260725 若手設計者ダブル講演会

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大塚謙太郎 × 目黒悦子 — 「こどもとおとなの伴走者」

こどもとおとなの伴走者として


■ポイント

  • 2人の建築家が、完成作品の紹介だけでなく、挫折や転職、現場での迷いを含めて自身の歩みを語った講演である。
  • 大塚氏にとって、阪神・淡路大震災は「命を守るはずの建築とは何か」を考え、教育から建築へ進む転機となった。
  • 目黒氏は、幼少期の住環境の変化から、建物が家族関係や暮らしを変える力を実感した。
  • 保育園設計では、図面を描く前に、子どもや保育者の行動を現場で観察することが重視されている。
  • 安全性を高めるだけでは、子どもが失敗し、身体感覚を身につける機会まで失われる可能性がある。
  • 命や視力を失うような「ハザード」は排除しなければならないが、成長につながる小さな「リスク」は、保育者と相談しながら残す余地がある。
  • 子どもは、建具に指を挟む、障子を破る、生き物を強く握ってしまうといった経験から、物の性質や力加減を学んでいく。
  • 保育空間には、遊ぶ、休む、隠れる、移動するなど、子ども自身が居場所や行動を選べる自由が必要である。
  • キッチンを保育空間へ開くことで、調理師・保育者・子どもの関係が変わり、食育だけでなく職員間の連携も生まれる。
  • 住宅も保育園も、完成時が終点ではない。人の成長、加齢、職員不足、保育方針、定員の変化に応じて更新できることが重要である。
  • 設計者が最初から正解を持っているのではなく、施主や保育者と一緒に悩み、使われ方を見続ける姿勢そのものが設計である。
  • 若い設計者には、仕事だけに閉じず、遊び、旅、人との出会いを通じて視野を広げることの重要性が語られた。

■講演会要約

本講演会は、保育施設を専門とする大塚謙太郎氏と、住宅・福祉施設・子どもの施設に携わる目黒逸子氏が、それぞれの人生と設計実務を交互に振り返るダブル講演会である。

大塚氏は、社会科教員を目指していた大学時代に阪神・淡路大震災を経験した。父が建てた住宅にブルーシートを掛けて回るなかで、命を守るはずの建築によって多くの人が亡くなった現実と向き合い、建築の道へ転じた。その後は就職、短期間での退職、失業、設計事務所での低賃金労働などを経験しながら、保育園設計にたどり着いた。

目黒氏は、幼少期に社宅から戸建て住宅へ移った経験から、住環境が家族関係や生活の余裕を変えることを実感した。大学では製図に苦戦したが、住宅政策や阪神・淡路大震災後の復興を研究し、人とのつながりを通じて現在の設計事務所に入った。住宅設計では、施主の言葉だけでなく、要求の背景、家族関係、将来の加齢や暮らしの変化まで読み取ることを大切にしている。

講演の中心となったのは、子どもの施設における「安全」と「育ち」の関係である。保育園では事故を防ぐことが求められる一方、あらゆる危険を排除すると、子どもが失敗から学ぶ機会まで奪ってしまう。障子を破る、軽い建具に指を挟む、低い天井で自分の身長を感じるといった体験は、身体感覚や物の扱い方を学ぶ契機となる。

そこで大塚氏は、生命や視力を失うような取り返しのつかない危険を「ハザード」、子どもの成長に必要な経験を伴う危険を「リスク」として区別する。ただし、その境界を設計者だけで決めるのではない。保育者と話し合い、「子どもにどう育ってほしいか」を一緒に考えることが設計の本質だと語った。

また、子ども用キッチン、木登り遊具、穴倉のような居場所、自由に操作できる照明や建具などの事例を通して、建築が子どもの主体性を支えられることが紹介された。子どもは保育されるだけの存在ではなく、空間を使い、働き、選び、失敗する生活の主体である。

目黒氏の事例からは、保育園の現場に実際に入り、0歳から5歳までの身体や行動の違いを観察することの重要性が示された。同時に、完成時には良いと思った計画でも、昼寝中の音や動線の重なりなど、使用後に初めて分かる問題があることも率直に語られた。

講演全体を通して示されたのは、設計には唯一の正解がないということである。住宅でも保育園でも、その時点の要望だけを形にするのではなく、人や社会の変化を見据え、完成後も使われ方を観察し、必要に応じて更新していく。設計者、利用者、保育者が一緒に悩み続けることが、より良い建築につながるというメッセージで締めくくられた。

開催概要

  • 日時:2026年7月25日(土)15:30~17:30(15:00開場)
  • 会場:大阪木材仲買会館 3階大会議室
  • 参加費:一般 1500円/学生 1000円
  • 定員:50名(先着順)
  • 申込み:本ページよりどうぞ

大阪木材仲買会館 3階大会議室

アクセス
地下鉄西長堀駅7A出入口
徒歩4分。

〒550-0015
大阪府大阪市西区南堀江
4丁目18−10

チラシのダウンロードもできます。お知り合いとの共有にご利用ください。

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