住宅再建3割見通せず 復興遅れに焦燥感 被災者アンケート
東日本大震災から1年を迎えるのを前に、河北新報社は東北大などと共同で、津波で大きな被害を受けた宮城県沿岸12市町の被災者を対象にアンケートを実施した。自宅再建や移転先として、被災前の自治体を希望する被災者は50.9%で、「見通しを立てられない」との回答が31.4%に上った。生活再生の不透明さは精神面にも影響、「落ち着かない」など心の不調の自覚症状を訴える人は9割に達した。
住宅再建が見通せない理由には、資金不足と集団移転、公営住宅建設を中心とする復興計画が進まない状況を挙げる割合が高かった。再出発を期しても生活基盤の収入と住まいの将来像が不安定で、焦燥感を招いている実態が明らかになった。
「見通しを立てられない」との回答は、最も高い南三陸町で54.1%に上り、最も少ない山元町でも20.0%あった。
理由(複数回答)としては「自己資金が足りない」が50.3%と最高で、「復興計画の詳細が分からない」が41.0%、「高齢で新しい自宅を建てることに悩んでいる」が25.6%と続いた。震災前後の収入の変化を聞いた設問では、減ったとの回答が5割を超えており、資金調達の難しさも自宅再建の妨げとな
っている。
自宅再建や移転予定の設問に対し、「同じ市町内の安全な場所」は35.2%。市町別では気仙沼市が51.0%で最も高く、次いで七ケ浜町50.8%、岩沼市46.0%。「震災前の居住地に戻りたい」は15.7%だった。
「市町外に移転したい」は5.4%で、山元町(14.0%)、女川町(12.0%)、南三陸町(11.9%)で高かった。
最近1カ月の心の状態も聞いた。不調の自覚症状が「あった」とする回答は、「気分が沈む」「気持ちが落ち着かない」「寂しい気持ちになる」が7割を超えた。焦りや無気力などの症状を含めたメンタルに関する6項目の設問のうち、いずれか一つ以上の不調を訴えた被災者は、全体の88.9%に達した。
復興のさまざまな課題について不安度を尋ねたところ、「大変不安」「不安」の合計は、「住まいの再建・移転」が79.3%で最も高かった。「被災した土地の今後」は77.0%、「まちの復興」は75.4%。割合が高かった上位三つはいずれも、住居に関わる不安だった。
調査の方法 共同実施したのはほかに科学技術振興機構(東京)、サーベイリサーチセンター(同)。2月15~26日、気仙沼、石巻、東松島、多賀城、仙台、名取、岩沼の7市と、南三陸、女川、七ケ浜、亘理、山元の5町で実施した。仮設住宅に住む被災者を対象に聞き取り、配布回収で1097人から回答を得た。男女比は男性39.5%、女性59.1%。年齢層は20から30代16.0%、40代13.5%、50代15.8%、60代26.3%、70歳以上26.3%。