2015年8月号(No.443)

特集:戦争と建築まちづくり─戦争終結70年

 

戦争終結70年にあたる今年は、日本という国のあり方を決める上でも大きな岐路に立っている。新建は憲章で「平和を守る」と謳っている。それは、かつての戦争によって、尊い人命とともに多くの建築とまちが破壊されたことへの怒りでもある。建築創造と戦争はまったく相容れない。本特集では、戦争によって引き起こされたすさまじい都市破壊の実態と、今も軍事基地によってまちが歪められている現実を再確認し、過ちを繰り返さないための戦争遺産保存の取り組みを紹介する。

 

・建築運動と平和問題                         本多 昭一
・仙台 - 一〇九六一発の絨毯爆撃で伊達藩開府のまちが一夜で廃墟   岩渕 善弘
・横浜 - 都市爆撃と戦後の接収                   羽田 博昭
・富山 - 市街地の99.5%を焼き尽くし三千人を焼き殺した大空襲  和田 雄二郎
・長崎 - 原爆で破壊されたまち 不死鳥の復興            鮫島 和夫
・首都にある巨大な米軍横田基地                    岸本 正人
・土地と社会に突き刺さる沖縄の軍事基地                清水 肇
・東京大空襲・戦災資料センターと松代大本営平和祈念館         三沢 浩
・天理市・柳本飛行場にみる軍国主義のまちづくり            川本 雅樹
・京都市中心部に残る「家庭用防空壕」調査               小出 純子
・貝山地下壕の保存・公開をめぐる市民の活動              昌子 住江


■  新建のひろば

・講演会「アルバー・アアルトの空間」
・第29回大会期第4回全国常任幹事会の報告
・新建学校in京都「外断熱講座」
・増田一眞さんの「日本建築学会教育賞」受賞を祝う会
・「オリパラ都民の会」新国立競技場計画で「緊急要請」
・復興支援会議ほか支援活動の記録(2015年6月1日~6月30日)

■  連載
《ハンサム・ウーマン・アーキテクト1》眩しい女性建築家の活躍            中島 明子
《設計者からみた子どもたちの豊かな空間づくり18》園舎の居ながら改修で考えたいこと 大塚 謙太郎
《創宇社建築会の時代7》関東大震災と創宇社建築会の結成               佐藤 美弥
《木の建築~歴史と現在20》それでも民家を残す                   大沢 匠


 主張 『戦争法案の強行採決を糾弾し、撤回・廃案を求めます』

黒田達雄建築研究所/新建全国常任幹事 黒田達雄

安倍内閣、自民・公明与党は去る7月27日、衆院本会議で安全保障関連法案、すなわち戦争法案の採決を強行し、可決しました。
「反対」「慎重審議」を求める国民多数の世論を踏みにじり、国民主権と民主主義を蹂躙する暴挙に対して、満身の怒りを込めて糾弾するとともに、戦争法案の撤回・廃案を求めます。この戦争法案は、憲法9条が禁じる集団的自衛権の行使とともに、「戦闘地域」での兵站や戦乱が続く地域での治安活動に道を開く、違憲立法に他なりません。参考人として意見を述べた憲法学者をはじめ、法律専門家の多くが「憲法違反」と批判しただけではなく、重ねられた国会審議を通じて、その違憲性があらわになってきました。

 

戦争法案は、自衛隊が地球の裏側まで出かけて米軍支援を行い、武器や弾薬の提供を可能にするものです。武器使用の拡大によって、自衛隊員のリスクが増大し、殺し、殺される事態に若者が巻き込まれることは火を見るより明らかです。そして、テロや報復の脅威が増大し、中小業者や民間人が戦争に動員される危険性が広がるなど、決して「国民を守る」などいうものではありません。
安倍首相が15日の特別委員会で「国民の理解が進んでいないこと」を認めながら採決を強行したのは、日増しに高まる反対世論に追い詰められた結果であります。いま、戦後70年間にわたって、現憲法の下で築かれてきた立憲主義、法の支配、民主主義を否定する安倍政権への不安と怒りが列島を覆っています。それ故、安倍政権は強硬で独裁的な政治をさらに強めなければならないというジレンマに陥っています。戦争法案を廃案に追い込むのはもう一歩です。
新建憲章では「建築とまちづくり、生活と文化、自由のために平和を守ろうと」と謳っていますが、平和なくして国民の幸せはありません。戦争法案はこの平和を求める願いに逆行するものであり、多くの団体が廃案に向けて立ちあがっています。
新建は6月14日には全国常任幹事会名で「安全保障関連法案(戦争法案)に反対する声明」を出しました。住宅関連3団体(住宅会議、住まい連、住まいの貧困ネット)も7月14日に「人間と住宅の破壊をもたらす安保法制(戦争法案)の廃棄を」という共同声明を出しています。私が一緒に活動している神戸の中小企業・商店の人々も「平和でこそ商売繁盛」を掲げて、街頭での運動などに取り組んでいます。
安倍政権を追い詰めてきたこれまでの闘いに確信をもち、国民諸階層とともに力を合わせ、戦争法案を必ず廃案に追い込む決意を表明します。会員のみなさんもともに立ち上がりましょう。