建築基準法等の改正案に反対する声明

現在国会で審議されている建築基準法、都市計画法などの改正案は21世紀の都市開発に重大な悪影響を与えかねない規制緩和措置などを内容としている。

まず第1に、容積率などの大幅な規制緩和が行われる。容積率では商業地域で1300%まで、中高層住居専用地域でも500%までの緩和をはかる。また、第1種住居地域等で建ぺい率を80%まで緩和し、さらに、低層住居専用地域以外では日影測定高さをこれまでの4mに加えて6.5mへと緩和する。その他の規制緩和も含めて、これらの措置が既存の居住地環境に新たな大規模開発のきっかけを与えこれを後押し、その結果日照権侵害や町並み崩壊などで生活環境はさらに悪化する危険がある。

第2に、総合設計制度の規制緩和の判断は、特定行政庁が許可、認定していたものもこれをなくし、建築確認手続きで済ませられるようにして手続きの簡略化をはかるとしている。この背後には、容積率などの緩和の可否に関する都市計画決定権者等の判断が遅すぎて投資の機会をのがす時間的なリスクを開発業者に負わせているとの考えがある。この簡略化により、総合設計制度に盛り込まれる一層の容積率緩和をともなう開発行為は、住民の生活に重大な影響を及ぼす場合でも手続きのプロセスを素通りし、住民の関与はますますしにくくなるだろう。自治体の建築審査会や開発審査会の機能が形骸化するおそれもある。

第3に、都市再生の拠点では民間事業者等による「自由度の高い都市開発」を可能とする土地利用の仕組みをつくるとしている。この場合、地域の整備方針を示すことなどにより目標となる市街地像を具体的に明らかにするが、これはあくまでも民間主導のプロジェクトが促進されるようなものでなければならないと考えられており、大規模開発を有利に促進するためのものである。

住民等による都市計画の提案制度については、住民参加の促進をはかる可能性はあるが、住民と開発業者が同列に扱われるため実際には大企業による開発に有利にはたらくのを阻止できない点に欠陥がある。

シックハウス問題に対応した建築材料の使用に関しても、一定の前進と評価すべき面もあるが、建築材料の製造段階での規制の強化や住宅メーカーなどの使用禁止など、「つくらない」「使用させない」点でのチェックの徹底に関しては不明確な部分が多い。

以上、要するに今回の改正の主要な意図は、不十分な点はあっても良好な居住環境を確保するために定められた様々な基準を、大規模開発を実行しやすいように緩和しようとするものである。したがってこの改正案は、安全で住み続けられるまちづくりを願う住民や建築技術者の立場からは容認しがたく、ここに反対の意思を表明する。

2002年5月26日
新建築家技術者集団全国常任幹事会