2001年1〜12月号(建まちバックナンバー)

発行月 通算  特集
12月号 No.293 都市内居住の実相
11月号 No.292 郊外居住の展望
10月号 No.291 共同作業所の計画を考える
8/9月号 No.290 中部地域の大型公共工事を問う
 7月号  No.289 高齢者が住まうかたち
6月号 No.288 サステイナブルランドスケープ
5月号 No.287 人々と共有する建築デザイン論
4月号 No.286 商店街活性化と三つのまちづくり法
2/3月号 No.285 介護保険と住まい
1月号 No.284 20+1世紀へのメッセージ――語りつぐ20世紀のエポック

2001年12月号(No.293)
■特集■
都市内居住の実相 

 都市が拡大・膨張を続けている間に都心では人口の流出が続いた。いわゆるドーナツ化現象で小中学校の廃校など地域社会が成り立たたないままの状況が生まれた。バブル期の異常なまでの住民追い出しは記憶に新しいが、都市膨張が止まりバブルがはじけるとオフィス需要は幻想となり、代わりに住宅が供給された。「都心居住」はトレンドとなった。
 都市に人が住むのは当然だ。しかし、今声高に叫ばれている都心居住には疑問が多い。高層・超高層主体の住宅形態は、当の居住性だけでなく周辺に深刻な影響を与え紛争を起こしている。居住者階層の偏向は、何十年前に郊外団地で起こったことが繰り返されている。都心近接の住宅地の安全性は遅々として向上しない。都内に住宅を建てることはいいことだ(実は良く売れる)として、荒っぽく進められる都心居住は都市構造を再び大きく歪めている。
 貴重な都内の土地は、環境・文化・景観・アメニティの各面から厳しいアセスメントが必要である。新たな視野とビジョンが求められている。

(特集担当編集委員 大崎 元)

都市内居住に見る生命力――町らしい町をつくることができるのだろうか 高野公男
都市居住とサステイナビリティ――東京谷中とロンドン都心部の取り組みから 山口邦雄
都心再開発での集合住宅の役割と問題 小畑晴治
密集住宅市街地の向かうところ――都市内居住のもう一つの可能性 岡田昭人
都市に住むことのアフォーダビリティ――低家賃住宅の役割から 大崎元
都市内居住と郊外居住の交点 永橋爲成
東京構想2000への疑問 新建築家技術者集団東京支部・東京問題研究会
居住の経験(知)値(1) 南青山に住んで 荒川千恵子
居住の経験(知)値(2) 都心型超高層住宅から見る 有馬立郎
居住の経験(知)値(3) 近郊地の構えの「内」で――文京区に住む 中島智久
■連載
《忙中閑》 山のどんじりの集落に元気が見えた 丸谷 博男
《建築運動史32》一九九〇年代前半  本多 昭一
《主張》修繕からリノベイションへ マンションを取巻く社会的環境の変化の時代を迎えて  大槻 博司
《家具とインテリアの近代5》明治の建具と格子  中村 圭介
《イタリアの都市と空間5》都市空間の造形  松岡 宏吉
《ワーク&ワーク新建61》倶知安町営ソフトボール球場管理棟  女鹿 康洋
《面白かった本・気になる本》
陣内秀信・中山繁信 編著『実測術 サーベイで都市読む・建築を読む』(学芸出版社)
E・モバリー・ベル 著 平弘明・松本茂 訳『英国住宅物語』(日本経済評論社)
《ひろば》 第23回全国大会開かれる/福岡支部の例会報告/東京支部・実践報告会2001開かれる/「新建塾」公開セミナーのお知らせ

 

2001年11月号(No.292)
■特集■
郊外居住の展望 

 20世紀の前半から日本の都市は急速に拡大を続けてきた。東京のような大都市では各時代ごとに、周辺のまちや集落を飲み込み、いくつにも層を成した巨大な郊外を形成した。戦前から首都圏域に主要都市のネットワークをつくる試みはなされたが、東京区部の一極集中は解消されなかった。そして、都市の膨張が止まった今日、郊外は子どもから老人まで安心して住めるのか、既存のまちと融合した地域文化は育つのか、といった疑問が出され、やがて郊外は衰退するという意見さえある。
 しかし、退職者など郊外定住層の地域活動の活性化、家庭菜園を含めた近郊農業の再建、徐々にだが周辺都市の吸引力の増加、転出した大学や研究所と地域との協同の可能性等、東京都心からの同心円では論じられない郊外の自立性も認められるようになってきた。
 いずれにせよ、郊外には今後もかなり長い期間にわたり膨大な人々が住み続ける。右肩上がりでない社会の中で、郊外の今後を展望するシナリオづくりは大都市圏の課題となっている。

(特集担当編集委員 鎌田一夫)

都市郊外の生命力――農と共生する都市・耕す空間のアメニティ 高野 公男
郊外地域の新たな展開――東京郊外に寄せて 吉田 清明
旧玉川村の人びととその暮らし――記憶の中の郊外・その形成過程と展望 新井 英明
郊外地のまちづくり――埼玉県小川町見聞活動記 若山  徹
公団賃貸住宅のある風景 若林 祥文
都市計画事業により開発された郊外分譲団地建替の背景 田頭 脩宏
郊外居住のデザイン 山田 正司
郊外居住のクォリティ 鎌田  一夫
郊外像の変貌と住環境の再編 鈴木  貢
■連載
《忙中閑》 手におえない情報化社会 丸谷 博男
《建築運動史31》 建築運動史から見た職能議論 本多 昭一
《主張》 「マイナスからプラスへ」同時多発テロ事件から   平本 重徳
《家具とインテリアの近代4》和洋折衷の明治宮殿 中村 圭介
《イタリアの都市と空間4》都市の顔  松岡 宏吉
《ワーク&ワーク新建60》F邸  見浦 泰治
水野 久枝
《面白かった本・気になる本》
秋山哲男『住民参加のみちづくり バリアフリーを目ざした湘南台の実践から』(学芸出版社)
陣内秀信『イタリア 都市と建築を読む』(講談社+α文庫)
《ひろば》 全国幹事会報告01年9月15日~16日
新建築家技術者集団第23回全国大会議事日程

2001年10月号(No.291)
■特集■
共同作業所の計画を考える

 本特集では、障害者が生涯自立して生活できるための生産施設(共同作業所等)がどのような状況になっているのかをテーマにした。
 障害者のおかれている空間は、安全性、快適性、発達保障という視点からみて、まだまだ環境整備が十分でない面がある。障害者が生産に係わる施設は主に共同作業所であるが、認可施設と無認可施設があり、無認可施設の労働環境は快適とは言い難い状況である。障害者が労働に携わり、障害者自身が発達していくためには、障害者の目線に合わせた施設空間環境と施設運営整備が求められる。
 障害者が施設に何を求めているのか、それに携わる運営はどのようにしていったらよいのか、施設を計画する時の設計者の視点は何が求められるのかを、各論考から探っていきたい。

(特集担当編集委員 進士善啓)

障害者の発達保障と建築設計
――施設づくりから場づくりへ
高橋 博久
無認可作業所問題とこれからの障害者福祉施設 福永 英司

リハビリテーションとノーマライゼーションの施設づくりを
――さつき福祉会25年の運動の経験

木津ひとみ
障害者施設計画の留意点と課題 内山  進
「大阪熊取町の共同作業所」について 伴  年晶
「わかくさ南障害者作業所」の計画 深津 保雄
「麦の郷」の“放っとけやん”施設づくり 杉山 誠一
■連載
《忙中閑》 自宅介護から地域介護へ 丸谷 博男
《建築運動史30》 80年代の状況と「新建」 本多 昭一
《主張》 ゼセッション建築とこれからの建築デザイン 竹山 清明
《家具とインテリアの近代3》 鹿鳴館の竹塗の椅子 中村 圭介
《イタリアの都市と空間3》 象徴空間としての広場 松岡 宏吉
《ワーク&ワーク新建59》 街角ふれあいビル 横田都志子
《面白かった本・気になる本》
  延藤安弘『「まち育て」を育む――対話と協同のデザイン』(東京大学出版会)
  尾鍋昭彦『町並みと建築』(みずほ出版)
《ひろば》 爽やかな感動 建築とまちづくりセミナーin妙高/拡大編集委員会開催/全国幹事会開かれる/ヨーロッパ近代建築を巡るツアー1ご案内
新建憲章(案)に対して寄せられた意見

 

2001年8/9月号(No.290)
■特集■
中部地域の大型公共工事を問う

  「今、長野県がおもしろい」といわれている。うわさの県知事の誕生が何かと物議をかもしていることもあるが、その中の「脱ダム宣言」は公共事業の今後のありようを問うている点で注目されている。
 社会資本として蓄積される公共投資、公共事業は、これからの社会の成長と充実のためには必要なことである。しかし、それはその時代の政治、経済、文化の水準とバランスの取れたものであることが絶対に必要である。そうでない場合は、地域住民との間にさまざまな歪みが生じることになる。
 バブル経済崩壊後のまったく出口の見えない不況で、国民の生活は経済的にも精神的にも疲弊しきっているが、政府の政策はあいも変わらず「景気の浮揚は建設関連の大型公共事業投資」の一本やりで、今はまったくのムダとしかいいようのないものが多い。そして、それは国全体の問題に留まらず、地方自治体の自主的な成長をも困難にし、財政を破綻寸前の状況に追い込んでいる。その結果、地域住民のさまざまな分野での生活が圧迫されることになり、不況の中で二重三重の苦しみとなっている。
 今回の特集では、「愛知万博と海上の森」「中部国際空港」「長良川河口堰」「静岡空港建設」など中部地域の大型公共工事の問題を取り上げ、地域住民との間でどんなことが問題になっているのか、どんな困難をもたらしているのか、どんな問題が今後予想されるのかを指摘し、これらのプロジェクトが住民の望む公共事業といかにかけ離れているかを明らかにしたい。そして、何よりもその地域住民がより豊かになるための二一世紀の地域計画はどうあるべきかを、生活者の立場、視点から探ってみたい。
(特集担当編集委員 細野良三)

愛知県の大規模開発の現状と問題 中川 武夫
稼働から六年
――長良川河口堰を検証する
西澤 信義

長良川河口堰のその後

藤吉 勝弘
中部国際空港は必要か
――ムダと環境破壊の大型プロジェクト
加藤 謙次
海上の森を守る運動 宇佐見美智代
迷走する愛知万博 古田 豊彦
本当に必要なのか「静岡空港」 石間  均
中部地域からの告発
──21世紀の環境民主主義
片方 信也
■連載
《忙中閑》 二番茶摘 丸谷 博男
《建築運動史29》 70年代と「新建」と私 本多 昭一
《研究室・研究所現場レポート》 年のくらし、すまい、まちづくりの研究機関(都市整備基盤公団総合研究所) 横堀  肇
《主張》 不況の中の「技術の荒廃」に思う 高橋 偉之
《家具とインテリアの近代2》 明治の住まい 中村 圭介
《イタリアの都市と空間2》 ローマの都市改造 松岡 宏吉
《ワーク&ワーク新建56》 吉田整形外科病院&リハビリ棟 大石 治孝
《面白かった本・気になる本》
  世古一穂『協働のデザイン――パートナーシップを拓く仕組みづくり、人づくり』(学芸出版社)
  湯川利和『まもりやすい集合住宅――計画とリニューアルの処方箋』(学芸出版社)
《ひろば》 拡大全国常任幹事会報告(01/7/14-15)/新建かごしま近況/札幌にて/第5次「憲章」案がまとまりました/関西ブロック企画・建築系の学生さん達に建築とまちづくりの展望を語る企画(続報)/ヨーロッパ近代建築を巡るツアー1ご案内/京都支部例会開かれる

 

2001年7月号(No.289)
■特集■
高齢者が住まうかたち

 四、五〇代にようやく「我が家」を建て、住宅ローンの二〇年払いがこれもようやく終わろうとする時、こどもたちは家から消え、広い家にぽつんと夫婦だけが残る。運が悪ければ、どちらか一人だけが残っている現実となる。
 老境に入った時、改めて自分の人生を目の当たりにする。フウーっと漏れる溜息にもためらいがある。
 さて、これだけが老後の現実というわけではないが、現実の老後にはもっともっと複雑な人間関係があり、しがらみがある。そして見えない未来に対しての大きな不安がある。
 私たち建築設計を業としているものは、仕事の中でこの現実を受け止め、生活設計にまで踏み込んで、暮らし方とその器を設計することが多い。最近では自分自信の老後も現実化している。ついこの間までは、老後の夢を語っていた。しかし最近では、老後の健康と生活をどのように描いていくかの関心の方が大きくなってきている。
 ここで改めて、「老後の暮らし方・ライフスタイル」と「家・住まい」との関係を概観するとともに、さまざまな真実に踏み込んでみようと思う。
(特集担当編集委員 丸谷博男)

老後とすまい、その現実 園田眞理子
震災復興公営コレクティブハウジング「ふれあい住宅」 石東 直子

シニアハウスの実像

高橋 英與
福祉と暮らし、そして住まい
――地域で暮らす
大熊  明
田舎暮らしで人生設計を実現 三宅 由紀
雲あけて杏里をわたる今朝の鐘
――グループハウス漆屋
漆原 三男
安藤 良子
岡村 光枝
佐藤 正秋
佐藤  和
老後を生きるための己の道さがし
──夢から要介護まで、そして死へ
丸谷 博男
■連載
《忙中閑》 産地だからこそ新しい 丸谷 博男
《建築運動史28》 70年代初頭 新建築家技術者集団 支部の結成と活動の発展 本多 昭一
《主張》 「木と森林の再生」に向けて 加瀬澤文芳
《家具とインテリアの近代1》 中村 圭介
《イタリアの都市と空間1》 ローマの都市空間 松岡 宏吉
《ワーク&ワーク新建56》 土間のある家 足助町S邸 河合 定泉
《面白かった本・気になる本》
  梶浦恒男『新世紀のマンション居住』(彰国社)
  (財)世田谷区都市整備公社まちづくりセンター編『森をつくる住まいづくり』(世田谷区都市整備公社まちづくりセンター)
《ひろば》 全国常任幹事会報告(01/5/26-27)/第22回大会決定の会員・読者拡大目標達成への取り組みのお願い/欠陥住宅東北ネット結成/品確法学習会を開催/関西ブロック企画 建築系の学生さん達に建築とまちづくりの展望を語る/増田先生を迎えて
新建憲章(案)に対して寄せられた意見 規約・綱領改訂検討委員会

2001年6月号(No.288)
■特集■
サステイナブルランドスケープ

 地形、気候、生態系などの自然環境(土地性)を基盤とするランドスケープは、同時に居住や生産など人間の営為による自然の変造や人工物が付加されたものでもある。とりわけ後者は時代とともに変化し蓄積されるので、ランドスケープは土地性プラスそこに加えられる人間の営みや人工物、自然自身による転位変遷の総和と言うことができるだろう。伝統的に言われてきた作意の下の「造園」だとかその現代なスタイルとしての「景観創造」、あるいは制御手法としての「緑地工学」などという解釈に納まりきるものではない。
 近代以前においては、現代の生産技術の登場以前という制約があり、また共同体も人びとへの求心力を保ち得ていたことで、ランドスケープは個々の土地から乖離することなく、共同体を構成する人々に共有の風景心象たりえた。しかし近代以降、生産技術(とそれを操作する資本)は地域的な共同体ひいては国家さえ飛び越えて発展し、時代を支えた近代主義とその造形は高次に抽象的で幾何学的な形態を追求することになる。個々人の生活が多様化し共通の経験が減少してきたこの時点において、人工物ばかりが顕在化して土地性は後景に追いやられ、ランドスケープは人々が自然に共有する風景と言えるものではなくなってしまった。
 しかしながら、それでもランドスケープは土地性から脱却することなどはできない。例えば窓の上に庇ののる建物(陽射し)や商店街に架かるアーケード(降雨)、河川沿いの堤防(氾濫)や坂の途中から現れる地下鉄(地形)など、まったく人工的かに見える日常の空間風景も土地性と無縁でいるわけではないし、それらは生活時間の経過とともになじんだものになっていく。
 一見混沌とした現代ランドスケープの中に潜む基盤としての土地性を発見し、人間の営為、人々の生活とともにあり続けるサステイナブルな可能性を見いだしたい。
(特集担当編集委員 鎌田一夫・林工)

ダイバアシティ・ランドスケープ
――生物としての人間と自然のための環境計画

進士五十八
地域に根ざすランドスケープの展望
――地形に宿る日本の記録を見直そう
浅井 義泰
住宅開発に見る生活空間としてのランドスケープ 松岡 宏吉
市民参加でつくる地域景観 関谷 真一
湖における環境復元、水辺の風景の再構 中村 圭吾
■連載
《忙中閑》 政治の混乱と地域 丸谷 博男
《建築運動史27》 19年ぶりの全国組織 新建築家技術者集団の結成 本多 昭一
《大学研究室・教育現場レポート》 火災と消防防火研究のナショナルセンター(消防研究所) 関沢  愛
《主張》 「木と森林の再生」建築とまちづくりセミナー21in妙高の成功を! 大橋 周二
《世界の集合住宅見聞録15(最終回)》 ルオホラハティ 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き15(最終回)》 清雅堂のなまこ壁 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建56》 みつばち保育園新築工事 杉谷久美子
《面白かった本・気になる本》
  バリアフリーデザイン研究会編『バリアフリーが街を変える――市民がつくる快適まちづくり』(学芸出版社)
  藤森照信『建築探偵、本を伐る』(晶文社)
《ひろば》 震災研究センターシンポの鳥取県知事講演で大きな感銘/千葉支部の近況/2001年度新建神奈川支部総会報告/(仮称)「欠陥住宅関東ネット」設立へ向けて

2001年5月号(No.287)
■特集■
人々と共有する建築デザイン論

 現代の我が国の建築デザイン(計画・造形)およびその理論は建設者の立場に偏ったものであると言って、そう大きな間違いではない。それが混乱した醜いまちや住環境の悪化の原因となり、使いにくい施設や欠陥の多い住宅を生み出すもととなっている。この問題を改善し、質の高い建築・住宅・まちづくりを進めていくためには、まず、よって立つ理論的展望・根拠をはっきりさせることが出発点になる。今後の質の高い実践を導くことができ、多くの市民や専門家が合意できる高水準で民主的な建築やまちづくりに関する理論の構築の方向性を探りたい。
(特集担当編集委員 竹山清明)

市民と共有する建築論を考える

竹山 清明
様式論のスタイルをめぐって 大島 哲蔵
地域に根ざす建築デザインの方向 三沢  浩
「地域」で建築を構想するデザイン 三井所清典
住み手と造り手の協同による個性の表現 田中 恒子
近代建築と目利き 林   工
■連載
《忙中閑》 愚痴から出発 丸谷 博男
《建築運動史26》 仮称集団の分裂から新建築技術者集団の結成へ 本多 昭一
《主張》 新たなマンションラッシュに思う 久永 雅敏
《世界の集合住宅見聞録14》 旧東ドイツPC工法団地の再生 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き14》 滋賀県神崎郡五個荘町金堂 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建55》 区画整理事業によるまちづくり 吉田 清明
《面白かった本・気になる本》
  西村幸夫『西村幸夫 都市論ノート──景観・まちづくり・都市デザイン』(鹿島出版会)
  佐藤嘉一郎・佐藤ひろゆき『土壁・左官の仕事と技術』(学芸出版社)
《ひろば》 東西幹事会報告/建築とまちづくりセミナー21in妙高/連続講演会住まいの原点を問う2001 吉田桂二と考える「日本人らしい生活空間」/「欠陥住宅東北ネット」設立に向けて/01年京都支部企画から

2001年4月号(No.286)
■特集■
商店街活性化と三つのまちづくり法

 かつては中心市街地イコール商店街として、その活性化が単独でとりあげられた。その文脈での「大店法」は、地元対大規模外部資本という図式によっていた。しかし今は、大型店の規制が地域の商業力を低下させたり、逆にその受け入れが地域商業を全国的な景気変動の波にのせてしまったり、単純な図式ではとらえきれない現実がはっきりしてきた。また、その後の「大店法」改正による規制緩和は、逆に郊外に大型店をあつめて中心市街地の衰退に拍車をかけている。限られた都市では現在でも巨大資本による再開発がおこなわれているが、福岡など一部を除いてとても成功しているとはいえない。再開発という手法そのものが疲弊している。
 しかし、その中でもいくつかの新しい取り組みが始まっている。
 自治体が新たな「大店立地法」と「中心市街地活性化法」「改正都市計画法」を複合して「まちづくり三法」と位置づけていこうとする施策では、地方分権のまちづくりにおける公共の可能性が試されている。商店街活性化をまちづくり条例という規制色の強い方法のなかで位置づけ、地域のポテンシャルを正しく評価し、ゆるやかに再生をはかろうとする動きも出てきた。
 再生の主体も従来の商店街や商業行政から、外部資本はもとより、NPO、公共全般、地域住民に広がり、福祉などとの協働も試みられている。もちろん課題は多く、試行錯誤の段階にやっとたどりついたところだろう。
 今回の特集では、中心市街地の再生をまちづくりとして展開するこれからの方法を見つけだすために、どのような可能性が検討されつつあるのかを、「まちづくり三法」や「まちづくり条例」などの面から見ていきたい。
(特集担当編集委員 大崎元・三沢浩)

まちづくり三法の施行後、街はどうかわりつつあるのか

野口 和雄
中心市街地の商店街活性化 高橋志保彦
商店街活性化の中での公共空間 中野 恒明
これからの商店街づくり
 ――公共、外部資本、地元が錯綜する地場の可能性を引き出すこれからの手法
石田 綽男
街づくり三法時代におけるコンサルタントの役割 小宮 和一
駅がショッピングセンターに変わるとき
 ――大店立地法の適用外ではなかった
三沢  浩
黒壁の成功 丸谷 博男
■連載
《忙中閑》 ITが地方を変える 丸谷 博男
《建築運動史25》 地域的運動から全国組織へ 本多 昭一
《主張》 新建をひと回り大きくして第23回全国大会を迎えよう 今村 彰宏
《世界の集合住宅見聞録13》 フンデルトヴァッサーハウス 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き13》 赤玉神教丸・有川薬局 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建54》 民間優良建築物等整備事業の取り組み 市川 文明
《面白かった本・気になる本》
  脇本祐一『街が動いた――ベンチャー市民の闘い』(学芸出版社)
  簑原敬・河合良樹・今枝忠彦『街は、要る――中心市街地活性化とは何か』(学芸出版社)
  荒井春男他『図解 軸組木造住宅のしくみと施工』(東洋書店)
《ひろば》 神奈川支部より/21世紀 新建富山によせて 支部幹事の抱負/地方におけるセミナー開催準備の「戯言」/愛知万博の問題と課題/松井宏方「描・写」展を見て/西全国幹事会での綱領改定ついて出された意見の速報

2001年2/3月号(No.285)
■特集■
介護保険と住まい

 介護保険がスタートしてからすでに1年近くが経過した。
 この保険は「高齢者の介護を社会全体で支え、利用者の選択によりサービスが受けられる仕組み」として創設されたが、制度そのものが利用者に分かりにくい、収入の少ない高齢者にとって介護サービス費用の一割負担が大きい、必要なサービスが十分に供給されていない、利用可能なサービスが十分利用されていない、など多くの問題も生じている。
 住宅改善に関して経験の少ないケアマネジャーや住宅事業者の参入等により、これまで各地域で建築、福祉や医療の専門家等の連携などによって生み出されてきた住宅改善ネットワークなどとは性格を異にした、「市場性」が重視された新たな「産業」としての住宅改善システムが生じてきている。また、介護保険の導入に伴い住宅改善にかかわる助成制度が後退した自治体も少なくない。
 介護保険は、福祉施設や高齢者住宅の利用形態、その在り方にも大きな影響を与えている。
 今特集では、高齢者や障害者が安心して住み続けられるための住宅改善の必要性、福祉政策と住宅施策の連携の必要性、高齢者の居住にかかわる建築技術者の役割と他分野の専門家との連携の必要性といった視点から、「介護保険と住まい」の問題について検証する。
(特集担当編集委員 鈴木晋)

「介護保険」問題が問いかけるのは21世紀高齢社会のあり方
――介護保険制度の仕組みと当面する課題

矢部 広明
◆インタビュー◆ケアマネジャーに聞く――介護保険の現状と住宅改修の方向性 菊地 泰子
三村 尚代
原   海
岩瀬 和子
山本ヒカル
原田 愛子
介護保険制度の前提としての居住政策 鈴木 晃
介護保険と建築技術者 大竹 司人
介護保険と住居改善 岩瀬 昌照
岩瀬 和子
原田 愛子
住宅事業者として介護保険を迎えて 年森 隆広
東京都町田市に見る介護保険施行後の住宅改修助成制度および建築技術者の関わりについて 髙本 明生
利用者に喜ばれる高齢者施設づくり 永橋 爲成
■連載
《忙中閑》 新世紀はIT? 丸谷 博男
《建築運動史24》 60年代に全国組織が再建されなかった事情(再論) 本多 昭一
《主張》 日常業務として新建運動の前進を 久守 一敏
《世界の集合住宅見聞録12》 ベルリンIBA 87(その2) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き12》 醤油屋喜代治商店と居醒の清水 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建53》 「森と住まいを結ぶ」取り組み 相川  明
《面白かった本・気になる本》
  広瀬鎌二『大廈なる――重源・東大寺再建物語』(彰国社)
  石部正志他『奈良世界遺産と住民運動』(新日本出版社)
《ひろば》 全国常任幹事会報告/全国幹事会による綱領改定案(新建憲章)が決定/地方におけるセミナー開催準備の戯言/愛知万博への試案を提示/新建設立30周年出版事業

2001年1月号(No.284)
■特集■
20+1世紀へのメッセージ――語りつぐ20世紀のエポック

 20世紀はこれまでの世紀の中で最も激しく変化した時代であると思える。
 世紀初頭は、コンクリートと鉄の建築が出現し始めたときであり、技術が新しいデザインを切り拓いていく姿を目の当たりにすることができた。そして資本主義経済の発展が巨大な都市を世界中に造り出していった。
 一方では、何百年という歴史の積み重ねによってつくられてきた地域・地方が、姿を失っていくときでもあった。地方の過疎化、都市の過密化という現象は今も続いている。
 そして20世紀の後半には、生産から情報に至るまで、経済の基盤と生活の基盤を大きく変化させる強烈な動き――情報化――が出現した。それこそ人知を超えた社会革命ともいえる動きである。その結果、流通から生産、販売まで、それまで資本主義経済によって培われてきた構造は、一挙に変革された。また、人々の生活においても携帯電話の端末がパーソナルユースとなり、同時に個人レベルでのコンピューターの利用が急激に普及した。誰も予測しなかった速度で社会変化が進み、すでに過去とは違った次の時代を迎えてしまった感さえある。
 しかしその一方では、災害は繰り返され、民族間の戦争も激しさを増してきている。また、旧中心市街地の衰退と高齢社会化、地方のますますの空洞化など、解決されるどころかかえって深刻さを増している状況もある。ますます増え続けるゴミとその処理問題など、生活レベルでの諸課題が手つかずにいる状況もあり、コンピューターの進歩に見る未来への予感と、それに反して非常に立ち遅れた人間の基本条件、環境づくりへの努力の欠如とが大きな矛盾として、21世紀への不安を伝えているように思わないわけにはいかない。 
 今号では、20世紀の印象的な事件、プロジェクト、自治体の動き、あるいは住民活動など、20世紀からの教訓を21世紀につながるものとして取り上げた。新世紀の幕開け、この特集が新たな一歩を進めるための契機となり、また次世代へのメッセージとなることを期待する。

(編集委員長 丸谷博男)

地域に根ざす建築デザインの展望 三沢  浩
生活を支える施設、地域づくり 永橋 爲成
「車社会」から「歩行社会」へ
――新モールのまちづくり
松井 昭光
新世紀のために 広瀬 鎌二
意匠と構造 または 視覚と聴覚 清瀬  永
歴史を通して何が見えるか 何のために何をしてきたか 大石 治孝
古墳時代からの借景
――開戦日の思い出
中村 圭介
望まれる公共建築 増渕 昌利
密集事業の到達点
――衰退した住宅市街地の自律更新
黒崎 羊二
21世紀の建築設計
――現場の発想をデザインに活かす仕組み
本多 昭一
人権としての居住の実現へ 早川 和男
建築協定、管理組合、コーポラティブ
――共同のまちづくりへ向けて
石田 頼房
■連載
《忙中閑》 私の町内活動 加藤 錦弥
《建築運動史23》 60年代前半――なぜこの時期に建築運動が再起しなかったのか 本多 昭一
《主張》 「協同」の理念の実践で21世紀の展望を 萩原 正道
《世界の集合住宅見聞録11》 ベルリンIBA 87(その1) 鎌田 一夫
《歴史・まち並み・見て歩き11》 十王村の水 木下 龍郎
《ワーク&ワーク新建52》 荒沢自然館 渋谷  尚
《面白かった本・気になる本》
  片木篤他編著『近代日本の郊外住宅地』(鹿島出版会)
  宗田好史『にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり』(学芸出版社)
新建設立30周年に至る10年間の活動・略年表 新建全国事務局『建築とまちづくり』編集局
《ひろば》 群馬・埼玉合同実践報告会/第7回全国建設研究集会・交流会に参加して/芋焼酎を傾けながら/三都フォーラム鎌倉集会の到達の意義/北海道で見る夢/地方におけるセミナー開催準備の独り言

2001年12月号(No.293)

■特集■都市内居住の実相 

 都市が拡大・膨張を続けている間に都心では人口の流出が続いた。いわゆるドーナツ化現象で小中学校の廃校など地域社会が成り立たたないままの状況が生まれた。バブル期の異常なまでの住民追い出しは記憶に新しいが、都市膨張が止まりバブルがはじけるとオフィス需要は幻想となり、代わりに住宅が供給された。「都心居住」はトレンドとなった。

 都市に人が住むのは当然だ。しかし、今声高に叫ばれている都心居住には疑問が多い。高層・超高層主体の住宅形態は、当の居住性だけでなく周辺に深刻な影響を与え紛争を起こしている。居住者階層の偏向は、何十年前に郊外団地で起こったことが繰り返されている。都心近接の住宅地の安全性は遅々として向上しない。都内に住宅を建てることはいいことだ(実は良く売れる)として、荒っぽく進められる都心居住は都市構造を再び大きく歪めている。

 貴重な都内の土地は、環境・文化・景観・アメニティの各面から厳しいアセスメントが必要である。新たな視野とビジョンが求められている。

(特集担当編集委員 大崎 元)

都市内居住に見る生命力――町らしい町をつくることができるのだろうか 高野公男

都市居住とサステイナビリティ――東京谷中とロンドン都心部の取り組みから 山口邦雄

都心再開発での集合住宅の役割と問題 小畑晴治

密集住宅市街地の向かうところ――都市内居住のもう一つの可能性 岡田昭人

都市に住むことのアフォーダビリティ――低家賃住宅の役割から 大崎元

都市内居住と郊外居住の交点 永橋爲成

東京構想2000への疑問 新建築家技術者集団東京支部・東京問題研究会

居住の経験(知)値(1) 南青山に住んで 荒川千恵子

居住の経験(知)値(2) 都心型超高層住宅から見る 有馬立郎

居住の経験(知)値(3) 近郊地の構えの「内」で――文京区に住む 中島智久

■連載

《忙中閑》 山のどんじりの集落に元気が見えた 丸谷 博男

《建築運動史32》一九九〇年代前半  本多 昭一

《主張》修繕からリノベイションへ マンションを取巻く社会的環境の変化の時代を迎えて  大槻 博司

《家具とインテリアの近代5》明治の建具と格子  中村 圭介

《イタリアの都市と空間5》都市空間の造形  松岡 宏吉

《ワーク&ワーク新建61》倶知安町営ソフトボール球場管理棟  女鹿 康洋

《面白かった本・気になる本》

陣内秀信・中山繁信 編著『実測術 サーベイで都市読む・建築を読む』(学芸出版社)

E・モバリー・ベル 著 平弘明・松本茂 訳『英国住宅物語』(日本経済評論社)

《ひろば》 第23回全国大会開かれる/福岡支部の例会報告/東京支部・実践報告会2001開かれる/「新建塾」公開セミナーのお知らせ

 

2001年11月号(No.292)

■特集■郊外居住の展望 

 20世紀の前半から日本の都市は急速に拡大を続けてきた。東京のような大都市では各時代ごとに、周辺のまちや集落を飲み込み、いくつにも層を成した巨大な郊外を形成した。戦前から首都圏域に主要都市のネットワークをつくる試みはなされたが、東京区部の一極集中は解消されなかった。そして、都市の膨張が止まった今日、郊外は子どもから老人まで安心して住めるのか、既存のまちと融合した地域文化は育つのか、といった疑問が出され、やがて郊外は衰退するという意見さえある。

 しかし、退職者など郊外定住層の地域活動の活性化、家庭菜園を含めた近郊農業の再建、徐々にだが周辺都市の吸引力の増加、転出した大学や研究所と地域との協同の可能性等、東京都心からの同心円では論じられない郊外の自立性も認められるようになってきた。

 いずれにせよ、郊外には今後もかなり長い期間にわたり膨大な人々が住み続ける。右肩上がりでない社会の中で、郊外の今後を展望するシナリオづくりは大都市圏の課題となっている。

(特集担当編集委員 鎌田一夫)

都市郊外の生命力――農と共生する都市・耕す空間のアメニティ 高野 公男

郊外地域の新たな展開――東京郊外に寄せて 吉田 清明

旧玉川村の人びととその暮らし――記憶の中の郊外・その形成過程と展望 新井 英明

郊外地のまちづくり――埼玉県小川町見聞活動記 若山  徹

公団賃貸住宅のある風景 若林 祥文

都市計画事業により開発された郊外分譲団地建替の背景 田頭 脩宏

郊外居住のデザイン 山田 正司

郊外居住のクォリティ 鎌田  一夫

郊外像の変貌と住環境の再編 鈴木  貢

■連載

《忙中閑》 手におえない情報化社会 丸谷 博男

《建築運動史31》 建築運動史から見た職能議論 本多 昭一

《主張》 「マイナスからプラスへ」同時多発テロ事件から   平本 重徳

《家具とインテリアの近代4》和洋折衷の明治宮殿 中村 圭介

《イタリアの都市と空間4》都市の顔  松岡 宏吉

《ワーク&ワーク新建60》F邸  見浦 泰治

水野 久枝

《面白かった本・気になる本》

秋山哲男『住民参加のみちづくり バリアフリーを目ざした湘南台の実践から』(学芸出版社)

陣内秀信『イタリア 都市と建築を読む』(講談社+α文庫)

《ひろば》 全国幹事会報告01年9月15日~16日

新建築家技術者集団第23回全国大会議事日程

2001年10月号(No.291)

■特集■共同作業所の計画を考える

 本特集では、障害者が生涯自立して生活できるための生産施設(共同作業所等)がどのような状況になっているのかをテーマにした。

 障害者のおかれている空間は、安全性、快適性、発達保障という視点からみて、まだまだ環境整備が十分でない面がある。障害者が生産に係わる施設は主に共同作業所であるが、認可施設と無認可施設があり、無認可施設の労働環境は快適とは言い難い状況である。障害者が労働に携わり、障害者自身が発達していくためには、障害者の目線に合わせた施設空間環境と施設運営整備が求められる。

 障害者が施設に何を求めているのか、それに携わる運営はどのようにしていったらよいのか、施設を計画する時の設計者の視点は何が求められるのかを、各論考から探っていきたい。

(特集担当編集委員 進士善啓)

障害者の発達保障と建築設計

――施設づくりから場づくりへ 高橋 博久

無認可作業所問題とこれからの障害者福祉施設 福永 英司

リハビリテーションとノーマライゼーションの施設づくりを

――さつき福祉会25年の運動の経験

木津ひとみ

障害者施設計画の留意点と課題 内山  進

「大阪熊取町の共同作業所」について 伴  年晶

「わかくさ南障害者作業所」の計画 深津 保雄

「麦の郷」の“放っとけやん”施設づくり 杉山 誠一

■連載

《忙中閑》 自宅介護から地域介護へ 丸谷 博男

《建築運動史30》 80年代の状況と「新建」 本多 昭一

《主張》 ゼセッション建築とこれからの建築デザイン 竹山 清明

《家具とインテリアの近代3》 鹿鳴館の竹塗の椅子 中村 圭介

《イタリアの都市と空間3》 象徴空間としての広場 松岡 宏吉

《ワーク&ワーク新建59》 街角ふれあいビル 横田都志子

《面白かった本・気になる本》

  延藤安弘『「まち育て」を育む――対話と協同のデザイン』(東京大学出版会)

  尾鍋昭彦『町並みと建築』(みずほ出版)

《ひろば》 爽やかな感動 建築とまちづくりセミナーin妙高/拡大編集委員会開催/全国幹事会開かれる/ヨーロッパ近代建築を巡るツアー1ご案内

新建憲章(案)に対して寄せられた意見

 

2001年8/9月号(No.290)

■特集■中部地域の大型公共工事を問う

  「今、長野県がおもしろい」といわれている。うわさの県知事の誕生が何かと物議をかもしていることもあるが、その中の「脱ダム宣言」は公共事業の今後のありようを問うている点で注目されている。

 社会資本として蓄積される公共投資、公共事業は、これからの社会の成長と充実のためには必要なことである。しかし、それはその時代の政治、経済、文化の水準とバランスの取れたものであることが絶対に必要である。そうでない場合は、地域住民との間にさまざまな歪みが生じることになる。

 バブル経済崩壊後のまったく出口の見えない不況で、国民の生活は経済的にも精神的にも疲弊しきっているが、政府の政策はあいも変わらず「景気の浮揚は建設関連の大型公共事業投資」の一本やりで、今はまったくのムダとしかいいようのないものが多い。そして、それは国全体の問題に留まらず、地方自治体の自主的な成長をも困難にし、財政を破綻寸前の状況に追い込んでいる。その結果、地域住民のさまざまな分野での生活が圧迫されることになり、不況の中で二重三重の苦しみとなっている。

 今回の特集では、「愛知万博と海上の森」「中部国際空港」「長良川河口堰」「静岡空港建設」など中部地域の大型公共工事の問題を取り上げ、地域住民との間でどんなことが問題になっているのか、どんな困難をもたらしているのか、どんな問題が今後予想されるのかを指摘し、これらのプロジェクトが住民の望む公共事業といかにかけ離れているかを明らかにしたい。そして、何よりもその地域住民がより豊かになるための二一世紀の地域計画はどうあるべきかを、生活者の立場、視点から探ってみたい。

(特集担当編集委員 細野良三)

愛知県の大規模開発の現状と問題 中川 武夫

稼働から六年

――長良川河口堰を検証する 西澤 信義

長良川河口堰のその後

藤吉 勝弘

中部国際空港は必要か

――ムダと環境破壊の大型プロジェクト 加藤 謙次

海上の森を守る運動 宇佐見美智代

迷走する愛知万博 古田 豊彦

本当に必要なのか「静岡空港」 石間  均

中部地域からの告発

──21世紀の環境民主主義 片方 信也

■連載

《忙中閑》 二番茶摘 丸谷 博男

《建築運動史29》 70年代と「新建」と私 本多 昭一

《研究室・研究所現場レポート》 年のくらし、すまい、まちづくりの研究機関(都市整備基盤公団総合研究所) 横堀  肇

《主張》 不況の中の「技術の荒廃」に思う 高橋 偉之

《家具とインテリアの近代2》 明治の住まい 中村 圭介

《イタリアの都市と空間2》 ローマの都市改造 松岡 宏吉

《ワーク&ワーク新建56》 吉田整形外科病院&リハビリ棟 大石 治孝

《面白かった本・気になる本》

  世古一穂『協働のデザイン――パートナーシップを拓く仕組みづくり、人づくり』(学芸出版社)

  湯川利和『まもりやすい集合住宅――計画とリニューアルの処方箋』(学芸出版社)

《ひろば》 拡大全国常任幹事会報告(01/7/14-15)/新建かごしま近況/札幌にて/第5次「憲章」案がまとまりました/関西ブロック企画・建築系の学生さん達に建築とまちづくりの展望を語る企画(続報)/ヨーロッパ近代建築を巡るツアー1ご案内/京都支部例会開かれる

 

2001年7月号(No.289)

■特集■高齢者が住まうかたち

 四、五〇代にようやく「我が家」を建て、住宅ローンの二〇年払いがこれもようやく終わろうとする時、こどもたちは家から消え、広い家にぽつんと夫婦だけが残る。運が悪ければ、どちらか一人だけが残っている現実となる。

 老境に入った時、改めて自分の人生を目の当たりにする。フウーっと漏れる溜息にもためらいがある。

 さて、これだけが老後の現実というわけではないが、現実の老後にはもっともっと複雑な人間関係があり、しがらみがある。そして見えない未来に対しての大きな不安がある。

 私たち建築設計を業としているものは、仕事の中でこの現実を受け止め、生活設計にまで踏み込んで、暮らし方とその器を設計することが多い。最近では自分自信の老後も現実化している。ついこの間までは、老後の夢を語っていた。しかし最近では、老後の健康と生活をどのように描いていくかの関心の方が大きくなってきている。

 ここで改めて、「老後の暮らし方・ライフスタイル」と「家・住まい」との関係を概観するとともに、さまざまな真実に踏み込んでみようと思う。

(特集担当編集委員 丸谷博男)

老後とすまい、その現実 園田眞理子

震災復興公営コレクティブハウジング「ふれあい住宅」 石東 直子

シニアハウスの実像

高橋 英與

福祉と暮らし、そして住まい

――地域で暮らす 大熊  明

田舎暮らしで人生設計を実現 三宅 由紀

雲あけて杏里をわたる今朝の鐘

――グループハウス漆屋 漆原 三男

安藤 良子

岡村 光枝

佐藤 正秋

佐藤  和

老後を生きるための己の道さがし

──夢から要介護まで、そして死へ 丸谷 博男

■連載

《忙中閑》 産地だからこそ新しい 丸谷 博男

《建築運動史28》 70年代初頭 新建築家技術者集団 支部の結成と活動の発展 本多 昭一

《主張》 「木と森林の再生」に向けて 加瀬澤文芳

《家具とインテリアの近代1》 中村 圭介

《イタリアの都市と空間1》 ローマの都市空間 松岡 宏吉

《ワーク&ワーク新建56》 土間のある家 足助町S邸 河合 定泉

《面白かった本・気になる本》

  梶浦恒男『新世紀のマンション居住』(彰国社)

  (財)世田谷区都市整備公社まちづくりセンター編『森をつくる住まいづくり』(世田谷区都市整備公社まちづくりセンター)

《ひろば》 全国常任幹事会報告(01/5/26-27)/第22回大会決定の会員・読者拡大目標達成への取り組みのお願い/欠陥住宅東北ネット結成/品確法学習会を開催/関西ブロック企画 建築系の学生さん達に建築とまちづくりの展望を語る/増田先生を迎えて

新建憲章(案)に対して寄せられた意見 規約・綱領改訂検討委員会

2001年6月号(No.288)

■特集■サステイナブルランドスケープ

 地形、気候、生態系などの自然環境(土地性)を基盤とするランドスケープは、同時に居住や生産など人間の営為による自然の変造や人工物が付加されたものでもある。とりわけ後者は時代とともに変化し蓄積されるので、ランドスケープは土地性プラスそこに加えられる人間の営みや人工物、自然自身による転位変遷の総和と言うことができるだろう。伝統的に言われてきた作意の下の「造園」だとかその現代なスタイルとしての「景観創造」、あるいは制御手法としての「緑地工学」などという解釈に納まりきるものではない。

 近代以前においては、現代の生産技術の登場以前という制約があり、また共同体も人びとへの求心力を保ち得ていたことで、ランドスケープは個々の土地から乖離することなく、共同体を構成する人々に共有の風景心象たりえた。しかし近代以降、生産技術(とそれを操作する資本)は地域的な共同体ひいては国家さえ飛び越えて発展し、時代を支えた近代主義とその造形は高次に抽象的で幾何学的な形態を追求することになる。個々人の生活が多様化し共通の経験が減少してきたこの時点において、人工物ばかりが顕在化して土地性は後景に追いやられ、ランドスケープは人々が自然に共有する風景と言えるものではなくなってしまった。

 しかしながら、それでもランドスケープは土地性から脱却することなどはできない。例えば窓の上に庇ののる建物(陽射し)や商店街に架かるアーケード(降雨)、河川沿いの堤防(氾濫)や坂の途中から現れる地下鉄(地形)など、まったく人工的かに見える日常の空間風景も土地性と無縁でいるわけではないし、それらは生活時間の経過とともになじんだものになっていく。

 一見混沌とした現代ランドスケープの中に潜む基盤としての土地性を発見し、人間の営為、人々の生活とともにあり続けるサステイナブルな可能性を見いだしたい。

(特集担当編集委員 鎌田一夫・林工)

ダイバアシティ・ランドスケープ

――生物としての人間と自然のための環境計画

進士五十八

地域に根ざすランドスケープの展望

――地形に宿る日本の記録を見直そう 浅井 義泰

住宅開発に見る生活空間としてのランドスケープ 松岡 宏吉

市民参加でつくる地域景観 関谷 真一

湖における環境復元、水辺の風景の再構 中村 圭吾

■連載

《忙中閑》 政治の混乱と地域 丸谷 博男

《建築運動史27》 19年ぶりの全国組織 新建築家技術者集団の結成 本多 昭一

《大学研究室・教育現場レポート》 火災と消防防火研究のナショナルセンター(消防研究所) 関沢  愛

《主張》 「木と森林の再生」建築とまちづくりセミナー21in妙高の成功を! 大橋 周二

《世界の集合住宅見聞録15(最終回)》 ルオホラハティ 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き15(最終回)》 清雅堂のなまこ壁 木下 龍郎

《ワーク&ワーク新建56》 みつばち保育園新築工事 杉谷久美子

《面白かった本・気になる本》

  バリアフリーデザイン研究会編『バリアフリーが街を変える――市民がつくる快適まちづくり』(学芸出版社)

  藤森照信『建築探偵、本を伐る』(晶文社)

《ひろば》 震災研究センターシンポの鳥取県知事講演で大きな感銘/千葉支部の近況/2001年度新建神奈川支部総会報告/(仮称)「欠陥住宅関東ネット」設立へ向けて

2001年5月号(No.287)

■特集■人々と共有する建築デザイン論

 現代の我が国の建築デザイン(計画・造形)およびその理論は建設者の立場に偏ったものであると言って、そう大きな間違いではない。それが混乱した醜いまちや住環境の悪化の原因となり、使いにくい施設や欠陥の多い住宅を生み出すもととなっている。この問題を改善し、質の高い建築・住宅・まちづくりを進めていくためには、まず、よって立つ理論的展望・根拠をはっきりさせることが出発点になる。今後の質の高い実践を導くことができ、多くの市民や専門家が合意できる高水準で民主的な建築やまちづくりに関する理論の構築の方向性を探りたい。

(特集担当編集委員 竹山清明)

市民と共有する建築論を考える

竹山 清明

様式論のスタイルをめぐって 大島 哲蔵

地域に根ざす建築デザインの方向 三沢  浩

「地域」で建築を構想するデザイン 三井所清典

住み手と造り手の協同による個性の表現 田中 恒子

近代建築と目利き 林   工

■連載

《忙中閑》 愚痴から出発 丸谷 博男

《建築運動史26》 仮称集団の分裂から新建築技術者集団の結成へ 本多 昭一

《主張》 新たなマンションラッシュに思う 久永 雅敏

《世界の集合住宅見聞録14》 旧東ドイツPC工法団地の再生 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き14》 滋賀県神崎郡五個荘町金堂 木下 龍郎

《ワーク&ワーク新建55》 区画整理事業によるまちづくり 吉田 清明

《面白かった本・気になる本》

  西村幸夫『西村幸夫 都市論ノート──景観・まちづくり・都市デザイン』(鹿島出版会)

  佐藤嘉一郎・佐藤ひろゆき『土壁・左官の仕事と技術』(学芸出版社)

《ひろば》 東西幹事会報告/建築とまちづくりセミナー21in妙高/連続講演会住まいの原点を問う2001 吉田桂二と考える「日本人らしい生活空間」/「欠陥住宅東北ネット」設立に向けて/01年京都支部企画から

2001年4月号(No.286)

■特集■商店街活性化と三つのまちづくり法

 かつては中心市街地イコール商店街として、その活性化が単独でとりあげられた。その文脈での「大店法」は、地元対大規模外部資本という図式によっていた。しかし今は、大型店の規制が地域の商業力を低下させたり、逆にその受け入れが地域商業を全国的な景気変動の波にのせてしまったり、単純な図式ではとらえきれない現実がはっきりしてきた。また、その後の「大店法」改正による規制緩和は、逆に郊外に大型店をあつめて中心市街地の衰退に拍車をかけている。限られた都市では現在でも巨大資本による再開発がおこなわれているが、福岡など一部を除いてとても成功しているとはいえない。再開発という手法そのものが疲弊している。

 しかし、その中でもいくつかの新しい取り組みが始まっている。

 自治体が新たな「大店立地法」と「中心市街地活性化法」「改正都市計画法」を複合して「まちづくり三法」と位置づけていこうとする施策では、地方分権のまちづくりにおける公共の可能性が試されている。商店街活性化をまちづくり条例という規制色の強い方法のなかで位置づけ、地域のポテンシャルを正しく評価し、ゆるやかに再生をはかろうとする動きも出てきた。

 再生の主体も従来の商店街や商業行政から、外部資本はもとより、NPO、公共全般、地域住民に広がり、福祉などとの協働も試みられている。もちろん課題は多く、試行錯誤の段階にやっとたどりついたところだろう。

 今回の特集では、中心市街地の再生をまちづくりとして展開するこれからの方法を見つけだすために、どのような可能性が検討されつつあるのかを、「まちづくり三法」や「まちづくり条例」などの面から見ていきたい。

(特集担当編集委員 大崎元・三沢浩)

まちづくり三法の施行後、街はどうかわりつつあるのか

野口 和雄

中心市街地の商店街活性化 高橋志保彦

商店街活性化の中での公共空間 中野 恒明

これからの商店街づくり

 ――公共、外部資本、地元が錯綜する地場の可能性を引き出すこれからの手法 石田 綽男

街づくり三法時代におけるコンサルタントの役割 小宮 和一

駅がショッピングセンターに変わるとき

 ――大店立地法の適用外ではなかった 三沢  浩

黒壁の成功 丸谷 博男

■連載

《忙中閑》 ITが地方を変える 丸谷 博男

《建築運動史25》 地域的運動から全国組織へ 本多 昭一

《主張》 新建をひと回り大きくして第23回全国大会を迎えよう 今村 彰宏

《世界の集合住宅見聞録13》 フンデルトヴァッサーハウス 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き13》 赤玉神教丸・有川薬局 木下 龍郎

《ワーク&ワーク新建54》 民間優良建築物等整備事業の取り組み 市川 文明

《面白かった本・気になる本》

  脇本祐一『街が動いた――ベンチャー市民の闘い』(学芸出版社)

  簑原敬・河合良樹・今枝忠彦『街は、要る――中心市街地活性化とは何か』(学芸出版社)

  荒井春男他『図解 軸組木造住宅のしくみと施工』(東洋書店)

《ひろば》 神奈川支部より/21世紀 新建富山によせて 支部幹事の抱負/地方におけるセミナー開催準備の「戯言」/愛知万博の問題と課題/松井宏方「描・写」展を見て/西全国幹事会での綱領改定ついて出された意見の速報

2001年2/3月号(No.285)

■特集■介護保険と住まい

 介護保険がスタートしてからすでに1年近くが経過した。

 この保険は「高齢者の介護を社会全体で支え、利用者の選択によりサービスが受けられる仕組み」として創設されたが、制度そのものが利用者に分かりにくい、収入の少ない高齢者にとって介護サービス費用の一割負担が大きい、必要なサービスが十分に供給されていない、利用可能なサービスが十分利用されていない、など多くの問題も生じている。

 住宅改善に関して経験の少ないケアマネジャーや住宅事業者の参入等により、これまで各地域で建築、福祉や医療の専門家等の連携などによって生み出されてきた住宅改善ネットワークなどとは性格を異にした、「市場性」が重視された新たな「産業」としての住宅改善システムが生じてきている。また、介護保険の導入に伴い住宅改善にかかわる助成制度が後退した自治体も少なくない。

 介護保険は、福祉施設や高齢者住宅の利用形態、その在り方にも大きな影響を与えている。

 今特集では、高齢者や障害者が安心して住み続けられるための住宅改善の必要性、福祉政策と住宅施策の連携の必要性、高齢者の居住にかかわる建築技術者の役割と他分野の専門家との連携の必要性といった視点から、「介護保険と住まい」の問題について検証する。

(特集担当編集委員 鈴木晋)

「介護保険」問題が問いかけるのは21世紀高齢社会のあり方

――介護保険制度の仕組みと当面する課題

矢部 広明

◆インタビュー◆ケアマネジャーに聞く――介護保険の現状と住宅改修の方向性 菊地 泰子

三村 尚代

原   海

岩瀬 和子

山本ヒカル

原田 愛子

介護保険制度の前提としての居住政策 鈴木 晃

介護保険と建築技術者 大竹 司人

介護保険と住居改善 岩瀬 昌照

岩瀬 和子

原田 愛子

住宅事業者として介護保険を迎えて 年森 隆広

東京都町田市に見る介護保険施行後の住宅改修助成制度および建築技術者の関わりについて 髙本 明生

利用者に喜ばれる高齢者施設づくり 永橋 爲成

■連載

《忙中閑》 新世紀はIT? 丸谷 博男

《建築運動史24》 60年代に全国組織が再建されなかった事情(再論) 本多 昭一

《主張》 日常業務として新建運動の前進を 久守 一敏

《世界の集合住宅見聞録12》 ベルリンIBA 87(その2) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き12》 醤油屋喜代治商店と居醒の清水 木下 龍郎

《ワーク&ワーク新建53》 「森と住まいを結ぶ」取り組み 相川  明

《面白かった本・気になる本》

  広瀬鎌二『大廈なる――重源・東大寺再建物語』(彰国社)

  石部正志他『奈良世界遺産と住民運動』(新日本出版社)

《ひろば》 全国常任幹事会報告/全国幹事会による綱領改定案(新建憲章)が決定/地方におけるセミナー開催準備の戯言/愛知万博への試案を提示/新建設立30周年出版事業

2001年1月号(No.284)

■特集■20+1世紀へのメッセージ――語りつぐ20世紀のエポック

 20世紀はこれまでの世紀の中で最も激しく変化した時代であると思える。

 世紀初頭は、コンクリートと鉄の建築が出現し始めたときであり、技術が新しいデザインを切り拓いていく姿を目の当たりにすることができた。そして資本主義経済の発展が巨大な都市を世界中に造り出していった。

 一方では、何百年という歴史の積み重ねによってつくられてきた地域・地方が、姿を失っていくときでもあった。地方の過疎化、都市の過密化という現象は今も続いている。

 そして20世紀の後半には、生産から情報に至るまで、経済の基盤と生活の基盤を大きく変化させる強烈な動き――情報化――が出現した。それこそ人知を超えた社会革命ともいえる動きである。その結果、流通から生産、販売まで、それまで資本主義経済によって培われてきた構造は、一挙に変革された。また、人々の生活においても携帯電話の端末がパーソナルユースとなり、同時に個人レベルでのコンピューターの利用が急激に普及した。誰も予測しなかった速度で社会変化が進み、すでに過去とは違った次の時代を迎えてしまった感さえある。

 しかしその一方では、災害は繰り返され、民族間の戦争も激しさを増してきている。また、旧中心市街地の衰退と高齢社会化、地方のますますの空洞化など、解決されるどころかかえって深刻さを増している状況もある。ますます増え続けるゴミとその処理問題など、生活レベルでの諸課題が手つかずにいる状況もあり、コンピューターの進歩に見る未来への予感と、それに反して非常に立ち遅れた人間の基本条件、環境づくりへの努力の欠如とが大きな矛盾として、21世紀への不安を伝えているように思わないわけにはいかない。 

 今号では、20世紀の印象的な事件、プロジェクト、自治体の動き、あるいは住民活動など、20世紀からの教訓を21世紀につながるものとして取り上げた。新世紀の幕開け、この特集が新たな一歩を進めるための契機となり、また次世代へのメッセージとなることを期待する。

(編集委員長 丸谷博男)

地域に根ざす建築デザインの展望 三沢  浩

生活を支える施設、地域づくり 永橋 爲成

「車社会」から「歩行社会」へ

――新モールのまちづくり 松井 昭光

新世紀のために 広瀬 鎌二

意匠と構造 または 視覚と聴覚 清瀬  永

歴史を通して何が見えるか 何のために何をしてきたか 大石 治孝

古墳時代からの借景

――開戦日の思い出 中村 圭介

望まれる公共建築 増渕 昌利

密集事業の到達点

――衰退した住宅市街地の自律更新 黒崎 羊二

21世紀の建築設計

――現場の発想をデザインに活かす仕組み 本多 昭一

人権としての居住の実現へ 早川 和男

建築協定、管理組合、コーポラティブ

――共同のまちづくりへ向けて 石田 頼房

■連載

《忙中閑》 私の町内活動 加藤 錦弥

《建築運動史23》 60年代前半――なぜこの時期に建築運動が再起しなかったのか 本多 昭一

《主張》 「協同」の理念の実践で21世紀の展望を 萩原 正道

《世界の集合住宅見聞録11》 ベルリンIBA 87(その1) 鎌田 一夫

《歴史・まち並み・見て歩き11》 十王村の水 木下 龍郎

《ワーク&ワーク新建52》 荒沢自然館 渋谷  尚

《面白かった本・気になる本》

  片木篤他編著『近代日本の郊外住宅地』(鹿島出版会)

  宗田好史『にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり』(学芸出版社)

新建設立30周年に至る10年間の活動・略年表 新建全国事務局+『建築とまちづくり』編集局

《ひろば》 群馬・埼玉合同実践報告会/第7回全国建設研究集会・交流会に参加して/芋焼酎を傾けながら/三都フォーラム鎌倉集会の到達の意義/北海道で見る夢/地方におけるセミナー開催準備の独り言