福島県の復興ビジョンに「脱原発」
【産経新聞110615】学識経験者による福島県の「復興ビジョン検討委員会」は15日、県内における「脱原発」を基本理念として打ち出すことを決めた。7月末に正式決定し、県が年末にまとめる復興計画への反映を求めていく。福島第1原発事故の収束後、焦点となる福島第2原発の再稼働の可否に大きな影響を与えそうだ。
基本理念では、「『脱原発』の考え方のもと、原子力への依存から脱却」と明記。再生可能エネルギー産業を新たに集積し、「環境との共生と経済的な活力が両立するモデル」を目指すとしている。
鈴木浩座長(福島大名誉教授)は「原発への立場を決めないと復興は進められない」とした上で「(原発に依存した)雇用などの新たな受け皿は短期間に論じられない。県が復興計画で検討してほしい」と述べた。
福島復興計画:「脱原発」姿勢明確に…県のビジョン検討委
【毎日新聞110616】福島第1原発の事故を受けた「福島県復興ビジョン検討委員会」(座長、鈴木浩・福島大名誉教授)は15日、復興に向けた基本理念のたたき台をまとめた。「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を柱に掲げ、「脱原発」の姿勢を示した。
たたき台にはこのほか、「省エネ、リサイクルの推進」「環境と経済が共生するモデル」などを盛り込んだ。
検討委は鈴木座長ら有識者12人がメンバーで、7月末に最終案をまとめる。この提言を踏まえ、県は復興計画を年内に取りまとめる方針。
検討委は5月に発足。これまでの会合で「原子力から自然エネルギーへの転換を図るべきだ」「福島第1原発事故の教訓から脱原発を明確にしてほしい」との意見が相次いでいた。【種市房子】
毎日新聞 2011年6月15日 20時15分
福島復興基本方針に「脱原発」
【朝日新聞110616】●再生へ決別の姿勢
「脱原発」が福島復興の基本方針(素案)に掲げられた。県復興ビジョン検討委員会(座長・鈴木浩福島大名誉教授)が決断した背景には、原発事故の長期化で県外避難者が戻るきっかけをつかめず、農作物などへの風評被害が収まらない現状への焦りがある。原発と決別する姿勢は、地域再生に最低限必要な土台になるとの判断だ。
◎最低限必要な土台に
15日の検討委で示された基本方針は3項目からなり「脱原発」が筆頭に明記された=表。前回の9日に県が提示した「たたき台」には、「原子力災害の克服」とだけ書かれただけだったため、複数の委員から反論が相次いでいた。
検討委が懸念したのは、1万人規模の子どもたちが県外に避難しているなど、原発事故後の人口流出や、県内産の農作物、工業製品への風評被害だ。いずれも原発事故の収束に見通しがつかないことが背景にあり、原発と決別する姿勢を県外だけではなく、世界に発信する必要があった。
検討委の山川充夫福島大教授は「基本方針に脱原発を掲げないと、廃炉に当たる福島第一原発の作業員らも誇りをもって仕事ができない」とも指摘。廃炉という日の当たりにくい工程が、県の目標と合致していると示すことで、作業員の士気を高めたいとの意向を示した。
検討委は15日、基本方針を異論なく了承した。ただ、どのように復興を進めるか、具体的な主要施策の議論に移ると、「賠償問題はあるものの、東京電力が福島に投資してきたビジネスの関係も絶っていいのか」(福井邦顕・日本全薬工業会長)という疑問も上がった。
市町村の復興支援や、新産業の創出、若者や子どもたちの育成など話し合う項目が多岐にわたり、ビジョン全体の意見集約も次回の7月2日に持ち越された。
検討委終了後に記者会見した鈴木座長は「日本中が『脱原発』に向かうかどうかはわからないが、福島に限っては脱する道を歩もうと確認した。パブリックコメント(一般からの意見募集)では、たくさんの人から反応をもらいたい」と語った。(大月規義)
■県復興ビジョンの基本方針(素案の要旨)
《原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり》
・「脱原発」という考え方の下、原子力への依存から脱却し、再生可能エネルギーを飛躍的に、省エネルギーやリサイクルなどを強力に推進し、環境との共生を図る
・地域でエネルギーの自立を図る多極分散型モデルや、環境との共生と経済的な活力が両立するモデルを世界に先駆けて提示
・子どもから高齢者まで、すべての県民が安全で安心に暮らせる社会をめざす
《ふくしまを愛し、心を寄せるすべての人々の力を結集した復興》
・浜通りを中通りや会津が支えるなどして「ふくしま」全体で復興を進める
・県民、企業、民間団体、市町村、県や国内外でふくしまに心を寄せるすべての力を合わせる
《誇りあるふるさと再生の実現》
・避難を余儀なくされた県民がふるさとに戻れた日にふくしまの復興が達成される、との思いを共有
・子どもたちが福島県に誇りを持てるような再生を図る