230119神宮外苑再開発に対する『見解と提案』説明と意見交換

東京問題研究会

1月19日(木)に開催しました。
当日の資料
230119若山徹氏-「見解と提案」と私たちの取組0123修正
230119岩見良太郎氏-外苑報告会(配布資料)
230119原科幸彦氏-神宮外苑・危機的局面のアセス
230119糸長浩司氏-脱炭素社会推進会議第9回シンポジウム-

9:00~19:03 開会あいさつ(会の趣旨、発言・質問への対応)
石原重治(東京支部 東京問題研究会)
「見解と提案」の説明など
・19:05~19:30 「見解と提案」の内容説明と私たちの取組みについて
若山徹 (東京支部 東京問題研究会)
・19:33~19:50 都市計画論からのコメント 岩見良太郎(東京支部/埼玉大学名誉教授)
・19:50~20:05 都市空間論からのコメント 藤本昌也(東京支部/日本建築士会連合会名誉会長)
・20:05~21:05 「意見交換」(発言順)
石川幹子氏 : 中央大学研究開発機構教授 (環境デザイン)
大方潤一郎氏: 明治大学経営学部特任教授 (都市計画)
原科幸彦氏 : 千葉商科大学学長 (環境アセスメント)
糸長浩司氏 : 日本大学生物資源科学部特任教授 (建築計画)
角井典子氏 : 有志ネット(最近の取り組み状況など)
・21:05~21:08  まとめ 若山徹(東京支部 東京問題研究会)

神宮外苑再開発に対する『見解と提案』」説明と意見交換会
(記録概要)
2023年1月19日(木) 19時~21時 オンライン開催 参加者49人

1)説明と意見交換会の目的
新建東京支部は、2022年3月3日に幹事会名で「神宮外苑の大規模再開発の再考を求める」声明を出し、4月15日には、環境影響評価書案に係る見解書に対する「都民の意見を聴く会」で、支部会員8名が意見を述べました。7月8日、「神宮外苑再開発に対する見解と神宮の杜の歴史と文化を継承する再生整備の提案」(「見解と提案」)をまとめ、記者会見で公表し、広く都民に知らせる取り組みを行ってきました。また、神宮外苑有志ネットでは、市民運動や様々な専門家との交流と連携を深めています。
今回は、「見解と提案」の内容説明とともに、昨今の再開発の事態の状況を見据えながら、これからの対策検討も含めた意見交換会として開催しました。
以下、発言等の概要を報告します。※印のあるものは、東京支部HPに資料をリンクしています。

2)「見解と提案」の内容説明と私たちの取組みについて
若山 徹 (東京支部/東京問題研究会)※
創建時、明治神宮(内苑)と外苑をつなぐ幅員120m公園道路が出来る予定だったが、公園道路は現在一部は高速道路になっている。一方、「公衆の優遊」を旨 とする外苑は、絵画館前は芝生広場、いちょう並木からの眺望を考慮した近代的公園であった。その後、野球場、ラグビー場などが設けられた。
1926(大正15)年、公園道路が日本で初めて「風致地区」に指定された。神宮外苑は1951(昭和26)年に風致地区に指定され、その後、地域区分のS地域に区分され、公共的な街づくりの手法の適用を受けた地区として規制が緩和され、商業地域が順次拡大している。
2013(平成15年)12月 「公園まちつくり制度」創設により、都市計画公園区域としてすでに供用しているラグビー場を含む区域を未供用として都市計画公園区域を一部廃止し、2棟の超高層ビルが計画されている。環境影響評価審議会では、いちょう並木の保存等について、事業者の検討不足、資料未提出等の不備により、従来答申で終了する審議会が、継続して関与する異例の措置となっている。
新建は、神宮外苑創建時の近代的公園としての設計思想を受け継ぎ、絵画館前広場は芝生広場に再生し、秩父宮ラグビー場は、耐震補強・改修を行い、神宮野球場、伊藤忠ビルは現状改修にとどめて、巨大な超高層ビルは建てないこと、都民参加の仕組みをつくり計画を見直すために、東京都が積極的に役割を果たすべきことを提案している。
〇都市計画論からのコメント 岩見良太郎 (埼玉大学名誉教授/東京支部)
神宮外苑再開発では「不条理」が多々、まかりとおろうとしているが、その背景には、都市再生の下で著しく進行している、「都市計画の公共性」の変質がある。「市民の公共の福祉としての公共性」から 「企業の利益増進としての公共性」へと変質である。都市計画制度は、企業利益優先の方向での改編が重ねられ、運用がなされている。神宮外苑再開発で活用されている、再開発等促進区、公園まちづくり制度、そして個人施行市街地再開発制度は、その最たるものである。再開発等促進区は、工場跡地などの高度利用を目指す都市計画制度であるが、それを都市計画公園に適用するというのは異常である。個人施行市街地再開発は小規模の再開発を想定した手法であるが、17haもの大規模再開発に適用するのは制度趣旨に反する。また、都民の目から逃れるため、非都市計画事業として実施しようとしている点も許されない。
公園まちづくりは、東京都の「都市づくりのグランドデザイン」で最重視されている、センター・コア・エリア内にある公園の土地利用の高度化を目指すものである。公園まちづくりの背後には、小池都政の都市像がひかえているのである。神宮外苑再開発批判は、東京都市像の批判まで行きつかなければならない。
〇都市空間論からのコメント
藤本昌也(日本建築士会連合会名誉会長/新建代表幹事)
神宮外苑再開発は、新国立競技場のコンペ案に対して建築三者共同声明で対応した時から動いていたが、高さ規制75mを50mに抑えるだけで、巨大なスケール感の議論は返り見られることなく進められてしまった。今回も同様、都市デザインの視点からの本質的議論が全くなされないままの都市計画である。
都市デザインは、空間価値論が必要不可欠なはずである。その場所(大地)の文化的価値(場所性)を生かした、都市計画が望まれるのである。建築は抑制的に”外部空間(地の空間)こそ最大の価値”というスタンスで都市空間を演出する都市計画である。
これから求められることは、多くの市民の納得である。空間論の議論は、難しい資料でするよりも、事業者案、提案者案、2案の模型を作って比較してすれば、一目瞭然。
私たちは、貴重な歴史ある”森”と”青空’を守り続けてきた諸先輩方の文化的営為をしっかりと引き継ぐべきであろう。

3)「意見交換」(意見の概要・発言順・敬称略)
① 石川幹子 : 中央大学研究開発機構教授 (環境デザイン)
なぜ神宮外苑を守りたいか、(明治神宮の造園技師である)折下吉延さんの影響。(神宮外苑は)世界の都市計画のエッセンスが詰まったところ。
神宮外苑再開発計画の環境影響評価書は、間違っているところがある。こうした虚構は許せない。
(ご自身が調査された膨大な資料を提示して説明)
② 大方潤一郎 : 明治大学経営学部特任教授 (都市計画)
事業者と東京都は、野球場等の収益施設の事業継続、費用負担なしに建替えることを主眼にしている。公園まちつくり制度を適用することは、だれが見てもおかしい。
企画提案書が出されていない(千代田区二番町も同様)。本来の再開発等促進区の考えから外れている。再開発地区計画制度の主旨は、(事業の)公開・評価が正当に行われることであるにもかかわらず、特区、促進地区が導入されてから、(計画が)強引になっている。
③ 原科幸彦 : 千葉商科大学学長 (環境アセスメント) ※
東京都環境審議会の議論は、8月段階は、しっかりチェックしてやることになっていたが、事業者が情報提供をしない、都が対応しない状態で、12月26日、突然、環境審議会が開催された。年末のしかも月曜日開催は前代未聞でひどいやり方である。環境アセスというのは、計画をよくするために活用し、本来は公開・縦覧されなければならない。事後調査で根系調査を行うこと自体がおかしい。事業期間が13年間もあるので、順番に工事が進む中で、計画変更の可能性はあるが、東京都知事がどう判断するかにかかっている。都市における公園は金儲けの場であってはならず、価値があるから公が守るべきもの。
④ 糸長浩司 : 日本大学生物資源科学部特任教授 (建築計画) ※
建築・都市関連団体で構成する脱炭素社会推進会議には、デべも事業者も入っている。脱炭素型の建築・都市制度への転換が必要だという認識はあるはず。(都市再開発の)意思決定も、閉鎖型の有識者審議会から市民ベースへと脱皮していく必要がある。
大規模都市開発の要因は、新自由主義型建築・都市計画制度にある。年金積立金管理法人(GPTH)等が行う投資先企業への監視を行うなど、やるべきことがある。
⑤ 神宮外苑有志ネット : 角井典子 (最近の取り組み状況など)
1/19日には、午前中に原科幸彦先生の都庁記者クラブでの緊急記者会見に参加し、その後都議会各会派を回ってきた。
イチョウ並木の保全の陳情の内容は、知事意見そのものであり、12月の都議会では全会派で「趣旨採択」となったが、12月26日の環境審議会総会では、8月の答申が覆された。知事の態度が問われることになる。1月11日から事業者による根系調査がいきなり始まり、18日時点ではすでに埋め戻されていた。超党派の国会議連とは情報共有し、連携している。

4)まとめ 若山徹 (東京支部/東京問題研究会)
今日は、市民、専門家のつながりが広がり、意見交換もできた。研究者や専門家が連携して共同声明を出すことも検討したい。元ラグビー日本代表平尾剛さん(秩父宮ラグビー場の現地改修を求めるオンライン署名を実施している)から自分も頑張る旨のメールがあった。

(文責:若山、石原)

外苑に超高層は似合わない-
「神宮外苑再開発に対する『見解と提案』」説明と意見交換会

-外苑に超高層は似合わない-
「神宮外苑再開発に対する『見解と提案』」の説明と意見交換会のご案内

新建築家技術者集団 東京支部ではこれまで神宮外苑再開発について「神宮外苑再開発に対する見解と神宮の杜の歴史と文化を継承する再生整備の提案」(以下「見解と提案」)としてまとめてまいりました。
この「見解と提案」についての内容説明を踏まえて、昨今の当再開発の事態の状況を見据えながら、今後の対策検討も含めた意見交換会を行うことといたしました。
みなさま奮ってご参加ください。

日時     1月19日(木) 19:00~21:00 (10分前から入室可)
開催方法   Zoomミーティング

内容
・若山徹   「見解と提案」の内容説明と取り組み経過報告
(東京支部 東京問題研究会)
・岩見良太郎  都市計画論からのコメント(埼玉大学名誉教授)
・藤本昌也   都市空間論からのコメント(建築家 日本建築士会連合会名誉会長)
・意見交換
当日質問は支部メールへ

Zoomミーティングに参加する
https://us02web.zoom.us/j/83283909992?pwd=SVJRTlprN0FHalBHMnFLVmw4YW12Zz09
ミーティングID: 832 8390 9992
パスコード: 516491

主催 新建築家技術者集団 東京支部

参考資料 支部ホームページに掲載
新建東京支部発行「見解と提案」
https://nu-ae.com/tokyo/20220710_plan/

「見解と提案―簡易パンフレット」
https://nu-ae.com/tokyo/2212-pamphlet/

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新建築家技術者集団 東京支部
〒162-0811 新宿区水道町2-8 長島ビル2階
TEL03-3260-9810  FAX 03-3260-9811
メール  shinken-tokyo@group.email.ne.jp
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