2007年1〜12月号(建まちバックナンバー)

発行月 通算  特集
12月号 No.361 “身の丈”まちなか居住と“こじつけ”都心居住
11月号 No.360 ベーシックデザインとは何か その4 つなぐ/まちのデザイン
10月号 No.359 愛知-サステイナブルなまちづくり進行中?! /万博後を見据えて
9月号 No.358 景観法を活かす
8月号 No.357 ベーシックデザインを考える その3 
  テクノロジーとデザインの新たな関係
7月号 No.356 木造構法の可能性を考える
6月号 No.355 「耐震」の社会化は今
4/5月号 No.354 ベーシックデザインとは何かその2 建築様式と表現
3月号 No.353 シックハウスその後
2月号 No.352 近代建築の黎明と小樽
1月号 No.351 ベーシックデザインとは何か その1 モダニズムをどう継承するか

2007年12月号(No.361)

“身の丈”まちなか居住と“こじつけ”都心居住

 中心市街地における商店街の著しい衰退と空洞化の進行。クルマ社会に依存する郊外ニュータウンの高齢化と生活不安の表面化。これらの問題は地方都市で顕著に見られ、打開策の一つとして土地の複合利用や高密度利用を促進し、空洞化の進む中心市街地の居住を回復しようという「まちなか居住」が取り上げられてきました。 
 2006年の改正まちづくり三法では施設の郊外立地や市街地の拡大が基本的に抑制され、コンパクトなまちづくりについて議論が広がるなど、中心市街地と郊外における新たなまちづくりの動きが見られます。地域社会の再生という本来の目的に立った「まちなか居住」の取り組みも進められています。 
 その一方、「まちなか居住」という言葉では「中心市街地での住宅供給」という側面が強調され、開発者(ディベロッパー)による大規模マンションの促進(→従来の生活空間・コミュニティの破壊)に一役買っているという状況があります。大都市の都心居住も同様に開発志向で、もともとの住民が住み続けられないといった事態を生み出しています。 
 そこで、地域社会の再生を目指す各地での「“身の丈”まちなか居住」の実践を紹介するとともに、開発者による「“こじつけ”都心居住」の問題を明らかにし、地域社会の問題改善を考える上での足がかりにできればと思います。
(特集担当編集委員 松木康高)

・70歳のイタリアひとり旅-やぶにらみ比較都市論  00)イタリアへ /松岡宏吉 
・忙中閑 神楽坂界隈その二 /大石治孝 
・主張 正しい社会・良い社会とは /簑原信樹 
--------------------------------------------------------------------------------
■特集・“身の丈”まちなか居住と“こじつけ”都心居住 (特集担当編集委員 松木康高) 
--------------------------------------------------------------------------------
・まちなか居住の進展によって顕在化する新たな都市問題 /北原啓司 
・コンパクトシティに取り組む青森市 /山本恭逸 
・パブリックエリアの建築がもつべき「顔」 /森内忠大 
・まちなか居住地域をつくる  上尾のまちづくりから学ぶ /野嶋慎二 
・地方都市におけるまちづくり会社とまちなか居住 /松村茂利 
・人の住むまち・金沢  まちなか居住をめぐる課題 /永山孝一 
・城下町でまちなかの親戚と同居するという選択 /田中隆一 
・[試論]街区再生計画制度(仮称) /小伊藤直哉 
・超高層再開発に抗して都心の住まいを守る 
   東京都港区での“都心居住”の実態 /野本盛一 
--------------------------------------------------------------------------------
・新建のひろば 
・葦ペンで描く福岡の風景10 /中村洋一


2007年11月号(No.360)

ベーシックデザインとは何か その4 つなぐ/まちのデザイン

 美しいまちなみが形成されていく過程にはいろいろあります。世界的に見てもその地域で入手可能な材料や環境等の諸条件により独特の形が生まれてきました。それが地域のデザインとなりまちなみへとつながっていきます。その過程では自然なかたちで、まちとのつながりが配慮されていきます。それは日本の歴史的まちなみでも例外ではありません。 
 時代の移り変わりとともに建築のつくり方も変化し、まちなみも多様化しています。スケール感・経済性・コミュニティ・価値観の多様化など大きく影響しています。 
 そこで、近代以降いろいろな視点からまちとのつながりを考えて実践されている事例を紹介し、今後のまちなみをつなぐデザインとは何かを探りたいと思います。
(特集担当編集委員 横関正人)

・まちの再生~カタチとココロ~  06)デンマーク・コペンハーゲン /薬袋美奈子 
・忙中閑 吾ガ事ニ非ズ /大石治孝 
・主張 国は住宅困窮の実態にきちんと向き合うべきである /鎌田一夫 
--------------------------------------------------------------------------------
■年間特集・ベーシックデザインとは何か その4 
つなぐ/まちのデザイン (特集担当編集委員 横関正人) 
--------------------------------------------------------------------------------
・まちをつなぐ町屋のデザイン /福川裕一 
・歴史をつなぐ美しいまちなみ  大阪市北区豊崎プラザにみるスローな景観 /竹原義二 
・文化をつなぐ建築家の試み 
   からほり倶楽部(空堀商店街界隈長屋再生プロジェクト) /六波羅雅一 
・大正住宅博覧会跡地のまちなみ保全  箕面桜ヶ丘地区のまちづくり /坂井信行 
・新・田園都市実験  神戸「ガーデンシティ舞多聞」みついけプロジェクト /齊木崇人 
・近江八万とヴォーリズ /石井和浩 
・モダニズム建築におけるまちとのつながり /三沢浩 
・安全なまちのデザイン-ハードとソフト /室崎益輝 
--------------------------------------------------------------------------------
・新建のひろば 
・葦ペンで描く福岡の風景09 /中村洋一


2007年10月号(No.359)

愛知-サステイナブルなまちづくり進行中?! /万博後を見据えて

 2005年3月25日に始まった「愛知万博」は、1997年地球温暖化防止京都会議(COP3)での「京都議定書」を受け止めつつ、「環境」を前面に押し出してのイベントになりました。環境の持続性をテーマに多くの人を集めたことは、何かしら時代の変化を期待させるものでした。 
 その変化のキーワードの一つが「サステイナビリティ」です。 
 では、愛知のなかでは「サステイナビリティ」はどのように育まれているのか、そのことが愛知という地域の独自性(アイデンティティ)をどのように成長させるのか-。 
 特集の前段は、「愛知万博」という一過性イベントに絡むサステイナビリティへのアプローチについて。後段は、まさに持続・進行中の地域に根付いた取り組みから「サステイナビリティ」に接近しようとする場面からの議論です。 
 「サステイナビリティ=持続可能性」を地域において実現する方法とは何か……。一緒に考えていきたいと思います。
(特集担当編集委員 大崎元)

・まちの再生~カタチとココロ~  05)フィンランドの森 /薬袋美奈子 
・忙中閑 何かあったら通りにでる /大石治孝 
・主張 新建第26回大会に向けて /水野久枝 
--------------------------------------------------------------------------------
■特集・愛知-サステイナブルなまちづくり進行中?! 
/万博後を見据えて (特集担当編集委員 大崎元) 
--------------------------------------------------------------------------------
・愛知万博とサステイナビリティ  環境に徹底的に配慮した会場造成・建築工事 /川島康治 
・愛知万博は私たちに何を残したのか /宇佐見美智代 
・持続可能性と未来開拓性が響きある創造的まち育て 
   共同から相互支援社会に赴く岡崎市 /延藤安弘 
・井元邸から文化のみち橦木館へ  名前を変えて生き続ける「まちの拠点」 /兼松はるみ 
・ROUNDABOUT CONSTRUCTION #2 /佐々木敏彦 
--------------------------------------------------------------------------------
・新建のひろば 
・新建築家技術者集団 第26回全国大会議案 
・建築基準法改正による混乱の解決を求める声明  /新建築家技術者集団全国幹事会 
・葦ペンで描く福岡の風景08 /中村洋一


2007年9月号(No.358)

景観法を活かす

 2004(平成16)年に成立、2005年6月に施行された景観法により、都道府県・政令市ばかりでなく各地の市町村が景観行政団体となって景観計画を策定したり、NPOや公益法人を景観整備機構に指定したりと、行政段階では良好な景観をつくり出そう・保全しようする立法意志を読み込んだ取り組みが始まりつつある。住民にも景観計画の提案権を認めるなど、従来の建築行政・都市計画行政からすれば景観法の大きな前進面もある。その一方、建築基準法の性能規定化や天空率の導入、都市再特別措置法などによる大々的な規制緩和も同時かつ強力に進行しており、一概に景観法の理念が活かされる社会情勢にあるとは言えない。都市デザインの現実はこうした矛盾の中にある。 
 景観法が要請された背景にある都市景観の問題を考えれば、各地で激しい論争を引き起こしてきた地域文脈を考慮しない傍若無人の建築デザインは改めて否定されるものである。単体の建築設計にも景観法の理念は活かされなければならないことは言うまでもないが、では景観保全を図る建築設計とはどうあるべきであろうか。あるいは景観保全を図った建築がまちづくり生きてくるのはどういった流れにおいてなのか。 
 そこで今一度、景観法が生まれてきた背景を知り、その有効性と問題点を踏まえた上で、建築技術者としてなすべきことを考え、実的な手法を身につけたいと思う。 
・景観法で何ができる/できないのか 
・景観法をうまく活用する方法 
・景観法の延長上にある可能性は 
論者にはこうした視点からの切り込みをお願いしたい。
(特集担当編集委員 桜井郁子)

・まちの再生~カタチとココロ~  04)イギリス・ドックランド /薬袋美奈子 
・忙中閑 枯渇 /大石治孝 
・主張 政治の動きと私たちの仕事 /久永雅敏 
--------------------------------------------------------------------------------
■特集・景観法を活かす (特集担当編集委員 桜井郁子) 
--------------------------------------------------------------------------------
・景観法の制定時の状況について /岸田里佳子 
・景観法のもたらした波紋  ”美しい国”を回復する契機となれるか /中沢浩 
・住民主体のまちづくりに景観法を活用する /竹山清明 
・京都市の新たな景観政策の意義 /片方信也 
・京都市新景観政策のデザイン基準にひとこと /宮本和則 
--------------------------------------------------------------------------------
・新建のひろば 
・葦ペンで描く福岡の風景07 /中村洋一


2007年8月号(No.357)

ベーシックデザインを考える その3 テクノロジーとデザインの新たな関係

 歴史的に見れば、建築物はその地で得られる材料と継承された構法によって建てられて来た。それは造形を制約するものであったが、一方で統一や共同性をもたらした。人々はそれを様式にまで高め、建築文化を創造してきた。近代前夜、鉄、コンクリート、ガラスといった工業材料が実用化され、それらを使用した建築は従来の様式から開放され、近代建築として開花した。 
 近代建築はモダニズム建築へ収斂していくが、これと平行して新たな架構構造や建材が開発され、建築生産の工業化、大量化、規格化が進行した。モダニズム建築を継承した建築においては、鉄、ガラス、アルミニウムを多用した軽量で質感の薄いデザインが「フロント」を形成しているかに見える。 
 時は21世紀。これまでの大量生産に代わって、地球環境や持続可能社会が至上命題となっている。「現代建築のフロント」は新しい時代に向けてどんな回答を出し得るのであろうか。一方、化石エネルギーに頼らない環境技術や自然素材・伝統的工法の活用といったテクノロジーはどんなデザインを生み出すのであろうか。 
 「ベーシックデザインとは何か」を探る年間特集の第3弾は、これからの時代が求めるテクノロジーと建築デザインの関係を素描する。
(特集担当編集委員 鎌田一夫)

・まちの再生~カタチとココロ~  03)フィンランド・テンペリアウキオ教会 /薬袋美奈子 
・忙中閑 ざしき童子 /大石治孝 
・主張 機関誌「建築とまちづくり」の読者を増やそう /星厚裕 
--------------------------------------------------------------------------------
■年間特集・ベーシックデザインを考える その3 
テクノロジーとデザインの新たな関係 (特集担当編集委員 鎌田一夫) 
--------------------------------------------------------------------------------
・現在建築におけるテクノロジーとデザイン  ITがもたらすデザインの社会化 /難波和彦 
・環境技術が生み出すデザインの可能性 /野沢正光 
・21世紀型生産とデザインを予見すれば /松村秀一 
・構造技術が描く持続型社会の造形 
   耐久性やリユースの要求に応える構造技術の可能性 /五十嵐純一 
・素材と構法の冒険を追体験する教育を /本多昭一 
・まずデザインありき、テクノロジーは手段 /黒田達雄 
・FS(ファイナルメソッド)工法とその地平 /中安博司 
--------------------------------------------------------------------------------
・面白かった本・気になる本  『住に纏わる建築の夢』『バスでまちづくり』 
・新建のひろば 
・葦ペンで描く福岡の風景06 /中村洋一


2007年7月号(No.356)

木造構法の可能性を考える

これからの建築・住まいづくりで木造がになう役割を考える。 
 最近は木造の構法・工法について、様々な提案や取り組みがなされている。このような新しい架構法や施工の技術なども概観し、既存の在来工法や2×4工法も含め、木造が社会的にどのような役割を果たし得るのかを考える。木造の、その他の構法(RC造、鉄骨造など)に対する優位点は、文化性やコストの低さ、環境問題に対するやさしさ、生産・管理システムなどがより住民に近いこと、などがあげられる。また、RC造、鉄骨造などが先端技術や大企業の製品と結びつきながら設計・建設が行われざるを得ないのに較べ、木造は伝統工法を市民的立場や職人的観点から発展させる、中間技術的な開発が可能な分野でもある。 
 これらのものの見方から、今後の木造構法・工法の役割と展望を考えたい。
(特集担当編集委員 竹山清明)

・まちの再生~カタチとココロ~   02)デンマーク・ヴァプナゴー /薬袋美奈子 
・忙中閑 屍累々 /大石治孝 
・主張 拙速な建築基準法改正で安全は守られるのか /川本真澄 
--------------------------------------------------------------------------------
■特集・木造構法の可能性を考える (特集担当編集委員 竹山清明) 
--------------------------------------------------------------------------------
・木造建築の可能性を考える /竹山清明 
・2×4工法導入の経緯と発展の可能性 /戸谷英世 
・木造住宅に住み続けるために /田村佳英 
・木造伝統構法と現代構法の耐震性 /坂本功 
・米国のティンバーフレーム(木造軸組構法) /宮坂公啓 
・スケルトン&インフィルで豊かな暮らし   -「ロケット・TERRA工法」誕生まで /齋藤陸郎 
・KES構法と市場の創造 /安達広幸 
--------------------------------------------------------------------------------
・面白かった本・気になる本    『木造住宅の耐震設計』『東京破壊に抗して』 
・新建のひろば 
・建築とまちづくりセミナーin千葉 お知らせ 
・葦ペンで描く福岡の風景05 /中村洋一


2007年6月号(No.355)

「耐震」の社会化は今

阪神淡路大震災から12年、技術面で言えば「耐震」はかなりの程度確実なものになりつつある。新築だけでなくいわゆる「耐震改修」の技術も、大型地震動振動台装置の開発などと歩をあわせつつ、きわめて多様に高度になってきた。
 しかしその一方では、悪徳リフォーム問題のように「耐震」が社会問題発生のキーワードになり、耐震偽装マンションの建て替えや補修はほとんど進んでいない。木造住宅密集市街地は内部の自力更新力が衰え、耐震改修は遅々として進まない。それはいったいなぜなのか。
 たしかに住民の経済力の問題はあるだろう。しかし、「耐震」は個人だけが負担すべき問題なのだろうか。公共は、民間は、市民社会は、そこにどのように関わっていくのだろう。「耐震」はほんとうに社会化されたのか。
 技術開発だけでは何も変わらない。価値観の転換や新たな概念が必要なのかもしれない。今号では、住民や利用者にとって最も良い方法は何かを真摯に捉えつつ、苦闘しながら進めている「耐震」の社会化への取り組みを語ってもらった。
(特集担当編集員/大崎元)

■特集 
【特集分】
・防災対策から見る「耐震」の社会技術化 /中林 一樹
・県民の命を守るために ―木造住宅の耐震化に取り組む /早津 和之
・住宅の耐震化促進を地域住民と一緒に大きな運動に /松井 民人
・既存木造長屋の耐震性能 ―墨田区京島の耐震補強事例 /藤田 香織+佐々木 隆允+石川 永子
・墨田区京島 ―地元にとっての「耐震」の現実 /藤井 正昭
・「よりまし」耐震改修の経験から /新井 啓一+宮田 康市
・住宅政策の中での「耐震」思想 /坂庭 国晴
・「合わせ技一本」で進める耐震補強 /目黒 公郎
-----------------------------------------------------------------------------
・忙中閑 地道に暮らしていれば良いことも! /新井 英明
・まちの再生~カタチとココロ~01 ポルトガル・オビドス /薬袋 奈美子
・葦ペンで描く福岡の風景04 /中村 洋一
・主張 利用者の立場に立つ専門家は何処にいるのか
    ―介護報酬不正請求事件がかたるもの /丸谷 博男
・面白かった本・気になる本 『東京問題』、『建築革命』
・2007新建賞募集のお知らせ
新建のひろば


2007年4、5月号(No.354)

ベーシックデザインとは何かその2 建築様式と表現

美しい街並みは何故つくることができたのか。そして今、何故つくることが困難であるのか。
 日本でも、海外でも、美しい街並みの多くは数百年の月日を経たものが圧倒的に多い。19世紀以後で美しいと評価されるものには建築家たちが取り組んだものがある。
 しかし、我が国では「自由主義」経済の活力を期待するという大義名分のもと、方向性のない乱開発、住民の立場や地域への愛情のない利益優先低コスト主義が民間ベースで推進されているというのが現状である。このような状況下では、美しい街並みなど生まれるはずはない。また、豊かな住文化など育つはずはない。
 とは言っても、批判だけでは明日への夢が持てるまちづくり、住宅づくりへの道は開けない。この困難な時代に一つでも美しい住宅づくり、街並みづくりへの萌芽を探し出していきたい。
 建築の歴史の中で、「様式」という形で歴史的、地域的、民族的な視点から建築の形態を整理したのは19世紀の後半にはいってからと聞く。
 日本では、江戸時代を通じて建築されてきた様式は、木造建築の発展と充実、そして普及という一連の活動の中でとらえることができる。この伝統は現在まで続き、日本の建築のベーシックデザインとなっている。問題は、新しいデザイン、近代的なデザインである。
 20世紀初頭から全世界を動かしたインターナショナルスタイル。普及し始めた鉄骨、コンクリート、ガラスを多用した合理性のある構造と機能、そして無装飾の建築であった。
 しかし、現代では誰でもが手がけやすい形として安易に形だけが模倣され、当初の考え方やコンセプトは消えてしまっている。モダニズムが様式化してしまっているのである。
 議論は尽きないが、あらためて美しい建築やまちをつくることを展望して「様式とは何か」を論じたい。
(特集担当編集委員/丸谷博男)

■特集 
・様式のつくり方と破り方 ―レーモンドとアメリカ建築の場合 /三沢 浩
・戦前期における商品としての住宅の出現 /内田 青蔵
・環境保全に資する建築は「礼」の建築でなければならない ―民家様式のテーマに変えて /吉田 桂二
・北海道のベーシックデザインを考える /女鹿 康洋
・集住のスタイル ―公団住宅の系譜を例として /石倉 健彦
・無印良品の家づくり /土谷 貞雄
・建築様式とスタイル ―ベーシックデザインへの試み /丸谷 博男
・これからつくる建築を「様式」から考えてはいけない ―「6中パ様式」発見の体験から /本多 昭一
-----------------------------------------------------------------------------
・忙中閑 住み慣れた場所での生死の希求 /新井 英明
・エコロジィの周辺12 玄なる空間 /吉田 桂二
・葦ペンで描く福岡の風景03 /中村 洋一
・主張 活発なデザイン論喚起を期待する /加瀬澤 文芳
・2007新建賞募集のお知らせ
新建のひろば


2007年3月号(No.353)

特集 シックハウスその後

シックハウス問題では、2003年7月に改正施行された建築基準法に規制が盛り込まれ、一定の成果がありました。しかし、これらの規制を守ってさえいればシックハウスの問題が回避できるとは言えません。残念ながら、これらの規制値でもシックハウス症候群になってしまう人がいます。
 家が原因でさまざまな症状が出ることがありますが、その原因や症状は人それぞれで違っています。シックハウスの原因としてホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの揮発性化学物質はもちろんのこと、チリやダニ、カビ、ニオイ、結露、電磁波などの影響も考えられます。
 健康な暮らしができる住まいはどのような点に注意すればよいのか。本号特集では化学物質だけでなく、結露やダニ、ニオイ、電磁波に注目します。また相談活動の取り組みからどんな家が望まれるのか、アレルギー治療の現場から見えてくるものは何か、シックハウスは法律の上でどう捉えられているのか、よりよい住環境を実現するには何をすべきか等々を、最先端の研究や現場の活動から解いていきます。
(特集担当編集委員/光田康宏)

■特集 
・健康住宅を目指して /石本 徳三郎
・木材業から見たシックハウス問題 /三沢 浩
・小樽に見る日本の近代建築 ―様式建築から倉庫・工場まで /岩井 清
・住宅内に潜む様々な発症因子 ―シックハウス対策としてのニオイ /間瀬 昭則
・住宅と電磁波 /加藤 やすこ
・日常生活におけるアレルギー症状 ―化学物質に関して /中島 理
・シックハウスと裁判 /中島 宏治 廣谷 昭
-----------------------------------------------------------------------------
・忙中閑  犠牲者が英雄に変わる闘いを /新井 英明
・エコロジィの周辺11  鮮なる空間 /吉田 桂二
・主張  新建の50年を展望して /今村 彰宏
新建のひろば


2007年2月号(No.352)

特集 近代建築の黎明と小樽 

明治維新以後、日本は政策的に近代化(西洋化)を推し進めます。法律や行政などの国家制度、貿易や金融、製造業などの産業制度が力強く発進しました。そしてそれらが展開する物理的基盤である社会資本、産業構造物や建築が整備されます。
 特に「開拓」されるべき地としての北海道においては、函館や江差、松前などの維新以前に都市として展開されていた地ではなく、小樽という小さな漁村がその拠点となりました。ニシン漁が栄え、内陸の炭鉱で掘り出された石炭を搬出する拠点港が整備され、北海道金融の中心として都市が形成され、小樽は大きく発展します。
 こうした小樽の近代都市ぶりを象徴するのが、今もまちなかに残る当時の建築群です。西洋の正統な様式建築、木骨石造の倉庫群、財をなした事業家の住宅――。近代「以前」がなかったに等しい地に登場した建築たちは、近代そのものを体現しています。小樽はその誕生からすでに近代都市だったのです。
 本号は昨2006年7月8日に新建北海道支部主催で開かれた「北海道(2006)建築セミナーin小樽」における近代と小樽をめぐるの二つの講演(駒木定正氏、三沢浩氏)を収録し、併せて小樽建築士会の取り組みを紹介します。
(特集担当編集委員/林工)

■特集 
・小樽のまちと近代建築の推移 /駒木 定正
・小樽に見る日本の近代建築 ―様式建築から倉庫・工場まで /三沢 浩
・「小樽雪あかりの路」 ―小樽建築士会の取り組み /廣谷 昭
-----------------------------------------------------------------------------
・忙中閑  夢も希望も住んでいる川の中  /新井 英明
・エコロジィの周辺10  朗なる空間 /吉田 桂二
・主張  いま求められる建築運動 /大橋 周二
・面白かった本・気になる本  『パワービルダー』、『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる社会のつくり方』
新建のひろば


2007年1月号(No.351)

特集 ベーシックデザインとは何か その1 モダニズムをどう継承するか

ここ数年、新建の内部では、デザインとは何か、何をカタチにすべきか、馴染みのあるデザインとは何か、様式とは何か、モダニズムわどう評価するか――、等々の話題で様々な意見が交わされてきました。そこでは、言葉そのものに抱いている認識が人によりかなり違っているということを痛感させられると同時に、議論することの難しさを実感しました。
 今年の年間特集「ベーシックデザインとは何か」では、こうした認識の違いを文章という形で整理しようと考えています。共通した議論の基盤が少しでもできることが、お互いの理解を深めることにつながると思うからです。
 そしてもうひとつ、一人一人の個性や創作には違いがあるにしても、町並みやコミュニティ形成を考えるときには共通したベーシックデザインがあるべきではないか――、そうした問題意識を持ちたいと思います。共通した目的意識なしにデザインを語っても、千差万別の意見が取り交わされてしまうだけだからです。
 まちや地域の景観をつくりあげていくベーシックデザイン。地域工務店がつくるもの、一所懸命に丁寧につくっている設計技術者、そのベースとなるべきデザインとは何なのか。あるいは数寄屋建築や書院建築のように、棟梁が代々つくってきた規範とは何だったのか。実践事例を含めて語り合っていきたいと思います。
 一方では、商品化された住宅デザインが膨大なコマーシャルによって多くの人びとの印象をつくりあげています。そうした状況があるからこそ、正面から議論を進めたい。より多くの人びとの関心事となっていくことが大切です。
 私たちは世界に自慢できる美しい国土をつくりあげていく建築人でありたいと思います。また、新建がそういう集団であることはとても大切なことと思います。
 以上のような視点から、本年は四回に分けてデザイン論を進めていきます。
 1 モダニズムをどう継承するか
 2 様式とは何か
 3 素材と工法がつくるデザイン
 4 町並み、コミュニティをつくるデザイン
 第一回の今回は、「モダニズムをどう継承するか」をテーマとします。広範に普及して多く使われながら批判も多いモダニズムデザイン。モダニズムの何が批判されたのか、受け継ぐべき成果は何かを探ります。
(編集委員長/丸谷博男)

■特集
・モダニズム建築に何を学んだか /三沢 浩
・形態の呪縛を越えて ―止揚された建築へ /伴 年晶
・近代建築の土着化を越えて ―前川国男のめざしたこと /松隈 洋
・生産第一のモダニズム建築デザインの問題点と発展の方向性 /竹山 清明
・《インタビュー》 まちへの気遣い /田中 敏溥
・《対談》 数寄屋造りに見る日本の住まいのデザインと感性 /大石 治孝 + 丸谷 博男
-----------------------------------------------------------------------------
・忙中閑  造り物じゃない美しい国 /新井 英明
・エコロジィの周辺9  静なる空間 /吉田 桂二
・主張  倫理綱領にご意見を /山本 厚生
・面白かった本・気になる本  『市民参加と合意形成』、『住環境リテラシーを育む』
新建のひろば

発行月 通算  特集
12月号 No.372 コミュニケーション術
11月号 No.371 高層居住と足もとのまち
10月号 No.370 建築の安全と自由-基準法改正その後
8/9月号 No.369 伝統構法の再構築
7月号 No.368 若者たちはいま
6月号 No.367 高齢者はどこに住まうのか
5月号 No.366 いま元気な会社
4月号 No.365 住宅設計・現在の課題(東日本編)
3月号 No.364 リノベーション・コンバージョン本番!
2月号 No.363 新しいハウジングの方向
1月号 No.362 持続する建築とまち