【毎日新聞110520】東日本大震災をもたらしたマグニチュード(M)9・0の地震は、震源域のプレート(岩板)境界で地震前に蓄えられた以上の力が解放され、海底の大きなすべりをもたらしたとする解析を、東京大理学部の井出哲・准教授(地震学)などのチームがまとめた。地殻破壊は向きを変えながら4段階で進行し、破壊開始から約1分後に起きた浅い部分の大きなすべりが巨大津波を引き起こした主要因と分析した。20日、米科学誌サイエンス電子版に掲載された。【八田浩輔】
地震は海側のプレートが陸側に沈み込む境界で発生した。チームは世界各地の地震計で観測された地震波から、最初の100秒の破壊過程を解析。その結果、破壊は(1)最初の3秒で深さ25キロ程度の地点でゆっくりと始まり(2)約40秒で境界の深い場所(陸側)に向かって進行(3)約60秒で方向を変え、開始点より浅い場所から海底に達するまで一気にずれ(4)反動で再び向きを変え、約90秒で海岸線近くの海底下40キロに達した--と分析した。
井出准教授によると、深い場所で起きた(2)と(4)は、陸地に被害をもたらすような揺れを発生させた。浅い場所の(3)で蓄積された以上の力が解放された「すべり過ぎ」現象が発生。大きなすべりの先端部分に地殻の変形が集中し、高い津波を引き起こしたらしい。3日間程度で、日本海溝付近で本震と逆向きに力が働く余震が続けて発生したことなどが「すべり過ぎ」の裏付けになるという。
井出准教授は「『すべり過ぎ』は理論的には考えられてきたが、確認されたのは初めて。プレート境界の地震はイメージされていたほど単純ではない。今後対策を考える上で取り入れなければいけない」と話している。