2010年1〜12月号(建まちバックナンバー)

発行月 通算  特集
11/12月号 No.393 (UP作業中につき、しばらくお待ち下さい)
10月号 No.392  (UP作業中につき、しばらくお待ち下さい)
9月号 No.391

(UP作業中につき、しばらくお待ち下さい)

7/8月号 No.390 地域・風土に学ぶ家づくり
6月号 No.389 居住の貧困化プロセスに抗する
5月号 No.388

生活を支える地域施設の現状と今後の課題

4月号 No.387 じょっぱる雪国の鼓動 青森
3月号 No.386 ストック時代のマンションの行方
2月号 No.385 様々な主体と組んだ「仕掛ける」設計
1月号 No.384 建築界と建築運動の展望

2010年7.8月号(No.390)

特集 地域・風土に学ぶ家づくり

 「地球温暖化が話題となって久しい」。これは2003年1月号の建まち誌で、特集「地球温暖化に挑む建築の現場」の冒頭に書かれた言葉です。7年が経ち、地球温暖化についてはもう説明するまでもなくなりました。しかし、実際の社会の中では、様々な情報が飛び交い上手い広告に惑わされて、正確に判断するのが難しい気がします。そこで「情報」ではなく、「地域」「風土」に焦点を当て、様々な実践例に学ぶことにしたいと思います。
 実際に、長年培われてきた知恵や風土の特性を生かし、新たに生まれる技術や考え方をバランスよく取り入れた、そんな住まいづくり・まちづくりの実践・経験が蓄積されてきているだけでなく、様々な指標が考案されたり、実践例の経年変化の姿をそこかしこに見ることができます。そういった先例でも明らかなように、単に機械に囲まれた生活ではなく、かといって自然素材・伝統だけに固執することのない、そういったバランス感覚はますます重要になってくるのでしょう。 
 私たちはどのような考えの下に、住まいやまちづくりに取り組んで来たのでしょうか。今一度、これまでの知恵を振り返り、これからの快適で健やかな住まいづくり・まちづくりに向けての確かなよりどころとしたいものです。さらに欲張って、時間が経過したことによって見えてくる課題についても、浮かび上がってくることを期待しています。     
(特集担当編集委員/桜井郁子)

  • 蘇るか、京町家の伝統  第12回 京町家保存型街区の計画(1) /片方信也
  • 忙中閑 時代区分を疑う /垂水英司
  • 主張 小さな町の工務店と新しい法改正の動きについて /甫立浩一
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    ■特集・地域・風土に学ぶ家づくり(特集担当編集委員/桜井郁子)
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  • わが国における環境設計技術の現状 /佐藤 清
  • 建築家と地域・風土 /中村 勉
  • 「現代型結いっこ」でつくる まち再生と住まい造り /田中勝昭
  • エコビレッジ 人と地球が調和した住まい方とコミュニティの創生・再生 /林 悦子
  • 京都の歴史的街区に学ぶエコな住まいづくり /小伊藤直哉
  • 自然エネルギー政策と住宅建築 /飯田哲也
  • 上林博雄先生を偲んで /松井昭光 
    上林博雄先生を偲ぶ会 /大槻博司
  • マンションサポートの心得 2 マンション相談24年を振り返って  /有川友之
  • 新建のひろば
  • 風景へ まちづくりの実践(18) 上野商店連合会のまちづくりコンサル /三沢浩

2010年6月号(No.389)

特集 居住の貧困化プロセスに抗する

 「居住の貧困」はつい最近まで「ほぼないもの」あるいは「克服されるはずのもの」と考えられてきました。しかし、現実の社会では「新たな貧困」が拡大し続けており、その中で「居住の貧困」も極めて今日的な課題になりつつあります。そして、この課題はわたしたち新建築家技術者が建築・まちづくりの専門家として立ち向かうべきもの、という認識が求められています。
 居住の問題に対して日本では、ハードの住宅供給は住宅政策、生活の問題は福祉政策として分化させてきました。しかも、社会的貧困状態にある人々の居住を保障する方策は生活保護などの福祉政策に依存し、「施設」というハードづくりのみが建築の課題となってきました。しかし、そうした枠組みで居住の問題を解消することはできないことは明白になっています。
 高齢者、子ども、障害者は建築においては考慮すべき対象とされ、ハードビル法によるバリアフリー化は多くの施設で必須とされています。しかし、「居住の貧困」はそうした対象者をも内包した問題です。「居住の貧困」は単に住まいを失った路上生活者だけの問題ではなく、あらゆる場面に内在し、拡大しています。
 一方、木造密集地域などで老朽化した住宅が非常に多く残存し、高齢者が住んでいます。土地や家の財産はあっても年金や生活保護に頼って暮らすしかない状況は、都心内部でも多く見ることができます。
 ゆらぎ出し、崩れ始めた「居住」を再構築するには、これまでの枠組みを越えた新たなフレームワークが必要です。例えば、福祉政策と住宅政策の連結、地域が支える地域居住などの概念づくりと実践づくりの必要性が、様々な現場から言われ始めています。「ハウジングファースト」という理念を機軸にしたスキームの再編です。そうした場面で建築・まちづくりに関わってきた蓄積ができる役割は小さくないはずです。
 今回の特集では、居住の貧困を建築の課題として位置づけるための前提を整理してみました。(1)様々な現実の課題から浮かび上がる「居住の」の今日的な意味。(2)住宅政策の再構築が描く「居住」像。より直接的な建築の課題と実践の紹介は回を改めて特集したいと思います。 
(特集担当編集委員/大崎 元)

  • 蘇るか、京町家の伝統  第11回 協調空間の発見(7) /片方信也
  • 忙中閑 四川地震から2年 /垂水英司
  • 主張 新建40年で積み重ねたもの /林 工
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    ■特集・居住の貧困化プロセスに抗する(特集担当編集委員/大崎 元)
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  • 「居住の貧困」に誰がどのように抗するか /中島明子
  • 「住む力」から考える居住の貧困 /阪東美智子
  • 子どもの居住貧困を捉える /阿部 彩
  • 韓国住宅政策の最前線 買い上げ賃貸住宅政策への軌跡 /全 泓奎
  • 「日本型社会住宅」の可能性  オランダの住宅政策を踏まえて /角橋徹也
  • 提言「今こそ住宅政策の転換を」の意味するもの /鎌田一夫
  • 提言「今こそ住宅政策の転換を」

  • マンションサポートの心得 1 マンションの現状と連載の意義 /千代崎一夫・山下千佳
  • 新建のひろば
  • ご案内  新建築家技術者集団設立40周年記念シンポジウム×2010建まちセミナー東京
  • 風景へ まちづくりの実践 (17) 松代中央通りの再生修景 /三沢浩

2010年5月号(No.388)

特集 生活を支える地域施設の現状と今後の課題

 地域住民にとって、その生活や地域コミュニティを支えてきた公共的な施設(店舗など民営の施設を含め)を取り巻く現状は危機的状況にある。少子高齢化時代に突入する中での人口減少による利用率低下だけでなく、新自由主義的民営化路線によって自治体も「小さな政府」を目指して行財政改革に邁進し、民営化路線を踏襲している。
 政府や都道府県の誘導のもと市町村合併が強行され、公共施設の統廃合が進んでいる。とくに地域住民にとって最も身近で災害時の防災・避難拠点でもあった地域コミュニティを支える小・中学校の統廃合は、子どもたちの通学不便だけでなく地域住民の生活そのものを脅かしてきている。各自治体も、地方財政逼迫による財政補填をねらって統廃合後の自治体所有地(市民の財産)を民間に売却したり、民間の開発に委ねるなどの開発戦略に転換してきた。さらには、最も公共性の高い病院や福祉施設までPFI事業や独立行政法人化、指定管理者制度等で民営化をすすめている。もはや自治体に住民の福祉と健康を保持する「地方自治」の精神や施設づくり・まちづくりのノウハウを期待できる状況ではなくなっている。 
 その一方、地域内に生じた空き施設を住民主体で再生利用する試みも活発化している。膨張・拡大の前世紀的なハードの新規整備的な要求型ではなく、自発的創発的な対案型のまちづくりへと、縮小のすすむ21世紀の住民参画はすすんでいる。
 このような状況を踏まえ、施設づくりやまちづくりに関わる専門家として、地域住民の目線から公共的な施設や公共空間のあるべき姿・方向を探ってみることにした。 
(特集担当編集委員/黒田達雄)

  • 蘇るか、京町家の伝統 第10回 協調空間の発見(6) /片方信也
  • 忙中閑 台湾との交流10年 /垂水英司
  • 主張 「平和」「核兵器廃絶」「軍事基地撤去」の率直な議論を /三浦史郎
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    ■特集・生活を支える地域施設の現状と今後の課題 (特集担当編集委員/黒田達雄)
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  • 京都東山北部の小学校統廃合 /室崎生子
  • 公立保育所民営化がもたらすもの /増田百代
  • 地域で支える保育園 西宮市東山ぽぽ保育園の取り組み /坂井信行
  • まだまだ役立つ閉校後の校舎 /編集委員会
  • 街の駅「寺子屋力石」を拠点に /編集委員会
  • 団地店舗を使った「生き生きサロン」
        孤独死ゼロの活動を中沢卓実氏に聞く /編集委員会
  • PFI事業の落とし穴 
        近江八幡の総合医療センター破綻と神戸市立中央病院の実態に見る /黒田達雄
  • 災害と復興におけるコミュニティ施設の意義 
        能登半島地震被災地の事例から /武田公子
  • 神戸の文化のまちづくりとウォーターフロント整備 /竹山清明
  • 面白かった本・気になる本
        「ハウジングプア」「子どもが育つ生活空間をつくる」
  • 第7回新建賞(2007)正賞 
        玉出の家 ー地域につながる土間を持った長屋の改修 /横関正人
  • 新建のひろば
  • 風景へ まちづくりの実践 (16) 庭園都市・松代の命名とレポート /三沢浩

2010年4月号(No.387)

特集 じょっぱる雪国の鼓動 青森

 青森のまちを考えるとき、雪深い風土を忘れるわけにはいきません。近代化が進んで都市生活が浸透するに従って雪との戦いは深刻化したとさえいえます。高齢化、子世代の世帯分離、車利用による居住域の拡大、商品消費生活の普遍化などは雪国の暮らしを一変させました。近代化は別の面でも「地方」を直撃します。戦後の経済成長期、東北地方は「就職列車」に象徴される若者の状況や出稼ぎ労働など、労働力の供給源とされてきました。有力な二次産業はなく、若者の流出は今も続いています。
 しかし、青森では「一周遅れのトップランナー」という言葉をよく耳にします。近代化や成長という評価軸では遅れているかもしれないが、これまでの暮らしの蓄積、衰退はしても破壊されずに残った街並み、厳しい自然風土を逆に新たな資源として活かせるはずだ、という〈じょっぱり〉精神です。
 青森市はコンパクトシティを目指し、富山市と並んで中心市街地活性化計画の第一号認定を受け、新幹線の開通と新駅の設置を目前にしても市街地の拡大を抑制する施策で注目を浴びています。従来の右肩上がり、開発志向の都市政策とは全く異なる「地方」のあり方を示しているように思えます。
 こうした青森のまちの再生において、2004年に復活した新建青森支部の多士済々のメンバーは地道に重要な役割を果たしています。本特集では青森のまちづくりの特質を浮き彫りにするとともに、新建会員や市民の活動を通して、雪国の静かで力強い鼓動を伝えます。 
(特集担当編集委員/鎌田一夫・林 工)

  • 蘇るか、京町家の伝統 第9回 協調空間の発見(5) /片方信也
  • 忙中閑 アラウンド1980年 /垂水英司
  • 主張 人間の尊厳と建築基準法改正問題 /片方信也
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    ■特集・じょっぱる雪国の鼓動 青森 (特集担当編集委員/鎌田一夫・林 工) 
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  • 〈インタビュー〉コンパクト、青函、食、観光 
        ー青森市が目指すまちづくり /佐々木淳一
  • このまちがなぜ成立したかを考えることから /森内忠良
  • 《工藤真人さん・飯田善之さんに聞く》
        活性化をめざす浅虫温泉 建築技術者の関与 /編集委員会
  • 前川國男にいたる道 弘前に根づいた近代建築 /葛西ひろみ
  • こみせの残るまち黒石見て歩き /編集委員会
  • 第7回新建賞(2007)正賞
        木造の区分所有共同住宅・千里山東コーポラティブ /木村よしひろ
  • 新建のひろば
  • 風景へ まちづくりの実践 (15)  寅さんを記憶するための記念館へ /三沢浩

2010年3月号(No.386)

特集 ストック時代のマンションの行方

 1962(S37)年に「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)ができてから五〇年近くが経過した。分譲マンションという形態の住宅の歴史もほぼそれと同じ時間を経てきている。第1次マンションブームと呼ばれ飛躍的に供給戸数が増加した1970年前後からでも四〇年が経過し、2008年末のストックは五四五万戸、人口の一割に当たる一三〇〇万人が区分所有の集合住宅、すなわち分譲マンションに暮らしている。
 当初、鉄筋コンクリートはメンテナンスフリーであるかのように錯覚されていたが、一〇年、十五年が経過して何らかの補修や修繕の必要性が認識されるようになる。現在では、長期的な修繕計画をもって十数年に一度は大規模修繕を行う必要があることは、ほぼ常識として認識されている。バブルの時代には、等価交換によて自己負担なしで建て替えできるかのような、ある種の”夢”が喧伝されたものの、そのほとんどが叶うことはなかった。右肩下がりで推移したこの二十年あまりの経済状況の中、やはり修繕を繰り返して住み続けることが妥当な道であると考えられはじめている。一方、国のマンション政策は、所有者の高齢化による維持管理の困難性や耐震性能の不足などの視点から、維持管理の適正化や管理者の自由化と、「建て替え」を含む「再生」を重点的な課題として法整備を含む検討をすすめている。
 大規模修繕がほぼ定着してきたとはいえ、大量の分譲マンションストックは大規模修繕を繰り返していくだけで良質な住宅として維持できるのか。維持管理の困難性や耐震性能の不足の克服のためには建て替え以外に道はないのか。本号では、「修繕か建て替えか」の二者択一ではなく、「建て替え」ではない「再生」にかかる技術的、経済的な観点での可能性と法制度上の課題、さらには区分所有の集合住宅の「修繕」および「再生」あるいは「建て替え」における住民参加の可能性を探ることで、ストック時代のマンションの行方を考える。 
(特集担当編集委員/大槻博司)

  • 蘇るか、京町家の伝統  第8回 協調空間の発見(4)/片方信也
  • 忙中閑 まちづくり40年 /垂水英司
  • 主張 これからの新しい新建活動を /蓑原信樹
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    ■特集・ストック時代のマンションの行方  (特集担当編集委員/大槻博司)
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  • 分譲マンション五〇年ー今後の課題と可能性 /梶浦恒男
  • 住民参画による大規模修繕の取り組み /千代崎一夫+山下千佳
  • 向ヶ丘第一団地ストック再生実証試験
       技術的、経済的な観点での可能性と法制度上の課題 /星野逸郎
  • 韓国のリモデリング /金 貞仁
  • 郊外団地再生の課題 町田山崎団地の自立・自前建て替え /西木 實
  • 西小中台団地の総合的な再生の取り組み /小杉 学
  • 第7回新建賞(2007)正賞 
       密集市街地での共同建て替えと地域密着型コーポラティブハウス、そして連担へ 
       ~北区上十条地域でのコミュニティの発掘・醸成・発展~ /江国智洋
  • 新建のひろば
  • 風景へ まちづくりの実践(14)  寅さんセンターを地下に、桜を土手に /三沢浩

2010年2月号(No.385)

特集 様々な主体と組んだ「仕掛ける」設計 

 設計者や設計事務所の仕事は、「住まいをつくりたい」「保育園をつくりたい」「作業所をつくりたい」などの住む人使う人の要求を受け止めて建築的に実現していくことです。ほかに、まちづくりのコンサルテーションや建築相談、建築の保守管理といった仕事などもあり、そのいずれも建て主や使い手の要求に応えて業務を行うことが基本です。
 そこからさらに一歩進んで現代では、制度的な法体系や施策の多様性、人びとの生活実態と潜在的な要求を見据えて、建築専門家の側から建て主に「仕掛けていく」取り組みが試みられています。しかもその相手はそれぞれ独自であり、事例ごとに手法も多様です。
 設計を「仕掛けていく」とは、住む人使う人の要求に応えようという新建の理念にとってどんな意味を持つのか、傲慢で不届きではないのか、と感じる方もいるかもしれません。しかし、編集委員会では、現在の複雑で多様になった社会のなかで、「建築に対する人びとの潜在化した要求を顕在化させていく」という意味で「仕掛けていく」設計を考えています。それは人びとの生活を豊かにしていく、人々と設計者の「協同の営み」です。単に要求に応える形だけではない、常に設計者が準備し問いかける仕事の仕方ともいえます。
 今号では、「仕掛ける」設計に取り組むさまざまな事例を紹介したいと思います。
(特集担当編集委員/高田桂子)

  • 蘇るか、京町家の伝統  第7回 協調空間の発見(3)/片方信也
  • 忙中閑 ちょっと敷居が /垂水英司
  • 主張 建築とまちづくりに携わるひとりの建築技術者としてめざしたいこと /水野久枝
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    ■特集・様々な主体と組んだ「仕掛ける」設計  (特集担当編集委員/高田桂子)
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  • 胸を張ってやってきた「余計なお世話」/三浦史郎
  • 地産地消の住まいづくり  運動から事業へ /稗田忠弘
  • 市民と協同して仕掛けるまちづくり事業の展望 /岡田昭人
  • 日本人が日本人の手でつくる灯り  協働による照明器具の開発 /丸谷博男
  • 「なんとかしたい」という気持ちを実現するために
    地域住民の願いをかなえる設計者の仕掛け /高田桂子
  • 新建のひろば
  • 風景へ まちづくりの実践 (13)  寅さんとウィーンの提携でホイリゲを /三沢浩

2010年1月号(No.384)

特集 建築界と建築運動の展望 

 新建築家技術者集団(新建)は今年創設40周年を迎えます。この40年の間に当然のことながら社会情勢は大きく変化し、建築運動も変貌を遂げました。
 新建会員が日本のトップを切っていた、共同建て替え等による木造密集地の居住改善、コーポラティブ方式の住まいづくり、近代建築の保存運動などは多くの組織や団体が取り組む事業・運動に発展しました。一方新建の活動は、伝統技術を継承した木造建築創造、地域の生産力と協働した住まいづくり、住民運動団体や住宅管理組合との連携など新たな展開を見せています。 
 しかし、建築運動の進化・発展にもかかわらず、この40年間に人口増加・都市化社会から人口減少・縮小社会へ構造的変化が起こり、建築とまちづくりを取り巻く状況は新たな厳しさを増しています。限界集落、地方都市中心市街地の空洞化、大都市郊外の衰退、建築行為の減少といった課題に建築運動の対応はまだまだ不十分です。 
 この間、国の政策は一貫して市場重視・規制緩和路線であり、格差の拡大、福祉の後退、派遣労働の浸透など社会的歪みがいたるところで生じました。建築界では確認機関民間開放から構造偽装事件に至る経過が象徴しています。昨年、国民は自民党政権による政治路線に「ノー」を突きつけ歴史的な政権交代が行われましたが、歪み切った社会をどこまで改革できるか、新政権の行く末はまだまだ不透明です。 
 新建は40周年を激しく変動する情勢で迎えたわけですが、これまでの建築運動の蓄積を生かした改革の可能性に満ちた時でもあります。本誌では、年頭に新建会員と他団体の皆さんに建築運動を展望した抱負を語っていただき(本号)、年末には記念事業として行われる講演会・シンポジウム・研究会などをドキュメントし、併せて建築運動を俯瞰したいと考えています。今年も「建築とまちづくり」誌をご愛読くださるようお願いいたします。
(編集委員長/鎌田一夫)
(特集担当編集委員/野田明宏)

  • 蘇るか、京町家の伝統  第6回 協調空間の発見(2) /片方信也
  • 忙中閑 沈黙の建築と発言する建築 /川下晃正
  • 主張 設立40周年を機に確かめたいこと /三沢浩
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    ■特集・建築界と建築運動の展望  (編集委員長/鎌田一夫、特集担当編集委員/野田明宏)
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  • 建築運動の転換期を迎えて /山本厚生
  • 建築諸団体との協力・協力 /大橋周二
  • 社会居住と建築技術者  /大崎元
  • 女性建築士の二〇年 /横田都志子
  • 生活者としての地域の技術者へ   地域還元とコミュニティアーキテクト /小野誠一
  • “知識結”による景観まちづくり /黒田達雄
  • 市民まちづくりの中核に   新建築家技術者集団への期待 /佐藤滋
  • 住まいづくり・まちづくりに携われる私たちに   今、何が問われているのか /藤本昌也
  • 日本建築家協会の建築家職能法制定運動の歴史とUIA東京大会
  • DOCOMOMO Japanの活動  モデニズム建築の魅力を伝え継承すること /兼松紘一郎

  • 新建のひろば
  • 2009第8回新建賞発表
  • 第8回新建賞の選定について /三沢浩
  • 新建築家技術者集団第27回大会(浦和)報告
  • 新建築家技術者集団第27回大会期全国役員
  • 新建築家技術者集団第27回大会決定
  • 新建築家技術者集団第27回大会特別決議
  • 風景へ まちづくりの実践 (12)   江戸川にスーパー堤防の駐車場 /三沢浩