新建東京支部設立50周年記念企画として「建築とまちづくり展」を2021年7月3日・4日に開催しました。第2弾として10月9日(土)・16日(土)13時~16時に「規制緩和と乱立する大規模開発を問う」というテーマで、オンラインで東京が抱えている問題について連続講座をおこないました。
連続講座の参加は、9日46名、16日48名、全体で59名の参加者のうち新建会員は28名、会員外が31名でした。日本科学者会議、東京自治問題研究所、石神井まちづくり談話会、大山の暮らしとにぎわいを守る会、区議会議員の方など、多彩な顔ぶれの参加がありました。本企画の詳細は「建まち」誌12月号に特集されます。
第1回 10 月 9 日(土)
司会進行の鎌田一夫さんから連続講座の立ち位置と成り立ちを説明、その後各講師のプロフィールが紹介されました。
テーマ1は「東京の大規模開発の現状―都市計画緩和から特区制度による緩和まで、近年の大規模開発を概観する―」と題して若山徹さんから東京で進められている大規模再開発の実態を解説しました。
テーマ2は「開発によって引き起こされた都市空間の変容」を三名の方から、それぞれの立場で報告がありました。
初めに「次々に建替えられる建築」と題して、小林良雄さんから、建築は人、社会、文化にとっての記憶装置であるという視点から、21世紀に入ってから40年足らずで更新されていく建築や、戦前戦後の有名な建築の建て替えについての報告をされました。そして本来社会的に建築はどうあるべきかという理念を話されました。
次に小畑晴治さんからは「巨大開発に隣接したまちの取組み“新宿研究会”」と題して、実際に関われた新宿東口地域の巨大地域開発に対抗する地元地権者や関係者がおこなっていることなど、これからの地域開発の在り方を模索する興味深い取り組みを紹介して頂きました。
三番目に、日ごろ建築を通じて“省エネ”ではなく“省資源”を訴えている金田正夫さんから「大規模過剰建設がもたらす環境破壊」と題して、大規模な建物の建て替えがいかに環境を破壊し、資源を無駄にしているか、建物を運営する為のエネルギー効率だけではなく、解体し再建するための総エネルギーが大きなものか、その数値化を交えてお話しでした。
汐留の再開発など実際の大規模開発を題材にして、再開発・再建築が現代社会にとって多大な問題を抱えていることに、未来に警鐘を鳴らす、通奏低音のように響く共通テーマ性をこの四つの講座から感じました。
第 2 回 10 月 16 日(土)
テーマ3は遠藤哲人さんが「再開発に直面する住民の様々な現状―住民からの課題に専門家はどう応えるか」と題して、「都市再生」という概念のこれまでの流れとその変容、市民・住民からみた都市開発の在り方、そしてその実態について実例を通して解説していただき、それらをもとにこれからの市民自治のまちづくりの可能性について伺いました。
テーマ4は岩見良太郎さんが「なぜ都市計画の規制緩和がまかり通るのか―その論理・背景・矛盾」を大規模開発の構造的背景を理論的にわかりやすく解説されました。
板橋区に在住されている方から「住宅と小規模商店街に突如として現れたタワーマンション型再開発計画の見直しを求めて住民運動を展開しています。今日のお話はたいへん参考になりました。」という感想がありました。質疑などを通して、講座後も講師とのやり取りが続いています。
今回の講座が、これからの都市再生、都市開発、都市居住を考える上で大切な一歩になりました。今後こうした活動を通して、社会インフラとしての形態を考え意見交換し共有していくことが大切であると思いました。
支部50周年の節目に「日本近代建築100年、新建運動50年 今、伝えるメッセージ」を発信し、会員の仕事を通しての報告、歴史の中で向き合ってきた運動、過密・過剰な経済活動偏重の都市化の実態などを学びました。住む人使う人の立場に立って、広く市民と共に地域に根差した活動をすることが、一層求められていることを共有できた50周年の取り組みになりました。(文責・柳澤)