福島原発事故被災者の完全な生活再建と 全国の原発廃止を強く求めます

東日本大震災とそれによる福島第一原発事故から4年半が経ちました。この事故で故郷を追われた人々は、いまでも12万人が全国各地で避難生活を余儀なくされ、生活再建の目処が立たない不安な生活を強いられています。

事故によって汚染された大地の除染とりわけ国直轄地は予定を大幅に遅れ、山林は対象外のままです。汚染土などの中間貯蔵施設の建設も進んでいません。
また、営業操業が出来ない漁業を始め、避難指示区域の農水産業は出荷できない厳しい状況が続いています。
福島第一原発の廃炉作業では、汚染された地下水の処理が出来ず海への垂れ流しもコントロールできていません。炉心が溶融した原子炉本体はその実態も正確につかめず、現状では廃炉工程は全く先が見えません。

多くの人々の努力にもかかわらず原発事故は収束に程遠い状況といわざるを得えない一方で、政府はこうした深刻な状況に反する施策を進めようとしています。
ひとつは2017年3月に帰還困難区域を除く全ての地域の避難指示を解除するというものです。避難指示解除は賠償とも連動し、除染・生業・生活基盤が遅れている状況での解除は被災者に帰還か転出かの二者択一を迫るものです。いつかは故郷に戻りたいという多くの被災者の気持ちを踏みにじる、余りにも乱暴な施策です。
もうひとつは全国で進められている原発再稼働です。事故原因や避難時の失敗などの究明も不十分で、その上廃炉の見通しも立たない中での原発再稼働は全くの暴挙です。こうした政府の姿勢は被災者の不信を募らせ、復旧・復興に向けた合意形成の障害になっています。

私たちはこのセミナーを通じて、原発事故の甚大さとその影響の深刻さを改めて認識し、被災地の現状をつぶさに見聞きしたことに基づき、事故の責任者である国と東京電力につぎの点を強く求めます。

・被災者の生活を破壊した原因者として、被災者一人ひとりの生活再建と健康に最後まで責任を持つこと。一方的な避難指示解除や支援(賠償)の打ち切りは行わないこと。
・汚染された大地の回復に総合的、科学的に取り組み、情報(危険性)の公開を確実に行うこと。
・廃炉作業に国として総力を挙げて取り組むこと。
・福島の経験を重く受け留め、全国の原発の再稼働を取り止め、原発廃止に向けての取り組みを開始すること。福島原発をはじめ、各原発から生じる放射能汚染物質の処分に関して、科学的見地を集約し国民的合意を得る行動を早急に開始すること。
・福島県双葉郡全体の地域づくりについて、町村の主体性を尊重しつつ広域的な行政を可能とするように、国としての支援・制度改定などを行うこと。

今後も大規模災害の発生が危惧されます。環境破壊を許さず、人びとが安心して住み続けられる豊かな生活環境と被災者の生存権を保障する立場で多くの人々と連帯し、災害対策と被災者支援をもとめる活動をいっそう強めていくことを決意します。

2015年8月29日

新建築家技術者集団 建築とまちづくりセミナー2015inふくしま参加者一同