250421 建築士と生成AIと未来

日付:2025年4月21日/会場:新建事務局/講師:山口 達也

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はじめに:AIの時代に、私たちはどこへ向かうのでしょうか

2025年4月、「生成AIとは何か」というテーマで開催された講演会に参加いたしました。
登壇されたのは、新建大阪の山口達也さん。
自身の体験を交えながら、生成AIが建築業界にもたらす影響について話してもらい、その後、懇談しました。

単なる技術的な解説というよりは、「人間の仕事とは何か」という本質的な問いを私たちに投げかけるものでした。
生成AIの急速な進化が、私たちの働き方や生活そのものを大きく変えつつあります。
そしてその波は、“アナログ”と思われがちな建築の世界にも、確実に届いています。

建築は「暮らし」そのもの──「ワークアズライフ」の時代へ

山口さんはまず、建築という仕事の特異性について語られました。
建築士は、図面を描き、構造を考え、法規とにらめっこをしながら現場を走り回るという、非常に多様で実践的な仕事を担っています。

しかしそれ以上に大切なのは、建築が「人の暮らし」に直結しているという点です。
家族が集うリビング、子どもが育つ部屋、高齢者が安心して暮らせる空間など、建築とは生活そのものをデザインする行為なのです。

だからこそ、建築士という職業は単なる職能ではなく、「ワークアズライフ」──仕事と暮らしが一体化した生き方を体現しているのだと感じます。

生成AIとは何か──誰でも使える知的パートナー

生成AIとは、ChatGPTのように自然言語で命令を出すだけで、文章や画像、アイデアなどを生成してくれる人工知能のことです。
これまではAIを活用するためには、プログラミングや数学の専門知識が必要でした。
しかし現在では、誰でもプロンプト一つでAIを操作できる時代に突入しています。

建築分野においても、AIは設計業務の一部を補助する存在として活躍しはじめています。
設計のPDCAサイクルでいうところの「D=実行」の部分を担うようになってきており、AIは建築士の業務を加速させる強力なツールになりつつあります。

AIは使うほどに賢くなる──「餌付け」による進化

AIの大きな特徴は、使えば使うほど精度が高まることにあります。
Googleマップを例に取れば、最初は精度に難があったものの、ユーザーからの利用情報が蓄積されることで、今や生活インフラの一部となっています。

同様に、生成AIもまた「餌付け」によって日々進化しています。
私たちの指示(プロンプト)、修正の要求、再実行などの行動が、AIにとっての“学習データ”となり、ある閾値を超えると一気に性能が向上します。

つまり、私たち自身がAIを進化させる「教師」であり「育成者」でもあるとともに、私たちの知識は搾取されているわけです。

ホワイトカラーもマルコになる?──職業の転換点

講演の中では、「母を訪ねて三千里」の主人公マルコの話を引き合いに出されました。
産業革命時代、機械によって労働者の仕事が失われていったように、今はホワイトカラーの仕事がAIに取って代わられつつあるというのです。

建築士の仕事も例外ではありません。
企画、資料作成、提案書の作成、顧客対応──これらはすでにAIによってある程度自動化されています。

そして今後、より高精度なAIが登場することで、建築士という職業自体の定義が変わるかもしれないという危機感を感じざるを得ません。

経験値の塊だった建築士の「知」はAIに吸収されるのか?

建築士は、現場での失敗や成功を通して経験を積み、年齢とともに設計者としての勘やバランス感覚を養っていきます。しかし、もしこの“経験値”までもがAIに取り込まれるとしたら、どうなるのでしょうか?

過去の設計事例、使用素材、環境との相性、顧客満足度などの膨大なデータをAIが分析し、活用できるようになると、ベテラン建築士の“感覚”をも代替する存在になる可能性があります。

つまり、建築士の叡智が「データ」としてAIに飲み込まれてしまうのです。

「建築道楽」という生き方──人間にしかできない仕事

とはいえ、すべての建築士の役割が消えてしまうわけではありません。
「PDCAのP=計画」や「顧客との対応」は、人間にしかできない領域として残ると述べていました。

また、「建築道楽」とも呼べるような、趣味的・文化的な建築の楽しみ方も、今後は価値を増していくでしょう。
DIYリノベーション、エコビレッジづくり、シェアハウス設計など、地域とつながる建築活動にはAIには出せない“人間の温度”があります。

建築士の未来は、「手段」ではなく「目的」に価値を置く方向へと変わっていくのかもしれません。

ムーンショット計画──人類の幸福とテクノロジー

政府の主導する「ムーンショット計画」では、AI、ロボット、量子コンピュータなどのテクノロジーを活用し、
「人が身体・空間・時間の制約から解放された社会」を実現することが目指されています。
すごい内容が含まれていますので、ぜひ一度原文を御覧ください。

この内容は、裏読みすると、人造食、昆虫食、遺伝子生体培養、戦争のためのコンピュータ、そして人間1人に対して6体のアバターを持つことまでが含まれています。

その中には、建築士という職能も大きな転換を求められる未来が含まれています。
これまでのスケールを超えた、いや狂気に満ちた未来に対して、本来のヒューマンスケールを保つ「暮らし」の設計が、建築士の役割となのだと感じました。

おわりに──AI時代をどう生き、どう愉しむか

AIの進化によって、確かに私たちの仕事は変わっていきます。
しかし、それは決して「終わり」ではなく、新しい始まりでもあります。

建築士という仕事が、より“人間らしさ”や“創造性”を問われるようになり、
愉しみとしての建築、文化としての建築、共感を生み出す建築が求められていくことでしょう。

自分の手で未来をつくるという喜びを忘れずに、
生成AIと共に、ワークアズライフを生きる建築士としての在り方を、今こそ見つめ直すときに来ており、新建築家技術者集団の活動は更に重要度を増していると感じられました。

<chatGPTによる文字起こし>

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