建築とまちづくりの職能人の倫理に関するよびかけ

近年、建築とまちづくりに関するさまざまな不祥事が頻発し、人びとの生活や環境に被害を与え、社会問題となっています。構造偽装、欠陥住宅、欠陥設備機器問題、再開発による環境破壊の諸問題、アスベスト、シックハウス、悪徳リフォーム問題など、後を絶たない被害の深刻さや人びとの不安、不信の広がりは、これ以上放置できないことを示しています。私たちは、それらの再発防止と根絶と安全・安心の確保は専門職の側の責務と自覚し、実行に努めたいと考えます。 

これらの不祥事は、誰もが道義的に「してはならない」と自ら判断できることです。しかし、実際に起こっている現実は、そこに主体的な判断と行動のできない実態があることや、不祥事を起こす専門職の倫理観の欠落があることを示しています。再発防止と根絶の取り組みは、法の一部改訂や一方的な審査の強化などで片付くことではなく、その要因を広く検討して総合的に追求すべき課題です。また個人や一団体の努力だけで済むことではなく、建築とまちづくりに携わるすべての人びとの課題とする必要があります。 

そのために何よりも重要なことは、まず今日の建築とまちづくりにおける倫理問題の核心を突いた原則を含む共通の規範を確立することだと考えます。そこで、私たち自身の意向を示す共通の規範として次に掲げる3項目をまとめました。 

1.私たちは、建築とまちづくりの原則が、そこで生きる人びとの生命と生活を守り、その要求を実現することにあると考え、いかなる目的を追求する場合でもこの原則を貫く。
2.私たちは、建築とまちづくりの結果が、地域の生活環境や歴史文化環境、自然環境にさまざまな影響を与え得る事実を真摯に受けとめ、常に環境悪化を最小限に止めるように努める。
3.私たちは、建築とまちづくりの発展が、平和のなかでこそ実現すると考え、戦争に反対する。 

建築とまちづくりにおける芸術・文化の創造や建て主の利益など、他のすべての目的もこの道義的な原則を踏まえることで初めて、達成することができます。またこの原則の追求は、日本国憲法に明記され保障された国民の諸権利、つまり基本的人権(第11条)、幸福権(第13条)、生存権(第25条)、財産権(第29条)の擁護および平和原則を実行することです。 

この規範を基に広く議論を起こし、具体的な取り組みを推し進め、さまざまな不祥事の再発防止と根絶を目指そうではありませんか。

第26回大会 決定 2007年11月24日
新建築家技術者集団