千葉県 「100万円もゼロも・・・千葉の液状化、自治体で支援格差」

100万円もゼロも・・・千葉の液状化、自治体で支援格差

朝日新聞110611】震災で液状化被害を受けた家屋の再建問題で、自治体の財政状況により支援に差ができている。千葉県内では16市町で液状化被害があったが、独自支援を予定するのは最大100万円を出す浦安市など4市だけだ。被災者支援の格差はどこまで許されるのか――。首長の意見は分かれる。

 県防災危機管理課によると、県内で液状化被害があったのは浦安市、習志野市、香取市など16市町。西部から東部まで広範囲にわたる。各自治体の集計では、被災家屋数は約1万8千戸に上る。

 朝日新聞が各自治体に液状化などを原因とする家屋被害に独自支援を検討しているか尋ねたところ、浦安、船橋、銚子の3市が関連の補正予算案を6月議会に提出、我孫子市は7月以降に提出予定とした。

 東庄町も内容は未定だが、「する予定」と回答。習志野市と旭市は、家屋再建に絞った支援ではない「見舞金」として対応するとしている。

  

 最も内容が手厚いのは浦安市だ。建て替えや地盤復旧をする場合、一律100万円を支給する。同市は震災で市内の4分の3が液状化した。松崎秀樹市長は「台風の高潮や大火事といった災害の歴史があり、万が一のために、財政調整基金をためてきた。今はそれを使うときだ」と話す。

 浦安市の「大盤振る舞い」を可能にするのは豊かな財政だ。東京ディズニーリゾートを抱え、自主財源比率の高さは全国有数。貯金に当たる財政調整基金の見込み残高は震災前の段階で約120億円に上る。

 一方、約1600戸が被災した香取市の同基金は震災前で約29億円。農業施設など家屋以外の被災も大きく、結局独自支援策を補正予算案に盛り込むことはできなかった。

 宇井成一市長は1日の会見で「被害の詳細があがってきていない。全く支援しないわけではなく、把握した時点で協議したい」としたものの、「財政を鑑みて、相当協議したが決定には至らなかった」と悔しさをにじませた。

   

 千葉市の熊谷俊人市長は「自治体ごとに差が出る事態は望ましくない。これではバナナのたたき売りのようになり、政治的思惑が入りかねない。指定市の千葉市がやればほかにも波及する。他市を無視してやるようなことはしない」と批判する。

 だが、自治体の判断によって住民の負担や受けるサービス内容が変わるケースは少なくない。国民健康保険では、一般財源からの補填(ほてん)ができる自治体の保険料が安くなる。県内で負担が最も高い保険料の富津市と、最も低い成田市では1.4倍の差がある。

 各自治体に先立って、国制度が対象外とする被災世帯へ支援を決めた森田健作知事は「プラスアルファを決めるのは各自治体。県としては格差がないように(県独自制度の)78億円を確保した。(格差を)市民がどう解釈するか、県全体を考えると非常に難しい」と話す。

     

〈独自実施4市と県の支援予定〉

 浦安市(国・県制度への上乗せ) 現地での建て替えや地盤修復に一律で100万円、地盤修復を伴わない半壊家屋の修繕に25万円を支給。被災した分譲マンションの管理組合にも最大3千万円を補助。総額は34億円の見込み。

 船橋市(県制度への上乗せ) 全壊や一部損壊住宅の地盤復旧や住宅補修に費用の2分の1(上限50万円)を助成。総額は2億円以上の見込み。

 我孫子市(同) 被災家屋の解体や地盤改良に最大30万円、住宅改修にも最大10万円を補助。規模は未定。

 銚子市(国・県の制度で該当しない部分への支援) 一部損壊住宅の修繕費として、修繕費50万~100万円の場合5万円、100万円以上の場合10万円を助成。総額3千万円の見込み。

 千葉県(国制度に該当しない部分への支援) (1)半壊などで住宅は解体しないが地盤の修復をする(2)一部損壊などで住宅を解体する(3)半壊で住宅を補修する、の三つが対象。(1)と(2)は最大100万円、(3)は最大25万円を助成(単身世帯は最大額の75%まで)。総額は78億円。