260905レポート「まちづくり市民フォーラム」

支部企画

 9月5日(土)板橋区立グリーンホール2階ホールで「まちづくり市民フォーラム」を開催しました。昨年の「防災デー」に続いての企画となりました。
 参加者は72名、個人・団体の発表は16組、展示と資料配付は17組と会場は賑やかになりました。

16団体が5分ずつ報告――各地の運動を共有
 午前中のまちづくり運動交流会で13組、午後の意見交換会で3組が再開発やまちこわし、住環境、地域のまちづくりなど、さまざまな地域で取り組んでいる活動を紹介されました。
一つひとつの報告は5分間と短いものでしたが、地域によって抱えている問題は違っていても、「住民の声が十分に聞かれないまま計画が進められる」「ある日突然、都市計画が示される」「行政と民間事業者の合意が先行し、住民が後から対応を迫られる」といった共通する問題が浮かび上がりました。
参加者からは、「様々な地域のまちづくり運動を学ぶことができて有意義だった」「お互いの活動が見えてよかった」といった感想が寄せられました。互いの経験を知り、つながることの大切さを実感する交流会となりました。

再開発の仕組みと「誰のためのまちづくりか」
 岩見良太郎さんは、「ピッコロ・スクエア再開発と高島平再開発問題を考える」と題して講演しました。はじめに、都市再開発の仕組みを説明し、再開発事業がどのような採算構造で成り立っているのかを具体的な数字を示しながら解説しました。大山のピッコロ・スクエア再開発については、事業費が増加する一方で、補助金や保留床処分金などによって事業を支える構造を示し、再開発が進めば必ず地域や地権者に利益がもたらされるわけではないことを指摘しました。また、再開発が秘密裏に、小出しに進められ、一度決まると後戻りしにくくなる問題にも触れました。
 その一方で、徳島市西新町やさいたま市大宮東口など、住民の運動によって再開発の中止や都市計画決定の撤回につながった事例も紹介されました。
高島平については、「タワマンは誰が望んだのか」という問いを投げかけ、地区計画は本来、地域住民の声をもとにつくられるべきものだと強調しました。神戸市真野地区や世田谷区太子堂地区の事例から、住民自身が地域の将来を考え、話し合いながらまちをつくっていく「住民主体のまちづくり」の可能性を示しました。
 参加者から「人が中心にいるまちづくりを」「金優先の社会にうんざりしている」といった声が寄せられました。

まちを分断させないために
 続いて西本千尋さんは、「学びから始まる~私たちのまちづくり~」と題して、川越、大山、赤羽、松戸などでの経験を交えながら、「共同性」をキーワードにお話ししました。
 川越の町並み保存や商店街の活動などを紹介し、住民、商店街、専門家、自治体職員などが話し合い、新たな活動や仕組みをつくってきた過程を紹介しました。そこでは、まちの変化を一方的に受け入れるのではなく、「変化の仕方を自分たちで協議して決めたい」という住民の姿勢が重要な役割を果たしています。
 現在の「住民参加」については、制度上の参加の機会が広がっただけでは十分ではないと指摘しました。行政が用意した場に住民が参加し、意見を述べるだけでは、計画の核心部分に声が届かない場合があります。さらに、再開発がスピードアップすることで、住民同士が出会い、情報を共有し、「私たち」という関係をつくる時間そのものが失われてしまうという問題も提起されました。
 板橋区大山の住民の「まちを分断させない」という言葉を手がかりに、西本さんは、道路や建物ができるかどうかだけではなく、バラバラにされた住民の声をもう一度集め、その後も地域で暮らし続ける人々の関係をどう守るのかが重要だと話しました。
さらに、居住支援の経験から、住宅は単なる「箱」や「商品」ではなく、家族、福祉、都市をつなぐ生活の基盤であることを指摘し「住宅を得ることから、地域の主体になることへ」という視点を示しました。
 講演の最後に、住民から学んだこととして、「去った人、新しく来た人との関係を切らない」「変化の仕方を自分たちで協議して決める」「ハードが失われても、関係を終わらせない」などを挙げました。
参加者から「言葉から街を見るという新しい発想に驚いた」「住む人に寄り添ったまちづくりを実践する若い方がいることに希望を感じた」といった感想が寄せられました。

暮らしの時間と人のつながりを大切にするまちづくりへ
 二つの講演に共通していたのは、まちを建物や土地だけで捉えるのではなく、そこに暮らす人々の関係や、長い時間をかけて積み重ねられてきた暮らしを大切にするという視点です。
再開発では、事業の効率や経済性が優先されることで、住民の声や地域に蓄積された時間が置き去りにされることがあります。しかし、まちの価値は市場価格や大きな建物だけで決まるものではありません。そこで暮らし、働き、顔を合わせ、語り合ってきた人々の経験そのものが、かけがえのない地域の財産であることがわかりました。

マドリードとバルセロナから学ぶ――気候危機下のまちづくりと、市民がつくる都市
 午前の「まちづくり運動交流会」の最後に、私(山下千佳)から「マドリード&バルセロナ―気候危機下のまちづくり」について報告しました。
私は昨年の秋、マドリードとバルセロナを訪れました。今回の報告では、実際にまちを歩いて見てきたことをもとに、両都市が気候危機をはじめとする都市の課題に対して、どのようなまちづくりを進めているのかを紹介しました。
 マドリードでは、「壊してつくる」のではなく、「活かして更新する」という都市づくりが印象に残りました。例えば、歴史的なアトーチャ駅の旧駅舎を保存しながら新たな用途も付け加えて活用しています。マンサナレス川沿いの「マドリード・リオ」は、約10kmにわたる線状公園として整備され、かつて高速道路が走っていた場所を地下化し、その地上を大規模な公園や公共空間として再生しています。自然、レジャー、文化が融合する都市空間となっています。
 また、プラド通りでは車両交通を制限し、人を中心とした都市軸へと転換する取り組みが進められています。歴史的な建築や公園を残しながら、インフラや公共空間を組み替え、都市全体を一体的に考えていることが特徴的でした。
バルセロナでは、「道路を変えたのではなく、都市の価値観を変えた」という考え方が強く印象に残りました。その代表が「スーパーブロック」です。9つの街区を一つのまとまりとして捉え、外周の道路に車を集め、内部では車の通行を制限します。これまで車のために使われていた道路を、歩行者や自転車、子ども、高齢者などが過ごせる公共空間へと変えていきます。ベンチや植栽、遊び場、日陰などを設け、「移動するための道路」から「人が滞在する場所」へと道路の役割を変えていました。
 こうした取り組みの背景には、単なる交通対策だけではなく、市民・環境・民主主義を軸に都市を考えるという考え方があります。「行政が決める」から「市民がつくる」へ、「観光都市」から「住み続けられる都市」へ、「移動のための都市」から「滞在する都市」へ――。さらに、環境やエネルギー、ケアや包摂まで含めて都市政策を考えていることも紹介しました。
もちろん、スペインと日本では都市の成り立ちや制度、社会状況が異なります。海外の事例をそのまま日本に持ち込むことはできません。しかし、そこから学べるのは、「何をつくるか」だけではなく、「どんな暮らしを大切にする都市にするのか」という価値観からまちづくりを考えることではないかと思います。
 今回の報告について、参加者からは、「本来のまちづくりとは何かを考える良い機会になった」「市民が声を上げ、動くことが当たり前の社会にしていく必要がある」「日本の現実との違いに驚いた」といった感想が寄せられました。また、海外の事例を知ることで、日本のまちづくりについて改めて考えるきっかけになったという声もありました。

 岩見さんの「誰のためのまちづくりか」を問い、西本さんの人と人との関係や地域の「共同性」をどう守るのか、「誰がまちをつくるのか」という共通の問いでつながっていました。
アンケートでは、「いろいろな地域の活動を知ることができてよかった」という感想とともに、こうした活動を交流するだけでなく、今後は相談や連携につなげていく場が必要ではないかという意見も寄せられました。この声は、今後の新建の役割を考えるうえで、とても重要です。
 日々の暮らしの困りごとを相談でき、地域の人たちが抱えている問題を聞き、計画や制度を一緒に読み解き、必要な情報を提供し、専門的な立場から対案を考え、一つの地域の経験を別の地域にも伝え、地域を越えて学び合い、つながることを支える。そのような「市民のまちづくり運動をつなぐプラットフォーム」として、新建が役割を果たしていくことが求められているのではないでしょうか。
 今回のフォーラムは、その可能性を感じる場となりました。交流を一度きりで終わらせるのではなく、学び、相談し、つながり、そして一緒に行動できる関係へと発展させていくこと。それが、これからの新建のまちづくり運動の一つの方向になるのではないかと思いました。
 
 最後に東京支部の企画として、象地域設計の若手の会員が運営などを担ってくれました。地域で頑張っている方々の発表、展示などを通して、またお二人の講演を聞いて、学び、感じたことも多いと思います。いろいろな取組みを経験する中で、新建の活動を明日につなげていって欲しいです。
 スタッフで行った打ち上げは、準備の苦労を忘れて、楽しく爽快な時間になりました。
(山下千佳/新建東京支部幹事)

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