原子力の信頼回復に全力 東北電力・海輪誠社長に聞く
【河北新報110721】東北電力の海輪誠社長は20日、河北新報社のインタビューに対し、東京電力福島第1原発事故によって失われた原子力発電への信頼回復に全力を挙げる考えを強調した。原子力を引き続き重要なエネルギーとして位置付け、脱原発を求める声の広がりに対しては「代替エネルギーや、原発立地地域の将来像の議論を抜きにした理想論ではいけない」と語った。
―経営環境は東日本大震災後に一変した。
「『復興』がこれからの経営のキーワード。電力会社として、まずは(夏場の)電力需給ギャップの解消に努める。原発の信頼回復にも取り組むとともに、経営の安定化を図りたい」
―原発の信頼をどう回復させるか。
「当社の女川原発(宮城県女川町、石巻市)と東通原発(青森県東通村)は震災後も(全基が)安全に停止している。原発のデータや安全対策の情報を公開することが重要。地元の方々に理解してもらうため、地道に説明するしかない」
―政府は原発の新たな安全評価方法としてストレステスト(耐性評価)導入の方針を示した。
「(震災後の国の指示に基づく)緊急安全対策や過酷事故対策を実施することが、安全性を担保する条件と思っている。ただ、地域の人々がより安心感を得られるためにも(ストレステストに)適切に対処したい」
―女川、東通両原発の再稼働の見通しは。
「東通原発1号機は震災の設備被害もほとんどなく、定期検査中で、起動するための準備を整えている。青森県が設置した(専門家による)検証委で安全対策への評価を得られていると、ある程度の感触は得ている。ストレステストの結果も適切に地元に説明していきたい」
「女川原発は(震災の揺れが)設定した基準地震動を超えた部分があり、地震動を評価している。ストレステストにも時間が掛かり、(再稼働は)年内は難しいだろう」
―菅直人首相が私見として脱原発を表明した。
「政府方針とは受け止めていない。ただ野党も含め原発を縮小し、代わりに自然エネルギーを増やすという議論の流れが基本線としてある」
「いつまでに実施するのか、代替エネルギーをどうするかなどの具体的議論がないのは問題だ。代替の中心となる化石燃料は二酸化炭素排出の問題もある。東北の原発立地地域の将来をどうするかの議論も必要だ。経済や国民への影響を考えた議論をしてほしい」
―九州電力で原発再稼働をめぐる世論工作があった。
「(同様事例の有無を調査するよう電力各社に)国から指示があり、当社でも現在調べている。現状では九州電力のような問題はないと思っている」