2016年7/8月号(No.454)

特集:東京五輪と連動する大都市開発

 

東京五輪の決定から3年。貴重な国立競技場を解体し、迷走の末、巨額工事費に対する批判世論の高まりに「白紙撤回」と再設計。だが、風致地区を変えての周辺の便乗開発はそのままだ。アベノミクスの第4の矢と位置づける内閣の下、都の建設する競技施設もそれにも増して果知らずの工事費膨張。デザイン・ビルド方式でコスト抑制は出来るのか。都民意見不在の選手村計画で公共財が危うく、疑問山積。リオ五輪目前の今、この3年間を顧みて、改めてパラリンピックを含む五輪の有り様を考えたい。

 

・2020東京オリンピックを改めて考える                末延 渥史

・「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」の活動から見えてきたこと  大橋 智子

・競技施設計画の現状と問題                       萩原 純一

・リスクと責任からみた設計施工一括方式の問題              安藤 正雄

・都民の住宅要求に反する都営団地解体と選手村計画            坂庭 国晴

・オリンピック村再開発の怪 再開発をトンネルに都有地投げ売りか     遠藤 哲人

・《インタビュー》障害者からみた競技施設など 公共建築とまちづくりの課題  市橋 博

・2020年東京オリンピック・パラリンピックの関連施設等に対する提言2   東京支部全国常任幹事

 

 

■  新建のひろば

・北海道支部──住宅講座と新建学校の報告

・東京支部──白井晟一設計・杉浦邸見学の報告

・福岡支部──「新建ゼミ2016」の報告

・東海・北陸ブロック会議──富山県くれは山荘保養館にて

・神奈川支部──「浦賀のまちを感じてみよう」の報告

・第30回大会期第2回全国常任幹事会の報告

・復興支援会議ほか支援活動の記録(2016年5月1日~5月31日)

 

■  連載

《ハンサム・ウーマン・アーキテクト12》

座談会から1「彼女はハンサムな行動をする人です」          中島 明子

《創宇社建築会の時代17》新興建築家連盟の結成と瓦解      佐藤 美弥

《20世紀の建築空間遺産11》サイナツァロの村役場       小林 良雄

 

■  熊本地震ドキュメント  新建福岡支部

 

主張 『研究集会に集おう』

(株)アート設計事務所/新建全国常任幹事 星 厚裕

 

今年の研究集会は奈良の吉野で開催され、A・B2グループ、合計10分科会が予定されております。各分科会のテーマは、Aグループが、建築まちづくり政策、防災と復興、環境とデザイン、まちと集落の再生、伝統工法と民家再生の5分科会。Bグループが、マンションサポート、地域の建築力を高める、リフォーム・リノベーション、福祉・子育て施設と地域、住まいづくりの5分科会。参加者はA・Bグループの各分科会の一つずつ、2分科会に参加し、発表・報告をすることができます。実践の交流、成果の蓄積ができる場として、会員のみなさんに大いに参加していただきたい研究集会です。

私はBグループ「福祉・子育て施設と地域」の常幹担当なので、この分科会について少し述べたいと思います。私は業務として福祉施設の設計が多いのですが、クライアントである社福法人のほとんどは国の補助金がないと施設の建設や拡充が難しいのが現状です。東日本大震災以後、施設の耐震改修や耐震改修を含む大規模改修などにも補助金が出ていましたが、その補助率が年々減少している傾向にあります。それが施設の充実を求める法人からすると足枷になり、耐震改修を諦める事例が出てきました。

一方で、地域では老人や障がい者は徐々に増えていく傾向にあるように思えます。特に障がい者の施設では、入所施設は需要が多いのにその新設についてはハードルが高く、建設が伸びない状況にあります。その不足分をグループホームとして「まちなか」に設置することで解消する方向にあります。しかし、その建設資金としての補助金は本当に僅かなものになってきています。そのような状況の中で、多くの社福法人は障がい者の要望を受け止め、ホームの建設に尽力しています。障がい者が通う作業所でも、その補助率はなきに等しく、作業施設を造ることが法人の予算上難しく、障がい者を「地域で暮らせるように」ということが困難な状況にもなっています。

また、保育園ではその不足が話題になったように多くの待機児童があり、なかなか解消しない現状があります。その原因は制度の問題に多くありますが、解決すべき地域の問題も多くあることが聞こえてきます。そのような中で見事に建設を成就した保育園もあるので、その成果をぜひ、この集会でご報告をお願いしたいと思います。

老人の施設では、特養はこれ以上あまり造らない、老人も「まちなか」で生活できるようにという方向で施策が進められていますが、その「まちなか」のどこに生活する場所や、日中の居場所があるのでしょうか。また「まちなか」で特養をつくるということは、敷地の広さ、階数、ユニットの形など困難さのハードルが高いと思います。こういう分野で多くの新建会員が関わっていると思います。そして建設場所の問題や制度の問題、地域の住民の問題など、多方面で解決して業務を遂行しておられることと思います。その素晴らしい実践と成果をぜひご報告していただきたいと思います。また、建設後、数年間経た施設の状況はどう変化したか、設計当初の理想と現状はどうかなどの報告もぜひ知りたいところです。今までの研究集会でご報告のあった施設での現状報告があればそれもぜひお願いしたい。それがこれからの施設づくりに大いに役立つと思うからです。

今まで、この分科会でご報告の会員の方も含め、初めての方の参加をお待ちしています。奈良の吉野でお会いしましょう!