長)で大賞1点、正賞3点、奨励賞4点が決定された。第32回大会当日に審査結果発表、表彰される。

(5)新建災害復興支援会議の活動                              

前期「新建災害復興支援会議」と改称して、各被災地支部と会員個々の復興活動支援と全国を結ぶ役割と共に、防災・減災の活動を呼掛ける役割、各会員の直接的な復興支援活動の他、MLの活発な利用、募金の活用で復興現地活動費助成など進めてきた。

東日本大震災の復興は86か月が経過し、集中復興期間も20163月で終了、復興創生期間に入った。防災集団移転・区画整理完成98%、災害公営住宅完成99%(いずれも2019.3現在、復興庁発表)と「復興」の成果が報道されているが、住まい・暮らしの再建をめぐる現実は新たな課題が指摘されている。

頻発する列島各地の災害は、20186月震度6弱の大阪都市型地震ではCB塀の危険性が全国的課題となった。7西日本豪雨災害は死者行方不明者232を出し、激甚災害指定され、岡山・広島・愛媛・福岡県など広い範囲に及んだ。9月には北海道で胆振東部地震が発生、震度7を記録し地滑りなどで死者42名を出した。2019年に入っても1月熊本で震度6弱2月北海道で震度6弱と続発し、多くの会員による視察報告がML上で交信された。災害復興支援会議は、岡山支部・北海道支部の会員と共同で現地調査を行いML上で発信した。又他団体とも共催して防災勉強会を企画し多くの市民と考えた。各種集会で復興過程の視察報告や課題などを繰り返し報告した。また全国災対連(略称)への協力活動を継続し、全国交流集会の成功にも力を尽くした。

 

(6)委員会活動

①『建まち』編集委員会

今大会期の「建築とまちづくり」誌は、若干のバラつきはあったものの概ね定常発行を維持できた。組版や印刷製本、発送など外注先との関係は安定しており、定常発行を支えている。

特集テーマは、「時宜に即したもの」、「新建の活動紹介」、「地域特集」、「国民的課題との連動」という大まかな分類で設定し、月による完成度や頁数のバラツキ、2~3年の間に同類のテーマの出現が気になるが、特段の批判はなく、ひろば欄の充実とあわせて全体として一定の評価を得ている。連載記事の「新日本再生紀行」「英国住宅物語」(2018.12了)「災害復興の姿」「忙中閑」「普通の景観考」なども好評で、他の建築ジャーナルにはない特色ある機関誌として、新建活動の主要な一翼を担っている。

新建HPへの掲載が迅速になり、公開座談会、現地取材など雑誌作成過程を新建活動とする取り組みも継続している。また、幾つかの支部で『建まち』の読書会や例会での読み合わせ等が行われている。

編集委員会は原則月2回、関西で月1回開かれ、全国の会合の際は合同編集会議も行われているが、参加する編集委員が限られており、一部に負担が掛っているのが課題であるとともに、書き手の拡充も求められる。さらに、今後は新建の理念の実践である会員の仕事の紹介を通じて、広く発信していくことが望まれる。

②活動活性化委員会 

前大会期から始まったブロック会議は、昨年2回目の開催を行い、方向性が定まってきた。自主的なブロック会議も中部や西日本で行われている。また、ブロック会議を契機に、ブロックでのセミナー開催や支部企画の交流も活発になってきた。ただ、一部のブロックでは会議だけの参加にとどまっており、今後の課題である。

2019年8月末の西日本ブロック会議では、福岡支部はネットにより参加した。大阪と福岡をネットで繋ぎそれぞれの拠点に集合して行った会議で、事務局などで行われている会議同様、旅費や時間の削減ともなり、もっと検討してよい方法と言える。

新建学校の開催は3支部での開催を目指していたが、2支部に止まった。それぞれの支部で異なるが、該当する支部への支援体制が確立できなかったことが大きな理由と思われる。

全国常任幹事をはじめ全国幹事が率先し、ブロック内で他支部の支援や企画への参加などが実現できるような体制作りが急務と言える。

③政策委員会 

今期は、新建の会員に、それぞれの地域において取り組んでいる業務、活動などを取り上げてもらい、その実践や地域住民の皆さんとの交流を通じて浮かび上がってきた、住み手、市民の間で共有できる建築とまちづくりの教訓や課題を会員に届ける活動を中心に行ってきた。具体的には、「建築とまちづくり」誌に「新日本再生紀行」として連載を続けてきている。20181月号には、中間段階の総括を掲載しているが、それまでの連載を通じて、政策委員会としては次のような内容を確認できた。それまでの各会員の記事から明らかになった論点は、具体的には地域の自然との一体性の復権、共同体の歴史的伝統の甦りの検討、新たなコモン、あるいは共有空間の生成と運営の可能性および方法論の検討などで、地域に即した住まいづくりのあり方を含め、こうした理念と実践の「場所性」を重視するという視点を確認できた点は重要であった。

時宜を得た政策的提言等の活動は今後の政策委員会の課題の一つとして重視していきたいし、委員からの提案のあった建築基本法について、委員会として引き続き議論を詰めていきたい。

④WEB委員会 

前大会期にHPの刷新をしたが、今大会期に入り更にHPのリニューアルを行った。主に更新作業をWeb委員の各人が担えるように構成しなおした。更新は全国を数ブロックに分けてUP作業を分担し、各支部の企画などの情報を更新することが可能になったが、更新作業の協力体制の強化が必要な状況である。各支部のHPは4支部がUP・更新されている。「建築とまちづくり」誌の案内も各号更新されており、ひろば欄の記事も写真付きで掲載されている。今後「建築とまちづくり」誌との連携を図り、更に充実させていく。

MLは会員の交流や全国からのお知らせなど重要なツールであり、現在のMLのサービス終了に伴い再構築が必要となっている、引き続きMLが利用できるように対応する。FB(フェイスブック)も今大会より開設したが、まだ利用者が少ない状況で、活用が望まれる。

⑤新建叢書出版委員会

建築まちづくりの諸課題をテーマごとに掘り下げて出版することを目的に、今期は叢書第2号「すまい・まちづくりの明日を拓く~京都の実践」(京都支部会員中心に26人著。20189月)を出版した。本に登場した運動や建物関係者も参加して「出版記念会」が行われ、本を題材にした連続講座を開くなど内容の更なる掘り下げと普及を図っている。新建叢書は、実践から得た知識や経験を伝え、ともに考えるという趣旨のもと、今後の計画として保育書づくりや設計の実践に関わる企画をテーマにした出版を検討している。

⑥規約検討特別委員会

支部により処遇が異なる「名誉会員」について検討し、必要に応じて規約を見直す目的で委員会が設置された。委員会では、全国常任幹事のアンケートと、新建としての組織の性格を踏まえ、①新建は全ての会員がフラットな立場であり、会員とは別に名誉会員は置かず、②優れた業績、実践があった場合は、表彰によってそれを評価する。③現行の名誉会員は処遇を統一して残すことを考えた。

検討する中で、学生会員・家族会員・シニア会員・読者会員・賛助会員と言った「会員」の整理が必要なことが浮き彫りになり、さらに、50周年を契機とした現行規約の構成や文言等全体の見直しが必要と議論された。ブロック会議の位置付け、会員の状況による会費減額の制度、全国幹事会、常任幹事会等の在り方など、現時点で規約上未整備の部分が残っており、支部・会員の意見を集約し、2021年の全国大会に提案する予定をしている。

50周年事業特別委員会

2020年は50年続いた新建を祝うだけでなく、新建のこれまで、新建のこれからを大いに語り合い、社会とのつながりの中で私たち建築人の仕事や活動を大きく展望する新たなステップを踏み出す機会にしたい。

特別委員会は22人の委員で発足以後4人加わって26人体制となった。①50年の活動総括についての準備中である。②セミナーin福岡を皮切りに各支部、ブロック、全国企画を全国縦断記念企画と位置づけ実施する。③50周年記念集会+研究集会2020in東京は202011月頃を予定し、東京支部で実行委員会を開き、既に5回の準備会で意見交換が始まっている。④記念出版ではなく、2020年『建まち』を50周年通年特集として準備中である。⑤全国各支部に「建築とまちづくり相談室」を準備する。⑥全会員アンケートを行い、会員の現状とミニ白書づくりを実施する。⑦50周年事業募金について検討を始めた。

北海道・新潟・京都支部や中部・北陸、東海、西日本ブロックなども準備に入っており、可能な限り、各支部・各ブロックで記念事業に取り組むことが望まれる。

(7)他団体との交流

新建が協賛団体となっている3団体とは引き続き協力・協同の関係を保ち発展させた。

「災対連」の取り組み「全国交流集会2017in東京」「全国交流集会2018inいわて」では分科会を担当し集会成功に役割を果たし、「原発事故から7年福島の現状と課題」など企画した。

「住まい連」の取り組みでは「東京の住まいの貧困と住宅施策を考える」・「実効性ある住宅セーフティネットを求める」など国会院内集会で交流するなど、各種講座・集会へ参加・講師として協力する等の活動を行った。

「地方自治研究全国集会」2018高知では「分科会」運営に役割を果たした。

また、多くの会員が参加している「NPO法人設計協同フォーラム」では日常的活動の他、25周年記念「暮らし健やか住まい展」では交流を深めた。「臨海部都民連」・「オリンピック・パラリンピック都民の会」とは「臨海部見学バスツアー」を共同開催したり、「豊洲新市場・オリンピック村開発問題勉強会」、更に「ジャーナリストから見た晴海土地投げ売り疑惑」(「土地投げ売り正す会」)など市民団体との協同・交流に努めた。

 

5.組織、財政活動

(1)組織運営

全国幹事会は今期4回開催した。うち1回は全国大会での開催で役員人事とスケジュール決定。全国常任幹事会は4回開催した。全国事務局会議は、首都圏の常幹を主体とした事務局と遠隔地(京都・名古屋)をスカイプで繋いで毎月、合計24回開催した。

(2)組織整備と会勢状況

全国4ブロックで会議を持つ中で、お互い支部活動を交流しながら合同で企画を開催するなどの動きが特徴的で、更に東海3支部では支部を超えて会員活動が進むなど新しい動きも生まれている。

懸案となっている沖縄県は京都支部との交流を通じて、支部設立に向けた模索が続けられていたが、期内の新支部誕生には至っていない。

会勢状況について、第31回大阪大会2017年9月30日時に会員741名、読者191名、賛助会員0であった会勢が、2019930日現在で会員724名、読者185名、賛助会員8名となっている。今期は50名の入会、67名の退会があり、結果的に17名の減勢となった。読者も6名の減誌となり、賛助会員は7名増に止まっている。停滞や減勢を食い止められない支部が多くある中で、福岡・愛知・千葉・神奈川支部は会員増としている。

(3)財政活動の総括 

新建活動を支える財政は引き続き極めて厳しい局面が続いている。会員会費・「建築とまちづくり」誌購読料が予算の基本(93.7)であるため、会員・読者の漸減は予算を圧迫し、集団の活動に制約が出ている状態である。会員・読者とも増勢に転じることが運動上も重要だが、財政的には現実に即した対応が迫られている。全体に「新たな建築運動のスタイル」を模索する中で、収支計画の位置づけも重視して検討する必要がある。

 

Ⅲ 第32回大会期の活動方針

新建は、1970年、建築とまちづくりに関わる技術者たちがそれぞれの意思に基づき個人として参加し、各地の支部が結集する全国組織として設立された。綱領(現在の憲章)の示す方向に志を同じくする者が集まり、70年代という新たな時代の運動を目指してきた。

来年で設立50年を迎える。この50年の間に社会も新建も大きく変化したが、その過程で当初目指していた理念がよりクリアーになったと言える。それは、大資本を背景にした巨大技術ではなく、地域や暮らしにねざして住民とともに進める建築とまちづくりこそが、これからの持続社会を切り開いていくことが明らかになってきたということである。

設立50年を迎える今、社会や新建の大きな変化を受けて、新たな建築運動のあり方が強く求められている。今期は、一人一人の会員の地域や暮らしにねざした仕事や活動の積み重ねが新建活動を支え、建築とまちづくりの分野で社会に大きな影響を与えてきたという原点に立ち返り、あらためて運動の目標とスタイルを提起しよう。  

前回大会の「新たな建築運動のスタイル」の一つとして、地域単位の「ブロック会議」が開催されるようになり、ブロックごとのセミナーも開催された。このブロック会議での活動の前進は新建活動の大きな可能性を明らかにしたと言える。

同時に、『建築とまちづくり運動の課題』を社会とのつながりの中でとらえなおし、あらためて、今日的な課題にしぼり具体的に掲げる必要があるのではないだろうか。個々の会員の義務的な課題という提起ではなく、運動団体としての新建の活動の立ち位置を具体的にあきらかにすることを目標にする。

こうした活動を一人一人の会員のものにするうえで、支部の組織活動の活性化や拡大整備、財政活動の健全化がどうしても求められる。前回大会以降も福岡支部・愛知支部や中部ブロックではこの課題を正面に据え、大きな成果をあげている。

50周年を機に、こうした先進支部の活動の教訓、特に福岡支部活動に見られる集団的な組織活動などを全支部のものにし、自信を持って次の時代を築く運動を展開していこう。

 

■活動方針

.建築とまちづくりの仕事をより充実し、強固にしよう

設立50年を迎えるこの時期に、新建の運動団体としての在り方をあらためて見つめ直し、会員一人一人、及びその総体としての支部や全国の運動の方向を、時代にふさわしくとらえ直し、具体的な運動を交流・評価・確認しながら運動団体としての新建の活動を積み重ねていこう。あわせて、活動の成果をもとに対外活動を強化し、社会に広くアピールする努力を強めよう。

  新建活動の基本ともいえる会員一人一人の日常的な仕事や地域や暮らしにねざした活動が先駆的な成果をつくりあげてきていることを再確認し、それをあらためて評価・交流する活動を強めよう。

  若い建築技術者のおかれた状況に目を向けて、仕事や活動にかかわる悩みなどを前向きにとらえ、次の時代を見すえた新建全体の課題にしていこう。    

  私たちの仕事や活動は、地域とのかかわりの中で人々や社会とのつながりを深めていることに確信を持ち、建築とまちづくり運動の発展につなげよう。

  このような立場に立った仕事や活動の実践や成果を、新建の内外へ発信し、とりわけ地域での他団体との協力協同の中で発展させることに意識的に取り組もう。

 

.建築とまちづくりを充実させるための課題に取り組もう

30回大会で決議された『建築とまちづくり運動が取り組む課題』を、社会とのつながりの中でとらえなおし、『今日の建築とまちづくりの課題と新建の立場』として運動団体としての新建の活動の立ち位置をあらためて具体的に示そう。なお、この文章は活動方針を具体化する「手引き」として活用することとし、これからもより具体化・総合化を検討する。(議案Ⅳに掲載)

 

.設立50周年記念事業を成功させ、新建が飛躍するスプリングボードにしよう

 方針前文にあるように「地域や暮らしにねざして住民とともに進める建築とまちづくりこそが、これからの持続社会を切り開く」という50年の活動の総括を再確認するとともに、記念事業などを通じて社会にアピールしていこう。

  2020年の全国研究集会と合わせた全国的な記念企画を開催しよう。

  支部、各ブロックでそれぞれにその支部や地域や暮らしにねざした記念企画を開催しよう。

  50年の活動の総括を行い、新たな新建活動の飛躍を展望するきっかけにするとともに、

「建とまちづくり」特集や活動のまとめのパネルを作成するなど、成果や課題を新建全体で共有する取組をしよう。

  記念募金や全会員アンケートに取り組むなど様々な工夫をこらしながら記念事業を成功させよう。

  50周年記念事業を受けて、「50周年のメッセージ」をまとめ、社会に発信しよう。

 

.会員一人一人が支部やブロックを基盤に、生き生きと活動できる組織をつくろう

 新建活動の基礎をなすのは、会員一人一人の仕事であり活動である。それを進化させるために会員同士が協力し、さらに社会の改革につなげ、展開していくことが重要である。こうした活動が生き生きと出来る身近な組織を充実しよう。そのために、支部とブロックの活性化が新建活動を支える最も重要なポイントであることを重視して活動に取り組もう。

  支部での取り組みを充実させ、支部の活性化や世代の継承を意識的に実践する。福岡支部・愛知支部の豊かな経験を交流しながら、全ての支部活動の活性化にむけて努力を強める。そのために、支部幹事会などの定例開催や支部合同幹事会とともに、各種例会、テーマ別企画、勉強会、見学会、仕事を語る会・実践報告会、とりわけ若い人々のおかれた現状や要求、関心を前向きに捉えた企画などを積極的に開催しよう。

  支部だけでなく中部ブロックなどの豊かな経験を参考にしながら全てのブロック活動の活性化にむけて努力を強める。

  仕事や活動を発信する場の充実をはかる。そのために支部ニュース、会員グループメール、全会員へ届くNET通信網、ホームページ、「建とまちづくり」誌、新建叢書などを積極的に活用する。

  まわりの住民、市民、団体の相談に気軽に応える活動に積極的に取り組もう。各支部で、相談活動に取り組む組織を立ち上げる努力をする。

 

.それぞれの活動を支える全国組織を適正化し活性化に取り組もう

会員や支部の活動を支えるために全国組織がある。各組織の役割を明確にし、活性化する必要がある。また、会員規模に見合わない部分が出てきており、今大会期は慣習にとらわれることなく、全国組織の適正化をめざして実証実験などを行い、次期大会での改革を期することを目指す。

また、若い建築技術者等が新建に関心を持ち、参加できる新建にしていくために、活動を支える役員の世代交代も必要な時期に来ている。積極的に検討することにする。

①決定機関である大会、全国幹事会と、常任幹事会と全国事務局の役割を明確にする。とりわけ、適切な執行機関の在り方を追求していく。

②あわせて、執行機関を補佐する専門委員会の活性化も求められる。全国からの委託だけでなく、委員会独自に会員や支部とつながった活動も模索していこう。

③政策委員会や活動活性化委員会、新建災害復興支援会議の活動強化に努める。政策委員会の論議や成果は時宜に応じて外部へ発信していく取り組みを強める。

④全国企画への会員内外の幅広い参加を広げよう。

・「全国研究集会」は新建活動の基本と言える一人一人の仕事や活動を参加者全員で評価・交流することを重視する。毎回出版される「資料集」の事後の活用も拡げる。

・毎年取り組まれる「建築とまちづくりセミナー」を充実・成功させる。また、各ブロックでも可能な限りブロック独自のセミナーを開催する。

・新建学校を積極的に活用し、新しい会員や若い会員を巻き込んでいく。

・隔年で取り組まれている「新建賞」に積極的に応募する。とりわけ、会員一人一人の仕事や活動を取り上げる努力をし、それを評価・顕彰することを重視する。

  組織の拡大に努めよう。

・新建の理念や仕事・活動をさらに広げていくために、会員と『建まち』読者の拡大に意識的・系統的に取り組む。当面の拡大目標として、少なくとも2015年の第30回大会(東京大会)の現勢に早急に戻すことを目標にする。

・人々の身近なところで新建が活動できるよう、新しい支部の創設を目指す。

  財政基盤の強化を図り、健全化への取り組みを継続する。

・引き続き財政部の充実を進め、方針に従った財政実務・会計処理を確実に進める。

・収支のバランスをみながら支出の削減を図るとともに、積極的支出計画へと転換する。

・当期会費の100%納入と同時に、未収会費の回収を支部の実情をもとに検討しながら進める。

・財政基盤強化の基礎は会員と『建まち』読者の拡大にあり、その観点からも組織拡大に積極的に取り組むとともに、公的助成を拡大する運動を拡げる。

・憲章に賛同していただく多くの人々に支えられる新建を目指し、賛助会員を増やす。

・「建築とまちづくり」誌への定期広告・竣工広告・祝賀広告などに取り組み、収入を確保する。

 

Ⅳ  今日の建築とまちづくりの課題と新建の立場

以下に掲げる課題は従来からの「建築とまちづくり運動が取り組む」普遍的課題を網羅したものではなく、私たちの活動や仕事に身近な今日的課題を列記したものである。

 

1.すべての人の、人間らしい豊かな居住の権利を実現する

①居住の権利の確立と居住の貧困の克服

すべての人がふさわしい住居に住む権利は、憲法が定めた基本的人権であるという理念を広く社会に確立するために行動する。

この「住まいは人権」を基本として、脱法ハウスやネットカフェ難民などの根本にある深刻な居住の貧困と生活環境の格差の解消に、住民運動などとともに積極的に取り組むとともに、公的助成を拡大する運動を拡げる。

②地域・暮らしにねざした住まいづくり

生活環境を良くしていく住まいのハード面を重視する住まいづくりとともに、一人一人の個性を生かし、地域とともにある住まいづくりを追求し、まちづくりにつながる努力をする。

③ストックの改善

世帯数の減少や空き家・空き地の増加を無視するような新築住宅優先の供給のあり方を見直し、空き家の有効活用とストック改善などの方向をさぐる。

④欠陥住宅問題

欠陥住宅や違法建築問題などの相談活動に取り組み、司法関係者などとの協力で問題解決の努力をし、さらに原因の究明、責任の明確化、悪徳業者の追及を行い欠陥住宅問題の解消を図る。

⑤借家の居住の安定

民間借家の入居制限や保証業者の横行を排して、住宅セーフティネット制度などの居住支援体制の拡充に努めるともに、家賃補助制度の実現を求め、借地借家法の改悪に反対し、借地人・借家人の権利の向上をめざす。

⑥公共住宅政策

公営住宅制度の改悪、公団・公社住宅の民営化や戸数削減政策に反対し、公共住宅を拡充しで真の住宅セーフティネットの確立をめざす。

⑦マンション居住

マンションやアパートの維持管理や再生にかかわる仕事を積極的に行うとともに、区分所有集合住宅が持続可能で良質な住宅ストックとして機能するように努める。

⑧新たな住まい方の提案

住民主体で進めるコーポラティブハウスをはじめ、シェアハウスや高齢者の集住等の新たな住まい方を検討し、要求にねざした取り組みを進める。 

 

2、住民が主体のまちづくり・施設づくりを進める

①住民主体の都市政策への転換

規制緩和・民間活用による利益優先の開発型都市政策から、「まちづくりの主体は住民」を基本として、地域の人びとと協働したまちづくり政策への転換をめざす。

②地域開発のあり方

住民無視、住民追い出し型の再開発や民間活用に名を借りた、国公有地の利益誘導型跡地開発をやめさせ、住民主体の地域計画づくりに取り組む。

③住民主体の地方再生

 地方切り捨てにつながる「地方創生」ではなく、住民主体の地方再生を住民とともに進める。

④開かれた都市計画

自治体の審査会やマスタープラン作成過程の公開を求め、専門家の目で監視する。また、各種審議委員に積極的に参画を図る。

⑤コミュニティの形成

お年寄りが住み続け、子どもたちが健全に育つ安全で安心なまちづくりを推進するとともに、現役をリタイアした人たちの参加を促しながら地域の居場所づくりなど豊かな地域コミュニティの形成を図る。

⑥地域施設の増設・改善

学校の統廃合などによる公共施設の市場化に反対し、地域の公共施設づくりの運動に住民とともに取り組む。とりわけお年寄りや体の不自由な人びとの視点で地域施設を点検し、その増設と改善を図る。

⑦空き家・空き地等の有効活用

空き家や空き施設、空き地などを地域のために有効活用する取り組みに積極的に参加する。

⑧施設運営

PPPPFI、指定管理者制度の実態を検証し、住民本位の施設運営を実現する。

⑨施設設計

公共施設の設計過程における住民や利用者の参加を推進し、開かれた設計者選定方式の確立を目指す。

⑩まちづくり組織

まちづくり・施設づくりにおける住民組織、NPOなどの参画を促進する公的な制度の拡大を図る。

 

3.防災と安全に優れた国土・まち・建築をつくる

①防災計画

まちから国土に至るまで、実効性のある総合的な防災計画の立案を住民・行政とともに進める。生活関連施設の防災性の向上は迅速な復興にとって不可欠であり、生命財産を守ることはもとより、建築分野の主要任務として積極的に取り組む。

②耐震改修促進

公共施設や避難に関わる建築の耐震補強と防火対策を、行政の責任で完全実施するように働きかける。同時に住宅の耐震診断・補強の促進に積極的に取り組み、公的助成を拡大する運動を広げる。

 

③耐震改修技術

建築物の耐震性・安全性の診断と補強技術をさらに改善し、耐震相談・補強工事、防火対策に積極的に応じる。

④被災者救済

被災者の生活実態に対応した生活再建支援制度の早期の確立をめざし、当面「災害救助法」「被災者生活再建支援法」抜本改正の運動を進める。同時に、在宅被災者、自主避難者への支援を求める運動を進める。

⑤防災意識の向上

過去の災害の経験を踏まえて専門家として市民の防災意識の向上に努める。

⑥原発事故

福島原子力発電所の事故原因の徹底的な解明とその公表を要求する。廃炉に向けて国と東電の責任ある対応、被災者への救済を求め、原発の再稼動には反対する。

 

4.環境と共生し、風土を継承する建築とまちをつくる

①環境危機

地球環境は深刻な状況にあり、建築行為がもたらす負の影響に最大限に配慮する。

②自然エネルギーへの転換

自然と人々の営みと共存できない原発は廃止し、原発に依存しない自然・再生エネルギー利用への抜本的改革を進める。

③省エネルギーと環境負荷の低減

省エネ・省資源・環境悪化防止するために、正しい省エネ技術の向上と既存ストック建築物の再生・活用を軸とした建築とまちづくりをめざす。あわせて、環境負荷が少なく自然と人間にやさしい技術と地域産材などの建材の活用及び発展に努めると共に、生活者が自らできる環境維持の実践を住まい手とともに進める。

④大規模自然破壊

自然を破壊する大規模開発(干潟の干拓・河口堰・ダム・高速道路・リニア新幹線・メガソーラーなど)については反対する。

⑤景観の保全

風土と歴史に根づき、人びとに馴染んだ風景を大切にする建築行為を実践し、景観保存運動や景観法の地域に即した運用などに積極的に参画する。

⑥歴史的遺産

近代以降を含めた歴史的建築の維持保全の必要を訴え、伝統的建築物の再生に取り組むとともに、様々な文化財を地域の人々の生活の中で位置づけ、住民本位のあり方を提起する。

 

5.住民のための建築行政を確立する

①建築関連法規について

 建築基準法や建築士法、建設業法など建築関連法規の問題点について論議を深め、建築関係諸団体とも協同しながら見直しや充実を求める。

②建築指導行政

まちこわし、環境破壊につながる建築行為を差し止めるなど、住民主体のまちづくりに寄与する建築指導行政の確立をめざす。

③建築監視制度

違法建築はもとより、既存建築の安全性についても実質的に確保できる制度を設ける。

 

④建築基本法

建築基本法制定に関しては注意深くかつ積極的に参画し、住み手使い手のための建築創造を支える実効性のある基本法の制定を目指し、建築法体系の確立をめざす。

 

6.建築界の新しい姿を構想し、建築家・技術者の職能を確立する

①職能の確立

ストック社会・縮小社会を迎えて、建築とまちづくりの基本的な転換を図り、人々の信頼と建築諸団体との連携により、建築家・技術者の専門性=職能を確立する。同時に、建築家・技術者の倫理の問題も重視し、取り組みを強める。

②伝統技術

伝統構法・技術・技能のサスティナブルなあり方を再評価し、その継承と発展に力を尽くし、それを担う技術者、職人の養成に取り組む。

③地域生産体制

地域に根ざし、住民に信頼される建築生産力・体制の継続と組織化を進める。

④地産地消

地域産材の使用を関連生産者との協働で拡大するとともに、自然循環材の良さを生かした家をつくる。

⑤官製談合

建築工事入札における談合、特に官製談合の根絶を目指す。公契約条例の推進を図るとともに、建築工事における発注方式の検討を深める。

⑥設計者選定制度と設計報酬

問題の多い設計入札制度を廃止する方向を求め、コンぺやプロポーザル方式を超える設計者選定方式を探り、提起する。同時に、告示98号の実態に合った設計監理費算定へと改正を求め、適正な報酬が得られるよう努力する。

⑦設計技術の継承と労働のあり方

設計分野でも出向や下請け化が進行し、技術力が継承されない状況が生じており、若手技術者の技術向上の要求に応えうる研修活動に取り組む。また、働き方改革による時間外労働の総量規制について、中小零細の事務所の実態に基づく対応を意見交換しながら検討していく。

 

7.豊かな建築創造を支える自由・民主主義・平和を守る

①自由・民主主義・平和

私たちの仕事や活動の中で実感してきた「建築とまちづくりの豊かな発展は自由・民主主義・平和のなかでこそ実現ずる」という考え方が、建築界共通の理念となるよう努める。

②新建の立場をもとにした意見表明

次のような平和と民主主義の課題について、新建憲章を基に多くの建築関係者との話し合いを深める。

*一人ひとりを大切にし、民主主義を守る立場から・・・民主主義を軽視しようとする動きなどについて

*生命と環境、表現の自由を守る立場から・・・日本国憲法の改定の動きなどについて

*人類と地球の生存・存続のために・・・核兵器の廃絶などについて

 *沖縄における居住環境の現実を踏まえて・・・日米軍事同盟と米軍基地の縮小・撤去などについて

 *外国の基準の押し付けが職能を歪めた経緯から・・・TPPなどへの参加について

 


続発する大規模災害の支援活動に対する緊急アピール

 

 地殻変動の活動期に入ったといわれる日本列島は、1995年1月の兵庫県南部地震以降、ここ10年でも大規模な津波、原発事故を伴った2011年の東北地方太平洋沖地震をはじめとして、2016年の熊本地震、18年の大阪北部地震、北海道胆振東部地震が起こり甚大な被害が続発しています。

また2014年の広島土砂災害、15年の常総市の豪雨水害、17年の九州北部豪雨、18年の西日本豪雨、近畿直撃の台風21号などが多発し、特に本年は9月から10月にかけて九州北部豪雨、千葉県を中心とする台風15号による暴風と長期間の大規模停電、台風19号による東北・関東の広域の水害、さらに千葉県を中心に広範囲で甚大な水害をもたらした台風21号による豪雨など、首都圏をはじめ関東甲信越から東北にまで及ぶかつてない規模で家屋の破損や浸水被害が発生し、電気、交通網など生活基盤が長期間滞り、住民の暮らしが大きな影響を受けました。地球温暖化が原因と指摘される海水温の上昇は台風の大規模化をもたらし、進行コースは被害がより大きく広範囲になる傾向が増しており、異常気象による災害が年々顕著になってきています。

 新建築家技術者集団は憲章前文で「建築とまちづくりにたずさわる私たちは、国土を荒廃から守り、かつ環境破壊を許さず、人々のねがう豊かな生活環境と高い文化を創造する目的を持つ」と掲げて創立以来、様々な形で具体化してきました。

 本大会に参加した私たちは、多発する自然災害、それによる被災や復興過程の困難な状況に対し、建築とまちづくりにたずさわる者として、専門的知識と経験を活かし防災、減災、被災者支援に努力していくことを改めて確認し、下記の4点に取り組むことを強くアピールします。

 

①   被災者生活支援法にもとづく支援金で、損壊した住宅の再建に、現行では300万円を上限としている支給額を、500万円に引き上ることを求める署名に取り組む。

②   地域の人々に寄り添った災害関連情報発信を活発に行う。

③   被災者支援や、被災地調査、減災対策など多岐にわたる活動を行う。また、そのために必要な資金を、建築とまちづくりに関心のある人々に広く日常的に呼び掛ける。

④ 避難所環境の改善を図る。1997年に国際NGOや国際赤十字などがまとめた「人道憲章と人道対応に関する最低基準(通称スフィア基準)」などの理念を参考にし、被災者が尊厳をもって生活をおくる権利や援助を受ける権利を基本とした避難所改善に取り組み、災害関連死ゼロに向けて提案、支援をする。

 

 2019年11月17日  新建築家技術者集団第32回全国大会


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